相続争いを終わらせる方法!事例をもとに遺産相続に強い弁護士が解説

相続争い
この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。

「他の相続人と意見が対立して遺産相続が進まない。」

相続に争いは付きものです。もともと仲が悪かったり疎遠だったりした場合はもちろん、仲が良いと思っていた家族とでさえ、争いに発展することが少なくありません。

相続争いが起こった場合はなるべく早い段階で解決をしなければいけません。

本記事では遺産相続で起こりやすい代表的な8つのトラブル事例と解決方法を紹介します。あなたの状況にあてはまる事例を参考にして対処してみてください。

相続で起こりやすい争いの事例8つとその解決方法例
①遺産の割合で揉めている
②相続人同士が険悪・疎遠で話し合いができない
③不動産の分け方で揉めている
④被相続人の財産を使い込んだ疑いがある
⑤被相続人を介護した人がいて寄与分で揉めている
⑥被相続人から生前贈与を受けた人がいて特別受益で揉めている
⑦不公平な遺言書が残されている
⑧遺言書の有効性で揉めている  

相続の各種手続きには期限が設けられているものがあり(相続放棄は3ヶ月まで、相続税申告は10ヶ月まで)、争いが長引いて相続が進まないと手続きが間に合わなくなってしまいます。また、争いが続くと心身に思っている以上のストレスがかかり、生活にも影響が及んできます。

そこで相続争いの早期解決に向けて本記事では次の内容をまとめました。

本記事のポイント
【争い内容別】よくある相続争い8の事例と解決策
相続争いを長引かせない3つの対処法

本文を読み進めていくと自分の状況における解決方法を知ることができ、争いの収束に向けて動き出せるようになります。

是非最後まで読んでいってくださいね。

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目次

【争いの内容別】よくある相続争い8の事例と解決策

相続で争いが起きる状況は遺言書が原因の場合と遺産分割の場面であることがほとんどです。

ここではこの2つの状況の中で特によく起こる8つの紛争事例を挙げて、争いの解決方法をお伝えしていきます。

遺産の割合で揉めている
相続人同士が険悪・疎遠で話し合いができない
不動産の分け方で揉めている
被相続人の財産を使い込んだ疑いがある
被相続人を介護した人がいて寄与分で揉めている
被相続人から生前贈与を受けた人がいて特別受益で揉めている
不公平な遺言書が残されている
遺言書の有効性で揉めている

ご自身にあてはまる項目を見つけてリンクから移動してくださいね。

遺産分割に関する争い

相続争いの大半は遺産分割の場面で起きます。

遺産分割は単純には進められないケースが多く、複雑な状況が絡み合って相続人同士の利害が一致せず争いに発展してしまいます。

具体的な事例と解決法を6つ見ていきましょう。

①遺産の割合で揉めている

相続人の一人が遺産を多めに取得すると主張したり、特定の相続人に対して遺産を渡さないと言ってくるケースは現実的に今も一定数起こっています。

■解決方法

頑固で主張を譲らない人には次の順番で対応していきましょう。

①法定相続分の制度を説明し理解してもらう
②遺産分割調停・審判を申し立てる
 
解決方法①:【すぐ実行】法定相続分の制度を説明し理解してもらう

遺言書が残されていない限り、下記法定相続分のとおり遺産分割をしなければならないと民法で定められていることを伝えましょう。(民法第900条

法定相続人の

組み合わせ

(優先順位の順)

法定相続分の割合

配偶者

子ども
(直系卑属)

親(直系尊属)

兄弟姉妹

配偶者が
いる場合

①配偶者のみ

100%

②配偶者と子ども

1/2

1/2

③配偶者と親

2/3

1/3

④配偶者と兄弟姉妹

3/4

1/4

配偶者が
いない場合

①子どものみ

100%

②親のみ

100%

③兄弟姉妹のみ

100%

※グレーの箇所は存在しないまたは既に他界していることを表す
※子どもや親が複数人いる場合は人数で割る。
例)法定相続人が子どものみのケースで子どもが3人いる場合は1人3分の1ずつ

たしかに昔は嫡男が全財産を相続するという家督相続がありましたが、現代では裁判に進むと法定相続通りになる(特殊ケース除く)ことを伝えると、相手も納得せざるを得ません。

解決方法②:【当事者では解決できないとき】遺産分割調停・審判を申し立てる(期間:数ヶ月~1、2年)

①の根拠で説得しても相手が理不尽な主張をしてくる場合は法的手続きに進みましょう。このケースでは「遺産分割調停・審判」を申し立てることになります。

遺産分割調停・審判とは…
相続人全員で遺産の分け方を法的手続きに従い決めること。
調停…調停委員が間に入って当事者の意見を聞き入れる。妥協案を提示して話し合いで解決する。
審判…裁判官が当事者の言い分を聞き入れて審判をする。

相続での揉め事はなるべく話し合いで解決するべきという趣旨から、まずは調停を経てそれでも解決しなければ審判に進むのが一般的です。

解決までの期間はケースにより様々ですが、およそ数ヶ月〜約1年を目安にしてください。

申し立て方法は必要書類を揃えて下記管轄の裁判所で手続きを行います。

【申立先裁判所】

調停相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所
探し方→各地の裁判所
審判相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所

必要書類は相続人の状況によって変わってくるので、詳細は裁判所の案内をご確認ください。

遺産分割調停 | 裁判所

②相続人同士が険悪・疎遠で話し合いができない

相続人同士の仲が悪いと遺産分割の話し合いもスムーズに進行しません。

仲が悪い場合はお互い相手が得をする分け方はしたくないという心理になり、疎遠な場合は遠い関係の人に遺産を渡したくない気持ちが働くので、分け方で争いが激化する傾向があります。

■解決方法
険悪な人や疎遠な人との遺産分割を進めるにはいくつか方法があります。下記の方法はいずれも顔を合わせずに済む方法で、分け方自体は揉めなさそうな場合と、分け方でも争いになりそうな場合に分類しました。

・分け方で揉めそうにない場合→手紙のやりとり・司法書士に依頼
・分け方で揉めそうな場合→弁護士に依頼・遺産分割調停の申し立て
解決方法①:【すぐ実行】手紙のやりとり(期間:数ヶ月~数年)

相続関係が複雑ではないケースで、遺産内容が現金のみなど分け方で争いが起きなさそうならば手紙でやりとりをすることも可能です。

ただし、郵送の往復分時間がかかるので、相続のスケジュールに余裕がある場合に限られるでしょう。

解決方法②:【時間がない場合】司法書士に依頼する

相続人間に争いがないケースなら司法書士に依頼するという方法もあります。司法書士に相続手続きの代行を頼むことができます。

ただし、司法書士は相続争いについて、相続人の代理人として交渉業務をすることはできません。揉め事をまとめることは業務外であるとしっかり理解しておきましょう。

司法書士に依頼する場合
費用相場…約5~10万円から
探し方…インターネットで「相続+司法書士+地域名」で検索。
相続取扱い実績の多い事務所を選ぶ。
解決方法③:【プロに交渉を任せたいとき】弁護士に代理を依頼する

遺産の分け方で争いになりそうな場合は弁護士に依頼しましょう。

弁護士は、依頼人の利益を最大化するため遺産分割協議で交渉や提案もしてくれます。相続に強い弁護士なら専門知識・実績が豊富で交渉術にも長けているので、心強い味方になってくれるでしょう。

弁護士に依頼する場合
費用相場…着手金:約22~33万円+報酬金:取得した遺産額の4%~16%
探し方…インターネットで「相続+弁護士+地域名」で検索。
相続取扱い実績の多い事務所を選ぶ。
解決方法④:【当事者では解決できないとき】遺産分割調停・審判を申し立てる(期間:数ヶ月~1、2年)

遺産分割協議がまとまりそうにない場合は遺産分割調停を申し立てることも検討しましょう。調停員が間に入ってくれるため、相手と直接顔を合わさずに話を進めることができます。

また、遺産分割調停を申し立てると家庭裁判所から相手方に呼び出し状が届くので、そもそも遺産分割協議に全く応じない人にも有効でしょう。

申し立ての手続きは必要書類を下記管轄の裁判所に持参して行います。

【申立先裁判所】

調停相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所
探し方→各地の裁判所
審判相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所

必要書類は相続人の間柄などによって異なるので、詳細は裁判所の案内をご確認ください。

遺産分割調停 | 裁判所

③不動産の分け方で揉めている

遺産に不動産が含まれていると分けるのが難しくて揉めてしまうケースが多発します。

不動産は現金のように相続人同士に均等に分けることができないため、納得のいく分け方を巡って意見が衝突しやすいのです。

不動産は放置すると固定資産税の支払いや空き家トラブルのリスクが発生するため、早めに解決に向けて動き出さなければいけません。

■解決方法

不動産の分け方で意見が折り合わないときは次の順番で解決を図りましょう。

①4つの分け方を検討する
②遺産分割調停を申し立てる
解決方法①:【すぐ実行】4つの分け方を検討する

不動産の分け方の選択肢を知り、自分たちのケースに合った方法を選びましょう。

亡くなった人が不動産を残した場合、主に次の4通りの遺産分割方法があります。

現物分割換価分割
代償分割共有分割

それぞれの特徴と向いているケースがこちらです。

現物分割とは相続財産を現物のまま各相続人に分配する
例1)長男は自宅、次男は現金、三男は車をそれぞれ相続する。
例2)一つの土地を複数の土地に分けて取得する(100㎡の土地を長男と次男で50㎡ずつに分けて取得する等)
向いているケース相続財産が複数ある場合
換価分割とは相続財産を売却し、売却代金を各相続人に分配する
例)実家を3000万円で売却し、長男と次男で1500万円ずつ受け取る
向いているケース不動産を活用していない場合
代償分割とは相続人の一人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に金銭等を支払う
例)長男が自宅(評価額3000万円)を取得し、次男に1500万円支払う
向いているケース相続人の一人が不動産を引き継ぎたい場合
共有分割とは相続人が数人で一つの不動産を共有すること
例)土地を長男と次男で持分1/2ずつとして共有する
向いているケース不動産を現状のままにしておきたい場合

代償分割を選んだ場合、不動産を取得する人は他の相続人に代償金を渡す必要がありますが、支払いが苦しい場合は分割払いが可能かどうか相談してみましょう。

代償分割で土地評価額について揉めている場合…

代償分割の方法を選ぶと代償金の額を決めるために土地の評価額を見積もる必要がありますが、評価額も争いの種になるポイントです。
評価額はいくつかの方法で出すことができますが、相続人全員が納得するためには不動産鑑定士などのプロに依頼することも検討しましょう。
解決方法②:【当事者では解決できないとき】遺産分割調停・審判を申し立てる(期間:数ヶ月~1、2年)

話し合いでも決まらない場合は遺産分割調停を申し立てて解決を目指しましょう。

【申立先裁判所】

調停相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所
探し方→各地の裁判所
審判相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所

申し立ての詳細については裁判所のホームページに公開されているので、そちらをご確認ください。

遺産分割調停 | 裁判所

ただし争いの論点に不動産の売却も含まれるなら、調停から審判に進むのは注意が必要です。

調停で解決できない場合は審判に進んで裁判官が遺産分割方法を指定することになりますが、そこで不動産の強制売却命令が下されると不動産を競売にかけなければなりません。

競売になると一般的な売却より手間や費用がかかる上、売却の金額も低くなる傾向があります。

競売を回避するためには調停の段階で終わらせるようにしましょう。

④被相続人の財産を使い込んだ疑いがある

特定の相続人が被相続人の財産を管理していた場合、勝手に遺産を使い込んでいたという事態が発生することがあります。

遺産内容を整理しているときに他の相続人が不審な点に気づきますが、本人が使い込みを認めず争いに発展してしまうのです。

■解決方法

使い込みの疑いがある場合は次の順番で動きましょう。

①使い込みの証拠を探す
②不当利得返還請求を起こす
解決方法①:【すぐ実行】使い込みの証拠を探す

まずは使い込みを証明する証拠を掴んで事実を明らかにしましょう。

使い込みの場合ほとんどが被相続人の預貯金が対象なので、被相続人名義の口座の取引履歴を金融機関から取得する必要があります。

相続人であれば被相続人の取引内容を開示してもらえます。一般的には下記必要書類と手数料が必要になりますが、金融機関によって異なるので電話で問い合わせてから準備をして窓口に向かうようにしましょう。

必要書類戸籍(除籍)謄本など
手数料目安:数千円~数万円(年数分による)
解決方法②:【相手が認めないとき】不当利得返還請求を起こす(期間:数ヶ月~1、2年)

証拠を示しても相手が応じない場合は、「不当利得返還請求」の訴訟を提起する方法があります。

不当利得返還請求とは…
正当な理由なしに利益を得た者に対して、それにより損失を被った者が利益の返還を請求すること

尚、不当利得返還請求を起こす場合は弁護士に依頼することをおすすめします。

遺産の使い込みは線引きが難しく、それを裁判で認めてもらうには豊富な専門知識が必要になります。自力で証明するのは厳しい部分があるので、専門家に任せるようにしましょう。

不当利得返還請求の訴訟手続きついての必要書類や管轄裁判所については、弁護士事務所に尋ねてみてください。

⑤被相続人を介護した人がいて寄与分で揉めている

被相続人を生前介護していた人がいる場合、遺産分割の割合で揉めやすくなります。

被相続人を介護していた場合はその寄与の度合いによって法定相続の割合よりも多く財産を受け取ることが認められています。

寄与分とは…
被相続人の財産の維持または増加に貢献すること。相続では介護が代表例。

しかしその金額はあくまで他の相続人たちと話し合いの上決定されるため、寄与分をいくらにするかで揉めてしまうのです。

介護をしていた人が主張する寄与分に対して、他の相続人が「それは多いからもう少し減らすべき」と反発して決着がつきません。

■解決方法

寄与分で揉めた場合は次の順で解決していきましょう。寄与した立場の人、他の相続人側どちらの場合でも同じ方法です。

①具体的な計算式を元に寄与分を提示する
②「寄与分を定める処分調停」を申し立てる
解決方法①:【すぐ実行】具体的な計算式を元に寄与分を提示する

具体的な計算式を示して相手に納得してもらいましょう。

「寄与した分200万円を請求したい」のような漠然とした数字では相手も受け入れられませんが、その額が算出された根拠と現実的な金額であることを明らかにすれば相手も反論の余地がありません。

まず計算式について、寄与分の相場は様々な条件によって異なりますが、代表的な介護の例を挙げると次のように算出できます。

  寄与分の額 = 介護日数 ✕ 介護報酬基準額(5千円~8千円) ✕ 裁量的割合(0.5~0.9) 

※介護報酬基準額…介護保険制度で要介護度に応じて定められている金額
※裁量的割合…身内の者が行うことを考慮して差し引く割合

上記の計算式に当てはめてみて実際の寄与分を計算してみましょう。

このように計算式を提示することで、自分の主張に説得力を持たせて相手側と交渉できるようにしましょう。

解決方法②:【当事者で解決できないとき】「寄与分を定める処分調停」を申し立てる(期間:数ヶ月~1、2年)

①の方法を試してみても話し合いが平行線なら、最後の手段として「寄与分を定める処分調停」を申し立てる方法があります。

【申立先裁判所】

調停相手側のうち1人の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所(遺産分割で既に調停が行われている場合はその裁判所)
探し方→各地の裁判所

必要書類を用意して上記裁判所に申し立てに行くのですが、相続のケースによって必要書類は異なります。

必要書類とその他詳細は裁判所のホームページに詳しく掲載されているので、そちらをご確認ください。

寄与分を定める処分調停 | 裁判所

調停でも話がまとまらない場合は審判手続きが開始されることになります。

⑥被相続人から贈与を受けた人がいて特別受益で揉めている

相続人の中に生前被相続人から金銭や不動産を受け取っていた人がいる場合は、特別受益であるとみなして遺産分割で揉める傾向があります。

特別受益とは…
特定の相続人が被相続人から生前に財産を受け取っているにもかかわらず、法定相続通りに分割すると不公平が生じるため、その分を持ち戻した上で分割する制度

なぜ揉めやすいかというと、受け取った財産が特別受益に該当するかどうか線引きが難しいからです。

特別受益にあてはまるのは生前贈与や遺贈、死因贈与など「遺産の前渡し」と見なされるものですが、扶養義務の範囲の生活費援助と判別しづらいケースが多々あります。

例えば大学の学費や結婚式の費用なども、金額や他の相続人との差によって特別受益と判断されるケースもあれば、扶養の範囲内で特別受益ではないと判断されるケースもあり、一概に定義できません。

このように特別受益に当てはまるかどうかを巡って相続人同士で争いが起きやすくなってしまうのです。

■解決方法

解決方法は争点によって異なります。

①相手が特別受益を認めない→証拠を示す
②特別受益に該当するかどうかで言い争っている→遺産分割調停を申し立てる
 
解決方法①:【すぐ実行】相手が特別受益を認めない→証拠を示す

特別受益を受けていたと思われる相続人がその事実を認めない場合は、証拠を探してそれを提示しましょう。

被相続人から現金を受け取っていたのなら被相続人の通帳の入出金記録、不動産を譲り受けたのなら登記簿などで証明することができます。

【証拠の入手方法】

通帳の入出金記録金融機関に依頼
戸籍謄本、印鑑証明書などの書類が必要なケースもある
手数料:数千円~数万円(年数分による)
不動産登記簿法務局で登記簿謄本交付申請書を記入して申請
どこの法務局からでも可能で、オンラインでも申請できる
各種証明書請求手続:法務局
手数料:1通600円
解決方法②:【当事者で解決できないとき】特別受益に該当するかどうかが争点→遺産分割調停を申し立てる(期間:数ヶ月~1、2年)

双方が言い分を譲らない場合は遺産分割調停を申し立てて解決を図りましょう。

特別受益が成立するかどうかは一般の人が判断することは難しいので、当事者だけでのスムーズな解決は望めません。法的見解から客観的な判断を仰ぎましょう。

遺産分割調停は分割方法を決めるための調停ですが、特別受益もこの調停の内容に含まれます。

申し立て方法は必要書類を下記管轄の裁判所に持って行って手続きを行います。

【申立先裁判所】

調停相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所
探し方→各地の裁判所
審判相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所

必要書類は相続人の状況によって変わってくるので、詳細は裁判所の案内をご確認ください。

遺産分割調停 | 裁判所

遺言書に関する争い

遺言書が残されている場合、遺言の内容は法定相続よりも優先されます。

遺言の内容によっては法定相続の場合より損をしてしまう相続人が出てくるケースがあるため、争いが起きやすくなります。

その代表的な2つの事例を見ていきましょう。

⑦不公平な遺言書が残されていた

「遺産は全て長男に渡す」など偏った内容の遺言書が残されていると、他の相続人から不満が募り争いの種になります。

相続人の中で偏りがあるケースもあれば、「愛人に相続させる」「全額寄付する」など相続人ではない人(所)に遺産を渡すことを希望しているケースもあります。

解決方法:【すぐ実行】遺留分侵害額請求をする(期間:数ヶ月~1、2年)

不公平な遺言書により遺産を受け取れなかった場合は、遺留分侵害額請求をすることで本来受け取れるはずの遺産の一部を取り戻すことができます。

遺留分とは…
法定相続人のうち配偶者・直系尊属(親など)・直系卑属(子など)に法律上留保されている最低限度の財産。相続人の生活を保障するために設けられた制度。

それぞれの法定相続人の遺留分の割合を下表にまとめました。

法定相続人の

組み合わせ

遺産額に対する遺留分の割合

配偶者

子ども(直系卑属)

親(直系尊属)

配偶者のみ

1/2

配偶者と子ども

1/4

1/4

配偶者と親

2/6

1/6

子どものみ

1/2

親のみ

1/3

※子どもや親が複数人いる場合は人数で割る。
例)法定相続人が子どものみのケースで子どもが3人いる場合は1人6分の1ずつ

受け取れる遺産が上記の遺留分に満たない場合は、遺産を多く受け取った人に対して遺留分侵害額請求を起こすことができます。

実際請求をする場合は次の順番で進めていきましょう。

 【遺留分侵害額請求の進め方】
①相続人間で話し合う
②内容証明郵便を送付する
③遺留分侵害額請求の調停を申し立てる
④遺留分侵害額請求の訴訟を提起する

当人同士の話し合いで解決するに越したことはないので、まずは話し合いに臨みます。

それでも埒が明かないのであれば、次に内容証明郵便を送ります。遺留分侵害額請求には時効がありますので(多くは相続の開始及び遺留分侵害を知ったときから1年)、注意しましょう。

内容証明郵便とは…
誰が・誰に・いつ・どのような文書を発送したのかを郵便局が証明してくれるサービス。書き方・送り方には一定の決まりがあるので、詳細は郵便局ホームページをご確認ください。
内容証明 ご利用の条件等 – 日本郵便

また、内容証明郵便は相手に法的手続きの一歩手前だということを知らせてプレッシャーを与えるので、送ることにより事態が進展することも珍しくありません。

それでも状況に変化がない場合は調停の準備を始めましょう。

調停は必要書類を用意して下記管轄の裁判所に申し立てに行くところから始まります。

【申立先裁判所】

調停相手方の住所地または当事者の合意で定めた家庭裁判所
訴訟相手方の住所地または請求者の住所地、当事者の合意で定めた地方裁判所

管轄の裁判所は裁判所ホームページから検索できます。各地の裁判所

必要書類は状況別に異なります。詳しく知りたい人は裁判所の案内を参照ください。

遺留分侵害額の請求調停 | 裁判所

他の相続事件と同じく、まずは調停員を間に入れた調停から始まります。それでも解決しない場合には裁判官が判決を下す訴訟を提起することになるでしょう。

⑧遺言書の有効性で揉めている

遺言書に効力があるかどうかを争点に揉めるケースもよく起こります。

遺言書の効力が認められるための条件は厳しく、次の項目のうち一つでも当てはまるものがあれば無効になる可能性があります。

【遺言書の効力が認められないケース】

自筆証書遺言の場合・自筆で作成されていない
・作成日が記載されていない、または特定できない
・署名・押印がない
・訂正方法に誤りがある
・内容が不明瞭
・共同(2名以上)で作成されている
・遺言能力のない人(認知症など)が作成している
公正証書遺言の場合・証人になれない人が立ち合いをしていた
・遺言能力のない人(認知症など)が作成している

上記を巡って遺言書通りに遺産分割したい人と遺言書を無効にして法定相続通りに分けたい人が争うのですが、実際には判別が難しいケースが多く、当人同士では解決に至らないことも少なくありません。

遺言書通りに分けるかそれとも法定相続通りに分けるかが決まらないと以降の相続の手続きも全て滞ってしまいます。

解決方法:【すぐ実行】遺言無効確認の訴訟を提起する(期間:半年~1、2年)

遺言書の有効性については「遺言無効確認」という訴訟で決着をつけましょう。

そこで遺言書が無効であると認められると、法定相続通りの遺産分割に進むことができます。

相続争いは調停から始めて解決しなければ審判・訴訟へと進めるのが原則ですが、遺言無効確認に関しては調停という話し合いで解決する見込みが低いため、実務的には調停を経ず訴訟から始めることが一般的です。

申し立て先の裁判所は次の通りです。

【申立先裁判所】

訴訟相手方の住所地または相続開始地(被相続人の最後の住所地)、当事者の合意で定めた地方裁判所または簡易裁判所

管轄の裁判所は裁判所ホームページから検索できます。各地の裁判所

必要書類などの詳細は管轄の裁判所または弁護士に依頼している場合は弁護士に問い合わせましょう。

相続争いは長引く前に終わらせるべき!3つの対処法

相続争いは誰もが早く終わらせたいと願うところでしょう。実際に相続争いが長引いてメリットなどひとつもなく、デメリットばかりがのしかかってきます。

具体的には相続争いが長引くことで次のデメリットが生じます。

相続争いが長引くと…
・相続財産を使えない
・不動産は固定資産税がかかる
・不動産は評価額が下がることもある
・相続人の一人が亡くなってしまうと、さらに新たな相続人が登場し、相続が余計に複雑化する
・相続放棄の期限に間に合わない(相続があることを知ってから3ヶ月)
・相続税の申告に間に合わない(相続があることを知ってから10ヶ月)
・心身ともに疲弊して健康によくない
・時間をいたずらに浪費する
・争いが激化すると相続人同士が絶縁してしまうこともある、他

上記のような事態を招かないためにも、早急な解決に向けて取り組んでいきましょう。

解決方法については前章で事例別に紹介しましたが、ここでは全体を通して相続争いを早めに収束させるためのポイントを3つお伝えします。

【相続争いを長引く前に終わらせるポイント】

・調停・審判・訴訟を起こす
・弁護士に依頼する
・争いから降りることも検討する

調停・審判・訴訟を起こす

前述の個別の事例でもお伝えしましたが、話し合いで解決が望めないと分かり他に打つ手がないのなら法的手続きに移行すべきです。

一般的に相続問題はまず調停を申し立てて、それでも解決しないなら審判または訴訟に移行します。これは、相続は家族の問題なのでなるべく話し合いで解決するのが望ましいと考えられるためです。

【調停・審判・訴訟の違い】

調停調停委員が間に入り当事者の意見を聞き入れ、それぞれが譲歩することで、妥協点で合意することを目指す。
審判当事者から提出された資料等をもとに裁判所が審判を下す。非公開で行われる。
訴訟(裁判)当事者から提出された資料等をもとに裁判所が判決を下す。和解に至る場合もある。法廷は公開される。

スケジュールの進行は下記の流れです。ここでは調停の進め方を説明します。  

【調停の流れ】

①家庭裁判所に申し立て
②第1回調停の呼び出し状が届く
③第1回調停(調停委員が同時に、顔を合わせたくない場合は交互に当事者の話を聞く)
④成立しなければ2回目へ、3回目へ
⑤調停が成立すれば、後日裁判所から調停調書が届く(成立しなければ審判・訴訟へ)
⑥調停調書を使って不動産登記など各種相続手続きを進める

調停は約月1回ペースで開催されます。調停にかかる年月はケースにより様々ですが、早ければ数回の調停で終わるので、その場合は約数ヶ月で争いは収束できることになります。

当事者同士では解決できないと判断したのなら、裁判所の力を借りて争いを収めるようにしましょう。

弁護士に依頼する

自分の力だけでは相手を説得できない場合、弁護士に依頼することも検討しましょう。

弁護士は法律の専門家で交渉のプロなので、自分で対応するよりも迅速かつ的確に話し合いを進めてくれます。

弁護士を依頼することで得られるメリットを下記にまとめました。

【相続争いを弁護士に依頼するメリット】

・代理人として交渉してくれる
・的確なアドバイスで解決に導いてくれる
・手間と時間を省ける
・法的に適切な相続のあり方を知れる
・不安やストレスが軽減され、心の平穏を保てる

特に他の相続人と顔を合わせずに済むという点は、相続争いで悩んでいる人にとっては大きなメリットでしょう。

■弁護士費用

弁護士に依頼する場合、気になるのは弁護士費用だと思います。

弁護士費用は争いの内容によって異なり、また弁護士事務所によっても大きく料金体系が変わります。

あくまで目安なので、参考程度に留めておいてください。

【相続争いの弁護士費用】

料金体系弁護士費用 = 着手金 + 報酬金 + 手数料・実費他
費用相場(内訳)着手金:交渉…約22万円~33万円
    調停…約33万円~44万円
    審判…約44万円~55万円

報酬金:依頼者が取得する遺産の時価総額の4%~16%

弁護士法人サリュの弁護士費用はこちら

■弁護士探し方

弁護士を探すときはいくつか注意点があります。

【相続に強い弁護士の探し方ポイント】

・インターネットで「地域名+弁護士+相続」で検索する
・弁護士事務所のホームページで相続問題の解決件数が多いかどうか確認
・ホームページに料金表が分かりやすく掲載されているか確認
・話しやすく質問にも丁寧に答えてくれるかどうか確認

弁護士にはそれぞれ得意分野があり、実は相続を取り扱ったことのない弁護士も少なくありません。そのような弁護士に依頼すると適切な対応をしてもらえないので、相続の実績が豊富かどうか必ず確認しましょう。

また、二人三脚で争いに立ち向かっていくためには信頼に足る弁護士でなければいけません。実際に無料相談などを利用して誠実な人柄であるかどうかもチェックすべきです。

弁護士に依頼を検討しようか悩む場合は下記の記事も参考にしてください。弁護士に依頼するべきかどうかが判断できます。

争いから降りることも検討する

不本意かもしれませんが、相続争いから身を引く・譲歩するという方法もあります。

相続は争いに勝つことが目的ではなく、自分の納得のいく相続にすることが一番大切なことです。

相続争いは心身を疲弊させるだけでなく、自分の大切な時間も奪います。遺産も惜しいですが貴重な時間を争いに費やすことも惜しいですよね。

下記のように遺産に執着するあまりかけがえのないものを失ってしまった実例も少なくありません。

 <体験談>相続争いによって奪われるもの

ケース①仲の良かった兄弟で相続争いが起き、民事訴訟にまで発展してしまった。その結果うつ病を発症し、本来かかるはずのなかった医療費が発生してしまった。

 ケース②遺産分割調停・審判に2年もかかった。その間1~2ヶ月に一度、平日の昼間に裁判所に出向かなければならず、特に仕事の繁忙期は時間を確保するのが大変だった。

 ケース③知人の父が60歳のときにその親が亡くなって相続が発生した。3年の相続争いの末、現金を相続したがその直後に亡くなってしまった。晩年を相続争いに費やしてしまい、もっと平穏な時間を過ごすよう説得すべきだったと後悔している。 

受け取る遺産額が減ることと引き換えに平穏な心と日常を取り戻せるなら、その方が自分にとって価値があると考える場合は争いから降りることも検討してみましょう。

また、相続争いを避けることで亡くなった人の最後のシーンを嫌な出来事で上書きされずにすみます。

後悔しない相続にするためにはどうするべきかよく考えてみてくださいね。

まとめ

本記事では「相続争い」をテーマに解説しました。あらためて要点を振り返りましょう。

まずは相続争いの解決方法を紛争内容別に紹介しました。

【争い内容別】よくある争い8つの事例と解決方法
①遺産の割合で揉めている
②相続人同士が険悪・疎遠で話し合いができない
③不動産の分け方で揉めている
④被相続人の財産を使い込んだ疑いがある
⑤被相続人を介護した人がいて寄与分で揉めている
⑥被相続人から生前贈与を受けた人がいて特別受益で揉めている
⑦不公平な遺言書が残されている
⑧遺言書の有効性で揉めている

続いて相続争いをできるだけ早めに終わらせるためのポイントをお伝えしました。

相続争いは長引く前に終わらせるべき!3つの対処法
調停・審判・訴訟を起こす
弁護士に依頼する
争いから降りることも検討する

本記事の内容を、相続争いをベストな形で解決し、少しでも早く平穏な日々を取り戻せるのに役立ててもらえれば幸いです。

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