遺産分割協議の期限はない|ただし10カ月以内にすべき理由を解説

遺産分割協議の期限
この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。

「遺産分割協議に期限はあるの?」「いつまでに遺産分割協議を終わらせればいいの?」という疑問を持つ方は多いかもしれません。

結論から言うと、遺産分割協議そのものに期限はありません民法第907条で、遺産分割の協議はいつでもできると定められており、相続開始から10年や20年が経ってから行っても問題ありません。

ただし、だからといって「いつでもいい」というわけにはいきません。なぜならば、遺産分割協議そのものに期限が無くても、その他の期限や時効があるからです。例えば、相続開始を知ってから3カ月を経過すると「相続放棄」ができなくなりますし、相続税申告の期限は相続開始から10カ月後です。

その他の期限がある限り、早く遺産分割協議を行わないことで、結果的に損してしまう可能性があります。

この記事では、遺産分割協議を早く行うべき理由として、以下の期限について詳しく解説していきます。

大切な人の遺産を受け取るうえで失敗したくない方は、ぜひこの記事を最後まで読み、どんな期限に気を付けなければいけないのかしっかり理解してください。

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目次

遺産分割協議には期限はない

冒頭でも述べた通り、遺産分割協議には期限はありません。例えば「いつまでに遺産分割協議をしなければ相続できなくなる」というような時効はありません。

民法第907条でも、以下のように、「いつでも」分割をすることができると書かれています。

(遺産の分割の協議又は審判等)

第907条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる

民法第907条
※「被相続人が遺言で禁じた場合」というのは、被相続人が遺言で遺産分割禁止を指定した場合のことです。最大5年に限り、遺言で遺産分割禁止を指定できることになっています。

「いつまでにしないと無効になる」ということは一切なく、被相続人が亡くなって10年後や20年後に遺産分割協議することも可能です。しかし、だからといって、「遺産分割協議はいつでも良い」という訳ではありません。

期限はなくても遺産分割協議は早めに行うべき

遺産分割協議そのものに期限や時効がなくても、遺産分割協議は早めに行うべきです。

なぜならば、相続にかかわる他のさまざまな期限・時効があるため、早めに遺産分割協議しないと損する可能性が高いからです。主なものをまとめた表が以下です。

相続放棄・限定承認の期限:
3カ月
3カ月を過ぎると、相続放棄や限定承認ができなくなる
➡マイナスの財産を相続するしかなくなる
相続税の申告・納付期限:
10カ月
10カ月以内に相続税の申告と納税をしなければならない
➡過ぎると、延滞税を払わなければならなくなる
相続登記の期限:
3年
相続した不動産の名義変更は3年以内にしなければならない
➡過ぎると、罰則(10万円以下の過料)がある
預金を払い戻しできる権利:
5年/10年で消滅する可能性
債権の消滅時効は、権利行使できることを知ってから5年(または権利行使できる時から10年)
➡過ぎると、法的には銀行が拒否できる
株主の権利:
5年で無くなる可能性
5年連絡が取れないなどの条件で、発行会社は売却などが可能
➡過ぎると、株主でなくなる可能性がある
特別受益・寄与分を主張できる期間:
10年
民法改正により、特別受益・寄与分を主張できる期間は10年になる
➡相続開始後10年を経過すると、主張できなくなる

このように、遺産分割協議を早めに行わないと、さまざまな期限や時効にかかってしまい、手続きが二度手間になったり、実現したい内容ができなくなったりすることがあります。

【3カ月】を過ぎると相続放棄できなくなるから

【10カ月】で相続税申告・納付期限が来てしまうから

【3年】で相続登記(不動産の名義変更)の期限が来てしまうから

【5年か10年】で預金・株式の権利が消滅する可能性があるから

【10年】で特別受益・寄与分の主張ができなくなるから

その他、死亡一時金受け取りなどさまざまな期限があるから

それぞれの期限や時効について、ひとつひとつ詳しく解説していきます。

【3カ月】を過ぎると相続放棄できなくなるから

遺産分割協議に期限はなくても早めに協議に向けて準備をするべき理由として、「相続放棄・限定承認の期限が3カ月だから」という事情があります。原則として、相続開始を知ってから(被相続人が亡くなったことを知ってから)3カ月を過ぎてしまうと、相続放棄や限定承認ができなくなります

相続放棄とは被相続人(亡くなった方)の財産についての相続権の一切を放棄すること
プラスの財産もマイナスの財産も一切受け継がない
限定承認とは被相続人(亡くなった方)の財産から、借金などのマイナスの財産を精算して、財産が余ればそれを引き継ぐこと

3カ月以内に相続放棄や限定承認を行わなければ、「単純承認」したとみなされてしまいます。単純承認とは、プラスの財産もマイナスの財産も全て相続することです。つまり、期間内に相続放棄・限定承認を行わないと「借金などを相続しなければならなくなる」ということです。

相続放棄や限定承認の選択肢を残しておくためには、なるべく早くに相続財産の調査をしておくべきなのです。

【10カ月】で相続税申告・納付期限が来てしまうから

遺産分割協議をできるだけ10カ月以内に行うべき理由は、相続税の申告・納付期限が10カ月以内だからです。

基礎控除額を超える相続財産を相続した場合、相続税を自分で申告して納付する必要があります。そしてその期限は、被相続人が亡くなったことを知った翌日から10カ月以内です。遺産分割協議がまとまっていなくても、申告期限である10カ月の段階で暫定的な相続税を支払わなければならないのです。

具体的には、法定相続分(民法で定められた配分)で相続したと仮定して、一旦それぞれが相続税申告する必要があります。しかし、暫定での相続税を支払う場合、相続税額を低くする特例(配偶者控除の特例や小規模宅地の特例など)を使うことができません。

申告時に「3年以内の分割見込書」を提出すれば、後に協議がまとまった時に特例による控除の還付を受けることは可能です。ただし、請求の手間が増えることや、申告時の相続税額が高額になるなどのデメリットがあります。

こうしたデメリットを考えると、やはり遺産分割協議は10カ月以内に行い、それぞれの相続人が確定した相続税を申告・納税するのがおすすめです。

【3年】で相続登記(不動産の名義変更)の期限が来てしまうから

不動産を相続した場合、不動産の名義を故人から相続した人に変える「相続登記」が必要となります。以前は相続登記に期限はありませんでしたが、民法が改正され、2024年4月1日施行分から「3年以内の相続登記が義務化」されることになりました。

義務化された後は、不動産取得を知った日から3年以内に相続登記しなければならず、しない場合は罰則(10万円以下の過料)の対象となり得ます。

相続登記の期限までに遺産分割協議がまとまっていない場合、相続登記の代わりに「相続人申告登記」をすれば、一時的に相続登記の申請義務を履行したとみなされます。

相続人申告登記とは、遺産分割がまとまらないケースでの登記手続きの負担を軽減する制度です。相続登記の申請期限内(3年以内)に法務局に申し出ることで、相続登記の申請義務を果たしたとみなされます。

「相続人申告登記」をした後は、遺産分割協議が成立してから3年以内に相続登記する必要があります。

このように、3年以内に遺産分割がまとまらない場合、相続人申告登記をする手間が発生します。さらにその後、相続登記を行う必要もあり、費用も手間もかかることになります。そのため、できれば3年以内に遺産分割協議をまとめることをおすすめします。

【5年か10年】で預金・株式の権利が消滅する可能性があるから

遺産分割協議に期限はありませんが、5年や10年のあいだ遺産分割しないままでいると、預金や株式に関する権利が消滅してしまう可能性があるため注意が必要です。

相続財産に預金がある場合銀行に預金の払い戻しを請求する権利(債権)の消滅時効は5年/10年で完成する(民法166条1項)
相続財産に株式がある場合株主に対する通知が5年間にわたって届かないなどの条件が揃うと、所在不明の株式として売却される可能性がある

❶【5年または10年】で預金の払い戻しができなくなる可能性がある

相続財産に銀行預金が含まれる場合の銀行預金の払い戻しを請求する権利は、法律上「債権」に含まれます。債権の消滅時効は、「債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき」となっています(民法166条1項1号)。預金の存在を知らない場合も「債権者が権利を行使できる時から10年が経過したとき」に消滅時効が完成します(同2号)。つまり、法律上、預金を払い戻しできなくなる可能性があります。

実務上は、5年を過ぎても払い戻しに応じてくれることも多くあります。しかし、払い戻しを拒絶することが法的に可能であることは事実です。

❷株式に関する権利は【5年】で消滅する

相続財産に株式が含まれる場合で遺産分割協議が進まない場合、株主の名義変更を行わず放置されることがあります。このようなケースでは、5年で株主でなくなってしまう可能性があります

なぜならば、株主への通知・催告が5年以上継続して到達せず、かつ5年間継続して配当を受領しなかった場合、発行会社はその株式を競売や任意売却できるからです。

株主の権利を失わないためには、早い段階で遺産分割協議を行い、株主の名義をしっかり変更することで、通知や催告、配当を受け取れるようにしておきましょう。

【10年】で特別受益・寄与分の主張ができなくなるから

遺産分割協議に期限はありませんが、今後施行される民法改正により、相続開始後10年を超えた特別受益や寄与分は主張できなくなります特別受益や寄与分を主張したいなら、10年以内に遺産分割協議を終わらせましょう。

※特別受益と寄与分が10年に制限されるのは、2023年4月1日から施行される改正民法からとなります。2023年4月1日以前に発生した相続にも適用されるので注意しましょう。ただし、施行日から5年以内にその期限を迎える場合には猶予期間があり、施行日から5年以内は特別受益も寄与分も主張できるとされています。

「特別受益」とは、一部の相続人だけが故人から受け取った財産のことです。特別受益がある場合、その分を相続財産に反映させることで相続人間の不公平を無くすことができます。例えば、特定の相続人だけが住宅購入資金を生前贈与してもらっていた場合、その分を考慮して相続分を計算します。

特別受益とは?該当するケース10例と主張する流れ、計算方法を解説

一方、「寄与分」とは、被相続人(亡くなった方)の財産維持や増加に貢献した人が、その度合いに応じて通常の相続分に加えて受け取れる遺産のことをいいます。例えば、特定の相続人だけが故人の特別な介護をしていた場合に、他の相続人より多めに遺産を受け取ることができる場合があります。

寄与分とは?わかりやすく解説|認められる例・認められない例

これまでのルールでは、遺産分割において「特別受益」や「寄与分」の期間制限はありませんでした。しかし、2023年4月1日から施行される改正民法により、相続開始後(=被相続人がなくなってから)10年を経過すると、特別受益と寄与分の主張ができなくなります

特別受益と寄与分の主張ができなくなってしまった場合、裁判所は法定相続分または指定相続分による分割しか認めないことになっています。

そのため、特別受益と寄与分を考慮した遺産分割を行いたい場合は、相続開始後10年を迎える前に遺産分割協議を終わらせましょう。

その他さまざまな期限があるから

上記で解説した内容以外にも、以下のようなさまざまな時効があります。

死亡一時金を受け取る権利の時効:2年亡くなった方が国民年金の第1号被保険者だった場合に受け取れる「死亡一時金」は、被保険者が死亡した翌日から2年で時効となり受け取れなくなります。
生命保険の受け取り請求権の時効:3年亡くなった方が生命保険に入っていた場合に受け取れる死亡保険金の請求権は、3年で時効となります(保険法第95条)。
共同相続人による遺産取得の時効:10年または20年特定の相続人が遺産を占有し続けている場合、占有を始めてから10年または20年が経過すると「取得時効」が成立し、所有権が与えられてしまう場合があります。

「死亡一時金や生命保険を受け取れなかった」「遺産を占有されてしまった」ということにならないよう、遺産分割協議はなるべく早く行いましょう。

遺産分割協議の進め方(4ステップ)

ここまでで解説した通り、遺産分割協議はなるべく早くに進めるべきです。しかし「遺産分割協議はどうやって進めるの?」という方も多いのではないでしょうか。

遺産分割協議は、以下のように進めましょう。

法定相続人と相続分(割合)を確定する

相続が発生したらまず、誰に相続できる権利があるかを確定しましょう。以下のチャートを辿ると、簡単に「誰が法定相続人か」「相続分の割合は何分の何か」を確認できます。

遺産の相続割合が分かる!図解・シミュレーション計算例をケースごとに解説

なお、遺産分割協議には法定相続人全員の参加が必要となります。戸籍を取得して相続人調査を行い、漏れが無いように気を付けましょう。

【実践的】相続人調査の進め方|5つのステップで分かりやすく解説

相続財産調査を行う

次に、相続財産(亡くなった方の遺産)を確定しましょう。そのために必要なのが「相続財産調査」です。

進め方相続財産の手がかりを探して死亡時の財産額を確認する
方法自分で行う/専門家に依頼する
費用の目安自分で行う場合:数千円~数万円
専門家に依頼する場合:約10万円~30万円
期間の目安1~2カ月

正しく相続税を申告するため、そして相続放棄するか判断するためにも、しっかりと相続財産調査を行いましょう。

相続財産を確定したら、財産目録(財産の一覧表)を作っておくと、遺産分割協議をスムーズに進めることができます。

相続人全員で遺産分割協議書を作成する

相続人と相続財産を確定できたら、相続人全員で遺産分割について話し合いましょう。法定相続分をベースに決めるのが一般的ですが、全員が合意すれば法定相続分と異なる割合で相続しても構いません。

例えば、「土地Aと住宅Bは配偶者が相続し、土地Cと現金の3分の1を長男が、現金の3分の2を次男が相続する」などと自由に内容を決めることが可能です。

全員の合意を得られたら、遺産分割協議書という書面を作成し、相続人全員の署名・捺印を行います。なお、遺産分割協議書には相続人全員の印鑑登録証明書を添付する必要があります。

話し合いで合意できない場合は遺産分割調停に進む

相続人同士で遺産の分け方の合意が得られず揉める場合は、遺産分割調停で解決する必要があります。

遺産分割調停では、中立な立場である調停委員が間に入り、遺産分割の妥協点を見出していきます。調停でも合意が得られない場合は、審判に移行し、遺産分割が決着します。

遺産分割調停とは|流れや注意点&データで分かる調停の実態

遺産分割調停には時間と手間がかかります。揉めそうな場合は早い段階で弁護士に相談し、話し合いに参加してもらうとスムーズに遺産分割協議を進めることができるでしょう。

まとめ

この記事では、遺産分割協議の期限について解説してきました。

本文でも解説した通り、遺産分割協議そのものに期限はなく、いつまでにやらなければ遺産を受け取れなくなるということはありません。

しかし、以下のような「別の期限や消滅時効」があるため、できるだけ早くに遺産分割協議をした方が良いと言わざるを得ません。

損せずに遺産を受け取りたい方は、他の相続人や包括受遺者(遺言がある場合)に声をかけ、できるだけ早くに協議を終わらせましょう。

また、納得していない相続人がいるなど、遺産分割協議が揉めそうな場合は、できれば早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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