法定相続分・遺留分の違いとは?権利者や割合をわかりやすく図解

法定相続分と遺留分の違い
この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

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「法定相続分」や「遺留分」は、相続の当事者となったらかならず把握しておきたい重要な概念です。

法定相続分遺言で相続分が指定されていない場合に適用される、法律の規定によって定められた、法定相続人が相続できる割合。
遺留分どんな遺言があったとしても、一定の相続人にかならず残しておかなければならないとされる、一定の割合。

ちらも遺産相続で取得できる財産の割合分を示すもので、受け取る権利を持つ人は、以下のとおり違います。

この記事では、法定相続分・遺留分の基礎知識を解説したうえで、以下3つの立場で留意すべきポイントをお伝えします。

  • 自分が「法定相続人・遺留分権利者」の場合
  • 自分が「遺言で指定された相続人・受遺者(遺贈を受ける人)」の場合
  • 自分が「遺言書の作成者」の場合

それぞれの立場で、トラブルなくスムーズに遺産相続を進めるための「法定相続分・遺留分」の知識を、本記事からお持ち帰りください。

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目次

法定相続分・遺留分の基礎知識

まず、法定相続分と遺留分の基礎知識から見ていきましょう。

法定相続分/遺留分の大まかな違い

冒頭でも触れたとおり、法定相続分と遺留分の大まかな違いをお伝えすると、以下のとおりとなります。

法定相続分遺言で相続分が指定されていない場合に適用される、法律の規定によって定められた、法定相続人が相続できる割合。
遺留分どんな遺言があったとしても、一定の相続人にかならず残しておかなければならないとされる、一定の割合。

相続人やその相続財産について、遺言で指定されていない場合は、基本的に「法定相続分」の規定に沿って、相続分が決まります。

一方、どんな遺言があったとしても、「遺留分」で定められた割合は、最低限の取り分として守られます。

遺留分の仕組みがなかったら?

理解を深めるために、「遺留分」の仕組みがなかったらどうなるか、考えてみましょう。

たとえば、40歳の働き盛りの夫が、妻と未就学児の子3人を残して、突然、亡くなったとします。

通常なら、今まで生活費として使っていた夫の銀行口座にある預貯金や、家族が暮らしてきた夫名義のマイホームを相続し、残された妻と子は生活を立て直そうとするでしょう。

ところが、夫が書いた遺言書が見つかり、「私の財産のすべてを、母校に遺贈する」と書いてあったら、どうでしょうか。

妻と子が、困窮することは、想像に難くありません。

相続制度の趣旨に照らして定められた「遺留分」

そもそも相続制度の考え方のベースには、亡くなった人の近親者に遺産を残そうとする趣旨があります。

その趣旨に照らせば、妻や子に財産が一切残らないような相続は、望ましくありません。

このような遺族の生活の保障のほか、遺産の公平な分配や取引の安全への配慮も踏まえて、「遺留分」の制度があるのです。

相続する権利を持つ人の範囲と順位

さて、ここからは法定相続分・遺留分の割合の話に移りたいのですが、必要な前知識として、

「そもそも、誰に相続する権利があるのか?」

を把握しておく必要があります。

法定相続分、遺留分の順に見ていきましょう。

法定相続分:法定相続人

まず法定相続分を持っている者は、「法定相続人」です。民法では、法定相続人について、その範囲と優先順位が定められています。

 順位
配偶者夫、妻常に相続人となる
直系卑属子、孫など第1順位
直系尊属父母、祖父母など第2順位
傍系血族兄弟姉妹、甥姪など第3順位

法定相続人は、配偶者を除いて、全員が血のつながっている人です。たとえば、配偶者の親(義父・義母)や兄弟姉妹の配偶者などは、含まれません。

相続順位について、より詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺留分:遺留分権利者

次に、遺留分を持っている者のことを「遺留分権利者」といいます。遺留分権利者は、前述の法定相続人から兄弟姉妹を除いた人です。

すなわち、配偶者、直系卑属、直系尊属となります。

法定相続人と遺留分権利者の違いは、傍系血族(兄弟姉妹、甥姪など)が含まれるか否かです。

傍系血族は、遺留分権利者ではないことに留意しましょう。

法定相続分・遺留分の割合

続いて、法定相続分・遺留分の具体的な割合について、解説します。

法定相続分の割合

法定相続分の割合が重要となるのは、法定相続人が複数いる場合です。

「配偶者がいるか?どの順位の法定相続人か?」によって、大きく3パターンがあります。

(1)【配偶者】および【子】

法定相続分は、【配偶者:2分の1】【子:2分の1】となります。

子が複数いる場合は、合計で2分の1です(例:2人いる場合は1人あたり4分の1)。

※注:ここではわかりやすく【直系卑属=子】として表記しています(以下同)。

(2)【配偶者】および【父母】

法定相続分は、【配偶者:3分の2】【父母:3分の1】となります。

父母2人がいる場合は、合計で3分の1です(1人あたり6分の1)。

※注:ここではわかりやすく【直系尊属=父母】として表記しています(以下同)。

(3)【配偶者】および【兄弟姉妹】

【配偶者:4分の3】【兄弟姉妹:4分の1】となります。

兄弟姉妹が複数いる場合は、合計で4分の1です(例:2人いる場合は1人あたり8分の1)。

法律の条文

法律の条文がどうなっているか確認されたい方は、以下をご覧ください。

(法定相続分)

第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。

二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。

三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。

四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

出典:民法

遺留分の割合

続いて、遺留分の割合を見ていきましょう。

(1)【配偶者】のみ

法定相続人が【配偶者】のみの場合は、配偶者の遺留分は2分の1となります。

別の言い方をすると、

どんな遺言書があったとしても、配偶者は遺産の半分を取得する権利を持つ

ということです。

(2)【子】のみ

法定相続人が【子】のみの場合は、子の遺留分は2分の1となります。

子が複数いる場合は、合計で2分の1です(例:2人いる場合は1人あたり4分の1)。

(3)【配偶者】および【子】

法定相続人が【配偶者】および【子】の場合は、配偶者の遺留分が4分の1、子の遺留分が4分の1となります。

子が複数いる場合は、合計で4分の1です(例:2人いる場合は1人あたり8分の1)。

(4)【父母】のみ

法定相続人が【父母】のみの場合は、父母の遺留分が3分の1となります。

父母2人がいる場合は、合計で3分の1です(1人あたり6分の1)。

(5)【配偶者】と【父母】

法定相続人が【配偶者】と【父母】の場合は、配偶者の遺留分が3分の1、父母の遺留分が6分の1となります。

父母2人がいる場合は、合計で6分の1です(1人あたり12分の1)。

法律の条文

法律の条文がどうなっているか確認されたい方は、以下をご覧ください。

(遺留分の帰属及びその割合)

第1042条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1

二 前号に掲げる場合以外の場合 2分の1

2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第900条及び第901条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

出典:民法

なお、遺留分割合についてはこちらの記事にて、より詳細に解説しています。

立場別に押さえたい法定相続分と遺留分のポイント

ここまで、法定相続分と遺留分の概要について、解説しましたが、立場によって留意点が異なります。

以下の3つの立場別に、重要なポイントをお伝えしましょう。

  • 自分が「法定相続人・遺留分権利者」の場合
  • 自分が「遺言で指定された相続人・受遺者(遺贈を受ける人)」の場合
  • 自分が「遺言書の作成者」の場合

自分が「法定相続人・遺留分権利者」の場合

まず、親族が亡くなって、自分が「法定相続人・遺留分権利者」の立場にある場合のポイントをお伝えします。

遺言書がなければ「法定相続分」で相続するのが基本

遺言書がない場合には、「法定相続分」で相続するのが原則です。

最も不平等感が少なく、揉めにくい方法といえるでしょう。

遺言書がある場合は「遺留分」を確保する

遺言書は、法定相続分に優先し、遺言書がある場合には故人の意思として尊重されます。

しかし、遺言書の内容に納得できない場合は、「遺留分」が侵害されていないか、確認しましょう。

遺留分の計算はこちらの記事をご確認ください。

仮に遺留分を侵害されていても、請求しなければ、遺留分は確保できないので、注意が必要です。

遺留分は法律で守られている取り分ではありますが、自動的に取得できるものではありません。

「遺留分侵害額請求」を行う必要があります。

▼ 遺留分侵害額請求とは?

被相続人(亡くなった人)が贈与や遺贈をしたために、相続する財産の額が遺留分を下回ることになった場合、その不足の部分を、贈与や遺贈を受けた人に対して支払い請求する手続き。

注意したいのは、遺留分侵害額請求権には時効があることです。

▼ 遺留分侵害額請求権の時効(民法1048条)

  • 遺留分権利者が、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間
  • 相続開始のときから10年間

詳しくは以下の記事を参照のうえ、時効になる前に適切に対応しましょう。

自分が「遺言で指定された相続人・受遺者(遺贈を受ける人)」の場合

次に、自分が「遺言で指定された相続人・受遺者(遺贈を受ける人)」の立場である、という方向けのアドバイスです。

遺留分を侵害しないようにする

トラブルを避けるためには、相続あるいは遺贈の際に自分が他者の遺留分を侵害しないよう、注意しておきたいところです。

故人に遺留分権利者(配偶者、子、父母など)がいなければ問題ありませんが、遺留分権利者がいる場合には、後にトラブルになるリスクがあります。

遺留分を侵害した場合に起きること

他者の遺留分も含めて、自分が相続や贈与・遺贈を受けた場合には、時効が成立するまでの間、遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

先ほど、「遺言書がある場合は「遺留分」を確保する」で述べた内容と重複しますが、遺留分侵害額請求権の時効は、以下のとおりです。

▼ 遺留分侵害額請求権の時効(民法1048条)

  • 遺留分権利者が、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年間
  • 相続開始のときから10年間

遺留分侵害額請求を受けた場合には、侵害した遺留分額を現金で支払わなければなりません

遺留分を請求された場合の対策については、こちらの記事にて解説しています。

自分が「遺言書の作成者」の場合

最後に、自分が「遺言書の作成者」の場合に留意すべきポイントを見ていきましょう。

「法定相続分」「遺留分」について知識を持つ

法定相続分や遺留分に関して知識がない状態で書いた遺言書は、残された人たちの不公平感や争いの火種となり、トラブルや不仲を引き起こすリスクがあります。

遺言書を作る前に、知識をつけることが大切です。

本記事では、法定相続分・遺留分について基本的な知識をお伝えしてきました。他にも、以下の記事で詳しく解説しています。

ご自身で学ぶことに加えて、弁護士などの専門家にアドバイスを得て、遺言書を作成することをおすすめします。それぞれのケースに合う、個別の助言が必要な場合があるためです。

遺留分を侵害する遺言書を作るときの対策

法定相続分や遺留分のことは承知のうえで、

「それでもなお、遺留分の侵害が起きる遺言書を作成したい」

と希望される方もいるかもしれません。

その場合には、以下8つの対策が考えられます。

  1. 遺言書の「付言事項」で相続人に想いを伝える
  2. 生前に相続人と話し合って納得してもらう
  3. 相続させたくない相続人を「廃除」する
  4. 遺留分計算の対象にならない生命保険を活用する
  5. 残したい人には早めに生前贈与しておく
  6. 相続人を増やして遺留分割合を少なくする
  7. 生前に「遺留分放棄」させる
  8. 遺言執行者に弁護士や司法書士を選任する

詳しくはこちらの記事にて解説していますので、参考にしてみてください。

まとめ

本記事では「法定相続分と遺留分」をテーマに解説しました。要点を簡単にまとめておきましょう。

法定相続分遺言で相続分が指定されていない場合に適用される、法律の規定によって定められた、法定相続人が相続できる割合。
遺留分どんな遺言があったとしても、一定の相続人にかならず残しておかなければならないとされる、一定の割合。

それぞれの立場別に押さえたいポイントは、以下のとおりです。

法定相続人・遺留分権利者遺言書がなければ「法定相続分」で相続するのが基本遺言書がある場合は「遺留分」を確保する遺留分を侵害された場合は「遺留分侵害額請求」をする(時効に注意)
遺言で指定された相続人・受遺者遺留分を侵害しないように注意する遺留分を侵害した場合には、遺留分侵害額請求を受ける可能性を考慮して準備が必要
遺言書の作成者法定相続分・遺留分の知識を持って遺言書を作成することが大切遺留分を侵害する遺言書を作るときには相応の対策を講じる必要がある

法定相続分、遺留分について知っておくと、トラブルを未然に防いだり、あるいは自分の権利を主張したりする際に役立ちます。

他に知っておくとよい知識として、「寄与分」と「特別受益」があります。

寄与分は、介護などの特別な貢献を考慮して相続分を増やすもの、特別受益は遺贈や贈与を相続分から控除するものです。

続けて以下の記事も、ご確認ください。

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