
弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
第一東京弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。


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同志社大学法科大学院客員教授
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「法定相続分」や「遺留分」は、相続の当事者となったらかならず把握しておきたい重要な概念です。
| 法定相続分 | 遺言で相続分が指定されていない場合に適用される、法律の規定によって定められた、法定相続人が相続できる割合。 |
| 遺留分 | どんな遺言があったとしても、一定の相続人にかならず残しておかなければならないとされる、一定の割合。 |
どちらも遺産相続で取得できる財産の割合分を示すもので、受け取る権利を持つ人は、以下のとおり違います。

この記事では、法定相続分・遺留分の基礎知識を解説したうえで、以下3つの立場で留意すべきポイントをお伝えします。
それぞれの立場で、トラブルなくスムーズに遺産相続を進めるための「法定相続分・遺留分」の知識を、本記事からお持ち帰りください。


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遺言が残されていない場合、亡くなった人の財産(遺産)を誰がどれだけ相続するかは、民法により定められています。
この民法で定められた相続人を法定相続人と呼び、法定相続人に認められる遺産の取得割合を法定相続分と呼ぶのです。
遺産をどのように分けるかは、この法定相続分を目安に、相続人全員で話し合って決めていきます。
ただし、法定相続分はあくまで目安であり、相続人全員の同意があれば、異なる割合で分けても問題ありません。

遺留分(いりゅうぶん)とは、一部の法定相続人が、遺産を最低限もらえる権利とその取り分のことです(民法第1042条)。
遺言や生前贈与により、相続できる財産が遺留分に満たない場合、遺留分に相当する最低限の金銭を請求することができます(民法第1046条)。

前章・前々章で述べたとおり、法定相続分は遺言がない場合に、遺留分は不公平な遺言・贈与があった場合に適用される割合であり、趣旨は大きく異なります。
そのほかの法定相続分と遺留分の違いについて、下記一覧にまとめました。
【法定相続分と遺留分の違い】
| 法定相続分 | 遺留分 | |
| 意味 | 民法で定められた、遺産分割の目安の割合のこと | 一部の法定相続人が最低限取得できる遺産の割合のこと |
| 権利者の範囲と順位 | 配偶者と子ども・孫 (子ども・孫がいない場合は父母・祖父母、次に兄弟姉妹の順) | 兄弟姉妹以外の法定相続人 |
| 割合 | 法定相続人の続柄と人数により異なる | 遺産総額全体の1/2 (父母のみの場合は1/3) |
| 適用場面 | 遺言がない場合 | 不公平な遺言・贈与があった場合 |
| 強制力 | なし(目安に過ぎない) | あり(法的に保障されている) |
| 時効 | なし | 相続及び遺留分侵害を知ってから1年以内に請求の意思表示が必要 |
| 権利行使方法 | 遺産分割協議 (協議がまとまらない場合は調停・審判) | 遺留分侵害額請求 |
上記6項目のうち、「権利者の範囲と順位」と「割合」について、重要部分でありかつ混同しやすいため、次章以降で詳しく見ていきましょう。

さて、ここからは法定相続分・遺留分の割合の話に移りたいのですが、必要な前知識として、
「そもそも、誰に相続する権利があるのか?」
を把握しておく必要があります。
法定相続分、遺留分の順に見ていきましょう。
まず法定相続分を持っている者は、「法定相続人」です。民法では、法定相続人について、その範囲と優先順位が定められています。

| 例 | 順位 | |
| 配偶者 | 夫、妻 | 常に相続人となる |
| 直系卑属 | 子、孫など | 第1順位 |
| 直系尊属 | 父母、祖父母など | 第2順位 |
| 傍系血族 | 兄弟姉妹、甥姪など | 第3順位 |
法定相続人は、配偶者を除いて、全員が血のつながっている人です。たとえば、配偶者の親(義父・義母)や兄弟姉妹の配偶者などは、含まれません。
相続順位について、より詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

次に、遺留分を持っている者のことを「遺留分権利者」といいます。遺留分権利者は、前述の法定相続人から兄弟姉妹を除いた人です。
すなわち、配偶者、直系卑属、直系尊属となります。

法定相続人と遺留分権利者の違いは、傍系血族(兄弟姉妹、甥姪など)が含まれるか否かです。
傍系血族は、遺留分権利者ではないことに留意しましょう。


続いて、法定相続分・遺留分の具体的な割合について、解説します。
法定相続分の割合が重要となるのは、法定相続人が複数いる場合です。
「配偶者がいるか?どの順位の法定相続人か?」によって、大きく3パターンがあります。
法定相続分は、【配偶者:2分の1】【子:2分の1】となります。

子が複数いる場合は、合計で2分の1です(例:2人いる場合は1人あたり4分の1)。
※注:ここではわかりやすく【直系卑属=子】として表記しています(以下同)。

法定相続分は、【配偶者:3分の2】【父母:3分の1】となります。
父母2人がいる場合は、合計で3分の1です(1人あたり6分の1)。
※注:ここではわかりやすく【直系尊属=父母】として表記しています(以下同)。

【配偶者:4分の3】【兄弟姉妹:4分の1】となります。
兄弟姉妹が複数いる場合は、合計で4分の1です(例:2人いる場合は1人あたり8分の1)。
法律の条文がどうなっているか確認されたい方は、以下をご覧ください。
| (法定相続分) 第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。 二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。 三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。 出典:民法 |
続いて、遺留分の割合を見ていきましょう。
法定相続人が【配偶者】のみの場合は、配偶者の遺留分は2分の1となります。

別の言い方をすると、
「どんな遺言書があったとしても、配偶者は遺産の半分を取得する権利を持つ」
ということです。
法定相続人が【子】のみの場合は、子の遺留分は2分の1となります。

子が複数いる場合は、合計で2分の1です(例:2人いる場合は1人あたり4分の1)。
法定相続人が【配偶者】および【子】の場合は、配偶者の遺留分が4分の1、子の遺留分が4分の1となります。

子が複数いる場合は、合計で4分の1です(例:2人いる場合は1人あたり8分の1)。
法定相続人が【父母】のみの場合は、父母の遺留分が3分の1となります。

父母2人がいる場合は、合計で3分の1です(1人あたり6分の1)。
法定相続人が【配偶者】と【父母】の場合は、配偶者の遺留分が3分の1、父母の遺留分が6分の1となります。

父母2人がいる場合は、合計で6分の1です(1人あたり12分の1)。
法律の条文がどうなっているか確認されたい方は、以下をご覧ください。
| (遺留分の帰属及びその割合) 第1042条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。 一 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1 二 前号に掲げる場合以外の場合 2分の1 2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第900条及び第901条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。 出典:民法 |
なお、遺留分割合についてはこちらの記事にて、より詳細に解説しています。

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ここまで、法定相続分と遺留分の概要について、解説しましたが、立場によって留意点が異なります。
以下の3つの立場別に、重要なポイントをお伝えしましょう。
まず、親族が亡くなって、自分が「法定相続人・遺留分権利者」の立場にある場合のポイントをお伝えします。
遺言書がない場合には、「法定相続分」で相続するのが原則です。
最も不平等感が少なく、揉めにくい方法といえるでしょう。
遺言書は、法定相続分に優先し、遺言書がある場合には故人の意思として尊重されます。
しかし、遺言書の内容に納得できない場合は、「遺留分」が侵害されていないか、確認しましょう。
遺留分の計算はこちらの記事をご確認ください。

仮に遺留分を侵害されていても、請求しなければ、遺留分は確保できないので、注意が必要です。
遺留分は法律で守られている取り分ではありますが、自動的に取得できるものではありません。
「遺留分侵害額請求」を行う必要があります。
▼ 遺留分侵害額請求とは?
被相続人(亡くなった人)が贈与や遺贈をしたために、相続する財産の額が遺留分を下回ることになった場合、その不足の部分を、贈与や遺贈を受けた人に対して支払い請求する手続き。
注意したいのは、遺留分侵害額請求権には時効があることです。
▼ 遺留分侵害額請求権の時効(民法1048条)
詳しくは以下の記事を参照のうえ、時効になる前に適切に対応しましょう。



次に、自分が「遺言で指定された相続人・受遺者(遺贈を受ける人)」の立場である、という方向けのアドバイスです。
トラブルを避けるためには、相続あるいは遺贈の際に自分が他者の遺留分を侵害しないよう、注意しておきたいところです。
故人に遺留分権利者(配偶者、子、父母など)がいなければ問題ありませんが、遺留分権利者がいる場合には、後にトラブルになるリスクがあります。
他者の遺留分も含めて、自分が相続や贈与・遺贈を受けた場合には、時効が成立するまでの間、遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
先ほど、「遺言書がある場合は「遺留分」を確保する」で述べた内容と重複しますが、遺留分侵害額請求権の時効は、以下のとおりです。
▼ 遺留分侵害額請求権の時効(民法1048条)
遺留分侵害額請求を受けた場合には、侵害した遺留分額を現金で支払わなければなりません。
遺留分を請求された場合の対策については、こちらの記事にて解説しています。

最後に、自分が「遺言書の作成者」の場合に留意すべきポイントを見ていきましょう。
法定相続分や遺留分に関して知識がない状態で書いた遺言書は、残された人たちの不公平感や争いの火種となり、トラブルや不仲を引き起こすリスクがあります。
遺言書を作る前に、知識をつけることが大切です。
本記事では、法定相続分・遺留分について基本的な知識をお伝えしてきました。他にも、以下の記事で詳しく解説しています。



ご自身で学ぶことに加えて、弁護士などの専門家にアドバイスを得て、遺言書を作成することをおすすめします。それぞれのケースに合う、個別の助言が必要な場合があるためです。
法定相続分や遺留分のことは承知のうえで、
「それでもなお、遺留分の侵害が起きる遺言書を作成したい」
と希望される方もいるかもしれません。
その場合には、以下8つの対策が考えられます。
詳しくはこちらの記事にて解説していますので、参考にしてみてください。

本記事では「法定相続分と遺留分」をテーマに解説しました。要点を簡単にまとめておきましょう。
| 法定相続分 | 遺言で相続分が指定されていない場合に適用される、法律の規定によって定められた、法定相続人が相続できる割合。 |
| 遺留分 | どんな遺言があったとしても、一定の相続人にかならず残しておかなければならないとされる、一定の割合。 |


それぞれの立場別に押さえたいポイントは、以下のとおりです。
| 法定相続人・遺留分権利者 | 遺言書がなければ「法定相続分」で相続するのが基本遺言書がある場合は「遺留分」を確保する遺留分を侵害された場合は「遺留分侵害額請求」をする(時効に注意) |
| 遺言で指定された相続人・受遺者 | 遺留分を侵害しないように注意する遺留分を侵害した場合には、遺留分侵害額請求を受ける可能性を考慮して準備が必要 |
| 遺言書の作成者 | 法定相続分・遺留分の知識を持って遺言書を作成することが大切遺留分を侵害する遺言書を作るときには相応の対策を講じる必要がある |
法定相続分、遺留分について知っておくと、トラブルを未然に防いだり、あるいは自分の権利を主張したりする際に役立ちます。
他に知っておくとよい知識として、「寄与分」と「特別受益」があります。
寄与分は、介護などの特別な貢献を考慮して相続分を増やすもの、特別受益は遺贈や贈与を相続分から控除するものです。
続けて以下の記事も、ご確認ください。


