介護で損しない!親の介護をしない兄弟を説得する5つの方法

親の介護をしない兄弟と相続について
この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

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「兄弟が親の介護をしてくれない。自分だけでは負担が大き過ぎるので、なんとかして協力してほしい。」

「兄弟が親の介護をしなくて自分だけが損をしている。不公平さに納得できない。」

親の介護が始まったものの、兄弟が何かと理由をつけて介護を押し付けてくるという状況はよくあります。

親の介護は兄弟全員の義務ですから、あなただけが抱え込む状況は理不尽です。どうにかして兄弟に協力してもらいたいものです。

兄弟に親の介護をしてもらうためには、次の5つの方法を実践してみてください。

これらの方法を試して、兄弟で力を合わせながら介護を乗り切るようにしましょう。
しかし、あらゆる手を尽くしても兄弟が協力してくれない場合もあります。
その場合「遺産を多めにもらうことで納得しよう」と考えているなら注意が必要です。

親が亡くなった場合、介護していた子どもは他の兄弟や相続人に対して「寄与分(亡くなった人の財産維持・増加に貢献した相続人が、相続分に加えて受け取れる遺産のこと)」を主張できますが、それは必ずしも認められるとは限りません。

寄与分は認めてもらうためのハードルが高く、もし認めてもらっても受け取れる額は期待していた額より大幅に少なくなることもよくあります。だからこそ、生前の介護は可能な限り兄弟姉妹で分担し、1人に負担が集中しないようにした方が、後のトラブルを防止することができるのです。

もし、「介護した分、遺産を多めに相続したい」と考えるなら親の生前に対策を行っておくことが重要です。

そこで、本記事では「親の介護をしない兄弟」について次のように内容をまとめました。

本記事の内容
1.親の介護をしない兄弟|まずは説得、ダメなら外部に頼るべき
2.兄弟に親の介護に参加してもらうための5つの方法
3.兄弟を説得できない場合|相続で不公平を解消する
4.兄弟を説得できない&介護費用がない|扶養請求調停を申し立てる

この記事を読めば、兄弟に親の介護に参加してもらう具体的な方法を知り、実践できるようになります。

それでも協力を得られなかった場合も想定して、介護の負担を軽減する方法と兄弟間の不公平さを解消する方法も知ることができます

是非最後までご覧ください。

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目次

親の介護をしない兄弟|まずは説得、ダメなら外部に頼るべき

兄弟が親の介護をしてくれない場合、まずは粘り強く協力を求めて続けることが大切です。

親を扶養する義務は兄弟全員平等にありますそれは民法でも下記のとおり明確に定められています。

第877条(扶養義務者)
1 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

第878条(扶養の順位)
 扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。

第879条(扶養の程度又は方法)
 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

民法 | e-Gov法令検索

したがって、「あなたは長男だから」「あなたは同居しているから」などという言い分は、介護を他の兄弟に押し付ける理由にはならないのです。

とはいえ扶養「義務」はあるものの「強制力」はないため、「遠方に住んでいるから」「仕事が忙しいから」「生活に余裕がないから」などと言い訳を並べて介護から逃げようとする人は少なくありません。

そうして結局押し付けられるかたちで介護が一人の子どもに集中してしまう状況が作り出されてしまうのです。

しかし、自分一人で介護を背負うにはあまりに負担が大きく、介護疲れで心身の健康を損なう恐れがあります。また、それぞれ事情を抱えているはずなのに、介護から逃れようとする兄弟がいれば「ずるい」と感じてしまいますよね。

無理のない介護を続け、自身の生活や心身の健康を守るためにも、何とか兄弟に協力してもらいましょう

次の「兄弟に親の介護に参加してもらうための5つの方法」では兄弟に親の介護に参加してもらう方法を紹介していますので、是非取り組んでみてください。

それでも兄弟が協力してくれない場合、まずは介護の負担を軽減させる方法を考えていきましょう。

地域包括支援センターに相談すると、ケアマネージャーが適切な外部の介護サービスを紹介してくれます。それらを利用することで、心身に余裕が生まれるでしょう。

長く続く介護生活を無理なく続けるためには、とにかく協力者を得ることが大切です。

地域包括支援センターとは…
介護・医療・保健・福祉などの総合相談窓口で各市町村に設置。
◎地域包括支援センターとは…地域包括支援センターについて|厚生労働省
◎地域包括支援センターの探し方…インターネットで「地域名+地域包括支援センター」で検索

まずは介護体制を整え、兄弟に対しての不満は相続で解決することも検討しましょう。相続の対策については「兄弟を説得できない場合|相続で不公平を解消する」で紹介していきます。

なお、遺産どころか介護資金も足りない場合は、やはり兄弟の金銭的協力が不可欠になります。その場合は扶養請求調停を起こすという方法があります。詳細は兄弟を説得できない場合|相続で不公平を解消するで紹介していきます。

関連記事
寄与分とは?わかりやすく解説|認められる例・認められない例
【5つのタイプ別】寄与分の計算方法|わかりやすい解説と計算例

兄弟に親の介護に参加してもらうための5つの方法

まずは親の介護に何らかの形で参加してもらうよう兄弟と再度話し合ってみましょう。

ここでは兄弟に親の介護に参加してもらうための方法を5つ紹介していきます。

「すでに再三お願いしたけど断られた」という場合も、下記の中で試していない方法があれば実践してみてくださいね。

【兄弟に親の介護に参加してもらう方法】
1.介護の実態を「見える化」して状況を理解してもらう
2.介護を数日体験してもらって大変さを理解してもらう(在宅介護の場合)
3.親自身・ケアマネ・医者・親族から説得してもらう
4.役割分担を決めてできるところから参加してもらう
5.やってほしいことを具体的に、簡単なものから依頼する

流れとしては、まずは介護の現状を理解してもらい、少しずつできるところから参加してもらうかたちで進めていきましょう。

介護の実態を「見える化」して状況を理解してもらう

まずは兄弟に親の介護の現状を正しく認識してもらうことが大切です。

「介護が大変だから負担してほしい」といくら口で訴えたところで、普段介護に関わっていない人には大変度合いが伝わりません。

介護をしていない兄弟からすると、「食事と排泄の補助をしているだけでそこまで大変なのか?」と、大変さを具体的にイメージできていない可能性があります。

そこで、介護の実態を示す資料を見せるなどして、あなたにどれだけの負担がかかっているかを分かってもらいましょう。

介護に対する認識のギャップを埋めることで介護の苦労を理解してもらいやすくなります。

具体的には次のようなものを見せると効果的です。

【介護の実態を伝えるために有効なもの】
◎介護のスケジュール表
◎やっていることのリスト
◎介護サービスを利用した場合の費用
◎介護のための支出明細
◎親の様子を撮影した動画など

■介護のスケジュール表

月間・週間・1日のスケジュール表を作成して、実際にどれだけの時間を介護に費やしているか伝えましょう。1日のスケジュール表では、排泄補助や体位変換を行っている時間など、分刻みで細かく記載するとより効果的です。

■やっていることのリスト

介護で行っていることを細部までピックアップして全て書き出しましょう。薬の管理や口腔ケアなど細かな見えないタスクが山ほどあることに気づいてもらうことができます。

■介護サービスを利用した場合の費用

在宅介護を行っている場合、介護サービスを利用した場合にかかる費用を算出してみましょう。その額を見せることで、介護にかけている労力や時間を客観的に数値化することができます。

下表は国が定める介護報酬基準額です。

【介護報酬基準額】

要介護度日当
要介護14,020円
要介護25,840円
要介護35,840円
要介護46,670円
要介護57,500円

出典:介護報酬 |厚生労働省

もちろん介護のプロとの技術や知識の差は考慮する必要がありますが、実際に報酬に換算することでその報酬に値する働きを担っているのだと認識してもらいやすくなるでしょう。

■介護のための支出明細

自分が介護費用も負担している場合、介護にかかる費用を一覧や帳簿にまとめて見てもらいましょう。介護をしていない人は「何にそれほどお金がかかっているのか」疑問に思っている人も少なくありません。介護サービスの費用だけでなく、「オムツ代に月1万円かかっている」レシートを見せることで、介護費用の内訳を知り納得してもらいやすくなります

■親の様子を撮影した動画

例えば、親が認知症の場合、症状が進行していても、少しの時間会うだけではその深刻さが分かりにくいものです。騒ぎ立てる、暴言を吐くなどの様子を録画して見せることで、介護者の精神的負荷に気づいてもらうことができます。

介護を数日体験してもらって大変さを理解してもらう(在宅介護の場合)

話し合っても相手に前向きな姿勢が見られなかった場合、実際に介護を体験してもらうことも有効です。

介護は実際に体験してみないと分からない部分が多くあります介護の大変さは口で訴えるより実際に体験してもらった方が理解してもらうのに効果的です。

例えば「どうしても外せない用事があるから」などと言って、数時間~半日程度、介護を代わってもらうところから始めてみましょう。そして徐々にお願いする時間を延ばしていきましょう。

これまで介護をしてこなかった人からすると、「数日でこんなに大変なのだから、毎日行うのはさぞ大変だろう」と考えを改め、介護についての理解を得ることが期待できるでしょう。

親自身・ケアマネ・医者・親族から説得してもらう

兄弟同士で話し合ってもこちらのお願いを聞き入れてもらえない場合、親自身やケアマネージャー、医者などの第三者から兄弟に協力するよう働きかけてもらうという方法も効果的です。

兄弟同士だと、同じ親の子どもという対等な立場から遠慮がなくなってしまい、関係性に甘えや力関係が働きやすい傾向にあります

自分で説得できないと思ったら、一人で悩まず周囲に協力を求めるようにしましょう具体的には下記の方達に相談してみてください。

【兄弟を説得するよう頼れる人物】
◎親自身
◎親族・近所の人など周囲の人々
◎ケアマネージャーや医者など外部の専門家

介護される親本人から直接依頼されると兄弟自身も断りにくくなります。特に、親に恩義や親孝行の気持ちを抱えているタイプに有効でしょう。

兄弟が見栄や世間体を重視するタイプなら、親族や近所の人など周りの人から話をしてもらう手もあります。

また、ケアマネージャーや医者など第三者から説得してもらうのもおすすめです。介護の専門家から諭されるとさすがに焦りや責任を感じて重い腰を上げる人も少なくありません。

役割分担を決めてできるところから参加してもらう

兄弟に協力を求めるときは、兄弟ができること・できないことを洗い出し、できるところから協力してもらうようにしましょう。

兄弟は介護をしない言い訳として、「仕事が忙しい」「遠方に住んでいる」など様々な事情を主張します。

しかし、仕事が忙しくても遠方に住んでいてもできることはあります。現場で介助を行うことだけが介護ではありません。精神面や金銭面で介護に参加するという方法もあります

どんな状況でも何かしらできることはあるので、きちんと役割分担を決めて負担を分散しましょう

【介護の役割分担】
◎介護実務(現場での親の世話)(平日・土日)
◎介護費用を負担してもらう
◎介護施設や関係各所との連絡係になる
◎介護施設入所にあたり保証人になる
◎買い出しを行う
◎家事をする
◎電話で親の話し相手になる
◎病院の付き添いをする
など

■遠方居住の兄弟や、仕事や育児で忙しい兄弟にできること

◎介護費用を負担してもらう
◎介護施設や関係各所との連絡係になる
◎介護施設入所にあたって保証人になる
◎電話で親の話し相手になる
◎メイン介護者の交代要員になる(メインで介護する人が不在のときに介護を交代する)

など

■経済的な余裕も時間もない兄弟にできること

◎介護施設や関係各所との連絡係になる
◎介護施設の保証人になる
◎電話で話し相手になる
◎買い出しを行う
◎家事をする
◎電話で親の話し相手になる
◎病院の付き添いをする
◎メイン介護者の交代要員になる(メインで介護する人が不在のときに介護を交代する)

など

やってほしいことを具体的に、簡単なものから依頼する

兄弟に介護を協力してもらいたい場合、まずは簡単なことから任せてみて徐々に慣れてもらうことも大切です。

介護をしていない兄弟は「具体的に何をしたらいいのか分からない」という人が多いでしょう。分からないと尚更介護に参加しづらく、ますます逃げ腰になってしまいます。

「介護に協力してほしい」と漠然と依頼するのではなく、「オムツを買ってきてほしい。メーカーは〇〇、パンツタイプMサイズで。」と具体的な指示を出すと相手も動きやすくなります。

オムツ交換は介護未経験者にはハードルが高いものです。まずは「オムツ買ってきて」から始めて、徐々にできることを増やしていってもらうようにしましょう。

兄弟を説得できない場合|相続で不公平を解消する

上記の方法を試しても兄弟を説得できない場合、介護は外部のサービスを頼るなどして乗り切れたとしても、兄弟に対する不満は残りますよね。

介護での不公平は親の遺産相続で解消することが考えられます。

もっとも、親から子への遺産相続において、兄弟は原則平等に分けることが法律で定められています。つまり、何も対策を行わなければ、兄弟間でどれだけ介護の貢献度に差があったとしても、遺産は平等に分けることになるのです。

そこで、介護した分だけ親の遺産を多く受け取りたいと思う場合は、相続に向けて次の対策を実践していくようにしましょう。最も効果的な方法から順に紹介していきます。

【介護した分遺産を多くもらうための方法】
1.遺言を書いてもらう(生前)
2.生命保険の受取人に指定してもらう(生前)
3.寄与分を主張する(死後)

なお、これらの方法は

◎親の財産が十分にある場合
◎介護サービスなどを利用して乗り越えられる場合

に有効なものです。当てはまらない場合は兄弟を説得できない場合|相続で不公平を解消するで紹介する方法を検討するようにしましょう。

遺言を書いてもらう(生前)

確実に遺産を多くもらいたいならば、遺言を書いてもらうのがベストな方法です。

遺言は法定相続よりも優先されるため、例えば「遺産を〇〇に譲る」と書かれていれば原則そのとおりに遺産分割することになります。

「介護の負担を考慮してほしい」と親に伝え、自身に多くの遺産を渡す旨の遺言を書いてもらうよう相談してみましょう。

そのようなことは親にはなかなか言いづらいと思われる方も多いでしょう。「遺産狙いなのか?」と思われたくない気持ちも分かります。

しかし、その後も気持ちよく介護を続けていくためにも勇気を出して話を切り出すべきです。「お金がほしいわけではなくて、気持ちの納めどころがほしい」「他の兄弟と揉めたくない」など、親が納得できるように工夫して伝えてみましょう。

その際、遺言作成のサポートをしてあげると親もとりかかりやすくなります。遺言作成に必要な資料を渡したり、公証役場への連絡をしたりしてあげましょう。

《遺言の作成方法》

自筆証書遺言の場合→3 自筆証書遺言書の様式

公正証書遺言の場合→1 遺言 | 日本公証人連合会(3公正証書遺言の作成)

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについて→Q2.公正証書遺言と自筆証書遺言には、どのような違いがありますか。 | 日本公証人連合会

【偏った内容の遺言は遺留分に注意!】
遺留分とは、法定相続人のうち配偶者・直系尊属(親など)・直系卑属(子など)に法律上保障されている最低限度の財産を指します。相続人の生活を保障するために設けられたものです。

例)
相続人が長男と次男の2人の場合…各相続人それぞれの遺留分は遺産全体の1/4
相続人が長男と次男と三男の3人の場合…各相続人それぞれの遺留分は遺産全体の1/6

遺言書のとおり遺産分割した結果、相続分が遺留分に満たなかった場合は他の相続人に対して遺留分侵害額を請求することができます遺言を作成してもらう際は遺留分を考慮してもらうようにしましょう

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生命保険の受取人に指定してもらう(生前)

親が加入している生命保険の死亡時の受取人を自身に変更してもらうのも有効な方法です。

生命保険金は遺産分割の対象にはならないため、遺産とは別に受け取ることができます

例えば次のケースを想定してみましょう。

死亡:父

相続人:長女・次女・三女の3人(長女が一人で父を介護)

遺産:現金3,000万円

生命保険金:500万円(受取人は長女)

この場合、3人が相続するのは現金3,000万円のみで、法定相続分どおりに分けるとそれぞれが1,000万円ずつ取得することになります。

しかし、父の生命保険の受取人になっている長女は総額《現金1,000万円+生命保険金500万円=1,500万円》を受け取ることができます。

このように生命保険は特定の人に財産を渡したいときに有効ですが、そもそも親が生命保険に加入していることが前提です。

加入していない場合、既に介護が必要な状態であることから、新規で加入することは難しいことが多いでしょう。

また、保険金の額は既に決まっており、自由に決めることができない点も注意が必要です。

寄与分を主張する(死後)

遺言作成や生命保険対策を行えずに親が亡くなってしまった場合、寄与分を主張するという方法があります。

寄与分とは…
介護などで被相続人の財産維持・増加に貢献した相続人がその貢献度に応じて相続分に加えて受け取れる遺産のこと。この制度により相続人間の公平を実現することができる。

しかし、寄与分はそう簡単に認められるものではありません。また、もし認められたとしても、受け取れる財産は期待する額より少ないことも多いでしょう。

寄与分が認められるハードルはかなり高いのです。

寄与分を認めてもらうには下記の要件を全て満たす必要があります。

【寄与分を認めてもらうための要件】
・寄与行為が相続開始前であること
特別な貢献であったこと
・寄与行為と被相続人の財産の維持・増加に因果関係があること
・それらを裏付ける証拠資料があること

「特別な貢献」は、被相続人との身分関係から通常期待される程度を超えている必要があり、「通院に付き添ってた」「排泄の補助だけをしていた」程度では認められないのが通常です。

もっとも、寄与分はあくまでも相続人同士の話し合いの中で決めていくものなので、上記要件を満たしていなくても他の相続人が認めてくれることもあるでしょう。

一方で話し合いがまとまらなければ調停・審判へと進んでいくことになります。その際はやはり上記要件がポイントです。

寄与分について詳しく知りたい場合はこちらの記事を参考にしてください。認めてもらいやすいケースや寄与分の金額についても解説しています。

【親の財産は取扱いに注意すべき|使い込みを疑われる?】
親の財産は介護している子どもが管理するケースが多いでしょう。自分一人で介護を担っている場合、他の兄弟は親の財産状況を知らないため、「親の財産は本当に親の介護に使われているのだろうか?介護者が使い込んでいるのではないか?」と疑念を持たれることがあります。介護しないどころか使い込みを疑われるなど憤りを感じますが、実際にこのようなトラブルが起きることは少なくありません。親の財産を適切に管理していたことを証明するためにも、かかった医療費・介護費用や食費などは領収書を保管しておくようにしましょう

兄弟を説得できない&介護費用がない場合|扶養請求調停を申し立てる

兄弟が介護の協力を拒み続ける場合、扶養請求調停を申し立てるという方法もあります。扶養請求調停で自身の主張が認められれば、兄弟に介護費用を負担してもらうことができます

この方法は

◎介護のための親の財産が十分にない場合
◎介護に他の兄弟の協力が必須な場合

に有効です。

まずは扶養請求調停とはどのようなものかを理解し、その後、調停の申立て方法について学んでいきましょう。

扶養請求調停とは

扶養請求調停とは、扶養の義務(費用の負担)について、調停委員を交えた話し合いで解決を目指す手続をいいます。

親の介護費用は親の財産でまかなうのが原則ですが、親に財産がない場合は扶養義務者(子ども)が負担せざるをえません。その介護費用を誰がどれだけ負担すべきかを決めていくのが本調停の目的です。(民法877・878・879条)

調停では調停委員が双方の言い分を交互に聞くかたちで進めていきます。その際、源泉徴収票や所得証明書などを見て双方の経済状況も確認します。

そして「〇〇さんは毎月2万円の費用を負担してはどうか」などと客観的な立場から解決案を提案します。兄弟同士が主張や妥協を繰り返しながら、最終的な落としどころを見つけてお互いが納得すれば調停成立です。

扶養請求調停の申立て方法

扶養請求調停を起こすための手続きは下表のとおりです。

【調停申立ての手続】

申請先相手の兄弟の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者同士が合意で決めた家庭裁判所
(裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所
必要書類・申立書(ダウンロード→扶養請求調停 | 裁判所
・申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
・相手方の戸籍謄本(全部事項証明書)
・扶養を要する者の戸籍謄本(全部事項証明書)
その他別途書類を求められることがあります。
費用・収入印紙1200円分
・連絡用の郵便切手

調停でも話し合いがまとまらなかった場合は自動的に審判に移行します。話し合いで解決を目指す調停とは異なり、審判は裁判官が決定を下し、申立人と相手方はその決定に従うことになります。

さらに詳しく知りたい場合は裁判所HPからご確認ください。

扶養請求調停 | 裁判所

まとめ

ここまで親の介護をしない兄弟への対応について解説してきました。

あらためて本文の内容を振り返りましょう。

まずは兄弟に親の介護に参加してもらうよう下記5つの方法を実践してみてください。

兄弟に親の介護に参加してもらうための5つの方法
1.介護の実態を「見える化」して状況を理解してもらう
2.介護を数日体験してもらって大変さを理解してもらう(在宅介護の場合)
3.親自身・ケアマネ・医者・親族から説得してもらう
4.役割分担を決めてできるところから参加してもらう
5.やってほしいことを具体的に、簡単なものから依頼する

上記の方法を実践しても兄弟の協力が得られない場合、介護は外部サービスの力を借りて乗り切るとして、兄弟に対する不公平さは遺産相続で解決しましょう。

介護した分だけ遺産を多く受け取りたいのであれば対策をとる必要があります。

介護した分遺産を多くもらうための方法
1.遺言書を書いてもらう(生前)
2.生命保険の受取人に指定してもらう(生前)
3.寄与分を主張する(死後)

上記は親の財産が十分にある場合に有効な方法です。

遺産どころか介護費用も足りない場合は扶養請求調停を申し立てることで、兄弟に介護費用を負担してもらうことができる可能性があります。

以上、本記事を参考にしていただければ幸いです。納得のいく解決をされることをお祈りしています。

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