弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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「遺産を独り占めしようとしている相続人から遺産を守りたい。」
「一人の相続人が独り占めしてしまった遺産を取り戻したい。」
もらえるはずの遺産が他の相続人に独り占めされてしまったら大変なことですよね。そんなこと許されるものなのでしょうか。
結論から言うと、原則他の相続人の同意なしに一人の相続人が遺産を独り占めすることはできません。遺産を独り占めすることは他の相続人の相続権を侵害することになるからです。
もし相続の開始後、遺産独り占めが疑われたら、遺産を守るためにすぐに次の行動を取る必要があります。
その上で、状況に応じて下記の対処法をとるようにしましょう。
独り占めされて遺産が使い込まれてしまうと取り戻すのは容易ではないため、気づいた時点ですぐに対処することが大切です。
そこで本記事では次の内容をまとめました。
本記事のポイント |
遺産独り占めについて&罪に問われるのか? 遺産の独り占めに気づいたらすぐにすべき3つのこと ケース別の遺産独り占めの対処法 弁護士に相談すべき2つのケース 生前からすべき|遺産の独り占めを防ぐためのポイント2つ |
本記事を読めば、遺産を管理・調査する方法や、必要な法律の知識を身に着けられ、遺産を独り占めされないよう実践できるようになります。
既に独り占めされてしまった場合は遺産を取り戻す方法を知って実行することができるようになります。
是非最後まで読んでいってくださいね。
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相続では他の相続人の合意なしに一人の相続人が遺産を独り占めすることはできません。
各相続人には一定の遺産を取得できる権利(相続権)が法律で守られており、独り占めすることはその権利を侵害することにあたるからです。
民法でも次のように明記されています。
“同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。”
(民法900条)
引用:民法 | e-Gov法令検索
“相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。”(民法898条)
“各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。”(民法899条)
つまり、被相続人が亡くなれば遺産は一旦相続人全員のものとなり、そこから相続分に応じて話し合いによって分けていくと定められているのです。
相続分については下表でご確認ください。
【相続人の法定相続分割合】
※子どもや兄弟姉妹が複数人いる場合は人数分で割ります。例えば配偶者と子ども二人が相続人の場合は、子ども一人につき法定相続分は1/2÷2人=1/4となります。
また、遺言書が残されており「一人の人物に全遺産を譲る」と書かれている場合でも、他の相続人は遺留分を請求することができます。(詳細は「遺言書が有効なら→遺留分侵害額請求」で解説)
このように遺言書の有無にかかわらず、各相続人は決められた配分の遺産を取得できる権利があり、それを他の相続人が奪うことは認められません。
【例外:独り占めできるケース】
例外として下記にあてはまる場合は独り占めが起きるケースもあります。 ・相続人がそもそも一人しかいない ・他の相続人が相続放棄 ・遺産分割協議で一人の相続人が全財産を相続することを他の相続人がを認めた ・他の相続人が遺留分侵害額請求をしない このように他の相続人が自ら相続権を行使しようとしないなら独り占めは可能です。遺産分割協議は全員が納得しているのなら必ずしも法定相続分通りに分ける必要はなく、自分たちで自由に分け方を決めることができます。 |
【遺産独り占めは罪に問われるのか?】
他の相続人の同意を得ず遺産を独り占めしたとしても、返還請求などの民事上の責任は追及されますが、刑事罰には問われないことがほとんどです。これは日本では「法は家庭に入らず」と考えられるためです。しかし、よっぽど悪質な場合は詐欺や横領、文書偽造として犯罪が成立することもあります。 |
前章で各相続人には相続権があり、他の相続人が奪ってはならないと伝えました。
しかし現実には独り占めされてしまった後では遺産を取り戻すのは簡単ではありません。そのため遺産独り占めが疑われたら、素早い対応が必要になります。
本章では独り占めに気づいたらまずすべきことを遺産の種類ごとに紹介していきます。これらの対応を行った上で、次の「【ケース別】遺産独り占めの対処法」章で状況に応じてやるべき対処法を学んでいきましょう。
【遺産の独り占めに気づいたら…】
◎《現金・有価証券》口座を凍結する ◎《現金・有価証券》取引履歴を調べる ◎《不動産》権利証を管理する |
早めに動くことでひとまず相手の動きを止めることができ、現状以上の使い込みを防ぐことができます。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
被相続人が亡くなったら、他の相続人が被相続人の口座から勝手に預貯金を引き出せないように、すぐに凍結手続きをしましょう。
凍結したら全ての取引は一切できなくなるので、他の相続人が預貯金を勝手に引き出すことを防ぐことができます。
銀行は口座の名義人が亡くなったことを知ると口座を凍結しますが、死亡と同時に凍結される仕組みがあるわけではありません。誰かが銀行に連絡するなどして初めて凍結されるのです。
死亡から凍結までタイムラグが生じてしまうので、その間に預貯金が引き出されてしまわないよう死亡後すみやかに連絡しましょう。
凍結方法は銀行や証券会社によって異なるので詳細は金融機関のHPをご確認しましょう。凍結した後は遺産分割協議が完了して必要書類を揃えれば凍結を解除することができます。
【口座凍結の注意点】
被相続人の銀行口座から公共料金やクレジットカードの引き落としがある場合は、先に支払い方法変更を済ませておく必要があります。 |
なお、相続手続きが完了しておらず凍結中であっても、払戻し制度を利用すれば預貯金の一部を引き出すことが可能です。 これは遺産分割協議が長引いた場合に相続人が生活費や葬儀代等を工面できるようにするために2019年より施行された制度です。 詳細は、以下の記事をご覧ください。 「【相続手続き完了前】預貯金を引き出す方法|払戻し制度を利用」 |
口座を凍結する際に、取引明細書を申請して取得しましょう。
相続人の誰かが無断で引き出していたのなら、不自然な出金記録を見つけることができ、それを証拠に使い込みを追及することができます。
取引明細は申込時から遡って5年分取得するのが一般的です。取得には通常下記書類等の提出が求められますが、銀行や証券会社によって異なるので詳細は各金融機関にお問合せください。
【取引明細書に必要な書類】
◎被相続人の戸籍・除籍謄本 ◎申請者が相続人であることを証明できる本人確認書類◎申請者の実印◎申請者の印鑑証明書 |
取引明細書の発行に対応していない場合は、残高証明書を発行してもらいましょう。残高証明書は申込日と死亡日の両方を取得すると、使い込みを突き止めることができます。
被相続人が不動産を所有している場合、その不動産の権利証(登記識別情報)を渡してもらいましょう。
そうすることで他の相続人が名義を勝手に変えられること、不正に売却されることを防ぐことができます。
特に不動産が全部または一部でも無断で売却されてしまうと、購入者側の権利も関わってくるため問題解決が難しくなります。そのような最悪な事態を避けるためにも、権利証は勝手に持ち出されないよう気を付けてください。
前章では遺産の独り占めに気づいたら全員がすべきことをお伝えしました。本章では独り占めの状況に応じて必要な対処法を解説していきます。
遺産が独り占めされてしまうケースは下記の通りいくつか想定されます。実際にこのようなトラブルに遭ったときどのように対処すればいいのかをケース別で見ていきましょう。
【遺産が独り占めされるケース】
自分にあてはまるケースを選ぶとリンクから対処法へ移動できます。
遺産分割協議(遺産の分け方を決める話し合い)で一人の相続人が遺産を全て取得したいと主張してくるのは、多くの場合次の3通りの言い分に分けられます。
◎「長男だから」など不当な理由で主張
◎「介護していた」など自分の寄与分を主張
◎「他の相続人に生前贈与があった」など相手の特別受益を主張
「自分が長男で家督を継ぐから、遺産も全て自分が継ぐ」
「(被相続人の自宅に居候していたのに)同居してあげていたから遺産を全てもらうべき」
など、法的に全く根拠のない主張をしてくる人がいます。
その場合、話し合いによる説得が見込めそうになかったら、遺産分割調停を起こして解決するようにしましょう。
遺産分割調停(審判)なら法的な見解から公平に遺産分割をできるので、無謀な主張は絶対に通りません。
現在では家督制度は廃止されており、性別や出生順にかかわらず遺産は平等に分けることが民法で定められています。そのことを身内の者がいくら説明しても、聞く耳を持たないケースも多いでしょう。
このように当事者同士の話し合いが決裂した場合に利用できるのが遺産分割調停です。
遺産分割調停とは |
中立な立場の調停委員に間を取り持ってもらい、話し合いにより遺産分割の解決案を模索すること |
具体的な申立て方法は次の通りです。
申立てできる人 | 相続人 |
申立先 | ・相手方相続人のうち一人の住所地の家庭裁判所 または ・当事者が合意で決めた家庭裁判所裁判所を探す場合はこちら →各地の裁判所 |
受付時間 | 平日8:30~17:00 |
費用 | ・収入印紙1200円分/人 ・連絡用の郵便切手代 |
調停の流れ | ①家庭裁判所へ申し立てる ②裁判所から呼び出し状が届く ③調停が開催される(申立てから約1,2ヶ月後) ④調停成立なら→調停調書が届く(成立から数日後) ⑤調停不成立なら→審判に移行する |
申立て方法や必要書類についてさらに詳しく知りたい場合は裁判所のホームページをご参照ください。
調停でも決裂した場合や、相手方が裁判所からの呼び出しに応じなかった場合は、自動的に遺産分割審判に移行します。当事者の合意で成り立つ調停とは違い、審判では裁判官が遺産分割方法を決定します。
遺産分割調停についてはこちらの記事で詳しく解説しています。進める際のポイントや注意点も紹介しているので、併せてご確認ください。
「生前被相続人を介護していたから、遺産は自分が全て受け取るべき」
「同居して生活の面倒をみていた」
など、相手方にも正当な言い分がある場合があります。
その場合は無下に「法定相続通りに分けるべき」という姿勢をとらず、相手方の話を聞いて、納得できる内容であれば、寄与分を考慮した上で遺産を分けることも検討しましょう。
民法でも寄与分を考慮して遺産分割を行うことと明記されています。
寄与分とは |
被相続人の財産維持・増加に貢献した相続人がその貢献度に応じて相続分に加えて受け取れる遺産のこと |
“共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。”(民法904条の2)
引用:民法 | e-Gov法令検索
このように条文では寄与(貢献)をした相続人には法定相続分にプラスして寄与料を遺産から渡すべきと定められています。
しかし寄与分は貢献度合いに応じてその金額を算定するため、相手が主張する額が多すぎる場合があります。そのときは「独り占めは行き過ぎではないか」と話し合う必要があるでしょう。
寄与分についてはこちらの記事で詳しく解説しています。寄与料の判断基準や計算方法なども紹介しているので参考にしてください。
「自分以外の兄弟は大学に行かせてもらっていたから、遺産を公平に分けるのは不平等」
など、他の相続人に贈与があった場合、その分多く遺産を受け取りたいと思うことは当然です。
この場合も寄与分同様、相手の言い分をよく聞き、納得できる内容であれば譲歩しながら遺産の分け方を調整することも検討しましょう。
民法でも特別受益を考慮して遺産分割を行うことと明記されています。
特別受益とは |
一部の相続人だけが被相続人から受けた利益のこと(贈与・遺贈・死因贈与) |
“共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。”(民法903条)
引用:民法 | e-Gov法令検索
このように条文では特別受益がある人は、それを考慮して相続分を算定すべきと定められています。
特別受益についてはこちらの記事で詳しく解説しています。特別受益の判断基準や計算方法なども紹介しているので参考にしてください。
遺言書が発見されて「遺産は全て〇〇に譲る」と書かれていた場合でも、完全な独り占めを阻止することは可能です。
遺言書に効力があるかどうかで次の通り対処法が異なります。
◎遺言書の有効性を疑うなら→遺言無効確認
◎遺言書が有効なら→遺留分侵害額請求
遺言書が残されていたら、まずはその遺言書に本当に効力があるのかを確認しましょう。
遺言書はどんなものでもいいわけではなく、一定の条件を満たしていないと認められません。遺言書が無効だと判断された場合は、遺産分割協議を行い法定相続通りに分けることになります。
遺言書が認められないケースを下表にまとめました。
【遺言書が無効になるケース】
自筆証書遺言の場合 | ・自筆で作成されていない ・作成日が記載されていない、または特定できない ・署名・押印がない ・訂正方法に誤りがある ・内容が不明瞭 ・共同(2名以上)で作成されている ・遺言能力のない人(認知症など)が作成した ・強迫されて作成したなど |
公正証書遺言の場合 | ・証人になれない人が立ち合いをしていた ・遺言能力のない人(認知症など)が作成した ・強迫されて作成したなど |
上記の中に該当する項目があれば、遺言書の無効を主張しましょう。
それでも聞き入れてくれない相続人がいる場合は、「遺言無効確認」の調停または訴訟を起こす方法もあります。
遺言無効確認の訴訟手続きは、医療記録の精査等が必要になるケースが多く、弁護士に依頼することが有益です。
遺言書を確認して有効だった場合、遺言の内容に従って遺産分割しなければいけません。
しかし、その内容が自分の遺留分まで侵害する場合は、遺留分侵害額を請求することができます。
遺留分とは |
法定相続人のうち配偶者・直系尊属(親など)・直系卑属(子など)に法律上保障されている最低限度の財産。相続人の生活を保障するために設けられた制度。 |
【遺留分の割合】
例えば、夫の遺産が1000万円で、法定相続人が妻と子どもの2人だったとしましょう。遺言書で妻に全て譲ると書かれていた場合でも、子どもは自身の遺留分4分の1(1000÷1/4=250万円)を妻に対して請求する権利があります。
遺留分は話し合いで取り決めるのが原則ですが、話がまとまらない場合は遺留分侵害額請求の調停を起こすことができます。
遺留分侵害額請求の調停・訴訟については裁判所HPに案内が載っているので、申込方法や必要書類等はこちらでご確認ください。
尚、遺留分侵害額請求には請求できる2つの期限が設定されているので注意が必要です。
◎時効…相続開始と遺留分侵害を知ったときから1年以内
◎除斥期間…相続開始から10年以内
いずれか早い方の期限が過ぎてしまうと請求できなくなってしまうため、早めに取り掛かりましょう。
遺留分についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
「財産調査をした相続人が遺産の全容を明らかにしてくれない」
「遺産はなかったと言っているが、どうも怪しい」
このように、他の相続人がどうも遺産を隠しているのではと疑われる場合は、自身でも財産調査を行いましょう。
財産調査の結果、他の相続人が開示していた遺産以外のものが見つかれば追及することができます。「そんな遺産があるとは知らなかった」と言い逃れされるかもしれませんが、ひとまずは独り占めの事態を防げます。
財産調査の方法は遺品の中から財産の在り処が分かる手がかりを探して、関係機関に問い合わせていくのが基本です。
手がかりになるようなものを下表にまとめました。
【遺産を見つけるための手がかり】
預貯金 | ・通帳、キャッシュカード ・金融機関のノベルティ |
不動産 | ・固定資産税の納税通知書 ・登記済権利証(登記識別情報) |
有価証券 | ・株券 ・取引報告書 ・配当金の支払通知書 ・株主総会招集通知書 ・口座開設時の案内書 ・株式発行会社の事業報告書 ・証券会社等のノベルティ |
遺品は他の相続人が管理していて手がかりを探せない状態の場合は、かなり地道な作業になりますが次の方法を試してみてください。
【遺産を探す方法(手がかりがない場合)】
調査方法 | 調査に必要な書類 | |
預貯金 | 近くの銀行にひとつひとつ問い合わせる | ・被相続人の戸籍または除籍謄本 ・問い合わせする者の戸籍謄本 ・問い合わせする者の本人確認書類、等 |
不動産 | 市町村役場に名寄帳(固定資産課税台帳)を取得する名寄帳とは…所有者がその市町村で所有している不動産の一覧表 | ・申請書 ・被相続人の戸籍または除籍謄本 ・申請者の戸籍謄本 ・申請者の本人確認書類、等 |
有価証券 | 証券保管振替機構に問い合わせる 証券保管振替機構とは…株など有価証券の保管・管理を行っている機関(詳細URLご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合) | ・開示請求書 ・被相続人の住所が分かる書類 ・被相続人の戸籍または除籍謄本 ・申請者の本人確認書類、申請者の印鑑証明書または住民票、申請者の戸籍謄本 |
「取引履歴を調べる」で銀行などから取引明細書を入手してそこから使い込みが発覚した場合は次の手順
で遺産を取り戻していきましょう。
【使い込まれた遺産を取り戻す手順】
①事実関係の確認 ②話し合いで遺産を返すよう説得 ③不当利得返還請求を起こす |
①事実関係の確認
預貯金の引き出しなどが発覚したとしても、いきなり犯人扱いせずにまずは事実関係の確認を行いましょう。
遺産を使った人は「亡くなった人のために使った」と主張することが多いです。その使い道が本当に合っているのかどうか、領収書や書類などで照らし合わせる必要があります。
主な使い道の主張ごとに事実確認できる書類・資料を下記一覧にまとめました。書類・資料によっては相手からの提出を求めましょう。
【遺産の使い道確認方法】
主な使い道の主張 | 事実確認できる書類 | 備考 |
「被相続人が自分で預貯金を引き出した」 | ・要介護認定通知書 ・要介護の認定資料 ・診断書、カルテ ・介護サービス利用表 | 認知症や寝たきりだったかどうかを確認 |
「被相続人の生活費に充てた」 | ・家計簿 ・領収書 | 常識の範囲内の額であるか確認 |
「被相続人の医療費や介護費用に充てた」 | ・医療機関や介護施設の領収書 | ー |
「葬儀費用に充てた」 | ・葬儀費用の領収書 | ー |
「贈与された」 | ・贈与契約書(あれば) | 贈与ならば特別受益を請求できる |
②話し合いで遺産を返すよう説得
①の事実関係の確認で遺産使い込みだと判明したら、話し合いで遺産を戻してもらうよう説得してみましょう。
預貯金を使い切って返せないのであれば、分割払いにしたり、別の財産で代償してもらったりという方法もあります。
③不当利得返還請求訴訟を起こす
話し合いがまとまらなかった場合は不当利得返還請求訴訟を起こす方法があります。
不当利得返還請求とは |
正当な理由なく利益を得て他人に損失を及ぼした者に対して、損害を受けた人が利益の返還を請求すること |
不当利得返還請求訴訟では、返還請求をする側が一定の主張立証をする必要があります。訴訟の見通しや提訴先などについては、弁護士に相談するといいでしょう。
尚、遺産使い込みの返還の請求には時効があるので注意してください。請求権は遺産使い込みの事実を知ったときから5年、または使い込みがあった時から10年で消滅してしまいます。
遺産独り占めに対して、自分では対応しきれないと感じた場合は弁護士の力を借りましょう。
特に「話し合いが決裂した」「遺産を既に使い込まれた」という状況になれば、弁護士に依頼するのがおすすめです。
【弁護士に依頼すべきケース】
依頼すべきケース | 理由 |
話し合いが決裂した | ・当人同士の話し合いでは感情的になりやすいが、第三者である弁護士に間を取り持ってもらうと、冷静さを取り戻し話がまとまる可能があるから ・調停や審判に進んだとき、自分だけでは法的知識がないため適切な対応をとることが難しいから |
遺産を既に使い込まれた | ・使い込みを立証する証拠を集めるのは素人では難しいから |
弁護士は法律の専門家であり交渉のプロであるため、自分一人で対処するよりも遺産を取り戻せる可能性が高まるでしょう。
具体的には弁護士に依頼すると解決に向けて次のように動いてくれます。
【遺産独り占めトラブルを弁護士に依頼するメリット】
◎独り占めしようとする相続人を説得してくれる ◎各種手続きや証拠集めを代行してくれる ◎調停や審判でサポートしてもらえる |
弁護士に依頼した場合、弁護士費用の目安は次の通りです。遺産額や法律事務所によって大きく異なるので、必ずHPや見積書で詳細を確認しましょう。
【弁護士費用|依頼内容別】
民事紛争事件 |
遺産分割 |
○着手金 調停…約33万円~44万円 審判…約44万円~55万円 ○報酬金 |
遺留分侵害額請求 |
||
遺言無効請求 |
||
民事法律業務 |
相続放棄 |
約5万5千円~11万円/人 |
限定承認 |
約30万円~100万円 |
|
相続人の調査 |
約5万5,000円~11万円 |
|
相続財産の調査 |
約11万円~22万円 |
※着手金…契約するときに支払う前払い金
※報酬金…解決できたときに支払う後払い金。成功報酬として依頼者が取得した遺産額に応じて支払う。
これまで遺産を独り占めされそう、またはされたときの対処法をお伝えしてきました。遺産の独り占めは起こってしまうと取り戻すのが難しいため、生前から対策しておくことが大切です。
ここでは遺産の独り占めを防ぐためのポイントを2つ紹介していくので、相続はこれからという人は是非参考にしてくださいね。
◎遺言書を残してもらう
◎他の相続人と遺産情報を共有しておく
遺産独り占め防止に最も効果的なのが遺言書を作成してもらうことです。
遺言書は法定相続分より優先されるため、相続人たちは遺言書のとおりに遺産を分けなければいけません。
遺産を残す人が、相続人たちが揉めないようにあらかじめ遺産の分け方を指定しておくと相続もトラブルなくスムーズに進みやすいでしょう。
ただし、先ほど解説した通り、一部の相続人に偏った内容なら相続人同士で争いが起きかねません。
遺留分を始め寄与分、特別受益を考慮した上で、公平になるように書いてもらうよう依頼しましょう。
他の相続人と連絡をこまめにとり、預貯金などの遺産に関する情報を共有しておきましょう。
相続人全員が遺産の状況を確認できる状態なら、使い込みも起きづらく、お互い疑心暗鬼にならずにすみます。
医療・介護費用などの支払いについても、他の相続人に伝えた上で口座から引き出すようにすると後々揉めずにすみます。
一人の相続人が被相続人の預貯金口座を代表して管理する場合は、定期的に通帳記帳してもらい、必要な支払の領収書を取っておいてもらいましょう。
財産調査も、一人の相続人に任せるのではなく、全員で協力して行う方が遺産隠しや使い込みを防ぎやすくなります。
本記事では遺産独り占めの対応について解説してきました。
あらためて内容を振り返りましょう。
まず前提として他の相続人の同意なしに一人の相続人が遺産を独り占めすることはできないこと、悪質なケースは罪に問われる可能性もあることをお伝えしました。
次に、遺産独り占めに気づいたらすべきことを紹介しました。
遺産の独り占めに気づいたらすぐにすべき3つのこと |
《現金・有価証券》口座を凍結する 《現金・有価証券》取引履歴を調べる 《不動産》権利証を管理する |
これらを実行した上で、状況に応じて次の対処法を行いましょう。
ケース別の遺産独り占めの対処法 |
一人の相続人が遺産を全て相続したいと主張してきた場合の対処法 遺言書で特定の相続人に全て譲ると書かれていた場合の対処法 一人の相続人が遺産を隠している疑いがある場合の対処法 一人の相続人が既に使い込んでいる場合の対処法 |
特に次のような状況になった場合は、一人では対応が難しいので弁護士に依頼しましょう。
弁護士に相談すべき2つのケース |
話し合いが決裂した場合 遺産を既に使い込まれた場合 |
最後に、遺産独り占めを防げるよう生前からできる対策をお伝えしました。
生前からすべき|遺産の独り占めを防ぐためのポイント2つ |
遺言書を残してもらう 他の相続人と遺産情報を共有しておく |
以上、本記事を読んで遺産を独り占めしようとする相続人から遺産を守ることができることを願っております。