弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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「遺産分割調停をすることになりそうだけれど、期間はどれくらいかかるもの?」
結論からお伝えすると、遺産分割調停を利用して解決を目指す場合、「1年ほどかかる」と考えておいたほうがよいでしょう。
ただし内容によって、大きな幅があります。全てがスムーズにトントン拍子に終了すれば「半年」、逆に難航すれば「3年以上」というケースもあります。
この記事では、実際の遺産分割調停がどれほどの期間で解決することが多いのか、解説します。
早く終わる調停の特徴・長引く調停の特徴も取り上げました。ご自身の状況と照らし合わせて、ご覧ください。
また、「できるだけ短い期間で終わらせたい」という方のために、実際の流れや事前準備のコツも説明しています。本記事を通じて、早期解決を目指しましょう。
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まず、冒頭でも触れた「遺産分割調停の期間」について、詳しく見ていきましょう。
※遺産分割調停の「流れ」は後述しますので、続けてご覧ください。
以下は遺産分割事件の「審判+調停」の平均審理期間です。令和2年(2020年)で《12.6ヶ月》となっています。
出典:裁判所「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」
*上記の「平均審理期間」は、調停・審判(*1)の両方を経た事件について1件として扱われています。
*調停が不成立となった場合は、自動的に審判に移行します。
平均期間は約1年ですが、「半年で終わるケースもあれば、3年以上かかるケースもある」と冒頭でお伝えしました。
具体的なデータを確認しておきましょう。
出典:裁判所「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」
上記のうち遺産分割事件の部分をグラフ化すると、以下のようになります。
全体の平均期間は前述のとおり《12.6ヶ月》ですが、ボリュームゾーン(最も多い期間帯)は《6ヶ月超1年以内》であることがわかります。
早く終わる調停と長引く調停は、何が異なるのでしょうか。主要な要因として、以下が挙げられます。
【調停期間に影響する要因】
・相続人の確定:代襲相続(*1)が生じている場合、相続人を確定させるだけで半年以上の期間が必要な場合もあります。
・相続人の数:相続人が多いほど、意見の調整が難しく、調停期間が長くなる可能性があります。
・相続財産の内容:海外資産や骨董品・美術品など、評価が難しい財産が多い場合、調停期間が延びる傾向にあります。
・意見の相違:相続人間で意見が大きく分かれている場合、合意に至るまでに長い時間が必要です。
・法的な問題の複雑さ:相続に関連する法的問題が複雑な場合、調停の進行が遅くなることがあります。たとえば寄与分や特別受益(*2)を争っている場合などです。
・相続人および調停委員会のスケジュール:相続人および裁判所のスケジュールによっても、調停の開始や進行が遅れることがあります。
*1:代襲相続とは、既に亡くなっている人の相続分を、相続人の子・孫などが代襲して相続することをいいます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
*2:寄与分は被相続人の財産の維持・増加に寄与した割合が相続分に加算される制度、特別受益は生前に受けていた贈与分を相続分から控除する制度です。詳しくは以下のページをご覧ください。
「弁護士に依頼すれば、遺産分割調停は早く終わる」と期待される方もいますが、実際のデータを確認すると、そうとも言えません。
〈手続代理人弁護士の関与がある事件の方が、その関与がない事件よりも平均審理期間が長いという傾向〉があります。以下はそのグラフです。
出典:裁判所「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」
紫色の棒グラフが、弁護士が関与している件数割合、紺色の折れ線グラフがその平均審理期間を示しています。
弁護士が関与している場合、平均審理期間は《13.7ヶ月》となり、全体平均審理期間の12.6ヶ月よりも長くかかっていることが分かります。
なお、弁護士の関与がない場合の平均審理期間(赤色の折れ線グラフ)は、《8.7ヶ月》です。
となると「早く終わらせるためには、弁護士に依頼せずに進めたほうがいい」と思われがちなのですが、慎重な検討が必要です。
そもそも、令和2年(2020年)でいえば、《79.7%》の案件に弁護士が関与しています。
出典:裁判所「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」
自身が弁護士に依頼しなくても、相手方は弁護士に依頼する可能性が高いのです。
弁護士は遺産分割の交渉に精通しているため、自分だけ弁護士を付けないでいると、不利な条件でまとめられかねません。
また、遺産分割調停に必要な書類(被相続人・相続人全員の戸籍謄本など)を全て自力で収集するのは、大変な負担です。
結論としては、遺産分割調停は弁護士に依頼したうえで、可能な限りの早期解決を目指すというのが、最も現実的で、かつ労力と成果のバランスがとれた方法だといえます。
続いて、遺産分割調停の流れを見ていきましょう。どのような段階があり、それぞれの段階にどの程度の期間がかかるのか、確認していきます。
1. 家庭裁判所に申立てをする(1週間〜1ヶ月以上)
2. 調停期日通知書が郵送される(約2週間)
3. 初回の調停が行われる(申立ての1〜2ヶ月後)
4. 調停を繰り返す(1〜2ヶ月に1回ペース)
それぞれ見ていきましょう。
遺産分割調停の最初のステップは、家庭裁判所に申立てをすることです。相続人のうち1人もしくは複数人が、他の相続人を相手方として、申立てを行います。
申立て先は、相手方のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。管轄の裁判所はこちらのページから、確認できます。
調停期日には、当事者全員が申立てられた家庭裁判所に集合するのが原則です。
できる限り全員にとって都合のよい場所を選ぶことが、調停期間の短縮に寄与します。
申立て自体は、家庭裁判所に持参または郵送で書類を提出するだけなので、時間のかかるものではありません。
ただ、必要な書類の準備に時間を要します。詳細は申立て先の家庭裁判所のWebサイトなどでご確認ください。
以下は標準的な必要書類です。
【申立てに必要な書類】
裁判所には、次の書類を提出していただくことになりますが、必ず申立人(あなた)用の控えをとり、調停期日に持参してください。また、事案により書類の追加提出を求められることがあります。
□ 申立書
※ 申立書は、法律の定めにより相手方に送付することになりますので、裁判所提出分のほかに、相手方用のコピーを相手方の人数分提出してください。相手方に知られたくない情報(住所など)がある場合には、申立書には記載せず、裁判所にお問い合わせください。
□ 事情説明書
□ 連絡先等の届出書
□ 進行に関する照会回答書
□ 戸籍、住民票
1 被相続人の出生時から死亡時までの連続するすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
2 相続人全員の戸籍謄本及び住民票(又は戸籍附票)
※ 被相続人と相続人との関係によっては、上記1、2の他にも必要な戸籍があります。事案により異なりますので、最高裁のウェブサイト http://www.courts.go.jp/内にある遺産分割調停の手続案内をご覧いただくか、裁判所にお問い合わせください。
□ 相続関係図
□ 遺産目録及びその遺産を証する資料
申立書の書式一式は、裁判所の「遺産分割調停の申立書」よりダウンロードできます。以下は記入例です。
書類準備で特に時間がかかりやすいのは、以下の書類です。
・被相続人の出生時から死亡時までの連続するすべての戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本および住民票
・遺産目録
自分の戸籍謄本だけなら比較的簡単に準備できますが、被相続人と相続人の分を全てとなると、多大な手間がかかります。
遺産目録に関しても、財産が多数されば作成に多大な手間がかかります。
書類集めだけで、何ヶ月も要しかねません。
弁護士に依頼して代行してもらうのが良策といえます。
申立て手続きの詳細を知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
続いて、無事に家庭裁判所に申立てをできた後の流れを見ていきましょう。
申立てからおよそ2週間ほどで、初回の調停期日が記載された「調停期日通知書」が郵送されます。
具体的な流れとしては、申立て後、家庭裁判所では、裁判官と2名の調停委員からなる「調停委員会」が組織されます。
第1回の調停期日のスケジュールや実施場所(家庭裁判所内での部屋)が調整された後、申立人および相手方へ、通知書が送付されます。
初回の調停期日として指定されるのは、申立てから1〜2ヶ月後の日にちが多くなっています。
仮に、3月1日に申立てをしたら、4月1日〜5月31日の間に、初回の調停期日が指定されることが多いです。
調停当日には、申立てをした家庭裁判所に当事者が集合します。話し合いは、申立人と相手方が交互に、調停委員のいる調停室に入って、調停委員と話す形で進みます。
出典:裁判所「調停手続の流れ」を参考に作成
1回の調停期日の所要時間は《2時間》が目安です。
初回調停の標準的な流れとしては、最初と最後は全員が調停室に入り、説明を聞きます。調停室で個別に調停委員と話すのは20〜30分程度で、1回の調停で2回が標準です。
基本的には、それぞれの相続人が個別に調停委員と話をすることになります。ただし、相続人の人数が多い場合などは、まとめて調停室に入ることもあります。
初回の調停を終えた後、相続人全員が合意に至るまで、調停を繰り返していきます。
出典:裁判所「調停手続の流れ」を参考に作成
調停が行われるのは、1〜2ヶ月に1回のペースです。短い間隔での調停の実施や少ない回数での合意ができれば、期間短縮が可能となります。
【例:初回調停〜調停成立までの期間】
・1ヶ月に1回ペース、4回で調停成立した場合:4ヶ月
・2ヶ月に1回ペース、6回で調停成立した場合:12ヶ月
なお、調停委員会が合意で解決するのは難しいと判断した場合には、調停不成立となり、自動的に審判に移行します。
審判とは、簡単にいえば家庭裁判所の裁判官が、遺産分割に関して決定を下す手続きです。
調停は話し合いで合意形成を目指しますが、審判は裁判所による決定であり、相続人は従わなければなりません(不服として抗告する場合を除く)。
不成立になった後の流れについては以下の記事にてご確認ください。
最後に、遺産分割調停の期間を縮めるための準備のコツを3点ご紹介します。
1. 調停のおよその進行を事前予測して準備する
2. 合意形成のために歩み寄る余地を持つ
3. 相続問題に精通した弁護士に依頼する
1つめは「調停のおよその進行を事前予測して準備する」です。
名古屋家庭裁判所の「遺産分割調停の進行について」によれば、調停初期段階(第3回調停期日頃まで)は、以下の(4)までを確認することを予定していると示されています。
(1)相続人は誰か
(2)遺言の有無
(3)遺産の範囲
(4)遺産の評価
(5)法定相続分を修正する要素があるか
(6)誰が何を取得するのか
調停に出席する際には、調停の段階に合わせて、焦点となる資料や主張を念入りに準備することで、スムーズな進行が期待できます。以下で見ていきましょう。
第1は「相続人は誰か」です。
相続人の範囲は、戸籍などで確認ができます。
法定相続人について、以下の記事でおさらいしておきましょう。
また、養子縁組や婚姻の無効を主張する場合には、遺産分割調停では対応できません。先に人事訴訟を提起し、養子縁組や婚姻の有効・無効を確定させる必要があります。
第2は「遺言の有無」です。
遺言により遺産全ての分け方が決められている場合は、遺産分割の問題にはなりません。
ただし、遺言の効力を争いたい場合は、先に地方裁判所に民事訴訟を提起し、遺言の有効・無効を確定させる必要があります。
第3は「遺産の範囲」です。
遺産分割の対象となるのは、今、現実にあって、相続開始時に被相続人が所有していた財産です。
「遺産目録以外に遺産がある」と主張する場合には、その遺産が被相続人名義で、現実にあることを確認できる裏付け証拠の準備が必要となります。
証拠の例:
・不動産登記事項証明書
・固定資産税評価額証明書
・預金の現在残高証明書など
注意点として、調停委員会が遺産を探すことはありません。相続人が自ら特定し、その証拠書類を提出する必要があります。
第4は「遺産の評価」です。
不動産については、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)などを参考に、評価額を話し合います。
評価について、どうしても意見が一致しない場合もあります。その場合について、前記「遺産分割調停の進行について」では、次のとおり解説されています。
評価について、どうしても意見が一致しない場合には、裁判所が選ぶ鑑定人に鑑定を依頼することを検討する場合もあります。その場合、鑑定の前にあらかじめ皆様から鑑定費用を納めていただきますので、金銭的な負担がかかります。また、鑑定には時間がかかることもあります。このため、評価方法及び評価額は、当事者間で合意して決める方法が、最も多く利用されています。
出典:名古屋家庭裁判所「遺産分割調停の進行について」
鑑定を依頼する方法もあるが、費用と期間がかかるというデメリットがある、ということです。
そのため当事者で合意を目指すのが第一選択肢となります。
第5は「法定相続分を修正する要素があるか」です。
これは主に、特別受益および寄与分による修正を指しています。
・特別受益:遺産の前渡しとみなされるような生前贈与
・寄与分:被相続人の財産の維持・形成への特別な貢献
特別受益や寄与の事実に争いがあれば、主張した側が立証する必要があります。
主張する場合には、立証書類の準備が必要です。
第6は「誰が何を取得するのか」です。
原則的には、法律で決められた相続分に基づいて分け方を決めます。
現金のように、明確に割り切れない財産を取得する場合には、差額分を「代償金」として自分の負担で他の相続人に支払うなどして調整します。
あるいは、自らの取り分を減らしたり、他の相続人に譲ったりするかたちで調整します。
2つめは「合意形成のために歩み寄る余地を持つ」です。
遺産分割調停が不成立となると、自動的に審判手続きに移行します。前述のとおり、審判手続きは裁判官による決定のため、融通が利きません。
全員にとって不満足な結果となることもあります。
できる限り審判に移行させず、お互いに歩み寄って合意形成を目指す姿勢が大切です。
具体的な戦略としては、以下を参考にしてみてください。
・争点の優先順位を明確にする:相続財産の中で最も重要と考える事項を特定し、他の事項については柔軟に対応することで、合意形成の可能性を高めます。
・代替案の提案:特定の財産に対する執着が合意を妨げる場合、代替案を提案することで、交渉の道を開きます。たとえば、不動産の共有ではなく、財産の買取や代償金の支払いを提案することが考えられます。
・感情的な対立の回避:感情的な発言は交渉を困難にします。客観的かつ事実に基づく主張を心掛けることが重要です。
・情報の透明性:相続財産に関する情報をお互いに隠さず共有することで、誤解を解消し、信頼関係を築きます。
3つめは「相続問題に精通した弁護士に依頼する」です。
遺産分割問題につき弁護士に依頼することは、調停を迅速かつ効率的に進めるために、有効な方法です。
とりわけ、相続問題に精通した弁護士であれば、実務知識と交渉技術を駆使して、調停を円滑に進めます。
【相続問題に精通した弁護士に依頼するメリット】
・書類の準備と提出:弁護士は必要な書類の準備・提出を代行し、法的要件を満たす書類作成を行います。大量の書類収集の負担を担うとともに、書類に関する手続きの誤りを防ぎ、調停の遅延を防ぎます。
・経験と知識の活用:類似ケースを多々経験している弁護士であれば、説得力のある主張を展開し、意向に沿った合意形成の可能性を高めます。
・交渉の代行:弁護士は交渉のプロフェッショナルであり、相続人間の感情的な対立を避けながら、効果的に交渉を進めることができます。調停が迅速に進み、合意に至る可能性が高くなります。
当事務所では、多数の遺産分割調停のご依頼をお受けしておりますので、現実に即したアドバイスが可能です。
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本記事では「遺産分割調停の期間」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
遺産分割調停の期間の目安は、以下のとおりです。
・全体の平均期間《12.6ヶ月》
・最も件数の多いボリュームゾーン《6ヶ月超〜1年以内》
遺産分割調停の流れと期間をご紹介しました。
1. 家庭裁判所に申立てをする(1週間〜1ヶ月以上)
2. 調停期日通知書が郵送される(約2週間)
3. 初回の調停が行われる(申立ての1〜2ヶ月後)
4. 調停を繰り返す(1〜2ヶ月に1回ペース)
遺産調停分割の期間を縮める準備のコツは、次のとおりです。
1. 調停のおよその進行を事前予測して準備する
2. 合意形成のために歩み寄る余地を持つ
3. 相続問題に精通した弁護士に依頼する
なお、「遺産分割調停を弁護士に依頼したいけれど、費用が気になる」という方は、続けて以下の記事をご覧ください。
相談料・着手金・報酬金・日当・実費などの詳細を解説していますので、参考にしていただけるかと思います。