弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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「親が亡くなったがどこにどんな遺産があるのか分からない。」
「親が健在なうちに財産について聞いておきたい。どうやって切り出せばいいのだろうか。」
親の終活や相続で財産調査は必ず向き合わなければいけない課題ですね。本記事では死後・生前別の財産調査方法を紹介していきます。
パッと見て分かるように、生前に比べ死後の財産調査は非常に煩雑です。死後の場合、地道に財産ひとつずつ調査していく以外方法はなく、時間も手間もかかる作業となります。関係各所に問い合わせようと思えば手数料が発生するところもあるでしょう。
このような事情から、親がまだ健在ならば生前に財産について聞いておくに越したことはありません。
生前・死後いずれのケースの場合も、財産調査はなるべく早めにかつ漏れなく行う必要があります。相続の各手続きは期限がある上に(例:相続放棄は3ヶ月、準確定申告は4ヶ月)、調査漏れがあって後から新たに財産が発覚すると、遺産分割のやり直しや相続税の追徴課税が発生する恐れがあるからです。
そこで本記事では財産調査をスムーズかつ漏れなく進められるよう、次のように内容をまとめました。
本記事の内容 |
1.生前・死後の親の財産調査方法|生前に親から聞き出すのがベスト 2.《死後》自分で調査するか専門家に依頼すべきか 3.《死後》専門家に依頼する場合|専門家の選び方 4.《死後》自分で調査する場合|効率的な親の財産の探し方 5.《死後》自分で調査する場合|預貯金・不動産・有価証券・借金の調べ方 6.《生前》親の財産の調べ方|準備と切り出し方が大切 7.【必見!】親の財産調査で注意すべき3つのポイント |
本記事を読めば死後・生前両方のケースにおいて親の財産の調べ方が分かり、今すぐ実践できるようになります。
是非最後まで読んでいってくださいね。
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親の死後に財産を調べようとすると、想像している以上に大変になるケースが多いです。時間も労力もかかり、費用も余分に発生します。
そのため、親が健在である場合は必ず生前に聞き出すようにしましょう。
冒頭の本章では死後・生前両方の調査方法についてまず全体の基礎知識を紹介していきます。
【死後の相続財産調査の方法・費用・期間について】
専門家に依頼する場合 | 自分で調査する場合 | |
進め方 | 弁護士・行政書士・司法書士・税理士から選んで依頼する | ①相続財産の対象になるものを知る ②自宅を隈なく探す ③預金通帳の取引履歴から他の財産情報をつかむ ④パソコン・スマホから探す ⑤各財産の残高・価値を調べる |
費用の 目安 | 10万円~30万円(実費+調査代行費用) | 数千円~数万円 《内訳》 ・照会手数料…数百円~数千円/件 ・書類発行料…数百円~数千円/件 ・郵送代、など |
期間の目安 | 1~2ヶ月 | 1~2ヶ月 |
【生前の相続財産調査の方法・費用・期間について】
進め方 | ①事前に聞き出す内容をリストにしておく ②話し合うまたは遺言書を作成してもらう |
期間の目安 | 即日~数日 |
【死後の親の財産調査方法】
死後の場合、財産調査は専門家に依頼する方法と自分で調査する方法があります。
専門家に依頼する場合、面倒な作業を任せられる反面、約10万円~30万円程の高額な費用がかかってきます。
自分で調査する場合、費用は抑えられますが財産ひとつひとつを地道に調査していかなければいけません。残念ながら個人の財産を一括で探し出すようなシステムなどは存在せず、人力で泥臭く探していくことになります。
例えば預貯金を調査する場合… まずは通帳やキャッシュカードなどを探しますよね。しかし通帳を見つけても、死亡時の預貯金額は記帳されていはいはずです。遺産分割や相続税申告のためには死亡時の財産額を確定させる必要があるので、銀行に出向いて残高証明書を発行してもらわなければいけません。 残高証明書を発行してもらうには、故人の戸籍、申請者の戸籍、本人確認書類、実印、印鑑証明書等が必要になります。そのため、まずは役所にいってこれら必要書類を取得しなければいけません。 |
このような煩雑な作業を不動産、有価証券、借金と財産ごとに繰り返していくことになります。
「手っ取り早い財産調査方法がある」と紹介しているサイトもありますが、一つの方法だけでは漏れが出てくる可能性が高いでしょう。財産調査に漏れがあると、相続手続きが全てやり直しになってしまったり、相続税申告で追徴課税が発生したりする恐れがあります。
そのような事態にならないよう、やはり上の表の①~⑤全てを行っていくべきです。ただ、このような地道な作業にも効率良く行う進め方はあるので、それについてはまた後で詳しく紹介していきます。
【生前の親の財産調査方法】
生前の場合は、ただ親に財産について教えてもらうだけではありますが、事前の準備や話の切り出し方が重要です。親子だからこそお金の話はしづらいものなので、どうやって話を切り出していくべきかをシミュレーションしておきましょう。
また、親が財産内容を教えることに抵抗がある場合は遺言書やエンディングノートを書いておいてもらうという方法もあります。
具体的な方法については後で紹介していきます。
生前と死後、2つの財産調査はかかる労力が雲泥の差です。たしかに親に財産の話を持ち出すのは勇気が要りますが、死後の大変さとは比較になりません。まだ親が健在ならば必ず生前に聞き出すようにしましょう。
《死後》について調べたい方はそのまま次章へお進みください。《生前》について調べたい方は《生前》親の財産の調べ方|準備と切り出し方が大切へリンクから移動していただけます。
前章で述べたとおり、死後の親の財産調査はかなり大変になるケースが多いです。
財産調査は専門家に依頼することもできるため、自分で行うのが難しそうな場合は依頼を検討してみましょう。
専門家に依頼した方がいいケースと自分で調査した方がいいケースをまとめたので、下記を目安にどちらがいいか選ぶようにしてください。
専門家に依頼した方がいいケース |
・調査対象の財産が不明瞭または多い(財産がどこにあるか分からないなど) ・故人宅が遠い ・平日に役所や銀行とやりとりをするための時間がない ・相続税申告する予定がある |
自分で財産調査した方がいいケース |
・調査対象の財産が明確で少ない(預貯金のみなど) ・費用を抑えたい ・故人宅が通える範囲にある ・平日に役所や銀行とやりとりをするための時間がある |
自分でできそうな分は自分で調査し、難しそうな部分だけ専門家に依頼するという方法もあります。予算を考慮しながらどの範囲を依頼するのか一度相談してみるといいでしょう。
専門家に依頼した場合の費用と期間の目安は下記の通りです。職業や事務所、調査内容にもよって異なるので、依頼する際は必ず確認するようにしてくださいね。
【専門家に依頼した場合の費用と期間の目安】
費用 | 約10万円~30万円 |
所要期間 | 約1~2ヶ月 |
調査期間について、専門家だからといってすぐに調査が完了するわけではありません。独自の調査システムがあるわけではなく、やはり自分で調査するときと同じように地道にひとつひとつ調べていくことになります。ただ、慣れている分調査の漏れなくスムーズに進めてもらえることは確かでしょう。
専門家への依頼をさらに検討したい場合はそのまま次章をお読みください。自分で調べた方がいいと思った場合は《死後》自分で調査する場合|親の財産の調べ方にお進みください。
専門家に依頼する場合は一般的に弁護士・行政書士・司法書士・税理士の中から選びます。それぞれ専門領域が異なってくるので、自分の相続のケースに合った専門家を選ぶようにしましょう。
4つの専門家の特徴と依頼に向いているケースを下表にまとめました。
【各専門家の特徴・専門領域と依頼に向いているケース】
特徴・専門領域 | 依頼に向いているケース | |
弁護士 | 交渉のプロであり法律の専門家。 他の相続人との交渉やトラブル解決に向けてサポートしてもらえる。 | ・遺産分割協議をする場合 ・相続で揉めている場合 |
税理士 | 税金のプロ。 財産調査から相続税申告までサポートしてもらえる。 | ・相続税申告がある場合 |
司法書士 | 法律と書類作成に詳しい。 不動産の名義変更を依頼できるのは司法書士のみ。 | ・遺産に不動産がある場合 |
行政書士 | 書類作成に詳しい。対応可能業務の範囲が狭いため、他の専門家に比べると料金が低い傾向にある。 | ・財産調査のみ依頼したい場合 ・少しでも費用を抑えたい場合 |
各専門家に相談する場合は、必ず相続に強い専門家を選ぶようにしましょう。
例えば弁護士の場合、弁護士にはそれぞれ得意分野があり、相続を専門としている弁護士もいれば、借金問題に特化した弁護士もいます。よく調べずに相続の実績のない弁護士を選んでしまうと、十分なサポートを受けられず、期待した結果を得られない可能性が高まります。
このような事態にならないよう、専門家を選ぶ際は必ずホームページを確認し、相続の取扱いがあるかどうかチェックするようにしましょう。
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自分で親の財産を調べると決めた場合は次の手順で財産を探していきましょう。順番通りに進めていけば無駄なく効率的に探し出すことができます。
【自分で調査する場合|親の財産の探し方】
①相続財産の対象になるものを知る ②自宅を隈なく探す ③預金通帳の取引履歴から他の財産をつかむ ④パソコン・スマホから探す |
本章では財産の探し方、つまりどのように財産を見つけていくのかを全体的に解説していきます。主な財産(預貯金・不動産・有価証券・借金)それぞれの詳しい調査方法については次で紹介していきます。
繰り返し述べますが、死後に親の財産を探し出すのは手作業で地道に進めていくしかありません。
しかしひとつひとつの作業は決して難しいことではないので、漏れのないよう確実に進めていきましょう。
まず何を探せばいいのか分かっていないと調査しようがないので、財産となるものは何か整理しましょう。
故人の遺品の中で探し出すべき財産対象は下図の通りです。
財産にはプラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれるので注意しましょう。
生命保険については、保険金の受取人が相続人に指定されている場合は相続財産とはみなされず原則として遺産分割対象外です。しかし故人が保険料を支払っていた場合相続税の課税対象に含まれることが一般的です。
探すべきものが何か分かったら、故人の自宅を調べていきましょう。
しかし①の図の中で財産そのものは自宅にないものがほとんどです。そのため、まずは財産の在り処をつきとめるための手がかりがないかどうか探していきます。
財産の情報の手がかりとなるものを下表にまとめましたが、この中で真っ先に見つけてほしいのが金融機関のもの、特に通帳です。その理由は次の③で解説していきます。
【財産を見つけるための手がかり】
プラスの 財産 |
預貯金 |
・通帳、キャッシュカード ・金融機関のノベルティ |
不動産 |
・固定資産税の納税通知書 ・登記済権利証(登記識別情報) |
|
有価証券 |
・株券 ・取引報告書 ・配当金の支払通知書 ・株主総会招集通知書 ・口座開設時の案内書 ・株式発行会社の事業報告書 ・証券会社等のノベルティ |
|
マイナスの財産 |
・請求書 ・督促状 |
しかし上記のものを故人の家中探し回るのは大変ですよね。まずは一般的に人がよく保管場所に使いそうな所から探していきましょう。
大事な書類や貴重品などは次のような場所に保管する傾向があります。
しかし上記のものを故人の家中探し回るのは大変ですよね。まずは一般的に人がよく保管場所に使いそうな所から探していきましょう。
大事な書類や貴重品などは次のような場所に保管する傾向があります。
【代表的な保管場所】
◎カバン ◎財布 ◎郵便物受け ◎棚 ◎引き出し ◎タンス ◎押し入れ ◎金庫 ◎食器棚 ◎冷蔵庫 ◎仏壇 ◎車の中 |
女性なら台所、男性なら車の中など、故人の生活スタイルを思い出しながら思い当たるところを探していきましょう。
②で金融機関の通帳を見つけたら、これまでの入出金履歴を見てみましょう。
どこからお金が振り込まれ、どこから引き落とされていたのかが分かるので、そこから他の財産情報をつかむことができます。
【例:通帳の取引履歴で分かる他の財産情報】
◎証券会社からの振込→有価証券を保有している ◎保険会社からの引き落とし→生命保険に加入している ◎個人・団体からの毎月定額の振込→不動産賃貸で家賃収入を得ている ◎金融機関からの毎月定額の引き落とし→ローンの支払いがある ◎まとまった金額の引き出し→他の口座がある可能性(預貯金を移した可能性) など |
キャッシュカードはあるものの通帳が見つからない場合は、金融機関に取引明細(取引履歴)を発行してもらうよう依頼しましょう。
取引明細発行には下記準備物が必要になりますが、金融機関によって詳細は異なるので事前に確認するようにしてください。
【取引明細の申請方法】
必要書類 | ・被相続人の戸籍 ・除籍謄本 ・申請者の本人確認書類 ・申請者の実印 ・申請者の印鑑証明書 など |
手数料 | 数千円 |
発行年数 | 5年分(推奨)※ |
※5年分の取引明細は相続税申告の提出書類としても必要
近年はパソコンやスマホで財産を運営したり管理したりする人も増えてきました。いわゆるデジタル遺産ですね。
親がデジタル機器を使っていた場合は、アプリや受信メールから財産の情報を調べましょう。
【デジタル遺産例】
◎インターネットバンキングの口座 ◎インターネットの株式・投資信託 ◎仮想通貨 ◎FX ◎電子マネーのチャージ残高 ◎クラウドファンディングでの出資または資金調達 |
メールは受信メール一覧から銀行・証券・明細・支払などのキーワードで検索をかけると効率が良いでしょう。このとき、メールの本文までは見てしまうと電気通信事業法に触れるおそれがあるので注意してください。
本章では下記財産の調べ方について個別に紹介していきます。
①預貯金
②借金
③不動産
④有価証券
順番としては預貯金を一番最初に調べていきましょう。その理由は前章4-3.で述べたとおり、預貯金の取引履歴が分かれば他の財産情報も入手できて調査の効率が良いからです。
また、借金も早めに調査する必要があります。万が一借金が見つかれば相続放棄も視野に入れないといけませんが、相続放棄の期限は3ヶ月と決められています。期限を過ぎてしまうと原則として相続放棄ができなくなってしまうので、早めに借金の有無を確認するようにしてください。
「借金なんてないはず」と思っていても万が一のことがあるので、念のため調べておくことをおすすめします。
不動産と有価証券について、優先順位はないので、並行して進めるといいでしょう。
預貯金は次の手順で調べていきます。
【預貯金の調べ方】
①預貯金の所在が分かる手がかりを探す ②金融機関に問い合わせて残高を確認する |
①預貯金の所在が分かる手がかりを探す
まずは前章で紹介した方法で下記手がかりを探し出し、取引している金融機関を特定しましょう。
◆預貯金を見つける手がかり
◎通帳、キャッシュカード
◎金融機関のノベルティ
◎パソコン・スマホの情報
②金融機関に問い合わせて残高を確認する
手がかりを見つけたら金融機関に死亡時の残高を確認します。事前に電話で必要な持ち物を問い合わせてから窓口に出向くといいでしょう。
遺産分割をする場合は残高証明書があると話し合いがスムーズに進むので取得をおすすめします(相続税申告の場合も必須)。
残高証明書の取得方法は下表の通りです。詳細は金融機関によって異なるので確認するようにしてください。残高証明書の日付は必ず死亡日を指定しましょう。
【残高証明書の取得方法】
必要書類 | ・残高証明書発行依頼書 ・亡くなった人の死亡の事実が分かる戸籍または除籍謄本 ・申請者が相続人であることが確認できる戸籍謄本 ・申請者の本人確認書類 ・申請者の実印 ・申請者の印鑑証明書 |
費用の目安 | 約500円~1000円 |
期間の目安 | 1~2週間 |
また、通帳が見つからなかった場合は先に解説した通り取引明細も発行してもらった方が今後の調査に役立ちます。
借金は次の手順で調べていきます。
【借金の調べ方】
①借金の所在が分かる手がかりを探す ②信用情報機関に問い合わせる(漏れがないか確認のため) ③金融機関に問い合わせて借入残高を確認する |
①借金の所在が分かる手がかりを探す
借金についてもまずは前章で紹介した方法で下記手がかりを探し出し、借入先を特定しましょう。
◆借金を見つける手がかり
◎契約書
◎請求書
◎督促状
◎預金通帳の取引履歴
◎パソコン・スマホの情報
②信用情報機関に問い合わせる(漏れがないか確認のため)
次に信用情報機関に問い合わせて、借金の有無について漏れがないかどうかを確認します。
情報信用機関とはローンやクレジットなどの借入情報を管理している機関のことで、日本には3つの信用情報機関が存在しています。
金融業者などの借入先は3つのうちいずれかに加盟しているため、借金の有無を調べたい場合は3つの機関全てに問い合わせる必要があります。
情報開示の請求方法は機関ごとに異なるので、下記表のリンクからご確認ください。
【借入情報を管理している信用情報機関】
③金融機関に問い合わせて借入残高を確認する
借入先を特定することができたら、連絡をとって借入金残高証明書を取得しましょう。取得方法は借入先によって異なるので各借入先にお問合せください。
不動産は次の手順で調べていきます。
【不動産の調べ方】
①不動産の所在が分かる手がかりを探す(地番・家屋番号を知るため) ②名寄帳を申請する(①が見つからない場合) ③登記簿謄本を申請する(権利情報を知るため) |
①不動産の所在が分かる手がかりを探す(地番・家屋番号を知るため)
不動産もまずは前章で紹介した方法で下記手がかりを探し出し、不動産の地番と家屋番号を特定しましょう。
◆不動産を見つける手がかり
◎固定資産税の納税通知書
◎登記済権利証(登記識別情報)
◎預金通帳の取引履歴
②名寄帳を申請する(①が見つからない場合)
これらの書類が見つけられなかったら市町村役場で名寄帳を取得するという方法もあります。
名寄帳とは、個人に課せられている納税対象の不動産のリストのことです。役場の管轄外の不動産情報は載っていないので、地区ごとに取り寄せる必要があります。
【名寄帳の取得方法】
申請先 | 不動産が所在する市町村役場 |
必要書類 | ・申請用紙(各市町村役場のホームページまたは窓口から入手) ・亡くなった人の死亡の事実が分かる戸籍または除籍謄本 ・申請者が相続人であることが確認できる戸籍謄本 ・申請者の本人確認書類 ・切手貼付済の返信用封筒(郵送の場合) ・手数料分の定額小為替(郵送の場合) |
費用の目安 | 数百円 |
期間の目安 | 数週間 |
③登記簿謄本を申請する(権利情報を知るため)
権利証や納税通知書、名寄帳などで不動産の「地番」と「家屋番号」情報を入手したら、次に不動産の権利関係を確認するため法務局で登記簿謄本を申請します。
登記事項証明書は次の内容を参考にして取得してください。
【登記事項証明書の取得方法】
申請先 | 最寄りの法務局またはオンライン 登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です :法務局 |
必要書類 | 申請書 |
費用の目安 | 窓口:600円オンライン:500円(窓口受取なら480円) |
期間の目安 | 窓口:即日オンライン:数日~1週間 |
有価証券は次の手順で調べていきます。
【有価証券の調べ方】
①有価証券の所在が分かる手がかりを探す ②証券保管振替機構に問い合わせをする(①が見つからない場合) ③証券会社等に問い合わせて借入残高を確認する |
①有価証券の所在が分かる手がかりを探す
まずは前章で紹介した方法で下記手がかりを探し出し、有価証券の取引先を確認します。
◆有価証券を見つける手がかり
◎株券
◎取引報告書
◎配当金の支払通知書
◎株主総会招集通知書
◎口座開設時の案内書
◎株式発行会社の事業報告書
◎証券会社等のノベルティ
◎預金通帳の取引履歴
◎パソコン・スマホの情報
②証券保管振替機構に問い合わせをする(①が見つからない場合)
手がかりが見つからなかった場合、証券保管振替機構(通称ほふり)に問い合わせる方法があります。
証券保管振替機構とは有価証券取引の管理を行っている機関で、情報開示請求をすると故人が取引していた証券会社を知ることができます。
【証券保管振替機構への開示請求方法】
請求方法 | 郵送のみ |
必要書類 | ・開示請求書(登録済加入者情報開示請求書 留意事項をダウンロード) ・亡くなった人の本人確認書類(住所が分かるもの) ・申請者の本人確認書類 ・申請者の印鑑証明書または住民票 ・亡くなった人の死亡の事実が分かる戸籍または除籍謄本 ・申請者が相続人であることが確認できる戸籍謄本 |
費用の目安 | 6,050円/件 2件目以降は1件あたり1,100円追加 |
期間の目安 | 数週間 |
詳細URL | ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合 |
尚、具体的に証券をいくら保有しているかまでは調べることはできません。
③証券会社等に問い合わせて借入残高を確認する
取引先の証券会社等を特定することができたら、問い合わせて残高を確認しましょう。残高証明書を発行してもらう場合の方法については各証券会社等にお問合せください。
ここからはまだ親が健在である場合の財産調査方法について解説していきます。
親子で話し合うとはいえ、何も準備せずいきなり話し出すのはよくありません。親が気分を害してしまえば話し合いどころではないし、親が申告する財産に漏れがあると死後トラブルのもとになります。
円満に、かつ正確に聞き出すためにも、これからお伝えする下記内容をよく読んでから進めていくようにしましょう。
【生前の親の財産調べ方】
①事前に聞き出す内容をリストにしておく ②話し合う|聞き出すポイント ③遺言書・エンディングノートを作成してもらう(②がダメだった場合) |
まずは何を聞き出さないといけないか事前に整理してリストを用意しておきましょう。
なぜなら、財産に漏れがあれば死後トラブルのもとになるからです(詳細は7-2.漏れなく行うべきで解説)。もし調査漏れがあれば結局死後に再調査しなければならなくなるので、聞き漏らしがないよう事前にリストを作成しましょう。
特に借金などのマイナス財産については死後に相続放棄をするか否かの重要な判断材料となるので、必ず明白にする必要があります。
リスト作成のポイントをまとめました。よければ是非こちらをコピーしてご活用ください。
【遺言書】
遺言書 |
有 ・ 無 |
【預貯金】
金融機関名 |
|
支店名 |
|
預貯金の種類 |
|
口座番号 |
|
名義人 |
|
通帳などの保管場所 |
記入しない |
【不動産】
不動産の種類 |
|
用途 |
|
住所 |
|
名義 |
|
地番 |
|
家屋番号 |
|
権利証などの保管場所 |
【有価証券】
金融商品の種類 |
|
金融機関・証券会社名 |
|
数量 |
【デジタル遺産】
種類 |
|
URL |
|
ID |
【マイナスの財産】
種類 (借金・保証債務・ローンなど) |
|
借入先 |
|
借入残高 |
【その他】
車 |
有 ・ 無 |
仮想通貨 |
有 ・ 無 |
国債 |
有 ・ 無 |
貴金属 |
有 ・ 無 |
その他 |
注意:通帳やキャッシュカード、印鑑の保管場所と暗証番号はメモしない 万が一用紙を紛失した場合、悪用される恐れがあるので通帳やキャッシュカード、印鑑の保管場所は書いてはいけません。教えてもらった場所は頭の中で覚えておくようにしましょう。同様にデジタル遺産などの暗証番号の取扱いにも注意してください。 |
事前準備ができたら実際に話し合いをしていきましょう。
しかし、親子といえど、親子だからこそ財産の話はしづらいですよね。話の切り出し方には慎重にならないと、親を怒らせてしまったりはぐらかされてしまったりして財産について教えてもらえないかもしれません。
親に財産についてきちんと話し合ってもらうためにも、親の気持ちに寄り添って聞くようにしましょう。
まず、親側は財産について聞かれたら次のような感情を持つことがあります。
◆親の気持ち 「死について考えたくない。」 「子どもはお金に困っているのだろうか。」 「子どもにお金のこと知られたくない。」 |
このようなネガティブな感情を解消させ、納得して教えてもらうためには次のようなセリフを参考にして伝えてみてください。
◆親に納得して教えてもらうための例文 「老後資金について一緒に考えていきたい」 「大切なお金を一緒に管理してお父さんとお母さんのために有効に使う手伝いをしたい」 「もし入院したりしてしまったときのために医療・介護費用の支払いに困らないようにしたい」 |
「お父さんとお母さんのために」財産を整理したい気持ちを伝えると、スムーズに聞き出しやすくなります。
話の切り出し方としては、「テレビで特集していたんだけど」「知り合いの親御さんが入院して」というふうに切り出してみるといいでしょう。
それでも話したがらない場合、無理強いはよくありません。あくまで親の財産なので子どもが口をはさむ権利がないのもまた事実です。
そうはいっても財産を教えてもらえないと不測の事態のときに困るので、その場合は次の方法を試してみましょう。
②の話し合いで直接教えてもらえなかった場合、遺言書やエンディングノートに書き残しておいてもらうという方法もあります。
財産について2つの明確な違いは、遺言書は遺産の分け方を指定できるのに対し、エンディングノートはそのような法的効力はなく、ただ財産情報を記すのみという点です。
遺言書かエンディングノートを勧める場合は、親が実際に作成できるようサポートしてあげると親の方も取り組みやすいでしょう。
遺言書なら作成方法の資料を渡し、エンディングノートなら実際に購入して渡すと作成率もアップするはずです。
《遺言書の作成方法》
自筆証書遺言の場合→自筆証書遺言書の様式
公正証書遺言の場合→遺言 | 日本公証人連合会(公正証書遺言の作成)
自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについて→Q2.公正証書遺言と自筆証書遺言には、どのような違いがありますか。 | 日本公証人連合会
親の財産調査は適切に行わないと思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。
スムーズに相続を進めるためにも次の内容に注意して進めていきましょう。
【親の財産調査で注意すべきこと】
◎早めに調査すべき ◎漏れなく行うべき ◎他の相続人と情報を共有すべき |
財産調査はいつから始めていつまでに終わらせないといけないという法律やルールはありません。
しかし、相続の各手続きには下記のように期限があるためなるべく早く取り掛かるようにしましょう。
◆相続手続きの期限
◎相続放棄期限3ヶ月
◎準確定申告(故人の分の確定申告)4ヶ月
◎相続税申告10ヶ月
特に死後の場合は調査に1~2ヶ月かかるため、葬儀がひと段落したら少しずつ始めていくことをおすすめします。
財産の調査は相続が開始して最初にやるべきことの一つで、これを行わないと後の手続きを進められないので、先延ばしにしないようにしましょう。
生前の場合でも、いつ不測の事態が起こるか分かりません。病気になってしまってからでは余計に聞きづらくなってしまうので、元気なうちに話し合いをするようにしましょう。
前述しましたが、財産調査は漏れのないよう行わなければいけません。
特に借金などのマイナス財産に調査漏れがあると、気づいたときにはもう相続放棄できる期限が過ぎていたという事態になりかねません。
マイナス財産ではなくても後から新たな財産が発覚すると、相続税申告がある場合追徴課税を課されることがあります。
財産が不動産なら遺産分割協議も一からやり直さなければならないケースもあります。そうなると手間も時間も余分にかかってしまうでしょう。
このような事態にならないよう、本記事で紹介した方法で漏れなく財産調査を行いましょう。
財産の情報は他の相続人にも公開して共有するようにしましょう。
「細かく伝える必要はない」と思っていると、財産隠しや使い込みを疑われて相続争いに発展するケースがあります。また、口頭で伝えるだけでは信じてもらえない可能性もあります。
公平かつ円満に相続を進めていくためには、財産に関する客観的な資料や証拠を集めておくべきです。
預貯金や借入金の残高証明書を取得し、医療・介護費用や葬儀代の領収書などは保管しておくようにしましょう。
ここまで生前・死後2つのケースにおける親の財産の調べ方について紹介してきました。
最後に本文のポイントをおさらいしましょう。
まず、死後の調べ方を下図にまとめました。
専門家に依頼すべきか自分で調査すべきかは下記を目安に判断するようにしましょう。
専門家に依頼した方がいいケース |
・調査対象の財産が不明瞭または多い(財産がどこにあるか分からないなど) ・故人宅が遠い ・平日に役所や銀行とやりとりをするための時間がない ・相続税申告する予定がある |
自分で財産調査した方がいいケース |
・調査対象の財産が明確で少ない(預貯金のみなど) ・費用を抑えたい ・故人宅が通える範囲にある ・平日に役所や銀行とやりとりをするための時間がある |
専門家に依頼する場合は弁護士・行政書士・司法書士・税理士の中から選びます。
自分で調査する場合は次の手順で進めていくようにしてください。
自分で調査する場合の進め方 |
①相続財産の対象になるものを知る ②自宅を隈なく探す ③預金通帳の取引履歴から他の財産情報をつかむ ④パソコン・スマホから探す ⑤各財産の残高・価値を調べる |
このように死後に財産調査を行うのは非常に煩雑で地道な作業です。できることなら生前に親と財産について話し合うようにしましょう。
生前の場合の調べ方は下図の通りです。
生前・死後いずれの場合も、親の財産調査ではトラブルを避けるため次の項目を守って進めるようにしましょう。
親の財産調査で注意すべきこと |
◎早めに調査すべき ◎漏れなく行うべき ◎他の相続人と情報を共有すべき |
以上、親の財産を漏れなくスムーズに調査できるよう、本記事が役に立つと幸いです。