弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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「兄さんは母さんの介護を私に押し付けて、自分は全く介護しなかった。それでも遺産相続では半分ずつに分けないといけないの?そんなの納得できない。」
兄弟間で介護に偏りがあった場合、介護しなかった人の相続分を減らすことで、不満を解消したいと思っている人も多いでしょう。
残念ながら、介護しなかったことを理由に相続分を減らせるような法律はありません。
しかし、下記いずれかの方法を実践すれば、介護した人がより多くの財産を受け取れる可能性が高まります。
その結果、介護しなかった人が受け取る遺産額は本来もらえるはずの額よりも少なくなるので、介護への不満を解消することができるでしょう。
介護しなかった人より遺産を多く相続する方法は死後と生前で異なります。
亡くなった後であれば寄与分を主張するという方法がありますが、実際寄与分はそう簡単には認められません。
寄与分が認められるにはいくつかの要件があり、それを満たすのはハードルが高いからです。
たとえば「仕事を辞めて毎日つきっきりでお世話をしていた」程度の貢献度が求められるのです。
寄与分を主張するには、要件を満たしているかを確認し、それを証明できる資料をしっかり集めてから行うようにしましょう。
本記事では介護と相続について下記ポイントをお伝えしていきます。
本記事で分かること |
・介護と相続の関係について ・【生前&死後】介護しなかった人より遺産を多く相続する方法 |
本記事を読めば、介護しなかった人より遺産を多く相続できる方法が分かり、実践できるようになります。
ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
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相続人の間で介護に差があった場合、「介護しなかった相続人には遺産を渡したくない」という気持ちが起こるのは自然なことでしょう。
まずは介護と相続の関係について、次の内容をお伝えします。
【介護と相続の関係について】
・介護しなかったことを理由に相続分を減らせる法律はない ・【死後の場合】「寄与分」の主張が認められれば、介護しなかった人より多く遺産を受け取れる ・【生前の場合】生前対策を行えば確実に介護しなかった人より多く遺産を受け取れる |
結論として、介護しなかったことを理由に相手の相続分を減らすことはできません。
残念ながらそのような法律はないのです。
介護しなかったからといって、相続人としての地位を奪うことはできず、無理やり相続放棄させることもできません。
誰が相続人になるか、どの割合で相続できるかは、民法で定められています(これを法定相続と呼びます)(民法第886条~890条、900条、901条)。親の介護をしてもしなくてもそれは変わりません。
実際に誰がどの遺産をどれだけ相続するかは、法定相続分に関する民法の規定を参考にしながら、話し合いによって決めていきます(民法第906条)。
介護しなかった相続人が「あなたは介護してくれたから遺産を多めに受け取ってね」と申し出てくれれば円満に遺産分割できますが、そう理想通りに進まないケースが少なくありません。
亡くなった後に、相手が「子が親の面倒を見るのは当たり前だ。介護と相続は関係ない。遺産は法定相続分通りに分けるべき」と主張してきたら、相手の相続分を減らすのは難しくなります。
介護しなかった相続人も法定相続の割合通りの相続分を受け取れるのは、あまりにも不公平ですよね。
そこで、介護の苦労が報われるためには、「寄与分」という制度を活用することができます。
寄与分が認められれば、介護した人が遺産を多く受け取れるので、結果的に介護しなかった人は本来の相続分が減ることになります。
寄与分については2章で解説していくので、すでに相続が始まっている場合は2章を読み進めるようにしてください。
介護しなかった人より遺産を多く相続するためには、生前から対策を行っておくことが大切です。
なぜなら、寄与分が認められるのはハードルが高く、認められたとしても期待していたより少額になることがほとんどだからです。
死後に寄与分を主張するよりも、生前対策を行っておく方が確実に遺産を多く受け取ることができるでしょう。
生前対策については3章で紹介していきます。まだこれから介護が始まる場合や、介護されている人の判断能力がある(認知症ではない、など)場合は、3章を読み進めるようにしてください。
亡くなった後に、介護しなかった人より遺産を多く相続する方法として、「寄与分」の制度を活用することができます。
本章では寄与分について下記の内容を見ていきましょう。
【寄与分について】
・寄与分とは ・寄与分は認められにくい ・寄与分が認められる条件 ・寄与分の金額目安 ・寄与分を認めてもらう方法 |
寄与分は次のように定義されています。
寄与分とは |
寄与=特別の貢献 亡くなった人の財産維持・増加に特別の貢献した相続人が その貢献度に応じ、相続分に加えて受け取れる遺産のこと |
寄与とは簡単に言えば「特別の貢献」の意味で、介護はその代表例です。
民法でも次のように定められています。
“共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。”(民法904条の2第1項:寄与分) 引用:民法 | e-Gov法令検索 |
例えば、母が亡くなり、相続人は長男と次男の二人だったとします。母は亡くなる5年前から認知症を患い、長男が母と同居して介護していました。
母の遺産は現金2,000万円だったので、法定相続の割合に従うと長男と次男で1,000万円ずつ分けることになります。しかしそれだと介護を一人で担ってきた長男は納得できませんよね。
そこで利用できるのがこの寄与分の制度です。
長男が寄与分を主張し、「母の遺産が2,000万円も残っているのは、長男が介護をしてきたおかげで貯金を使わずに済んだから」ということが認められれば、長男は遺産を多く受け取ることができ、その分次男は受け取る遺産が少なくなります。
このように、寄与分は遺産分割において相続人間の実質的不公平を正すために設けられた制度なのです。
寄与分にはいくつか考慮要素があるものの、相続人全員が「介護が寄与分に値した」と合意すれば、介護の程度にかかわらず寄与分は認めらます。寄与分の額も全員が合意すれば自由に決めて問題ありません。
相続人以外の親族でも主張できる!特別寄与の制度 これまで寄与分を主張できる人は相続人に限られていましたが、2019年からは相続人ではなくとも親族なら主張できる「特別寄与」の制度が始まりました(民法1050条)。これにより息子の妻が介護していた場合なども対象になります。 |
寄与分は介護してきた人を救済する制度であるものの、実際にはそう簡単には認められません。
もし認められたとしても、取得できる金額は予想よりずっと少なくなることがほとんどでしょう。
なぜなら、寄与分が認められるには要件がいくつかあり、その全てを満たすことが難しいからです。
なぜ要件を満たすのはハードルが高いのでしょうか。
寄与分を認めるということは、他の相続人の相続分が減ることを意味します。
遺産とは本来、残された家族の生活を保障する目的もあり、そのために法定相続分が定められています。
その法定相続分を変えるためには、それに値する十分な事情が必要になるのです。
以上のことをふまえ、次に紹介する寄与分の要件を満たしているか確認し、資料をしっかり準備してから、寄与分の主張をするようにしましょう。
寄与分が認められるための要件を紹介していきます。
民法では、寄与分の主張が認められるための具体的な要件は定められていません。しかし、東京家庭裁判所第5民事部から8つの要件を記載した案内書「寄与分の主張を検討する皆様へ」が発行されており、この内容が参考になります。
“寄与分が認められるためには ①主張する寄与行為が相続開始前の行為であること 被相続人が亡くなった後の行為、例えば、遺産不動産の維持管理・違算管理・法要の実施などは、寄与分の対象になりません。 ②寄与分が認められるだけの要件を満たしていること ※要件とは、 「その寄与行為が被相続人にとって必要不可欠であったこと」、 「特別な貢献であること」 「被相続人から対価を得ていないこと」 「寄与行為が一定の期間あること」 「片手間ではなくかなりの負担を要していること」 「寄与行為と被相続人の財産の維持又は増加に因果関係があること」 などで、その要件の一つでも欠けると認めることが難しくなります。 ③客観的な裏付け資料が提出されていること” 引用:東京家庭裁判所第5民事部「寄与分の主張を検討する皆様へ」 |
※被相続人=亡くなった人
上記を整理してまとめたものが下記の内容です。
【寄与分を認めてもらうための8つの要件】
・寄与行為が相続開始前であること ・その寄与行為が被相続人にとって必要不可欠だったこと ・特別な貢献であること ・被相続人から対価を受け取っていないこと ・寄与行為が一定期間以上であること ・片手間ではなくかなりの負担があったこと ・寄与行為と被相続人の財産の維持・増加に因果関係があること ・これらを裏付ける証拠資料を提出すること【重要】 |
これら8つの要件を介護にあてはめてひとつずつ見ていきましょう。
「相続開始前=生前」なので、介護の場合は問題なく満たせているでしょう。
介護しないと被相続人が生活できない状況であった必要があります。
たとえば、認知症や寝たきり、半身不随などの症状です。ただ足腰が弱っていたために買い物や通院を手伝っていただけではあてはまりません。
介護が身内の助け合いのレベルを超えて、特別な貢献であった必要があります。
そもそも身内はお互い支え合うのが当然であると考えられており、民法でも「相互扶助の義務」が定められています(民法第730条・752条・877条)。
つまり、身の回りの世話をした程度では相互扶助の範囲内であり、特別な貢献とは呼べません。
たとえば、「本来であれば介護施設入所や医療施設への入院等をしてもおかしくない状態であるにも関わらず、自宅介護で毎日排泄・食事・入浴の介助と、つきっきりでお世話をしていた」場合は特別な貢献と認められますが、「週数回の通院に付き添った」「入院中に見舞いに行って雑用をしてあげた」程度では認められないでしょう。
介護は無償で行っていないと寄与分とは認められません。
金銭ではなくとも、「自宅を譲り受けた」「株をもらった」なども、対価と見なされます。
介護を一定期間以上、継続して行っていたことも必要な条件です。
はっきりとした基準はありませんが、数年以上であることが望ましいでしょう。「数ヶ月だけ」や「週2回だけ」では認められません。
介護が片手間ではなく、時間的・身体的にかなり負担がかかっていた必要があります。
たとえば「仕事を辞めて介護に専念した」などの状況が挙げられます。「通常通り仕事をしながら、週末だけ介護に通っていた」ではかなりの負担とは認められません。
相続人が介護をしたおかげで、財産が減らずに済んだという因果関係があることが必須です。
具体的には、「自宅で介護したので、ヘルパーや介護施設にかかる費用が〇〇万円浮いた」という場合なら認められます。
上記で述べた要件を全て満たしている証拠資料が必要です。
証拠資料がなければ、寄与分を主張できる根拠がないので、この項目は特に重要な要件であります。
具体的には下記のものが証拠として扱えます。
【寄与分を主張するための証拠となるもの(介護の場合)】
・要介護認定通知書 ・要介護の認定資料 ・診断書、カルテ ・介護サービス利用表 ・医療機関の領収書 ・介護日誌 |
上記のように、客観的に介護が寄与分に値することが分かるものが求められます。
寄与分が認められればいくらぐらい受け取れるのでしょうか。
介護した場合、寄与分の金額を算定するのに下記計算式が用いられます。
寄与分の算定式(介護の場合) |
療養看護の報酬相当額(日当)× 介護日数 × 裁量的割合 |
式の項目について解説していきましょう。
■療養看護の報酬相当額
療養看護の報酬相当額とは、本来介護ヘルパーなどを雇った場合にかかる日当額のことです。一般的には国が定める介護報酬基準額を参考にします。
【介護報酬基準額】
(※地域や要介護認定等基準時間によって変動するため、ご参考程度に留めてください。)
要介護度 | 日当 |
要介護1 | 4,020円 |
要介護2 | 5,840円 |
要介護3 | 5,840円 |
要介護4 | 6,670円 |
要介護5 | 7,500円 |
■裁量的割合
裁量的割合とは、個別の事情に応じて寄与料を調整するために用いられる割合のことです。介護のプロの報酬額をそのまま身内に適用するのは妥当ではないため、5割~9割ほど乗じて計算します。
以上をふまえ、計算式を元にシミュレーションしてみましょう。
【寄与分のシミュレーション(介護の場合)】 要介護度:要介護3(日当5,840円) 介護日数:4年 裁量的割合:0.6を適用 寄与分=療養看護の報酬相当額(日当)× 介護日数 × 裁量的割合 にあてはめると、 寄与分=5,840円 × 1,460日(4年)× 0.6 = 511万5840円 |
このケースで寄与分の金額が500万円に決まった場合、各相続人の取得分は下記の通りになります。
【寄与分を含めた相続分の計算方法】 相続人:長女(介護していた) ・長男(介護しなかった)の2人 遺産:2,000万円 寄与分の金額:500万円 《計算方法》 ①.遺産2,000万円から寄与分500万円を差し引いて、見なし相続財産を算出する。 2,000万円 - 500万円 =1500万円 ②.①の見なし相続財産を法定相続通りに分ける。 長女の法定相続分=1500万円 × 1/2 = 750万円 長男の法定相続分=1500万円 × 1/2 = 750万円 ③.②で計算した法定相続分に、長女の分は寄与分500万円を足す。 長女の遺産取得分=750万円 + 500万円 =1250万円 長男の遺産取得分=750万円 |
寄与分を認めてもらうには次の流れで進めていきます。
【寄与分を認めてもらう方法】
・まずは話し合いで寄与分を主張する ・弁護士に依頼する《急いでいる場合》 ・調停を起こす《費用を抑えたい場合》 |
まずは話し合いで寄与分を主張します。
話し合いで認められなかった場合、弁護士に依頼するか調停を起こす方法があります。
早期に解決したい場合は弁護士を、費用を抑えたい場合は調停を選ぶようにしましょう。
話し合いでのポイントとしては、介護の実態がよく分かるように資料を見せながら伝えることです。
介護しなかった人にとって、介護の負担がどのようなものだったかは、いまひとつ想像しづらいものです。
そのため、介護した人としなかった人の間で、介護の負担に対する認識のズレが生じてしまいます。
そのズレを埋めるために、介護日誌や、介護ヘルパーに依頼した場合の日当額などの資料を見せながら説明するようにしましょう。
相手が介護の負担を理解できれば、寄与分に納得してくれる可能性が高まります。
話し合いで寄与分が認められなかった場合、弁護士に依頼することを検討しましょう。
弁護士は豊富な法的知識と経験を駆使して、依頼者がより多くの寄与分を受け取れるように、相手と交渉してくれます。
調停は申立て準備に1ヶ月以上がかかり、実施も月1回ペースで進むため、解決まで早くとも数ヶ月~半年かかってしまいます。弁護士による交渉なら、裁判所に合わせる必要がないので、早期解決が期待できます。
弁護士費用の目安は数十万円~数百万円です。
費用の負担は大きいですが、調停が中立の立場であるのに対し、弁護士は依頼者の味方となってサポートしてくれるので、より多くの寄与分を取得できる可能性が高いでしょう。
話し合いで寄与分が認められなかった場合、調停を起こす方法もあります。
調停とは調停委員に間を取りもってもらい、話し合いにより解決を図る裁判手続きのことです。調停委員は、中立の立場で双方の意見を聞きながら、解決に向けてアドバイスなどを提案する役割を担います。
調停にかかる費用は総額1〜2万円程度で、弁護士に依頼するよりも金銭的な負担がかかりません。
調停では寄与分が認められる要件で紹介した8つの要件が重視されます。しっかり証拠を揃えてから申し立てるようにしましょう。
調停を起こすための手続きは次の通りです。
【調停申立ての手続き】
申立て先 |
下記いずれか ・相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所 ・当事者が合意で定める家庭裁判所 (遺産分割調停を申し立てている場合はその申立て裁判所) 裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所 |
費用 |
・収入印紙1200円分 ・連絡用の郵便切手 |
必要書類 |
・申立書 ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)謄本 ・相続人全員の戸籍謄本 ・相続人全員の住民票または戸籍の附票 ・遺産に関する証明書 他、状況に応じて別途追加書類が求められる |
さらに詳しく知りたい場合は裁判所HPからご確認ください。
亡くなった後に寄与分を主張しても、認められない可能性があります。認められたとしても、思っていたよりも少額になることがほとんどです。
確実に介護しなかった人より遺産を多く相続するためには、生前から対策しておくことが重要です。
ここでは生前からできる対策を4つ紹介していきます。
【生前:介護しなかった人より遺産を多く相続する方法4つ】
・負担付死因贈与契約を交わす《おすすめ》 ・遺言を残してもらう ・生前贈与してもらう ・生命保険を活用する |
上記の中で家族が利用しやすい方法を選び、実践するようにしてくださいね。
最もおすすめな方法が、介護する人と介護を受ける人で、負担付死因贈与契約を交わすことです。
なぜなら、この方法が最も「介護をすれば財産を多めに受け取れる」ことの確実性が高いからです。
負担付死因贈与契約とは、簡単に言うと「贈与する代わりに〇〇をしてもらう」という、条件のついた贈与契約のことです。
介護の場面では「〇〇の財産を渡す代わりに、介護してほしい」という内容で活用することができます。
負担付死因贈与契約について、下記内容を見ていきましょう。
【負担付死因贈与契約について】
・負担付死因贈与契約のメリット ・負担付死因贈与契約書の作成方法 ・負担付死因贈与契約の注意点 |
負担付死因贈与契約を結ぶと、介護する人・される人双方にとってメリットがあります。
【負担付死因贈与契約のメリット】
・介護する人:確実に財産を受け取れる ・介護される人:確実に介護をしてもらえる |
負担付死因贈与契約は双方の合意で成立し、いったん介護が始まれば一方的に契約を撤回されることはありません。
そのため、介護する人は「確実に遺産を多めに受け取れる」という安心感、介護される人にとっても「最後まで介護してもらえる」という安心感をもって、契約を進めることができるでしょう。
2つ目に紹介する遺言は、介護する人にとって「本当に遺言を書いてくれるのだろうか」「遺言は自分に有利な内容なのだろうか」という疑心が生じます。
3つ目に紹介する生前贈与は、介護される人にとって「先に財産を渡してしまったら、最後まで介護してもらえないかもしれない」という不安がつきまといます。
負担付死因贈与契約の内容を取り決めたら、契約書を作成しましょう。
契約は口頭でも成立しますが、後々内容がうやむやになってしまうおそれがあります。書面で残しておく方が安心でしょう。
書面は公正証書で作成することをおすすめします。自分たちで作成することも可能ですが、公正証書の方が証拠としての価値が高いので、より安全性が増します。
公正証書の詳細や作成方法については、日本公証人連合会のホームページでご確認ください。
負担付死因贈与契約が「全財産を〇〇に譲る」など偏った内容の場合、介護しなかった相続人から遺留分が請求される可能性があります。
遺留分とは、相続人(兄弟姉妹は除く)に保障されている最低限度の持ち分のことです(民法1042条)。亡くなった人の家族の生活を保障するためにこの制度が設けられました。
契約の内容が介護しなかった相続人の遺留分を侵害した場合、遺留分を請求されたら原則金銭で支払いに応じなければいけません(民法1047条)。
遺留分の割合は民法で定められており、相続人の関係性や人数によって変わります(民法1042条)。
【遺留分の割合】
法定相続人の 組み合わせ |
遺産額に対する遺留分の割合 |
||
配偶者 |
子ども(直系卑属) |
親(直系尊属) |
|
配偶者のみ |
1/2 |
ー |
ー |
配偶者と子ども |
1/4 |
1/4※ |
ー |
配偶者と親 |
2/6 |
ー |
1/6※ |
子どものみ |
ー |
1/2※ |
ー |
親のみ |
ー |
ー |
1/3※ |
※複数人いる場合は人数で割る。(例:子ども2人の場合→1人あたりの遺留分は1/2×1/2⁼1/4)
たとえば、母と長男で「全財産である預貯金2,000万円を譲るから介護してもらう」という内容で負担付死因贈与契約を交わしたとします。
その場合、次男は遺産額の1/4である500万円を遺留分として長男に請求することができます。(相続人が長男と次男の2人であるケース)
なお、遺留分は次に紹介する遺言や生前贈与にも適用されます(生前贈与は死亡日から遡って10年分)。
介護しなかった人より遺産を多く相続するには、遺言を残してもらうという方法もあります。
亡くなった人の意思は法定相続の規定よりも優先されるため、遺言がある場合、相続人は遺言通りに遺産分割を進めていくことになります(民法902条・964条)。
負担付死因贈与契約は双方の合意がないと成立しませんが、遺言は相続人(介護する人)の合意は必要ありません。
遺言の作成方法は遺言の形式によって異なります。
遺言形式はいくつかありますが、下記2つの遺言形式が安全性と確実性の高さからおすすめです。それぞれの特徴と作成方法についてまとめたので、参考にして進めていくようにしてください。
【遺言の種類】
遺言の種類 |
特徴 |
作成方法 |
公正証書遺言 |
・公証人に遺言書を作成してもらい、公証役場で保管してもらう ・安全性と確実性が最も高い ・費用が高額になることも |
|
自筆証書遺言 (法務局保管制度利用) |
・自身で作成した遺言を法務局に保管してもらう ・安全性と確実性が比較的高い ・費用は3,900円/件 |
介護しなかった人より遺産を多く相続するには、生前贈与を活用するという方法もあります。
介護する人に生前に財産を渡しておくことにより、相続時の遺産額を減らせるので、結果的に介護をしなかった相続人が受け取る遺産が少なくなります。
生前贈与は負担付死因贈与契約と同じく、介護する人とされる人双方の同意で成立します。
進め方も同様で、内容を取り決めたら「贈与契約書」(公正証書が望ましい)を作成するようにしましょう。
生前贈与の場合は特別受益の持ち戻し免除の意思表示もしてもらおう 「特別受益の持ち戻し免除の意思表示」とは要するに、「生前贈与の分は遺産に含めないで遺産分割するように」という内容の意思表示です(民法第903条)。 たとえば父親が亡くなり、遺産は1,000万円、相続人は長男と次男だったとします。 父親は長男に生前2,000万円を渡していましたが、「特別受益の持ち戻し免除の意思表示」をしていたので、2,000万円は遺産に持ち戻さず、1,000万円を長男と次男で分けて、500万円ずつ相続することになります。 ただし、「特別受益の持ち戻し免除の意思表示」をしていても、次男は長男に対して遺留分は請求できます。 |
生命保険を活用するのも、介護しなかった人より遺産を多く相続するために有効な方法です。
介護する相続人が受取人になれば、受け取った保険金はその人固有の財産になります。
保険金は相続財産としてみなされないため、遺産分割の対象にも、遺留分の対象にもなりません。
生命保険は金額や入れる条件が限られていますが、利用できる場合は上手に活用していきましょう。
本記事では介護と相続について解説してきました。
最後にもう一度、要点を確認しましょう。
まずは介護しなかったことを理由に相続分を減らすことはできないことをお伝えしました。
しかし、下記いずれかの方法をとることで、介護しなかった人より遺産を多く受け取ることは可能です。
【死後】介護しなかった人より遺産を多く相続する方法 |
・寄与分を主張する ※寄与分とは…亡くなった人の財産維持・増加に特別の貢献をした相続人がその貢献度に応じ、 相続分に加えて受け取れる遺産のこと |
【生前】介護しなかった人より遺産を多く相続する方法 |
・負担付死因贈与契約を交わす《おすすめ》 ・遺言を残してもらう ・生前贈与してもらう ・生命保険を活用する |
死後、寄与分の主張が認められるには、下記全ての要件を満たしている必要があります。
寄与分を認めてもらうための8つの要件 |
・寄与行為が相続開始前であること ・その寄与行為が被相続人にとって必要不可欠だったこと ・特別な貢献であること ・被相続人から対価を受け取っていないこと ・寄与行為が一定期間以上であること ・片手間ではなくかなりの負担があったこと ・寄与行為と被相続人の財産の維持 ・増加に因果関係があること ・これらを裏付ける証拠資料を提出すること【重要】 |
寄与分は認めてもらうのが難しく、認めてもらえたとしても期待ほど財産を多くもらえません。
確実に介護しなかった人より遺産を多く相続するためには、生前対策を行うのがベストでしょう。
以上、本記事を元に介護しなかった人より遺産を多く受け取ることができ、介護の苦労が報われることを願っております。