【実践的】遺産相続でがめつい人への対処法と注意点

遺産相続でがめつい人の画像
この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。

「がめつい相続人が少しでも自分の相続分を増やそうとしてきて困っている。どう対処すればいい?」

亡くなった人の周りにお金にがめつい人がいると、遺産相続でトラブルに発展しやすくなります

がめつい人がよく起こす遺産相続トラブルとして、次の7つのケースが挙げられます。

がめつい相続人とトラブルになった場合は、下記いずれかの方法で対処しましょう。

まずは弁護士に依頼することをおすすめします。

その上で、次の対処法としてトラブルの内容に応じて2~5のいずれかの方法を進めていきましょう。

弁護士に依頼せず自分で対処することも可能です。しかし、法的手続きになると自分で行うのはハードルが高いため、がめつい相続人から遺産を守りきれない・取り戻せない可能性が高くなります。

たとえば調停を申し立てた場合、ほとんどの人は初めて調停を行うため、自分の主張を論理的に伝えることに慣れていません。

その点、弁護士ならば法律と相続の豊富な知識や経験を活かし、調停委員や裁判官が納得できる主張をしてもらえるでしょう。

また、弁護士に依頼すればがめつい相続人を話し合いで説得できる可能性も高くなり、調停や訴訟を起こすことなく解決できることも期待できます。

本文ではがめつい相続人について次の内容をお伝えしていきます。

本記事で分かること
・がめつい相続人がいるとよく起こる遺産相続トラブル
・がめつい相続人への対処法
・がめつい相続人から遺産を守るための予防法

本記事を読めばがめつい相続人への適切な対処法・予防法を知り、実践することができるようになります。

ぜひ最後まで読んでいってくださいね。

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目次

がめつい相続人がいるとよく起こる遺産相続トラブル7つ

亡くなった人の周りにがめつい人がいると、遺産相続でトラブルが起きやすくなります。

よくあるケースとしては次のようなトラブルが挙げられます。

【がめつい相続人がいるとよく起こる遺産相続トラブル7つ】

・身勝手な主張をする
・事前に取り決めた遺産に関する約束を守らない
・介護をしていた相続人の寄与分を認めない
・自分が受けた生前贈与を認めない
・自分に都合の良い内容の遺言を残させる
・財産を使い込む
・相続人ではない人が口を出す

具体的にどのようなケースかひとつずつ見ていきましょう。

身勝手な主張をする

身勝手な主張をするのはがめつい相続人の典型例です。

相続では遺言があるケースを除くと、誰がどれだけ相続するかは法律で定められています(これを法定相続分と呼びます)(民法899条・900条)。

それにも関わらず、がめつい相続人が理不尽な理由を持ち出しては、「全て自分が相続する」などと主張してくることがあります。

具体的な事例を挙げてみましょう。

【身勝手な主張をする具体例】
・母が亡くなり、相続人は長男・次男・三男の3人。長男は「自分が長男だから自分が全て相続すべき」と主張。次男と三男が、兄弟は平等に分けることが法律で定められていると伝えても、長男は全く聞き入れようとしない。

・母が亡くなり、相続人は長男と長女二人。遺産は自宅のみで、生前母と長男が同居していた。相続の話し合いで長男は「同居していたからこの家は当然自分がもらう」と主張。長女が「それならいくらか代償金がほしい」と伝えても、無視して払おうとしない。

このような身勝手な主張をする人は、話しが通じない相手であることが多く、法律の話をしても聞き入れてくれない可能性が高いでしょう。

このままでは話し合いが平行線で、遺産分割協議が成立せず、相続を進められません

また、がめつい相続人が亡くなった人名義の家に住んでいた場合は、遺産分割協議に応じないまま勝手に住み続けることも考えられます。

事前に取り決めた遺産に関する約束を守らない

事前に相続人同士で遺産相続について取り決めしたにも関わらず、いざ相続が始まると約束を守らないケースもあります。

例えば次のような事例です。

【事前に取り決めた遺産に関する約束を守らない具体例】
・母に介護が必要になり、長男が長女に「母の遺産は全て長女に譲るから介護をしてほしい」と依頼し、長女もそれを承諾。しかし、いざ母が亡くなり相続が始まると、長男は「そんなこと言ってない」と言い、半分ずつ遺産分割すべきと主張してきた。

・父が亡くなり、相続人は母・長男・次男の3人。長男が次男に対し、「事業資金が必要だから、相続分を譲ってほしい。その代わり母の相続のときは全部次男が相続していいから」と約束した。ところが、母が亡くなると、長男は「兄弟平等に遺産分割すべき」と主張をひるがえした。次男が「約束が違う」と言っても、長男は「約束なんてしてない」と主張。

たとえ約束するときは守るつもりだったとしても、目の前に遺産があると、がめつい人では欲を抑えられなくなることが考えられるでしょう。

このような場合は法定相続どおりに遺産分割せざるを得ず、不満が残る結果となってしまいます。

介護をしていた相続人の寄与分を認めない

亡くなった人を別の相続人が生前介護していた場合、がめつい相続人はその人の寄与分を認めようとしないことがあります。

寄与分とは、介護などにより亡くなった人の財産維持に貢献した場合、遺産を多く受け取ることができる制度です。

つまり、他の相続人にとって寄与分を認めるということは、自分が取得できる遺産が減るということを意味します。がめつい相続人なら当然なかなか認めようとはしないでしょう。

具体例は下記のとおりです。

【寄与分を認めない事例】
・亡くなった人:母(父はすでに他界)
・相続人:長男・次男・遺産:現金1,000万円

母は亡くなる一年前から寝たきりになり、長男が引き取って介護をしていた。長男は、「介護で貢献した分遺産を多めに受け取りたい」と次男に伝えた。しかし次男は「親の面倒を子どもがみるのは当たり前」と主張。寄与分を巡って争いに発展した。

実際、ある程度の介護は相互扶助の義務であるため、寄与分が認められるためにはかなりの貢献が必要です。その基準は難しく、判例でも寄与分が認められないケースは少なくありません。

寄与分が認められないと、法定相続どおりに遺産分割せざるを得ず、介護の苦労が報われない結果となってしまいます。

自分が受けた生前贈与を認めない

亡くなった人から贈与を受けていたのに、その事実を認めようとしないケースもあります。

相続人が生前に贈与を受けていた場合は、相続のときに遺産に贈与分を持ち戻してから遺産分割を行います。つまり、贈与を受けていた相続人は、自分がもらえる遺産が減ってしまうということです。

具体例を見てみましょう。

【自分が受けた生前贈与を認めない事例】
・亡くなった人:父(母はすでに他界)
・相続人:長男・次男・遺産:現金2,000万円

以前、長男は父からマイホーム購入の頭金として1,000万円の贈与を受けていた。父が亡くなり、次男から「兄さんは以前1,000万円を受け取ったから、その分を含めて遺産分割したい」と言われた。

次男の主張する相続分は次のとおり。

・遺産2,000万円に贈与分1,000万円を持ち戻す。
・3,000万円(2,000万円+1,000万円)を二人で割る→1,500万円ずつ
・長男は1,500万円から贈与分1,000万円を引く
長男の相続分:500万円
次男の相続分:1,500万円

長男は相続分を減らしたくないため、贈与を受けていたことを否定。次男に「贈与を受けていた証拠はあるのか?」と主張し、贈与を巡って争いになった。

上記の例のように、贈与を受けていた証拠を他の相続人が探し出すのは困難な場合があります。証拠がなければ贈与があったことは認められにくいでしょう。

生前贈与が認められないと、法定相続どおりに遺産分割せざるを得ず、不満が残る結果となってしまいます。

自分に都合の良い内容の遺言を残させる

がめつい相続人が自分に都合の良い内容の遺言を残させることがあります。

財産を有する人を甘い言葉でそそのかし、自分に多く財産を残してもらうよう依頼するのです。

具体例を見てみましょう。

【自分に都合の良い内容の遺言を残させる事例】
・長女が生前の父に「お父さんの死後は私に任せて。お葬式もお墓も仏壇も立派にするから。その分遺産を多めに残してね」と話して、長女に有利な遺言を作成してもらった。しかし、実際父が亡くなった後の費用は、長男である兄に支払わせた。長男は後から遺言の作成理由を知り、激怒して争いになった。

・長男が生前の父に「父さんが亡くなると、母さんは心細いだろう。僕が母さんの身の回りをサポートするから、その分財産を多めにほしい」と伝え、父は「全財産を長男に譲る」という遺言を残した。しかし父が亡くなった後、相続した財産を母に使うことはなく、自分の贅沢のために充てていた。

遺言の効力は強く、法定相続よりも優先されます。相続人たちは遺言に従って遺産分割をしなければいけません。

このままではがめつい相続人に有利な相続が実現されてしまい、他の相続人が取得できる財産がなくなる、または少なくなってしまいます

財産を使い込む

がめつい相続人が遺産を勝手に使い込んでしまうケースもあります。

親の片方が亡くなり、残された親も高齢になると、財産管理を一人の子どもに任せることがあります。それを利用して、親のお金を自分のために使ってしまうのです。

具体例を見てみましょう。

【財産を使い込む具体例】
・父はすでに他界。残された母は足が不自由になったため、キャッシュカードを長男に預け、暗証番号も伝えた。長男は定期的に預貯金を下ろし、自分の趣味のために使っていた。

母が亡くなったときには、十分あったはずの財産がほとんど残っておらず、他の兄弟は不審に思い問い詰めた。しかし、長男が使い込んだ証拠が見つからないので、使い込みを明らかにすることができなかった。

財産管理を特定の一人だけに任せていると、相続のときになって初めて使い込みに気づくことが少なくありません。

このままではがめつい相続人が不当に多くの財産を手にすることになってしまいます。

相続人ではない人が口を出す

相続権のない人が口を出してくるというのも、よくあります。亡くなった人の周りにがめつい人がいるために起こるトラブルです。

具体的な事例を挙げてみましょう。

【相続人ではない人が口を出す具体例】
・父が亡くなり、息子の妻が相続権もないのに遺産分割協議の場に参加。同居していたから他の相続人より多くもらうべきだと主張して揉める。

・父が亡くなり、相続人は娘一人のみ(母とは離婚)。しかし父の母親(祖母)が、「息子を育ててきたのは自分だから自分が相続すべき。」と言い、娘に対して相続放棄を要求してきた。

・父が亡くなり、父の内縁の妻が「20年一緒に生活していたから自分も相続すべき」と主張してきた。(※内縁の配偶者に相続権はない)

特に相続人の配偶者が口を挟むのは典型例です。相続人の配偶者に相続権はありません。遺産は個人の財産になり、夫婦共有の財産にはならないのです。

部外者が関わってくると、遺産分割協議がかき乱され、スムーズな相続の妨げになります。

相続権がない人物は相続の場に関わらせないようにしましょう。「あなたは相続人ではないので関係ない」ときっぱり伝えてください。

【例外:特別寄与分の主張は聞くべき】
特別寄与分とは、相続人以外の親族が被相続人を無償で療養看護した場合、相続人に寄与料を請求できる制度のことです(民法1050条)。例えば父が亡くなり、息子の妻が父を生前介護していた場合、特別寄与料を相続人に請求することができます。

がめつい相続人への対処法5つ

がめつい相続人とトラブルになった場合はどのように対処すればいいのでしょうか。

本章以降ではがめつい相続人への対処法を紹介していきます。

【がめつい相続人への対処法】

対処法該当のケース
弁護士に依頼する全てのケースおすすめ

遺産分割調停を起こす
遺産分割で揉めている場合
・身勝手な主張をする相続人がいる
・遺産に関する約束を守らない
・寄与分や生前贈与で揉めている
遺言無効確認請求をする遺言に不審な点がある場合
遺留分を請求する遺言により自分の相続分がない、またはわずかである場合
不当利得返還請求をする遺産を使い込まれた場合

※リンクから移動していただけます。

どのトラブルの場合でも、まずは弁護士に依頼することをおすすめします。

そのうえで、次の対処法としてそれぞれトラブルの内容に応じた対処を進めていきましょう。

これらは弁護士に依頼せず自分で行うことも可能ですが、弁護士のサポートを受けた方が、よりスムーズかつ有利な解決が期待できます。

その理由も含め、それぞれ詳細を見ていきましょう。

対処法①弁護士に依頼する《おすすめ》

がめつい相続人と遺産相続でトラブルになった場合、まずは早めに弁護士に依頼することをおすすめします。

ここでは弁護士について次の内容を紹介していきます。

【弁護士への依頼について】

・弁護士に依頼すべき理由
・弁護士費用の相場|数十万円~数百万円
・弁護士の選び方

弁護士に依頼すべき理由

がめつい相続人への対処法として、弁護士に依頼すべき理由は下記の通りです。

【弁護士に依頼すべき理由】

・代理人として相手と交渉してもらえるから
・有利な条件で解決できるよう導いてくれるから
・調停や訴訟に発展した場合もサポートしてもらえるから
・ストレスが軽減されるから
・相続財産調査を任せられるから

代理人として相手と交渉してもらえるから

弁護士に依頼すれば、代理人として相手と交渉してもらえます。

相続人同士で直接話し合うと、身内であるためにお互い感情的になり、対立が深まりやすくなります。

弁護士が間に入ることで、冷静さを取り戻し、話し合いが進むことが期待できるでしょう。調停や訴訟を起こすことなく解決できる可能性が高くなります。

有利な条件で解決できるよう導いてくれるから

弁護士は依頼者の利益を最大化することが仕事です。少しでも依頼者に有利な条件で解決できるよう全力でサポートしてくれます。

一般の人は相続の専門知識がないため、がめつい相続人の言動にどう対処していいか分からず、不利な展開になるおそれがあります。

弁護士なら、相続の豊富な知識と経験を活かし、依頼者が受け取れるはずの最大限の財産を相続できるよう尽力してくれるでしょう。

調停や訴訟に発展した場合もサポートしてもらえるから

弁護士に依頼すれば、調停や訴訟に発展した場合もサポートしてもらえます。

一般の人が裁判所で論理的に意見を述べることは、不慣れなため難しい部分もあるでしょう。その点弁護士なら、調停委員や裁判官に納得してもらえるように話すことを得意としています。

また、調停や訴訟は申立て手続きが煩雑であるため、一般の人が行うと時間も手間もかかります。弁護士に任せればスムーズに申立て準備ができるでしょう。

ストレスが軽減されるから

弁護士に依頼すると、心身のストレスが軽減できるでしょう。

がめつい相続人を相手に、理不尽な問題に向き合っていると、心身に多大なストレスがかかります。

弁護士という心強い味方を得ることで、心の負荷はだいぶ軽くなるでしょう。相手と直接顔を合わせずに済み、相談にも乗ってもらえます

相続財産調査を任せられるから

相手が遺産を使い込んだ疑いがあるとき、弁護士に依頼すれば相続財産調査を任せられます。

相続財産調査は、一般の人が行うとどこをどう調べていいか分からず、見落とす可能性があります。

弁護士なら相続財産調査のノウハウがあるので、適切に調査を行い、不審な部分を洗い出せることが期待できます。

弁護士費用の相場|数十万円~数百万円

弁護士に依頼すれば多くのメリットを得られるものの、費用が高額になるのではと不安になりますよね。

弁護士に相続トラブルの解決を依頼した場合、かかる費用は数十万円~数百万円が目安です。

依頼者が相続する遺産額が大きくなるほど費用も高くなり、ケースによっては一千万円を超えることもあります。

弁護士費用は下記料金体系で設定するのが一般的です。事務所によって大きく異なるので、依頼の際は必ず見積もりを確認するようにしてください。

遺産分割協議の弁護士費用
着手金(20~40万円) + 報酬金(取得した遺産の4%~16%)+ その他費用(数万円~)

※着手金…依頼時に支払う前払金。

※報酬金…解決時に支払う後払金。取得できた遺産の額に応じて金額設定される(遺産額が上がるにつれ報酬割合は下がることが一般的)

弁護士費用は決して安くはありません。しかし、がめつい相続人のために本来受け取れるはずの遺産を受け取れないことだけは避けたいですね。

がめつい相続人から遺産を守るためには、弁護士の力を借りることを強くおすすめします。

弁護士の選び方

弁護士を選ぶときは、相続に強い弁護士を選ぶようにしましょう。

弁護士にはそれぞれ、交通事故・債務整理・刑事事件などの得意分野があります。相続を専門とする弁護士もいれば、相続を一度も扱ったこともない弁護士もいます。

もし相続の実績が不十分な弁護士を選んでしまったら、前述したようなメリットが十分に得られない可能性が高まります。

満足いくサポートを受けるために、必ず相続の実績が十分な弁護士を選ぶようにしてください。

確認方法としては、ホームぺージに掲載されている実績を確認するか、初回相談のときに質問してみるようにしましょう。

対処法②遺産分割調停を起こす

遺産分割で揉めている場合は、遺産分割調停を起こす方法があります。

ここでは遺産分割調停について次の内容を見ていきましょう。

【遺産分割調停について】

・遺産分割調停とは
・遺産分割審判とは
・遺産分割調停の申立て方法

遺産分割調停とは

調停とは調停委員に間を取りもってもらい、話し合いにより解決を図る裁判手続きのことです。遺産分割調停では、誰がどの遺産をどれだけ相続するかを決めていきます。

調停委員とは、中立の立場で双方の意見を聞きながら、解決に向けてアドバイスなどを提案する役割を担う人物のことです。

調停委員は根拠のない主張は聞き入れないので、がめつい相続人の身勝手な言い分やでたらめは認められないでしょう

相続人全員が話し合った内容に合意すれば調停は成立します。しかし、がめつい相続人なら合意に応じない可能性も高いでしょう。

一人でも合意しない場合は調停不成立となり、審判に進みます。

遺産分割審判とは

遺産分割審判では裁判官が遺産分割方法を決めます。

調停では相続人全員が合意すれば、どんな遺産分割内容でも問題ありませんでしたが、審判では原則法律に沿った遺産分割内容が言い渡されます。

そのため、やはりここでもがめつい相続人の根拠のない主張は通らないでしょう。

相続人は必ず審判のとおりに遺産分割を行わなければいけません。これにより、最終的には遺産分割問題が解決できます。

ただし、法律に沿った遺産分割内容が言い渡されるので、申立人の希望も通るとは限りません。

遺産分割調停の申立て方法

遺産分割調停の申立方法を下表にまとめましたので、参考にしながら進めてください。

【遺産分割調停の申立て方法】

申立先下記いずれか
・相手方相続人のうち一人の住所地の家庭裁判所
・当事者が合意で決めた家庭裁判所
裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所



必要書類
・申立書(裁判所HPからダウンロード可→遺産分割調停の申立書 | 裁判所
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票または戸籍の附票
・相続財産を証明する書面(残高証明書や固定資産評価証明書など)
※個別のケースによって追加で必要な書類の提出が求められます
受付時間平日8:30~17:00(昼休憩有り)
費用収入印紙1200円分
・連絡用の郵便切手代

申立て準備には約1ヶ月ほど期間を要します。これは主に必要書類を集めるのに時間がかかるためです。

必要書類の取得だけ弁護士に依頼することも可能なので、自分で揃えるのが難しいと感じた場合は依頼を検討してみましょう。

申立て方法や必要書類の詳細については裁判所のHPでご確認いただけます。

遺産分割調停 | 裁判所

対処法③遺言無効確認請求をする

遺言の内容に不審な点がある場合は、遺言無効確認請求をするという方法があります。

「こんな遺言が残っているのはおかしい」と感じたら、遺言無効確認請求ができないか検討してみましょう。

ここでは遺言無効確認請求について次の内容を紹介していきます。

【遺言無効確認請求について】

・遺言無効確認請求とは
・遺言無効確認請求をする方法

遺言無効確認請求とは

遺言無効確認請求とは、遺言が無効であることを裁判所に認めてもらうための手続きです。

遺言作成にがめつい相続人がかかわっている疑いがある場合は、無効になる要素がないか確認してみましょう。

遺言は下記7つのいずれかにあてはまる場合は無効になります。

【遺言について】

①遺言を残した人が、認知症などで遺言能力が欠如していた(民法961条、民法973条)
②遺言書の形式が法律で定められた要件を守っていない(日付や押印がない等)(民法960条)
③遺言の内容が、社会常識に反している(不倫相手に遺産を譲る等)(民法90条)
④錯誤・詐欺・強迫によって遺言を作成させられた(民法95条、96条)
⑤公正証書遺言の場合、証人になれない人(未成年者や相続人など)が証人になっていた(民法969条1号)⑥複数人が共同で作成した(民法975条)
⑦一度撤回したことがある(※例外あり)(民法1025条)

これらを裁判で証明できたら遺言は無効になる可能性が高いでしょう。

遺言が無効になった場合は、法定相続分に沿って遺産を分割することになります。

遺言無効確認請求をする方法

遺言無効確認請求をするには、まずは話し合いで遺言無効を主張します。

しかし、がめつい相続人なら応じない可能性が高いです。その場合は調停、訴訟へと進んでいきます。

遺言無効確認請求の調停と訴訟については、裁判所のホームページに案内が掲載されていません。

お近くの裁判所(各地の裁判所)か弁護士にお尋ねください。

対処法④遺留分を請求する

遺言に効力があり、遺言に従うと自分の相続分がない、またはわずかである場合、遺留分侵害額を請求することができます。

ここでは遺留分について次の内容を紹介していきます。

【遺留分について】

・遺留分とは
・遺留分の割合
・遺留分侵害額を請求する方法

遺留分とは

遺留分とは法定相続人(配偶者・子どもなど直系卑属・父母など直系尊属)に保証されている最低限度の相続分のことです。亡くなった人の家族の生活を保障するためにこの制度が設けられました。

遺言などにより相続できる財産が遺留分に満たない場合は、遺産を多く譲り受けた人に対して遺留分侵害額を請求することができます。

つまり、がめつい相続人が遺言により遺産を全て相続したとしても、その者に対して遺留分侵害額を請求することができるのです

遺留分の割合

遺留分の割合は民法で定められており、相続人の関係性や人数によって変わります(民法1042条)。

【遺留分の割合】

法定相続人の組み合わせ遺産額に対する遺留分の割合
配偶者子ども(直系卑属)親(直系尊属)
配偶者のみ1/2
配偶者と子ども1/41/4
配偶者と親2/61/6
子どものみ1/2
親のみ1/3

※子ども・親が複数人いる場合は表の割合からさらに人数で割る

例えば法定相続人が長男と次男の二人で、「長男に全財産8,000万円を譲る」と書かれた遺言書が見つかったとします。この場合、次男は8,000万円の1/4(子の遺留分1/2×子の人数分1/2)である2,000万円を長男に請求することができます。

遺留分を請求する方法

がめつい相続人から遺留分を受け取るには、まず話し合いで請求します。

相手が話し合いに応じない場合は「遺留分侵害額請求」調停を申し立てましょう。

調停の申立ては下記を参考にして進めてください。

【遺留分侵害額の請求調停の申立て方法】


申立先
・相手方相続人のうち一人の住所地の家庭裁判所
または
・当事者が合意で決めた家庭裁判所
裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所

期限
下記いずれか早い方
相続開始と遺留分侵害を知ったときから1年以内
相続開始から10年以内



必要書類
・申立書(裁判所HPからダウンロード可→遺留分侵害額の請求調停の申立書 | 裁判所
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・遺言書
・検認済証明書(自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合)
・相続財産を証明する書面(残高証明書や固定資産評価証明書など)
※個別のケースによって追加で必要な書類の提出が求められます
受付時間平日8:30~17:00(昼休憩有り)
費用収入印紙1200円分/人
・連絡用の郵便切手代

遺留分の請求には期限があるので注意しましょう。

調停制度に関する内容は遺産分割調停とはでご確認ください。

申立て方法や必要書類の詳細については裁判所のHPでご確認いただけます。

遺留分侵害額の請求調停 | 裁判所

対処法⑤不当利得返還請求をする

遺産をすでに使い込まれた疑いがある場合は、不当利得返還請求という方法があります。

ここでは不当利得返還請求について次の内容を紹介していきます。

【不当利得返還請求について】

・不当利得返還請求とは
・不当利得返還請求をする方法

不当利得返還請求とは

不当利得返還請求とは、正当な理由なしに利益を得て他人に損失を及ぼした者に対して、利益の返還を求めることです。

つまりここでは、がめつい相続人が亡くなった人の財産を使い込んでいた場合、本来その財産の一部を受け取れるはずであった他の相続人が、その者に対して財産を戻すよう求めることを指します。

ただし、不当利得返還請求を認めてもらうには証拠が必須です。

また、不当利得返還請求は期限があります。「使い込みを行ったときから10年」または「使い込みを知ったときから5年」を過ぎたら請求の権利が消滅してしまうので注意してください。

不当利得返還請求をする方法

不当利得返還請求をする方法は、まずは話し合いで財産使い込みを主張します。

しかしがめつい相続人なら認めない可能性が高いので、その場合は調停、訴訟へと進んでいきます。

不当利得返還請求の調停と訴訟については、裁判所のホームページに案内が掲載されていません。お近くの裁判所(各地の裁判所)か弁護士にお尋ねください。

生前からの対策が重要|がめつい相続人から遺産を守るための予防法6つ

がめつい相続人から遺産を守るためには、トラブルが起きないように事前に対策しておくことが大切です。

トラブルが起きてしまった後では、対処に時間も労力もかかります最悪の場合、遺産を守りきれないケースもあるでしょう。

本章ではがめつい相続人から遺産を守る予防法を6つ紹介します。

【がめつい相続人から遺産を守るための予防法6つ】

・遺言を残してもらう
・生命保険を活用する
・がめつい相続人に財産管理をさせない
・がめつい相続人と口約束はしない
・相続と法律の知識を身につける
・部外者は口出しさせない

トラブルを防ぐためには生前から対策を行っておくことが重要です。

財産を有する人が元気なうちから、早めに話し合って対策を進めるようにしましょう。

遺言を残してもらう

遺言を残してもらうのは、がめつい相続人から遺産を守るのに効果的な方法です。

遺言について次の内容を紹介していきます。

【遺言について】

・遺言の効果
・遺言の残し方
・注意!遺留分に配慮すべき

遺言の効果

遺言はがめつい相続人への対策として最も効果的な方法のひとつです。

遺言がある場合は、原則遺言の内容に従い相続を進めていきます。これは亡くなった人の意思が、法律で定められた相続分よりも優先されるためです(民法902条・964条)。

遺言で「現金2億円を長男に、株1億円分を次男にゆずる」と書かれていれば、その通りに遺産分割しなければいけません。

相続財産を有する人には、相続人が遺産分割で揉めないように、遺言を残してもらうよう依頼しましょう。

遺言の残し方

遺言の作成方法は、遺言をどの形式で作成するかによって異なります。

下記2つの遺言形式が安全性と確実性の高さからおすすめです。それぞれの特徴と作成方法についてまとめたので、参考にして進めていくようにしてください。

【遺言の種類】

遺言の種類特徴作成方法

公正証書遺言
・公証人に遺言書を作成してもらい、公証役場で保管してもらう
・安全性と確実性が最も高い
・費用が高額になることも
Q4.公正証書遺言は、どのような手順で作成するのですか。 | 日本公証人連合会

自筆証書遺言(法務局保管制度利用)
・自身で作成した遺言を法務局に保管してもらう
・安全性と確実性が比較的高い
・費用は3,900円/件
自筆証書遺言書保管制度

公正証書遺言か自筆証書遺言で迷う場合は、下記サイトの説明をご参照ください。

2 遺言 | 日本公証人連合会(5 自筆証書遺言と公正証書遺言の相違)

注意!遺留分に配慮すべき

遺言を作成してもらうときは、他の相続人への遺留分にも配慮しましょう。

遺留分とは対処法④でも説明しましたが、法定相続人に最低限保証されている相続分です。

「全財産を〇〇に譲る」という極端な内容の遺言を残した場合、がめつい相続人から遺留分が請求される可能性があります

そうなると結局遺留分について揉めてしまうことになるので、法定相続人の遺留分に配慮しながら、遺言内容を考えてもらうようにしましょう。

生命保険を活用する

生命保険を活用するのも、がめつい相続人に遺産を渡さないために有効な方法です。

保険金は受取人が相続人である場合、相続財産としてみなされません。

そのため遺産分割の対象にはならず、受取人固有の財産になります原則遺留分の対象にもなりません。

生命保険は金額や入れる条件が限られていますが、利用できる場合は上手に活用していきましょう。

【生命保険金は相続税の課税対象になる】
生命保険金は遺産分割の対象にはなりませんが、税務上は相続財産として課税対象になります(相続税法3条)。ただし非課税枠があるので、《500万円×法定相続人の数》までは相続税がかかりません(相続税法12条)。

がめつい相続人に財産管理をさせない

がめつい相続人には、相続財産を有する人の財産管理をさせないようにしましょう。

冒頭で紹介したとおり、一人の相続人に財産管理をさせることはトラブルの元です。財産隠しや使い込みにつながるおそれがあります。

相続権を有する人にそのリスクを伝え、他の信頼できる人に財産管理を任せるよう提案しましょう。弁護士などの専門家なら、費用はかかりますが、より安心して預けられます。

万が一がめつい相続人が財産管理をすることになったら、定期的に財産状況を確認するようにしましょう。帳簿をつけてもらい、領収書も残してもらって、不審な支出がないか目を光らせておくべきです。

自分が財産管理をすることになった場合も、相続のときに言いがかりをつけられないよう、支出の証拠は残しておきましょう。

がめつい相続人と口約束はしない

がめつい相続人とは安易に相続に関する口約束はしないようにしましょう。

冒頭で紹介したとおり、いざ相続が起こると約束が破られてしまうおそれがあるからです。

「母が亡くなったとき遺産は全て譲るから、母の介護をしてほしい。」

「父の遺産を譲ってほしい。その代わり母が亡くなったときは遺産を全て譲るから。」

このような約束事は避けるのがベストですが、もし取り決めるなら必ず念書を書いてもらうようにしてください。

後から「偽造だ」と言いがかりをつけられないよう、署名捺印もしてもらいましょう。

行政書士や公証役場に作成を依頼すれば、より確実性が増すので安心です。

相続と法律の知識を身につける

がめつい相続人から遺産を守るためには、自身も相続と法律の知識を身につけることが大切です。

相続では知識がないために損してしまうケースが少なくありません。

がめつい相続人は相続について積極的に調べているので、あの手この手で少しでも遺産を多く取得しようとしてきます。それに対抗するためには自身も正しい知識を身につけなければいけません。

例えば、がめつい相続人が相続財産を有する人から2,000万円の生前贈与を受けており、亡くなったときには遺産はほとんど残っていなかったとします。

そのような場合、生前贈与にも遺留分を請求できることを知っていれば、侵害された遺留分500万円だけでも取り戻せる可能性があります(相続人が子ども2人の場合の金額)。

このように、相続では一般的に知られていない権利や制度がいくつもあります。

少しずつ勉強して、スムーズな遺産相続を実現できるようにしましょう。

当事務所では遺産相続に関する様々なコラムを掲載しています。これらの記事を読むだけでも相続への理解が深まるので、ぜひ気になるものから読み進めてみてくださいね。

相続トラブル解決コラム

部外者は口出しさせない

相続権がない部外者には相続に口出しさせないようにしましょう。

冒頭で紹介したとおり、相続人ではない人物が口を挟んでくると、高確率でトラブルに発展します。

たとえ「私は相続について詳しいから、仲裁役になってあげる」と言われても断ってください。身内や知り合いが、誰の肩を持つこともなく中立でいるのは難しいことです。

他の相続人たちからも、「本当は〇〇に有利になるよう話を進めているのではないか?」と疑いが生じるおそれもあります。

遺産分割協議を含め、相続は相続人だけで進めることが鉄則です。

まとめ

ここまで遺産相続でがめつい人について解説してきました。

あらためて本文の内容を振り返りましょう。

まず、がめつい相続人がいるとよく起こる遺産相続トラブル7つについて紹介しました。

がめつい相続人がいるとよく起こる遺産相続トラブル7つ
・身勝手な主張をする
・事前に取り決めた遺産に関する約束を守らない
・介護をしていた相続人の寄与分を認めない
・自分が受けた生前贈与を認めない
・自分に都合の良い内容の遺言を残させる
・財産を使い込む
・相続人ではない人が口を出す

続いて、がめつい相続人とトラブルになった場合の対処法についてお伝えしました。

がめつい相続人への対処法5つ
・弁護士に依頼する《おすすめ》
・遺産分割調停を起こす
・遺言無効確認請求をする
・遺留分を請求する
・不当利得返還請求をする

がめつい相続人から遺産を守るためには、トラブルが起きないように生前から対策しておくことが大切です。

がめつい相続人から遺産を守るための予防法6つ
・遺言を残してもらう
・生命保険を活用する
・がめつい相続人に財産管理をさせない
・がめつい相続人と口約束はしない
・相続と法律の知識を身につける
・部外者は口出しさせない

以上、本記事をもとにがめつい相続人から遺産を守る・取り返すことができ、公平な遺産相続を実現できることを願っております。

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