顧問弁護士とは、会社で発生するさまざまな法律問題について、継続的に事業主や法務担当者に対して助言を行うことで法的トラブルを未然に防ぎ、また、発生したトラブルに対し、交渉、訴訟などにより解決する弁護士のことです。

セカンド顧問弁護士は、会社の状況やニーズに合わせて、様々な役割を担います。 大きく分けて、下記の３つの役割が考えられます。
①　専門分野のコンサルティング
メインの顧問弁護士がカバーできない専門分野において、専門的な知識や経験に基づいたアドバイスやサポートを提供します。
例1）M&Aや事業承継：メインの顧問弁護士が日常的な企業法務を得意とする場合でも、M&Aや事業承継といった専門性の高い案件が発生した際、M&Aや事業承継に精通したセカンド顧問弁護士に依頼することで、より専門的なアドバイスや手続きサポートを受けられます。
例2）知的財産・IT関連：近年、IT関連事業を行う企業が増加しており、それに伴って、知的財産やシステム開発に関する法的問題が複雑化しています。 メインの顧問弁護士が対応できない場合、知的財産権やIT法務に強い弁護士をセカンド顧問弁護士として迎え入れることで、専門性の高いアドバイスや契約書審査などを依頼できます。
例3）国際取引・海外進出：海外進出や国際取引を行う企業は、現地の法律や商習慣に関する専門知識が必要となります。 国際法務に精通した弁護士をセカンド顧問弁護士として置くことで、海外取引における契約交渉や紛争解決などをスムーズに行うことができます。
②セカンドオピニオンの提供
重要な意思決定を行う際、メインの顧問弁護士とは異なる視点からの意見やアドバイスを提供します。
例1）訴訟リスクの判断：訴訟に発展する可能性がある案件で、メインの顧問弁護士の意見に加えて、セカンドオピニオンを得ることで、より多角的な視点からリスクを分析し、より最善な対応策を検討することができます。
例2）契約書の内容チェック：高額な取引や重要な契約を締結する際、セカンド顧問弁護士に契約書の内容をチェックしてもらうことで、見落としやリスクを減らし、より安全な取引を実現できます。
➂ 緊急時・一時的な案件への対応
　メインの顧問弁護士が多忙な場合や専門外の案件が発生した場合に、一時的に対応します。
例1）メインの顧問弁護士が病気や休暇の場合：顧問弁護士が不在の間もセカンド顧問弁護士がいれば、企業法務の停滞を防ぎ、スムーズな企業活動を継続できます。
例2）突発的なトラブル発生時 ：予期せぬトラブルが発生した場合でも迅速に対応できるよう、セカンド顧問弁護士と事前に契約を結んでおくことで、いざという時に安心です。
　上記以外にも、セカンド顧問弁護士は、企業のニーズに合わせて柔軟に対応します。 専門分野のコンサルティング、セカンドオピニオン、緊急時対応など、状況に応じて適切な役割を担うことで企業の成長と発展を力強くサポートします。

顧問弁護士の費用は、契約内容や企業の規模、依頼する業務の範囲、弁護士の経験や専門性などによって大きく異なります。一般的な相場は、費用体系ごとに以下のとおりです。
①月額固定料金:
中小企業:月額 3万円〜5万円
大企業:月額10万円以上
②時間制料金:
月に一定時間の法律相談や業務対応を含めて、超過分は別途時間制料金（1時間あたり1万円から3万円程度）が発生する契約
③案件ごとの追加費用:
顧問契約の範囲を超える特別な業務や訴訟対応が必要な場合、別途費用が発生する契約
④成功報酬:
特定の成果に応じて報酬を支払う契約形態

　上記①ないし④の一部または全部が組み合わされて契約内容となることが多いです。複数の弁護士や法律事務所から見積もりや提案を受け、企業のニーズに最も合致する弁護士を選ぶことをおすすめします。なお、ニーズに合わせて、オーダーメイドの契約内容や料金設定が可能な場合もあります。具体的な費用は各弁護士や法律事務所によって異なるため、直接問い合わせて確認することが最も確実です。

法的トラブルは、当然ながら、どの会社も起こそうと思って起きているものではありません。知らず知らずのうちに、法的トラブルに発展しかねない契約を締結してしまったり、事業活動を行ったりすることで、大きな損害が起きていることがほとんどです。現時点では弁護士に相談するようなことがないとしても、今後、事業の拡大を予定していたり、新規事業を開始しようとしているのであれば、現状において法的トラブルが発生していないとしても、顧問契約を締結するメリットは多くあります。
　まずは、お守り替わりに低額な顧問契約から始めてみることは有効でしょう。また、顧問契約という形式でなくとも、コストとニーズを慎重に考慮し、必要に応じてスポットでの相談・依頼を利用するなどの方法もあります。

顧問弁護士が経営者の個人的なトラブルに対応できるかは、契約内容や具体的な状況によります。しかし、普段から話しやすい関係性を築いている場合、身近な弁護士である顧問弁護士に相談に乗って欲しいという経営者の方は多いでしょう。顧問弁護士は、経営者の個人的トラブルに関しても、第一の相談先として気軽に相談に乗ってくれることも多いです。
　ただし、経営者の個人的な法的トラブルに顧問弁護士が相談に乗ることが会社の利益と相反する場合、相談に乗れないときがあります。まずは、現在の顧問弁護士に相談し、個人の問題について対応可能か、確認してみましょう。必要に応じて、別の弁護士に依頼することも検討してください。

大企業と中小企業では、顧問弁護士に求められる役割や業務内容が異なります。大企業では国際取引、M&A（合併・買収）、株式公開、知的財産権の管理、金融取引など、複雑で専門性の高い法的問題に対応することが求められます。一方、中小企業では契約書の作成・レビュー、労務管理、取引先とのトラブル解決など日常的な法務を幅広くサポートします。つまり、経営者との密接な関係を構築し、幅広い法務ニーズに対応する総合的なサポートが求められます。
　企業の規模や業種、経営方針に応じて、適切な顧問弁護士を選定し、効果的な法務体制を構築することが重要です。

顧問弁護士を依頼する場合、毎月一定額の顧問料が発生します。これは小規模な企業や法的問題があまり発生しない企業にとっては負担になり得ます。このようなデメリットに対しては、発生する法律問題の数や内容に応じて、低額な顧問料金プランから開始してみると良いでしょう。
　また、法律問題の対応を全て顧問弁護士に任せることで、企業内の法務担当者が育たず、法務の内製化を図ることができないというデメリットも考えられます。このようなデメリットに対しては、顧問弁護士から受けた助言などを社内マニュアルに落とし込むなどの工夫をしていくと良いでしょう。

もちろん、初回相談は無料で対応しています。現状で会社が抱えている問題や将来予想される問題点を弁護士に相談してみて、具体的なアドバイスを得られるか、信頼関係を構築できそうかなど確認してみるといいでしょう。また、会社の将来的なビジョン、理想とする未来に共感してくれるかという点も、顧問弁護士との相性を考える上では重要ですので、初回相談時に確認してみましょう。

セカンド顧問弁護士の選び方は、会社にとって非常に重要です。適切な弁護士を選ぶことで、専門的な知識や経験に基づいた質の高いアドバイスやサポートを得られ、リスク管理や会社の成長を促進することに繋がります。
以下のポイントを参考に、自社のニーズに合ったセカンド顧問弁護士を見つけましょう。
①専門分野・業界経験
メインの顧問弁護士がカバーしていない、または強化したい分野の専門知識を持つ弁護士を選ぶ。
例：M&A、事業承継、知的財産、国際法務、IT法務、労働問題など
　また、業界に精通している弁護士を選ぶことで、業界特有の慣習やリスクを理解した上で、より的確なアドバイスを得られる可能性が高まります。
②実績・経験
　豊富な経験を持つ弁護士は、様々な問題に対して冷静かつ適切に対応できる可能性が高いです。特に、過去の解決事例と類似するケースがあれば、より具体的なアドバイスを期待できます。弁護士のウェブサイトや法律事務所のパンフレットなどで実績を確認しましょう。
➂コミュニケーション能力
　弁護士とのコミュニケーションは非常に重要です。会社側の立場を理解し、専門用語を分かりやすく説明してくれる弁護士を選びましょう。また、レスポンスが早く、相談しやすい雰囲気を持っていることも重要なポイントです。
④料金体系
　セカンド顧問弁護士の費用は、弁護士や法律事務所によって異なります。料金体系（顧問料、時間単位料金、成功報酬など）や費用発生の範囲などを事前に確認し、自社の予算に合った弁護士を選びましょう。
⑤相性
　会社と弁護士は信頼関係が大切です。経営理念やビジョンを理解し、共感してくれる弁護士を選びましょう。
　実際に会って話してみることで、相性を見極めることが重要です。
<セカンド顧問弁護士を探す方法>
紹介: メインの顧問弁護士や取引先企業、金融機関などに紹介を依頼する。
弁護士会: 各弁護士会が運営する弁護士紹介サービスを利用する。
インターネット検索: 専門分野や地域などで絞り込み、弁護士のウェブサイトや法律事務所の情報を比較検討する。
複数の弁護士を比較検討し、最適なパートナーを見つけ出すことが大切です。

セカンド顧問弁護士は、いざという時に備えておくことが理想ですが、具体的に下記のようなタイミングで依頼を検討すると良いでしょう。
①日常的なタイミング
　㋐会社設立後、事業拡大時など企業のフェーズが変わるタイミング: 事業内容や規模の変化に伴い、法的リスクも変化します。新たなフェーズに合わせた専門知識を持つセカンド顧問弁護士と契約することで、より手厚いサポートを受けられます。
　㋑既存の顧問弁護士との関係を見直したい時: 長い間、同じ顧問弁護士に依頼していると関係性がマンネリ化してしまうこともあります。セカンドオピニオンを得ることで、客観的な視点を取り入れ、より良い関係性を築ける可能性があります。
　㋒顧問弁護士との契約更新時: 契約更新のタイミングは、現状の課題や今後のニーズを再評価し、セカンド顧問弁護士の必要性を検討する良い機会です。
②トラブル発生時など
　㋐専門性の高い案件が発生した時: M&A、事業承継、知的財産関連、国際取引、大規模な訴訟など、メインの顧問弁護士では対応が難しい案件が発生した場合は、速やかに専門性の高いセカンド顧問弁護士に相談しましょう。
　㋑緊急性の高いトラブルが発生した時: 不祥事対応、顧客とのトラブル、労使問題など、迅速な対応が必要な場合、すぐに相談できるセカンド顧問弁護士がいると安心です。
　㋒セカンドオピニオンが必要だと感じた時: 重要な契約締結前や訴訟リスクの高い案件など、セカンドオピニオンを得ることで、より多角的な視点で判断材料を増やし、リスクヘッジに繋げられます。
➂その他
　セミナーや勉強会への参加: 法律事務所が主催するセミナーや勉強会に参加することで、最新の法務情報や事例を学ぶとともに、複数の弁護士と直接話す機会が得られます。セカンド顧問弁護士は、後から必要だと感じても、すぐに契約できない場合があります。 日頃からアンテナを張り、必要なタイミングを見極めておきましょう。