顧問弁護士とは、会社で発生するさまざまな法律問題について、継続的に事業主や法務担当者に対して法的な助言をし、法律トラブルを未然に防ぎ、また、発生したトラブルを交渉、訴訟などにより解決する弁護士のことです。

顧問弁護士は、クレーム対応において企業の頼れる味方として、以下のように多岐にわたる役割を担います。法律という確固たる側面から判断基準を提供してくれる顧問弁護士は、クレーム対応においてとても重要な役割を果たすことができます。
１. 契約書の作成・レビュー
トラブルを未然に防ぐために、顧客との契約書作成やチェックを行い、法的リスクを最小限に抑えます。また、コンプライアンス研修の実施や社内規程の見直しなどをサポートし、法令遵守を徹底することで、そもそもクレームが発生しにくい環境作りを支援します。
さらに、日々の業務で生じる法的疑問に対し、従業員に対して適切なアドバイスを提供することで、従業員が自信を持って業務に取り組めるようサポートします。
２. クレームが発生したときも、事実関係の確認や証拠保全の必要性などを判断し、企業が取るべき初期対応を迅速かつ的確にアドバイスします。
また、相手方との交渉においては、企業に代わり、法律に基づき妥当な範囲内で顧客に対応することができます。
ときには、内容証明郵便などを用いて、相手方への請求や、企業側の正当性を主張します。
３. もし、訴訟に発展した場合でも、企業の利益を保護するため、企業を代理して訴訟手続きを行い、裁判所への書面提出や出廷などを担当することができます。
４．さらに、クレームの内容がSNS等に投稿されることで第三者の目に触れ、これにより企業の信用が毀損されるおそれがある場合には、法的手段をもって投稿の削除や損害賠償請求をすることも可能です。

顧問弁護士の費用は、契約内容や企業の規模、依頼する業務の範囲、弁護士の経験や専門性などによって大きく異なります。一般的な相場としては、費用体系ごとに以下のとおりです。
①月額固定料金:
中小企業:月額 3万円から5万円
大企業:月額10万円以上
②時間制料金:
月に一定時間の法律相談や業務対応を含めて、超過分は別途時間制料金（1時間あたり1万円から3万円程度）が発生する契約
③案件ごとの追加費用:
顧問契約の範囲を超える特別な業務や訴訟対応が必要な場合、別途費用が発生する契約
④成功報酬:
特定の成果に応じて報酬を支払う契約形態
上記①ないし④の一部または全部が組み合わされて契約内容となることが多いです。
複数の弁護士や法律事務所から見積もりや提案を受け、企業のニーズに最も合致する弁護士を選ぶことをおすすめします。なお、企業の業種や法務ニーズに合わせて、オーダーメイドの契約内容や料金設定が可能な場合もあります。具体的な費用は各弁護士や法律事務所によって異なるため、直接問い合わせて詳細を確認することが最も確実です。

法律トラブルは、当然ながら、どの会社も起こそうと思って起きているものではありません。知らず知らずのうちに、法律トラブルに発展してしまうような契約を締結してしまったり、事業投資をしてしまったりすることで、いつの間にか大きな損害が起きていることがほとんどです。現在、弁護士に相談するようなことがないとしても、今後、事業の拡大を予定してたり、新規事業を開始しようとしているのであれば、現状において法的トラブルが発生していないとしても、顧問契約を締結するメリットは多くあります。
まずは、お守り替わりに、低額な顧問契約から始めてみることは有効でしょう。また、顧問契約という形式でなくとも、コストとニーズを慎重に考慮し、必要に応じてスポット相談・スポットで弁護士依頼を利用するなどの方法もあります。

顧問弁護士が経営者の個人的なトラブルに対応できるかは、契約内容や具体的な状況によりますが、普段から話しやすい関係性を築いている場合、身近な弁護士である顧問弁護士に相談に乗って欲しいという経営者の方はとても多いです。ただし、経営者の個人的な法律トラブルに顧問弁護士が相談に乗ることが、会社の利益と相反する場合は、相談にできない場合があります。まずは現在の顧問弁護士に相談し、個人の問題について対応可能か、確認してみましょう。必要に応じて、個人として別の弁護士に依頼することも検討してください。

顧問弁護士を依頼する場合、毎月一定の顧問料が発生します。これは小規模な企業や、法律問題があまり発生しない企業にとっては負担になることがあります。このようなデメリットに対しては、発生する法律問題の数、内容により低額な顧問料金プランから顧問契約を開始してみると良いでしょう。
また、法律問題の対応をすべて顧問弁護士に任せることで、企業内の法務担当者が育たず、法務の内製化を図ることができないというデメリットも考えられます。このようなデメリットに対しては、顧問弁護士から受けた助言などを社内マニュアルに落とし込むなどの工夫をしていくと良いでしょう。

もちろん、初回の相談は無料で対応しています。現状で会社が抱えている問題や将来予想される問題点を弁護士に相談してみて、具体的なアドバイスを得られるか、信頼関係を構築できそうかなど、確認してみるといいでしょう。また、会社の将来的なビジョン、理想とする未来に共感してくれるかという点も、顧問弁護士との相性を考えるうえでは重要ですので、初回相談時に確認してみましょう。

クレームの早期解決や企業へのダメージを最小限に抑えるためには、クレーム対応について、どの顧問弁護士に依頼するかが極めて重要です。
そこで、クレーム対応に強い顧問弁護士を選ぶ上で、特に重視すべきポイントを５つご紹介します。
1. 豊富な経験と実績があるか
過去の対応事例を確認し、特に貴社と同じ業界や、類似のクレーム対応経験が豊富かどうかを確認しましょう。
訴訟になった事例だけでなく、交渉によって解決した事例なども参考にすると、弁護士の実力をより深く知ることができます。
ホームページやパンフレットに掲載されている事例だけでなく、法律相談などの面談の際に具体的な事例について詳しく説明してくれる弁護士を選ぶといいでしょう。
2. 顧問弁護士の注力分野・専門分野がクレーム対応をカバーしているか
クレームの内容によって、適切な専門分野を持つ弁護士は異なります。
例えば、製造物責任に関するクレームであれば、製造物責任に強い弁護士を選ぶべきです。
消費者のクレームが多い場合は、消費者契約法に精通した弁護士を選ぶことが重要になります。
弁護士の専門分野は、弁護士事務所のホームページや弁護士紹介サイトなどで確認できますのでじっくり検討しましょう。
3. 企業との相性がいいかどうか
企業理念や顧客対応方針に共感し、理解してくれる弁護士を選びましょう。企業によっては、裁判にせず円満な解決を望む場合もあるでしょう。
弁護士の対応方針が、企業の考え方と合致していることが重要です。面談の際に、自社の企業理念や顧客対応方針を伝え、弁護士の考え方をしっかり確認しましょう。
4. コミュニケーション能力があるかどうか
企業の状況や意向を丁寧にヒアリングし、分かりやすく説明してくれる弁護士を選びましょう。
専門用語をなるべく使わずに説明してくれる弁護士であれば、安心して相談できます。
また、こまめに連絡を取り、状況報告を密にしてくれる弁護士だと、より信頼関係を築きやすくなります。連絡手段についてもチャット等、気軽に連絡を取れる体制が整備されている顧問弁護士だと安心でしょう。
5. 費用について細かく説明してくれるかどうか
顧問料や着手金、報酬金など、費用体系を明確に提示してくれる弁護士を選びましょう。
また、費用に関する疑問点があれば、遠慮なく質問し、納得した上で契約することが大切です。
これらのポイントを踏まえ、複数の弁護士事務所に問い合わせたり、面談をしたりして、自社にとって最適な顧問弁護士を選びましょう。

クレーム対応を顧問弁護士に依頼するタイミングは、できるだけ早くが良いとされています。 なぜなら、弁護士に相談するのが遅くなればなるほど、対応が後手に回り、解決が困難になる場合があるからです。
具体的には、以下の３つのタイミングで相談することをおすすめします。
１. クレーム発生直後
クレームが発生したら、すぐに顧問弁護士に連絡し、状況を報告しましょう。 この段階では、まだ事態が深刻化する前に、弁護士から初期対応に関するアドバイスを受けることができます。
具体的な状況（クレームの内容、発生時期、相手方の様子など）を整理して伝えましょう。
証拠となりうる資料（契約書、請求書、メール履歴、録音データなど）があれば、それも提示しましょう。
早期解決のために、弁護士からどのような対応を取れば良いかアドバイスをもらうことが重要です。
２. 事態が深刻化したとき
相手方と直接交渉しても話が進まない、相手方が弁護士を立ててきた、多額の損害賠償を請求された、訴訟を提起すると言われた等、事態が深刻化した場合には、すぐにでも顧問弁護士に相談し、対応を依頼する必要があるでしょう。 弁護士に依頼するのが遅くなると、企業にとってより不利な状況になる可能性があります。
３. クレーム発生前の段階
企業を取り巻く様々な取引に際し、未然にクレームの発生自体を防ぐような対策をとりたいときも、顧問弁護士への相談が有益です。
例えば、顧客との契約書を作成する際に、トラブルを回避するための条項を入れたり、社員向けにクレーム対応に関する研修を実施したり、クレームを未然に防ぐ手段はあります。
クレーム対応は、迅速かつ適切な対応が求められます。 少しでも不安を感じたら、できるだけ早く顧問弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
また、「顧問弁護士に相談するほどのことではない」と自己判断せずに、まずは相談してみることをおすすめします。 弁護士は、企業にとって最善の解決策を提案してくれる心強いパートナーです。