顧問弁護士とは、会社で発生するさまざまな法律問題について、継続的に事業主や法務担当者に対して法的な助言をし、法律トラブルを未然に防ぎ、また、発生したトラブルを交渉、訴訟などにより解決する弁護士のことです。

会社設立において、顧問弁護士は、起業家の頼れるパートナーとして、多岐にわたる役割を担います。大きく分けて、下記の4つの段階で、それぞれ重要なサポートを提供します。
1. 会社設立準備段階:
事業内容の法的整理: 事業内容が法的に問題ないか、許認可が必要かどうかなどを確認し、必要であれば最適な事業形態や許認可取得のアドバイスを行います。
定款作成: 会社の目的、事業内容、組織体制、株式に関する事項などを定めた、会社の「憲法」とも言える重要な書類です。事業内容や将来展望を踏まえ、法的に問題なく、かつ、会社にとって最適な内容の定款作成をサポートします。
株主間契約書作成: 特に複数人で会社を設立する場合、出資比率や役割分担、議決権の取り扱いなどを明確化しておくことが重要です。後々のトラブルを避けるため、弁護士が法的観点から最適な内容の契約書作成をサポートします。
2. 会社設立手続き段階:
必要書類作成: 会社設立に必要な書類は多岐にわたり、専門知識がないと作成が難しい場合も。弁護士は、必要な書類を全て確認し、法的に正確な書類作成をサポートします。
法務局への登記申請: 作成した書類に基づき、法務局へ会社設立の登記申請を行います。手続きをスムーズに進めるために、弁護士が代理で手続きを行うことも可能です。
許認可申請: 事業内容によっては、会社設立後に許認可を取得する必要があります。弁護士は、必要な許認可を特定し、申請手続きをサポートします。
3. 会社設立後:
事業運営に関する法的アドバイス: 契約書の作成・チェック、労務問題、知的財産権問題など、事業運営に関するあらゆる法的問題について、相談に乗ってくれます。
コンプライアンス体制構築: 法令遵守は、企業の社会的責任として重要です。弁護士は、コンプライアンス体制の構築や社内規程の作成などをサポートし、企業の健全な成長を支えます。
紛争発生時の対応: 取引先とのトラブルや従業員との労務問題など、企業活動においては、様々な紛争が発生する可能性があります。弁護士は、早期解決に向けて、交渉や訴訟などの法的対応をサポートします。
4. その他:
金融機関からの融資: 事業を拡大する際に、金融機関からの融資が必要となる場合がありますが、顧問弁護士の紹介により、融資を受けやすくなる可能性があります。
事業承継: 後継者への事業承継を検討する際にも、顧問弁護士は、会社法や相続法などの専門知識を活かして、スムーズな事業承継をサポートします。
会社設立は、スタート地点であり、その後も様々な法的問題に直面する可能性があります。顧問弁護士は、会社設立前から継続的に伴走してくれる、いわば「法務部のアウトソーシング先」として、心強いパートナーとなるでしょう。

顧問弁護士の費用は、契約内容や企業の規模、依頼する業務の範囲、弁護士の経験や専門性などによって大きく異なります。一般的な相場としては、費用体系ごとに以下のとおりです。
①月額固定料金:
中小企業:月額 3万円から5万円
大企業:月額10万円以上
②時間制料金:
月に一定時間の法律相談や業務対応を含めて、超過分は別途時間制料金（1時間あたり1万円から3万円程度）が発生する契約
③案件ごとの追加費用:
顧問契約の範囲を超える特別な業務や訴訟対応が必要な場合、別途費用が発生する契約
④成功報酬:
特定の成果に応じて報酬を支払う契約形態
上記①ないし④の一部または全部が組み合わされて契約内容となることが多いです。
複数の弁護士や法律事務所から見積もりや提案を受け、企業のニーズに最も合致する弁護士を選ぶことをおすすめします。なお、企業の業種や法務ニーズに合わせて、オーダーメイドの契約内容や料金設定が可能な場合もあります。具体的な費用は各弁護士や法律事務所によって異なるため、直接問い合わせて詳細を確認することが最も確実です。

法律トラブルは、当然ながら、どの会社も起こそうと思って起きているものではありません。知らず知らずのうちに、法律トラブルに発展してしまうような契約を締結してしまったり、事業投資をしてしまったりすることで、いつの間にか大きな損害が起きていることがほとんどです。現在、弁護士に相談するようなことがないとしても、今後、事業の拡大を予定してたり、新規事業を開始しようとしているのであれば、現状において法的トラブルが発生していないとしても、顧問契約を締結するメリットは多くあります。
まずは、お守り替わりに、低額な顧問契約から始めてみることは有効でしょう。また、顧問契約という形式でなくとも、コストとニーズを慎重に考慮し、必要に応じてスポット相談・スポットで弁護士依頼を利用するなどの方法もあります。

顧問弁護士が経営者の個人的なトラブルに対応できるかは、契約内容や具体的な状況によりますが、普段から話しやすい関係性を築いている場合、身近な弁護士である顧問弁護士に相談に乗って欲しいという経営者の方は多いでしょう。顧問弁護士は、経営者の個人的トラブルに関しても、第一の相談先として気軽に相談に乗ってくれることも多いです。ただし、経営者の個人的な法律トラブルに顧問弁護士が相談に乗ることが、会社の利益と相反する場合は、相談に乗れない場合があります。まずは現在の顧問弁護士に相談し、個人の問題について対応可能か、確認してみましょう。必要に応じて、個人として別の弁護士に依頼することも検討してください。

大企業と中小企業では、顧問弁護士に求められる役割や業務内容が異なります。大企業では国際取引、M&A（合併・買収）、株式公開、知的財産権の管理、競争法、金融取引など、複雑で専門性の高い法的問題に対応することが求められます。一方、中小企業では契約書の作成・レビュー、労務管理、取引先とのトラブル解決など、日常的な法務業務を幅広くサポートします。経営者との密接な関係を構築し、幅広い法務ニーズに対応する総合的なサポートが求められます。
企業の規模や業種、経営方針に応じて、適切な顧問弁護士を選定し、効果的な法務体制を構築することが重要です。

顧問弁護士を依頼する場合、毎月一定の顧問料が発生します。これは小規模な企業や、法律問題があまり発生しない企業にとっては負担になることがあります。このようなデメリットに対しては、発生する法律問題の数、内容により低額な顧問料金プランから顧問契約を開始してみると良いでしょう。
また、法律問題の対応をすべて顧問弁護士に任せることで、企業内の法務担当者が育たず、法務の内製化を図ることができないというデメリットも考えられます。このようなデメリットに対しては、顧問弁護士から受けた助言などを社内マニュアルに落とし込むなどの工夫をしていくと良いでしょう。

もちろん、初回の相談は無料で対応しています。現状で会社が抱えている問題や将来予想される問題点を弁護士に相談してみて、具体的なアドバイスを得られるか、信頼関係を構築できそうかなど、確認してみるといいでしょう。また、会社の将来的なビジョン、理想とする未来に共感してくれるかという点も、顧問弁護士との相性を考えるうえでは重要ですので、初回相談時に確認してみましょう。

会社設立という重要な局面において、頼りになる顧問弁護士選びは慎重に行いたいものです。以下のポイントを参考に、ご自身の会社にとって最適なパートナーを見つけましょう。
1. 専門分野・実績:
会社設立: 弁護士によって得意分野は様々です。会社設立、特に貴社の事業内容に精通した実績豊富な弁護士を選びましょう。弁護士のウェブサイトや紹介資料で、実績を確認したり、過去の相談事例などを尋ねてみるのも有効です。
事業内容: IT、医療、不動産など、事業内容によっては専門性の高い法律知識が必要となります。貴社の事業内容に理解があり、関連法規に精通した弁護士を選ぶことが重要です。
2. 相性・コミュニケーション:
相談しやすさ: 弁護士との相性は、信頼関係を築き、スムーズに相談を進める上で非常に大切です。実際に会って相談し、話しやすさや人柄、熱意を感じられるかを確認しましょう。
レスポンス: 迅速な対応は、会社設立の手続きをスムーズに進める上で重要です。問い合わせに対するレスポンスの速さや、相談に対する回答の明確さを確認しましょう。
3. 費用体系:
費用: 弁護士費用は、事務所や弁護士によって異なります。料金体系 (着手金、報酬金、時間制など) や費用総額の見積もりを事前に確認し、不明点があれば質問しましょう。
費用対効果: 弁護士費用は、単なるコストではなく、将来のリスク回避や事業成長への投資と捉えるべきです。費用と提供されるサービス内容を比較し、費用対効果を判断することが大切です。
4. その他:
事務所規模: 大規模事務所は、様々な専門分野の弁護士が在籍しており、多様なニーズに対応可能です。一方、小規模事務所は、きめ細やかな対応を期待できます。会社の規模やニーズに合わせて選びましょう。
立地: 頻繁に相談する可能性を考慮し、会社からアクセスしやすい場所にある事務所を選ぶと便利です。

会社設立において、顧問弁護士に依頼するタイミングは、早ければ早いほど、後々の手続きがスムーズに進み、法的リスクを軽減できるという点でメリットがあります。
具体的には、以下の３つのタイミングが考えられます。
1. 事業計画作成時:
弁護士に相談することで、事業内容が法的に問題ないか、許認可が必要かどうか、最適な会社形態は何かなど、事業の法的側面からのアドバイスを受けることができます。
また、将来的に資金調達や事業提携などを検討している場合は、その際に有利な会社形態や株主構成などをアドバイスしてもらえます。
定款作成についても、将来を見据えた内容にするために、早い段階で弁護士と相談しておくことが重要です。
2. 会社設立準備開始時:
具体的に会社設立に向けて動き出すタイミングも、弁護士に依頼するのに適しています。
必要書類の作成、法務局への登記申請、許認可申請など、専門知識が必要な手続きを、弁護士がサポートしてくれます。
特に、会社法や関連法規に詳しくない場合は、手続きでつまずいたり、時間がかかったりする可能性があるため、早めに弁護士に依頼することをおすすめします。
3. 会社設立後:
会社設立後も、事業運営に関する様々な法的問題が発生する可能性があります。
契約書の締結、労務問題、知的財産権問題、顧客とのトラブル、行政機関への対応など、いざという時に相談できるよう、顧問弁護士を選任しておくことは安心に繋がります。
「いつまでに」という明確な期限はありませんが、少なくとも、定款の作成や登記申請など、具体的な手続きに入る前に相談する ことをおすすめします。
特に、以下のような場合は、早めの相談が重要です。
事業内容が複雑で、法的な規制が多い場合
将来的に、株式公開 (IPO) やM&A を検討している場合
資金調達を検討しており、投資家に対して、法務面での体制が整っていることをアピールしたい場合
弁護士費用は、依頼する業務範囲や時間によって異なりますが、会社設立は、その後の事業の成功を大きく左右する重要なプロセスです。安心して事業をスタートさせるために、早めの段階で弁護士に相談し、サポートを受けることを検討してみて下さい。