顧問弁護士とは、会社で発生するさまざまな法律問題について、継続的に事業主や法務担当者に対して法的な助言をし、法律トラブルを未然に防ぎ、また、発生したトラブルを交渉、訴訟などにより解決する弁護士のことです。

法律上、「倒産」という言葉自体に明確な定義はありません。
一般的には、会社が経済的に破綻し、債務を支払うことができなくなる状態を指します。
しかし、法律的には、「倒産」という言葉の代わりに、具体的な手続きや状態を表す言葉が使われます。
例えば、以下の３つが挙げられます。
破産: 裁判所を通して、債務者の財産を換価し、債権者に公平に分配する手続き。
民事再生: 裁判所の監督のもと、事業や経済活動を再生して、経営の建て直しを図る手続き。
会社更生: 株式会社が、裁判所の監督のもと、事業の再建を図り、債権者への弁済を行う手続き。
これらの手続きは、それぞれ要件や手続きが異なります。どの手続きが適切かは、会社の規模や業種、財務状況、再建の可能性などを総合的に判断して決定されます。
「倒産」という言葉は、これらの手続き全体を包括的に表す場合に用いられることが多いと言えるでしょう。

事業再生の方法は、会社の状況や目的によって様々ですが、大きく分けて以下の3つの手法があります。
1. 法的整理による事業再生
裁判所の関与のもと、法律に基づいた手続きによって事業再生を図る方法です。
会社更生法
裁判所の監督のもと、更生計画を策定し、債務の減免や支払猶予などの法的整理を行い、事業の再建を図ります。
比較的規模の大きな企業に適用されることが多いです。
民事再生法
裁判所の監督のもと、再生計画を策定し、債務の減免や支払猶予などの法的整理を行い、事業の再建を図ります。
中小企業でも利用しやすく、事業の存続を図りたい場合に有効です。
2. 私的整理による事業再生
裁判所を介さずに、債権者との合意に基づいて事業再生を図る方法です。
私的整理
金融機関との合意に基づき、債務の返済猶予や減免を受けたり、追加融資を受けたりすることで、事業の立て直しを図ります。
裁判所の手続きを経ないため、迅速かつ柔軟に対応できるメリットがあります。
事業譲渡
事業の全部または一部を他の会社に譲渡することで、事業の存続を図ります。
スピーディな再建が可能で、従業員の雇用維持にもつながる可能性があります。
3. 事業再生ADR
裁判外紛争解決手続（ADR）を活用し、中立的な第三者の支援のもと、債権者との合意形成を図りながら事業再生を目指す方法です。
事業再生ADR
専門家である事業再生ADR機関の支援を受けながら、債権者との合意形成を図り、事業再生計画を策定します。
中立的な立場で調整や助言を受けることで、円滑な合意形成が期待できます。
どの方法が最適かは、会社の規模や業種、財務状況、再建の可能性などを総合的に判断して決定する必要があります。
再生の専門家である弁護士や会計士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

倒産・事業再生における顧問弁護士の役割は多岐に渡り、企業の状況に合わせて様々なサポートを提供します。大きく分けて、以下の３つの段階ごとに説明します。
１. 倒産・事業再生の予防段階
経営状況の分析・診断: 財務諸表等の分析を行い、潜在的なリスクを早期に発見し、事業の健全化に向けたアドバイスを行います。
事業計画の見直し支援: 現状の経営課題を踏まえ、実現可能な事業計画策定のサポート、資金繰り計画の見直しなどを支援します。
債権者との交渉戦略アドバイス: 資金繰り悪化の予兆が見られる場合、金融機関など債権者との交渉方針やリスケジュールについてアドバイスを行います。
社内体制の整備: 倒産・事業再生に備え、コンプライアンス体制の強化や早期警戒システムの導入など、社内体制の整備をサポートします。
２. 事業再生手続きの検討段階
法的整理・私的整理の選択肢提示: 会社の状況を踏まえ、会社更生、民事再生、私的整理など、最適な事業再生手続きの選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく説明します。
再生計画案の作成支援: 弁護士、会計士、税理士等と連携し、実現可能な再生計画案の作成を支援します。
債権者との交渉: 債権者との間に入り、債務減免、返済猶予、新規融資などの交渉を行います。
ステークホルダーとの調整: 従業員、取引先、株主など、様々なステークホルダーとの利害調整を行います。
３. 事業再生手続きの実施段階
裁判所への提出書類作成: 裁判所へ提出する申立書、再生計画案などの必要書類を作成します。
裁判所・債権者への対応: 裁判所や債権者集会での説明、質疑応答などを行います。
再生計画の実行支援: 再生計画に基づいた事業の再構築、債務弁済などをサポートします。
事業再生後の法的サポート: 再生計画終結後の新たな事業展開、契約締結などを法的観点からサポートします。
このように、倒産・事業再生において顧問弁護士は、企業の状況に合わせて、予防、手続き検討、手続き実施の各段階で、法的知識と経験に基づいた多岐にわたるサポートを提供することで、企業の再建を力強く支援します。
特に、早期の相談は、より多くの選択肢を確保し、円滑な事業再生につながる可能性を高めるため、非常に重要です。

顧問弁護士の費用は、契約内容や企業の規模、依頼する業務の範囲、弁護士の経験や専門性などによって大きく異なります。一般的な相場としては、費用体系ごとに以下のとおりです。
①月額固定料金:
中小企業:月額 3万円から5万円
大企業:月額10万円以上
②時間制料金:
月に一定時間の法律相談や業務対応を含めて、超過分は別途時間制料金（1時間あたり1万円から3万円程度）が発生する契約
③案件ごとの追加費用:
顧問契約の範囲を超える特別な業務や訴訟対応が必要な場合、別途費用が発生する契約
④成功報酬:
特定の成果に応じて報酬を支払う契約形態
上記①ないし④の一部または全部が組み合わされて契約内容となることが多いです。
複数の弁護士や法律事務所から見積もりや提案を受け、企業のニーズに最も合致する弁護士を選ぶことをおすすめします。なお、企業の業種や法務ニーズに合わせて、オーダーメイドの契約内容や料金設定が可能な場合もあります。具体的な費用は各弁護士や法律事務所によって異なるため、直接問い合わせて詳細を確認することが最も確実です。

法律トラブルは、当然ながら、どの会社も起こそうと思って起きているものではありません。知らず知らずのうちに、法律トラブルに発展してしまうような契約を締結してしまったり、事業投資をしてしまったりすることで、いつの間にか大きな損害が起きていることがほとんどです。現在、弁護士に相談するようなことがないとしても、今後、事業の拡大を予定してたり、新規事業を開始しようとしているのであれば、現状において法的トラブルが発生していないとしても、顧問契約を締結するメリットは多くあります。
まずは、お守り替わりに、低額な顧問契約から始めてみることは有効でしょう。また、顧問契約という形式でなくとも、コストとニーズを慎重に考慮し、必要に応じてスポット相談・スポットで弁護士依頼を利用するなどの方法もあります。

顧問弁護士が経営者の個人的なトラブルに対応できるかは、契約内容や具体的な状況によりますが、普段から話しやすい関係性を築いている場合、身近な弁護士である顧問弁護士に相談に乗って欲しいという経営者の方は多いでしょう。顧問弁護士は、経営者の個人的トラブルに関しても、第一の相談先として気軽に相談に乗ってくれることも多いです。ただし、経営者の個人的な法律トラブルに顧問弁護士が相談に乗ることが、会社の利益と相反する場合は、相談に乗れない場合があります。まずは現在の顧問弁護士に相談し、個人の問題について対応可能か、確認してみましょう。必要に応じて、個人として別の弁護士に依頼することも検討してください。

大企業と中小企業では、顧問弁護士に求められる役割や業務内容が異なります。大企業では国際取引、M&A（合併・買収）、株式公開、知的財産権の管理、競争法、金融取引など、複雑で専門性の高い法的問題に対応することが求められます。一方、中小企業では契約書の作成・レビュー、労務管理、取引先とのトラブル解決など、日常的な法務業務を幅広くサポートします。経営者との密接な関係を構築し、幅広い法務ニーズに対応する総合的なサポートが求められます。
企業の規模や業種、経営方針に応じて、適切な顧問弁護士を選定し、効果的な法務体制を構築することが重要です。

顧問弁護士を依頼する場合、毎月一定の顧問料が発生します。これは小規模な企業や、法律問題があまり発生しない企業にとっては負担になることがあります。このようなデメリットに対しては、発生する法律問題の数、内容により低額な顧問料金プランから顧問契約を開始してみると良いでしょう。
また、法律問題の対応をすべて顧問弁護士に任せることで、企業内の法務担当者が育たず、法務の内製化を図ることができないというデメリットも考えられます。このようなデメリットに対しては、顧問弁護士から受けた助言などを社内マニュアルに落とし込むなどの工夫をしていくと良いでしょう。

もちろん、初回の相談は無料で対応しています。現状で会社が抱えている問題や将来予想される問題点を弁護士に相談してみて、具体的なアドバイスを得られるか、信頼関係を構築できそうかなど、確認してみるといいでしょう。また、会社の将来的なビジョン、理想とする未来に共感してくれるかという点も、顧問弁護士との相性を考えるうえでは重要ですので、初回相談時に確認してみましょう。

倒産・事業再生は、会社の命運を左右する重要な局面です。そのため、依頼する弁護士は、会社の状況やニーズに最適な専門家を選ぶことが非常に重要になります。
以下に、倒産・事業再生の顧問弁護士を選ぶ際のポイントを詳しく解説します。
1. 専門分野・実績
倒産・事業再生に精通しているか: 倒産法、民事再生法、会社更生法などの専門知識や豊富な経験を持つ弁護士を選ぶことが重要です。
実績・経験年数: 多くの倒産・事業再生案件に携わってきた実績豊富な弁護士であれば、様々なケースに対応できるノウハウや経験に基づいた的確なアドバイスが期待できます。
実績分野: 会社の規模や業種、再生手法など、過去の handling cases が、自社の状況と類似している弁護士を選ぶこともポイントとなります。
ネットワーク: 金融機関、スポンサー、会計士、税理士など、事業再生に関連する専門家との幅広いネットワークを持つ弁護士であれば、よりスムーズかつ効果的な再生手続きを進めることが期待できます。
2. コミュニケーション能力
説明力・わかりやすさ: 専門用語をわかりやすく説明し、会社の状況や手続きの進捗について、丁寧に報告してくれる弁護士であると安心です。
聞き取り力・共感力: 経営者の話をじっくりと聞き取り、状況や想いを理解しようと努め、寄り添った対応をしてくれる弁護士を選びましょう。
迅速な対応力: 相談や問い合わせに対して、迅速かつ的確に対応してくれる弁護士であれば、緊急時にも安心です。
3. 料金体系の透明性
費用体系の明確化: 相談料、着手金、報酬金などの費用体系が明確になっているかを確認しましょう。
見積もりの提示: 事前に費用総額の見積もりを提示してくれる弁護士であれば、安心して依頼できます。
費用対効果: 料金だけでなく、弁護士の経験や実績、提供されるサービス内容などを総合的に判断し、費用対効果を考慮することも重要です。
4. その他
事務所の体制: 弁護士1人だけでなく、チームとしてサポートしてくれる事務所であれば、より手厚いサポートが期待できます。
事務所の所在地: 会社に近い場所にあると、打ち合わせなどがスムーズに行えます。
<具体的な情報収集方法>
弁護士会への問い合わせ: 各地の弁護士会では、弁護士紹介サービスを行っています。専門分野や地域などを指定して探すことができます。
インターネット検索: 「倒産」「事業再生」「弁護士」などのキーワードで検索すると、多くの弁護士事務所のウェブサイトが表示されます。実績や弁護士紹介などを参考に探してみましょう。
書籍・雑誌: 倒産・事業再生に関する書籍や雑誌にも、弁護士事務所の情報が掲載されていることがあります。
これらのポイントを参考に、複数の弁護士に相談し、比較検討した上で、信頼できるパートナーを選び、会社再生に向けて共に進んでいきましょう。

倒産・事業再生に関して、顧問弁護士に依頼するタイミングは、「早ければ早いほど良い」と言えます。
問題が深刻化する前に相談することで、より多くの選択肢を確保し、会社とステークホルダーへのダメージを最小限に抑えることができる可能性が高まります。
具体的には、以下の様なタイミングで相談することをおすすめします。
1. 事業の悪化兆候が見られた時
売上高の減少、赤字の継続、資金繰りの悪化など、事業の悪化を示す兆候が見られた時。
新規の取引開始や、金融機関からの借り入れ、大型投資などを検討している時。
法律や会計処理に関する不安や疑問が生じた時。
2. 事業再生の必要性を感じ始めた時
債務超過、リスケジュールなど、財務状況が悪化し、自主的な再建が難しいと感じ始めた時。
金融機関から返済猶予の要請を受けた時。
取引先との間で、支払遅延や契約解除などのトラブルが発生した時。
3. 倒産の可能性を検討せざるを得ない時
債務超過が続き、資金繰りが行き詰まり、事業の継続が困難になった時。
手形や小切手の不渡りを出した、もしくは出す可能性が高い時。
裁判所から、破産や民事再生などの申し立てを受けた時。
上記はあくまでも目安であり、状況によっては早急に弁護士に相談する必要がある場合もあります。
「まだ大丈夫」と楽観視せず、「少し気になる点がある」という段階でも、気軽に相談することをおすすめします。
早期に相談することで、弁護士は、会社の状況を詳しく把握し、より適切なアドバイスやサポートを提供できるようになります。
また、時間的な余裕を持って手続きを進めることができるため、より有利な条件で事業再生を図れる可能性も高まります。
倒産・事業再生は、企業にとって非常に困難な状況ですが、適切なタイミングで専門家のサポートを受けることで、より良い結果を得られる可能性が高まります。
一人で抱え込まず、まずは顧問弁護士に相談することをおすすめします。