弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
「遺産分割調停はどこの裁判所が管轄になるの?」
「被相続人も相手方も遠方だから、自分の家の近くの裁判所に申立てを行いたい」
この記事を読んでいる方は、そのような疑問を持っていることでしょう。
結論からお伝えすると、遺産分割調停の申立ては、相手方の住所地の家庭裁判所が管轄です。相手方が複数人いる場合は、そのうち一人の住所地の家庭裁判所へ申立てを行います。
日本には数多くの裁判所があり、どの土地の裁判所が事件を担当するか「管轄」で分けられています。どこの家庭裁判所でも遺産分割調停を受け付けてもらえるわけではありませんので、要注意です。
とはいえ、遠方の場合は出向くのは大変ですよね。それに遺産分割調停は、1回で解決するとは限りません。
ですが安心してください。管轄裁判所が遠方の場合でも、簡単に出頭できる方法があります。
そこで今回この記事では、遺産分割調停の管轄裁判所を調べるうえで知っておくべき内容と、遠方でも簡単に出頭できる方法について詳しく解説します。
本記事のポイント |
・遺産分割調停の管轄裁判所がパターン別でわかる ・管轄外の家庭裁判所の申立てが可能な状況がわかる ・遠方で出頭が困難な場合の対応方法がわかる |
本記事を読めば、自分が申立てをする遺産分割調停の管轄裁判所がわかるだけでなく、遠方の場合の対応方法もわかり、安心して調停の申立てができるようになります。
是非、最後まで読み進めてください。
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遺産分割調停は申立てが受理されてから、月に1回の頻度で家庭裁判所へ出向く必要があります。そうなると気になるのが、どこの家庭裁判所で行うのかということですよね。
遺産分割調停は、以下のとおり管轄の裁判所が決められています。
①相手方の住所地の裁判所 ②相手方が複数いる場合はそのうち一人の住所地の裁判所 |
遺産分割調停の申立てをする際、どこの裁判所でも受け付けてもらえるわけではありません。申立てをする前に間違えないようにしっかり確認していきましょう。
遺産分割調停の管轄裁判所は、原則として相手方の住所地の裁判所となります。
住所地とは、実際に住んでいる場所のことを指します。
被相続人の最後の住所地や、自分の住所地の家庭裁判所ではないので注意しましょう。
例えば、申立人のあなたは東京都に住んでいて、被相続人は福岡県、相手方は大阪府に住んでいる場合は、各当事者の住所地を管轄する裁判所は次のとおりです。
申立人:東京家庭裁判所
被相続人:福岡家庭裁判所
相手方:大阪家庭裁判所
遺産分割調停の申立ては相手方の住所地が管轄となるので、大阪家庭裁判所となります。
遺産分割調停を申立てる相手方は1人であるとは限りません。相続人となる相手方が複数人いる場合は、そのうち1人の住所地の裁判所を選ぶことができます。
例えば、申立人のあなたは東京都、相手方が大阪府、神奈川県、愛知県に住んでいる場合は以下の裁判所が管轄となります。
申立人:東京家庭裁判所
相手方:大阪家庭裁判所、横浜家庭裁判所、名古屋家庭裁判所
遺産分割調停の申立ては、相手方の住所地を管轄する裁判所から選択して申立てができます。そのため、自宅から最も近い横浜家庭裁判所を選択すれば、出頭するときの交通費や移動時間などの負担を抑えることができます。
相手の住所地を管轄する家庭裁判所は、裁判所のHPで簡単に調べることができます。 ▶裁判所の管轄区域を調べる場合はこちら 裁判所の管轄区域のページには、市区町村ごとに管轄の裁判所が明記されています。相手方の住所地の地域と合致するものを確認すれば、管轄裁判所を調べることができます。 地方・家庭裁判所の欄の支部に記載がある場合は支部が管轄となり、出張所に記載がある場合は出張所が管轄となります。 調べてみて不安がある場合は、裁判所に確認をしてみてください。 |
ここまでお伝えしたとおり、遺産分割調停の管轄は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てるのが原則です。しかし、申立て時の状況によっては、管轄外の裁判所に対しても申立てを行うことが可能なケースがあります。
管轄外の裁判所で申立てができるケースは以下の2つです。
①相続人全員が合意して決めた場合は合意管轄の裁判所で調停が可能 ②個人的事情により自分の住所地の裁判所で自庁処理が行える |
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所への申立てが困難だと考えている人は、管轄外の裁判所への申立てができる可能性もあるため、しっかり確認していきましょう。
遺産分割調停の管轄裁判所は、相続人全員の合意で決めた「合意管轄」の裁判所で行うことが可能です。
合意管轄の制度は家事事件手続法第245条第1項にて下記のように定められています。
(管轄等)
第245条 家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。
家事事件手続法
例えば、相続人それぞれが東京や大阪など遠方に住んでいて、間を取って名古屋が集まりやすいと全員が希望するのであれば、全く関連のない名古屋家庭裁判所で調停を行うことができます。
ただし、合意管轄の裁判所で申立てを行う場合は、全員の合意があることを示す「管轄合意書」という書面を作成し、裁判所への提出が必須です。合意管轄はあくまでも相続人全員の合意があることが条件で、ひとりでも反対する人がいる場合は認められません。
管轄合意書は、裁判所HPよりフォーマットのダウンロードが可能です。相続人全員の直筆の署名を揃えて漏れなく提出しましょう。 ▶管轄合意書のフォーマットはこちら |
個人的事情が認められれば、管轄外である自分の住所地の家庭裁判所で遺産分割調停を行える可能性があります。
家事事件手続法第9条では、遺産分割調停の申立てを受けた家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要であると判断した場合、自ら処理(自庁処理)することができると定めています。
(移送等)
家事事件手続法
第9条 裁判所は、家事事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。ただし、家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、家事事件の全部又は一部を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送し、又は自ら処理することができる。
例えば、通常は申立人が管轄外の裁判所へ遺産分割調停の申立てを行っても、職権により管轄である相手方の裁判所へ移送されます。しかし、自分の住所地の家庭裁判所へ申立てを行い、家庭裁判所が自ら処理する必要があると判断した場合は、自分の住所地の家庭裁判所で遺産分割調停が行われるということです。
ただし、家庭裁判所が自庁処理の判断を下すには、管轄の原則を緩めてでも事件の適正・迅速な解決のために必要とされた場合です。具体的には、下記のように申立人が管轄裁判所への出頭が難しい状況のときです。
・子供が幼くて預けられる人もいない ・金銭的に困窮していて遠隔地へ行く費用負担が大きい ・心身の病気や怪我の影響で移動が困難予断を許さない ・介護等の理由で自分の住所地を離れられない |
このように、管轄の裁判所が「遠方で行くのが大変」というだけの理由では、自庁処理は認められないことは理解しておきましょう。
申立て状況によっては管轄外の家庭裁判所への申立てが認められる場合があると伝えましたが、基本的に管轄外の裁判所へ申し立てることは推奨できません。
管轄外の家庭裁判所へ申し立てを行うには大きなハードルが2つあります。
①「合意管轄」は管轄争いが起こりやすい ②「自庁処理」は相手側の反対意見が通りやすい |
管轄外の裁判所での申立てを希望している人は、推奨できない理由を理解したうえでどうするか決めるようにしましょう。
合意管轄の裁判所で調停を行うためには相続人全員の合意が必要ですが、全員の合意を得るのは難易度が高いです。
なぜなら、誰しも自分の都合の良い場所で調停を行いたいと考えるからです。相続人の中には、他の相続人全員が合意したとしても、自分の都合の悪い裁判所であれば合意をしない人もでてきます。
ひとりでも合意しない相続人がいる場合は、管轄外の裁判所での申立ては受け付けてもらえません。そうなると、申立てを進めることができず遺産分割がスムーズに進みません。中には、申立てをする以前にどこの裁判所で行うのかを決めることでトラブルが大きくなるケースもあります。
そのため、合意を得られなかったときのことも考えて申立て準備を進めるようにしましょう。
申立人が自庁処理を上申(お願い)した場合、家庭裁判所は相手方に意見聴取を行います。
なぜなら、無条件に自庁処理で裁判がされれば相手方にとっては不利益となると裁判所が判断するからです。
通常、相手方の住所地の家庭裁判所で行われるはずの遺産分割調停が、申立人の希望する場所で行われれば相手方はそこまで出向かなくてはなりません。場所が遠方であれば、費用も時間もかかります。
そのため、事情聴取で相手方が反対意見を出せば、自庁処理が認められない可能性が高くなります。
遺産分割調停は、相続人全員が出頭する必要があります。管轄裁判所が遠方だからと言って出頭を拒否することはできません。
遺産分割調停は1度の出頭で解決することは難しく、事案にもよりますが5~10回程度の話し合いをするケースが多く、毎回家庭裁判所へ行かなくてはいけません。
そのため、裁判所が遠方の場合は大きな負担となります。できるだけ負担を減らすためには、下記の方法が推奨されています。
・電話会議システムを利用する ・代理人の弁護士に調停へ出席してもらう |
上記の方法を利用するにはどうしたら良いのか、注意点と合わせて一つずつ詳しく解説していきます。
管轄の家庭裁判所が遠方の場合は、毎回出頭することに交通費や移動時間など大きな負担がかかります。
このような当事者が調停に参加しやすいように家事事件手続法258条1項が準用する54条1項では、電話会議システムでの参加が認められています。
(音声の送受信による通話の方法による手続)
第54条 家庭裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、家庭裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、家事審判の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができる。
家事事件手続法
電話会議システムは、調停が行われる家庭裁判所と、当事者の住所地の家庭裁判所を音声通話で繋いで行われます。
具体的には、遺産分割調停が札幌家庭裁判所で行われるが、大阪に住んでいるAさんは大阪家庭裁判所に出頭し電話会議システムを使って遺産分割調停に参加します。
ただし、裁判所によっては電話会議で本人が話しているという確証が取れないとみなし、電話会議システムの利用が認められていない場合があります。電話会議システムの利用を希望する場合は、事前に裁判所に確認を行うようにしましょう。
なお、弁護士からの申し出であれば電話会議システムの利用を認められることがほとんどです。弁護士事務所であれば家庭裁判所に出頭することなく、事務所の電話を使って電話会議をすることが可能です。
※平成30年4月よりテレビ会議システムが全国の裁判所で導入されています。音声だけの電話会議システムとは違い、お互いに姿を確認しながら会話ができるようになります。 出典:裁判所HP |
遠方で遺産分割調停の出頭が難しい場合は、弁護士を代理人として選任することで弁護士に代わりに調停に出席してもらうことが可能です。
自分の住所地の弁護士に依頼をすると、弁護士費用にプラスして出張費や交通費の負担がかかることを認識しておきましょう。
できるだけ費用の負担を減らしたい場合は、管轄裁判所の近くの弁護士に依頼する方法もあります。ただし、弁護士との打合せは電話のみとなるので注意が必要です。あなたの希望を伝え、遺産分割調停を有利に進めてもらえる弁護士かどうかを電話の会話のみで判断しなくてはいけません。
最近は初回相談を無料としている弁護士事務所が多いため、複数の弁護士事務所に相談してから決めると良いでしょう。
遺産分割調停は弁護士に依頼することなく、自力で調停の申立てをすることが可能です。しかし、遺産分割調停を有利に進めたいのであれば、弁護士に依頼することが最善です。
遺産分割調停の申立てを考えているなら誰しもが、自分の希望するとおりに遺産分割を進めたいと考えているでしょう。
しかし、遺産分割調停をはじめて行う人がほとんどです。難しい法律のことも、調停を有利に進める方法も熟知している人はいません。
その点、弁護士は法律の専門家として相手方や調停委員の間に入り、依頼人にとって最大の利益を目指し話し合いを進めてくれるので安心です。
その他にも遺産分割調停を弁護士に依頼することがおすすめな理由は以下のとおりです。
弁護士に相談することがおすすめな理由 |
・面倒な手続きを一手に任せられる ・親族間の大きなトラブルを未然に防げる ・自分では気付かない法的な主張ができる ・遺産分割調停の早期解決を目指せる |
このように弁護士に相談することにより、難しい書類の手続きを任せることができ、速やかに調停を進めることができます。
また、遺産分割調停を弁護士に依頼する際の費用が気になる人はKW「遺産分割 調停 弁護士費用」の記事をご覧ください。
この記事では、遺産分割調停の申立てをどこの裁判所に行えばいいのか、管轄の裁判所について詳しく解説してきました。
遺産分割調停の申立ては、原則として相手方の住所地の家庭裁判所が管轄です。相手方が複数いる場合は、そのうち1人の住所地の家庭裁判所への申立てが可能です。
ただし、下記のように申立ての状況によっては管轄外の裁判所への申立てが可能です。
▼管轄外の家庭裁判所への申立てが可能な状況 ①相続人全員が同意する裁判所(合意管轄) ②申立ての内容や状況により管轄外の裁判所での処理が適切と判断された場合(自庁処理) |
管轄外の家庭裁判所へ申立てを行った場合でも、相手方が拒否をしたり、裁判所が適切でないと判断し、受け付けてもらえないこともあります。
遺産分割調停は相手方の住所地の家庭裁判所で行うことが原則であることを理解しておきましょう。