遺産分割協議のやり直しができる4つのケース┃実践的な手順と注意点

遺産分割協議のやり直しができるケースとは
この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。

「遺産分割協議が終わった後に新たな不動産があることが発覚した。もう一度全部の財産を含めて遺産分割方法を話し合いたい。」

「兄が遺産を隠していたのを知らず遺産分割協議書に判を押してしまった。どうやったら遺産分割協議をやり直すことができるのか。」

遺産分割協議が成立した後に思わぬ事実が発覚したり、相続人たちの状況が変わってしまったりすることはまれに起こります。

一度成立した遺産分割協議は法的に有効になるためやり直せないのが原則ですが、下記条件にあてはまる場合はやり直すことができます

基本的には「遺産分割協議が調停・審判により成立した場合」を除き、相続人全員が希望すればやり直すことはできます。

だからといって安易なやり直しは注意が必要です。やり直しは遺産分割協議だけでなくそれに伴う様々な手続きもやり直すことになるので、多大な労力と時間、お金がかかってきます

例えば不動産の相続登記が済んでしまった後ならば所有権抹消登記と再度相続登記を行う必要があり、もう一度登録免許税を納めなければいけません。

さらに自己都合によるやり直しは相続税法上「相続のやり直し」ではなく「最初の相続人から変更後の相続人への所有権移転」と考えられるため、贈与税が発生します。贈与税は数十万円~数百万円、中には1,000万円以上かかることもあるため、やり直しは慎重に検討すべきでしょう。

そこで本記事では遺産分割協議のやり直しについて次のようにまとめました。

本記事の内容
1.遺産分割協議をやり直せる/やり直せないケース
2.遺産分割協議をやり直すなら知っておくべき3つのデメリット
3.遺産分割協議をやり直す方法
4.遺産分割協議をやり直した場合にかかる税金
5.遺産分割協議をやり直した場合の不動産登記方法
6.【注意】納税・登記を適切に行わなかった場合に起こるトラブル

本記事を読めば自分の状況では遺産分割協議をやり直せるのか、あるいはやり直すべきかを判断できるようになります。

そして遺産分割協議をやり直すと決めた場合は、やり直す方法と注意点を理解でき、トラブルなくやり直しを実行できるようになります。

是非最後まで読んでいってくださいね。

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目次

遺産分割協議をやり直せる/やり直せないケース

遺産分割協議は原則やり直すことができません。

遺産分割協議書に署名押印したということは協議内容に合意したということなので、書面の内容は法的に有効になるからです。

しかし、一定の条件を満たせば前回の合意内容を解除または取り消して遺産分割協議をやり直すことはできます

逆に、前回の合意内容が無効となってやり直さないといけない場合もあります

やり直す条件とはどのようなものがあるのか、下記一覧にまとめました。

【遺産分割協議をやり直す条件】

 

やり直せるケース

解除

・相続人全員が合意している場合

取り消し

・詐欺・脅迫・偽造・財産隠しなどがあった場合

無効

・相続人全員が参加していなかった場合

・判断能力のない相続人がひとりで参加していた場合

やり直せないケース

・遺産分割協議が調停・審判により成立した場合

※リンクから各項目の解説に移動していただけます。

本章では自分がどのケースにあてはまるかを確認し、やり直すか否か、やり直すならどのように進めていくかを確認していきましょう。

遺産分割協議やり直しに時効はない
遺産分割協議のやり直しに期限は設定されていないため、何十年前の遺産分割協議でも遡ってやり直すことは可能です。すでに相続人が亡くなっている場合は、その亡くなった人の相続人が協議に参加することになります。

【解除】やり直せるケース

相続人全員が合意している場合は遺産分割協議のやり直しが認められています

いったん有効となった協議内容を一部の相続人の都合でやり直すことはできませんが、全員が賛成しているなら問題はありません。これを遺産分割協議の解除と呼びます。

遺産分割協議が成立した時から時間が経つと相続人たちの状況に様々な変化が起きることもあるでしょう。例えば次のような事情により、実際にやり直しが行われるケースもあります。

【解除の例】
・長男が家業を継ぐことを条件に自宅や現金を相続したが、家庭の事情で次男が継ぐことになった
・新たな遺産が見つかったので、前回協議した財産分も含めて遺産分割方法を見直すことになった

※新たな遺産が見つかった場合は、その遺産の分だけ別で遺産分割協議を行うという方法もあります。

ただし解除の場合、遺産分割協議のやり直しは相続人たちの自己都合であるため、金銭面などやり直しの負担が大きくなることに注意が必要です。

詳細は次章で解説するので、それを読んだ上でやり直すかどうかを判断しましょう。

【取り消し】やり直せるケース

遺産分割協議が脅迫や詐欺により成立していた場合は、合意を取り消してなかったことにすることができます。

具体的には下記のような状況で合意をしてしまった場合はやり直すことができます。

【取り消しの例】
・ 他の相続人に生前贈与がないことが表明された上で遺産分割をしたのに、生前贈与があったことが発覚し、その生前贈与の金額が高額である場合
・財産が他にないことが表明された上で遺産分割協議をしたのに、他の相続人や第三者が財産を隠していたことが発覚し、その金額が高額である場合
・他の相続人や第三者に脅されて、あるいは騙されて合意させられた
・他の相続人や第三者が遺産分割協議書を偽造した

上記にあてはある場合は調停を申し立てて取り消し手続きを進めていくことになりますが、この「取消権」には5年の時効があるので注意しましょう。調停の申立て方法については3章で紹介します。

【無効】やり直さないといけないケース

下記ケースにあてはまる場合は前回の協議内容が無効となるので、必ずやり直さないといけません。

やり直さないと以降の相続手続き(預貯金の引き出しなど)が進められないので、必ずやり直すようにしましょう。

無効となるのは下記のケースです。

【無効の例】
・相続人が全員参加していなかった
・判断能力のない相続人がひとりで参加していた

2つのケースは対応が異なるので、ひとつずつ見ていきましょう。

相続人全員が参加していなかった場合

遺産分割協議は必ず相続人全員が参加しないと成立しません。

遺産分割協議書には全員分の署名押印が必要であり、一人でも欠けていればその文書は無効になります。

相続手続きでは遺産分割協議書を各関係機関に提出する際に戸籍も添付するため、不備のある遺産分割協議書は受け付けてもらえません。

そのため下記のような状況で遺産分割協議を行った場合は、相続人全員に連絡を取り直して協議をやり直すようにしましょう。

・相続人調査に漏れがあったことに気づかず協議を行った

・連絡の取れない相続人がいたが、その人抜きで協議を行った

相続人調査に漏れがあった場合

亡くなった人の戸籍を辿って必ず全員の相続人に遺産分割協議に参加するよう呼びかけましょう。

特に相続人調査では下記の続柄の相続人が見落とされがちなので注意が必要です。

・認知した子ども

・養子縁組をした子ども

・異父・異母兄弟(亡くなった人に子や親など直系血族がいない場合は相続権を得る)

相続人の調査方法については下記記事で詳しく解説しているので、参考にしながら進めていくようにしてください。

連絡の取れない相続人がいる場合

連絡がとれないからといって、それを理由にその人物抜きで遺産分割協議を行うことはできません。

どうにかして連絡をとるか別の手続きをとってから協議を進める必要があります。

連絡がとれない相続人がいる場合の対処法はこちらの記事で紹介しているので参考にしてください。

判断能力のない相続人がひとりで参加していた場合

遺産分割協議に参加した相続人が判断能力が欠けていた場合も協議は成立しません。

遺産分割協議は法律行為であるため、判断能力のない人がひとりで参加した場合は無効になるのです。

判断能力がない人とは次のような人物を指します。

・重い認知症を発症しており意思能力がない

・重い精神疾患を患っており意思能力がない

・未成年である

上記の人物が相続人である場合は、代理人を立てて遺産分割協議をやり直しましょう。

未成年の子と親の利益が相反する場合には親は代理人になれないため、家庭裁判所で特別代理人を選任してもらいましょう。特別代理人選任の申立て方法は裁判所のホームページでご確認いただけます。

特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合) | 裁判所

やり直せないケース

家庭裁判所の調停または審判により遺産分割が行われた場合はやり直すことはできません

例え相続人全員がやり直しを希望していたとしても、裁判所の結果は相続人たちの意思では変えられないからです。

遺産分割審判に不服がある場合は、審判後2週間以内に即時抗告を行わなければいけません。

もっとも、遺産分割調停や審判の対象となる財産に漏れがあった場合などについては、別途、漏れのあった遺産について協議することはできます。

遺産分割協議をやり直すなら知っておくべき3つのデメリット

前章で「自分の状況なら遺産分割協議をやり直せる」と分かった場合、本当にやり直すべきかどうかはやり直しによって発生するデメリットを確認した上で最終的に判断しましょう。

遺産分割協議をやり直す場合は、下記3つのデメリットが発生するおそれがあります。

【遺産分割協議やり直し3つのデメリット】

・労力と時間がかかる
・よけいな税金がかかる
・完全にやり直せないことがある

これらのデメリットによる負担が大きいと感じた場合はやり直しを取り止めることも検討しましょう。

特に相続人全員の合意によるやり直しと、やり直しの対象が相続登記済の不動産である場合は、税金面での負荷が大きくなるので、安易な理由によるやり直しはおすすめしません。

労力と時間がかかる

遺産分割協議をやり直す場合、想定していた以上に労力と時間がかかる可能性があります。

ただ遺産分割協議だけをやり直すだけでなく、その前後にもやり直さなければならない手続きが生じるためです。

相続の状況や進み具合にもよりますが、具体的には下記の手続きも遺産分割協議やり直しに付随して必要になってくるでしょう。

【遺産分割協議をやり直しにより発生する手続き】

・書類を集め直す(印鑑証明書などは提出先から期限が定められている場合があるため)
・もう一度遺産分割協議書を作成する
・相続税申告済みの場合でも別途税金の申告と納付が必要になる場合がある
・不動産を相続登記済みの場合は所有権抹消登記と再度相続登記を行わなければならない
・車や有価証券などすでに名義変更済の財産がある場合は再度名義変更しなければならない

そもそも遺産分割協議のやり直し自体もスムーズに進むとは限りません

話し合いがまとまらなければ何度も協議を開く必要があり、それでも成立しなければ調停に移行することになります。

調停になれば申立てや調停当日のために準備が必要で、調停日は平日の日中に限られているため仕事があっても調整しなければいけません。

このように遺産分割協議のやり直しには多くの時間と労力を要するケースがあると心得ておきましょう。

よけいな税金がかかることがある

遺産分割協議をやり直す場合、下記2つのケースでは本来納める必要のなかった税金が課せられることがあります。

【やり直しにより発生する税金】

条件

発生する税金

相続人全員の合意でやり直す場合

贈与税または所得税

やり直しの対象が不動産である場合

登録免許税

どの税金がいくらかかるかは4章で詳しく解説していきますが、数十万~数百万円、中には1,000万円以上税負担がかかる場合があるので、上記にあてはまる場合はやり直しについて慎重に考えるようにしてください。

相続人全員の合意でやり直す場合

最初の遺産分割協議で他の人が相続した財産を協議のやり直しで自分が受け継ぐことになった場合、税法上は所有権の移転となるため贈与税が課せられることがあります。

例えば相続人Aが評価額2,000万円の土地を相続し、土地の相続登記を行ったとします。しかしその後遺産分割協議のやり直しで相続人Bが土地を相続することに変更になった場合、AとBとの間での譲渡と解釈されるため、AとBとの親族関係から特例贈与財産となる場合であっても、Bに贈与税585.5万円が課せられます。

Aがすでに相続税を納めていても戻ってくるわけではないので、同じ財産に対して二重で課税されるこになります。

やり直しの対象が不動産である場合

すでに相続登記済の不動産について遺産分割協議を合意解除して、やり直して他の人が相続することになった場合、最初に納付した登録免許税は返還されず、再度、納付することになります。

2つの税金は最初の相続登記で一度納めているので、こちらも同じ不動産に対して二重で課税されることになります。

完全にやり直せないことがある

最初の遺産分割協議で相続人の一人が相続した財産をすでに第三者に渡した後では、その第三者の権利が優先されるため、遺産分割協議をやり直すために財産を取り戻すことはできません。

例えば、相続人Aが相続した自宅をBに売却したとします。その場合は遺産分割協議をやり直すことになったからといって、Bから自宅を取り戻すことはできないのです。

このように遺産分割協議をやり直すといっても完全に白紙に戻すことはできない可能性があることを理解しておきましょう。

遺産分割協議をやり直す方法

1・2章を読んで遺産分割協議をやり直すと決めた場合、本章以降からはどのようにして進めていくべきか手順を確認していきましょう。

【遺産分割協議をやり直す方法】

・再度相続人全員で遺産分割協議を行う
・調停を申し立てる

まずは最初の遺産分割協議同様、相続人全員に呼びかけて協議を開きます。

話し合いがまとまらなかった、またはやり直す理由が取り消しまたは無効であり他の相続人が話し合いに応じない場合は調停を申立てましょう。

再度相続人全員で遺産分割協議を行う

相続人全員に呼びかけて話し合いを行います。

この時点ですでに亡くなっている相続人がいる場合は、亡くなった人の相続人全員に参加してもらう必要があります。

話し合いが成立したらもう一度遺産分割協議書を作成しましょう。前回の遺産分割協議書は破棄するようにしてください。

調停を申し立てる

話し合いがまとまらなかった場合または話し合いに応じてもらえない場合は調停を申し立てることで解決を図ることができます。

調停とは中立の立場である調停委員に間を取り持ってもらい、話し合いによる解決を目指す手続きです。調停委員は双方の主張を交互に聞き、解決に向けてアドバイスや解決策を提案してくれます。

申し立てる調停の名称は申し立ての理由によって下記の通りに分かれます。

【理由別の調停名称】

調停名称

申し立ての理由

遺産分割調停

遺産分割をやりなす必要があることについて合意もしくは裁判等で確認ができている場合

遺産分割協議無効確認の調停

・詐欺、脅迫などがあった場合

・相続人全員が参加していなかった場合

・判断能力のない相続人がひとりで参加していた場合

遺産分割協議不存在確認の調停

・他の相続人や第三者が遺産分割協議書を偽造していた場合

遺産分割調停

相手方相続人の住所管轄の家庭裁判所または任意の家庭裁判所に申し立てます。(管轄の裁判所を調べる→裁判所の管轄区域

調停でも話し合いがまとまらなかった場合は自動的に審判に移行し、裁判官が決定した内容に従って遺産分割することになります。

遺産分割調停については下記記事で詳しく解説しているので、併せてご一読ください。

遺産分割協議無効確認・遺産分割協議不存在確認の調停

相手方相続人の住所管轄の家庭裁判所または任意の家庭裁判所に申し立てます。調停ではなく、訴訟提起を行うべき事案もありますので、弁護士にご相談ください。

ただし期限については錯誤や詐欺に気づいた時点から5年、遺産分割協議から20年以内と決められているので注意しましょう。

調停を申し立てるためには遺産分割協議の無効または取り消しを主張するための証拠を揃える必要があります。

しかし、自力で証拠を揃えたり調停の準備や主張を行うのは容易ではありません。遺産分割協議の無効・取り消しを認めてもらう可能性を上げるためには弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

関連記事:遺産相続は弁護士に依頼すべき?メリット・デメリットと判断ポイント
関連記事:相続にかかる弁護士費用の相場が分かる!費用を抑えるコツも紹介

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遺産分割協議をやり直した場合にかかる税金

先ほどやり直しにおけるデメリットで触れましたが、遺産分割協議をやり直すと下記の税金がかかってくる恐れがあります。

【やり直した場合にかかる税金】

条件

発生する税金

相続人全員の合意でやり直す場合

贈与税または所得税

やり直しの対象が不動産である場合

登録免許税

それぞれ誰にいくらかかってくるのかを確認していきましょう。

①贈与税または所得税【相続人全員の合意でやり直す場合】

遺産分割協議のやり直しで当初とは違う人が相続することになった財産には贈与税(所得税)が課税されるおそれがあります。

自分たちの都合によるやり直しの場合、最初の遺産分割協議は成立しており、やり直しによる変更は相続人間での贈与または譲渡と解釈されるためです。

相続税法でも下記の通り条文で定められています。

《相続税法》
当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならない。”
(基本通達19の2-8(一部抜粋))  

引用:相続税法 | e-Gov法令検索

財産の贈与または譲渡には贈与税が発生するので、この場合にも課されることになるのです。下記の例で見てみましょう。

例)土地(評価額3,000万円)の財産相続について  

最初の遺産分割協議:相続人Aが取得、その後相続登記
やり直しの遺産分割協議:相続人Bが取得  

この場合、Bには贈与税1035.5万円が課税されます(特例贈与財産の場合)。
(もしBが土地の対価をAに支払った場合は、Aに所得税が課せられます。)

尚、Aがすでに相続税を納付済であっても還付や免除などはありません

■いくら課税されるのか?贈与税額早見表

続いて実際にかかる贈与税額を確認していきましょう。

贈与を受けた金額が年間110万円以下なら贈与税はかかりません。110万円を超える場合は下表の税額がかかってきます。

【贈与税早見表】

取得財産額

税額

18歳以上の子・孫への贈与

左記以外

100万円

0万円

0万円

200万円

9万円

9万円

300万円

19万円

19万円

400万円

33.5万円

33.5万円

500万円

48.5万円

53万円

600万円

68万円

82万円

700万円

88万円

112万円

800万円

117万円

151万円

900万円

147万円

191万円

1,000万円

177万円

231万円

2,000万円

585.5万円

695万円

3,000万円

1,035.5万円

1,195万円

4,000万円

1,530万円

1,739.5万円

5,000万円

2,049.5万円

2,289.5万円

1億円

4,799.5万円

5,039.5万円

正確な贈与税額を計算したい場合は国税庁のホームページでご確認ください。納付方法や期限についても案内が記載されています。

No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

②登録免許税【やり直しの対象が不動産である場合】

遺産分割協議のやり直しで相続登記済の不動産を違う人が相続することになった場合、もう一度登録免許税を納めなければいけません

相続により不動産を引き継ぐ場合には、不動産取得税はかかりませんが、やり直しにより不動産を相続人から別の相続人へ引き継いだ場合は、不動産取得税や相続登記より税率の高い登録免許税がかかります。

■いくら課税されるのか?不動産取得税・登録免許税額早見表

それぞれの税金の計算式は下記の通りです。

不動産取得税=不動産の固定資産評価額 X 3~4%

登録免許税=不動産の固定資産評価額 X 2%

これらの計算式がベースとなりますが、実際の税額は様々な条件により変動します。

特に不動産取得税は都道府県によって税率が異なり、控除や軽減措置が適用されて大幅に軽減される可能性があります。

下表が計算式に基づく不動産評価額別の早見表ですが、あくまでも目安として参考程度に留めるようにしてください。

【目安:贈与による不動産取得税・登録免許税早見表】

不動産の固定資産評価額

税額

不動産取得税

(3%で計算)

登録免許税

(2%で計算)

100万円

3万円

2万円

200万円

6万円

4万円

300万円

9万円

6万円

400万円

12万円

8万円

500万円

15万円

10万円

600万円

18万円

12万円

700万円

21万円

14万円

800万円

24万円

16万円

900万円

27万円

18万円

1,000万円

30万円

20万円

2,000万円

60万円

40万円

3,000万円

90万円

60万円

4,000万円

120万円

80万円

5,000万円

150万円

100万円

1億円

300万円

200万円

正確な不動産取得税・登録免許税額を計算したい場合は都道府県または国税庁のホームページでご確認ください。納付方法や期限についても案内が記載されています。

No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

※不動産取得税についてはインターネットで「不動産取得税+都道府県名」と入力して検索してみてください。

遺産分割協議をやり直した場合の不動産登記方法

本章ではやり直しの対象が不動産である場合、すなわち「相続登記済の不動産を遺産分割協議のやり直しで他の人が相続することになった場合」の登記方法について紹介していきましょう。

【遺産分割協議をやり直した場合の不動産登記方法】

・登記をやり直す場合の手順
・やり直しの登記方法

登記をやり直す場合の手順

登記の手続きは、「最初の相続登記を抹消して、再協議の結果にもとづいて相続登記を行う」という方法で進めていきます。

【登記をやり直す場合の手順】

①最初の相続登記を抹消(所有権抹消登記)

②変更後の相続人が相続登記

前章で、税法上は「不動産が最初の相続人から変更後の相続人への移転された」と解釈されるとお伝えしましたが、法務局における実際の手続きはまた考え方が異なるのです。

例を挙げて手順を確認しましょう。

例)土地の相続について  
最初の遺産分割協議:相続人Aが取得、相続登記済
やり直しの遺産分割協議:相続人Bが取得  

手順①所有権抹消登記
相続人全員でAが行った相続登記を「合意解除」を原因にして所有権抹消登記を行います。  

手順②相続登記
相続人Bが「相続」を原因にして所有権移転登記を行います。

手順①,②と紹介していますが、2件の登記は同時に行うことが可能です。

登記の方法

登記は申請書に必要書類を添えて法務局に申請することによって行えます。

しかし、所有権抹消登記はレアなケースであるため、法務省ホームページにも申請方法が掲載されていません。不動産の所有地を管轄する法務局に問い合わせて、案内に従って進めていくようにしましょう(管轄のご案内:法務局)。

問い合わせの際は下記2点を必ず確認するようにしてください。

・所有権抹消登記の申請書の書き方

・所有権抹消登記と相続登記の必要書類

(オンライン申請希望の場合は可能かどうかも尋ねてみましょう。)

申請書のフォームは法務省ホームページからダウンロード可能です。

不動産登記の申請書様式について:法務局

【注意】納税・登記を適切に行わなかった場合に起こるトラブル

4・5章では遺産分割協議やり直しに伴う税金と不動産登記について解説しました。

これらの手続きは複雑な上に時間と労力がかかるため、積極的に取り掛かろうという意欲が沸きにくいですよね。

しかし必要な手続きを放置しておいたり、手続きを適切に行わなかった場合、後々下記のようなトラブルを招く恐れがあります。

【納税・登記を適切に行わなかった場合に起こるトラブル】

納税しなかった場合

・延滞税が課される

納税金額が間違っていた場合

・納めるべき税額より少なければ過少申告加算税が課される

不動産登記を放置した場合

・不動産を活用・売却ができない

・固定資産税の納税義務が最初の相続人のままになってしまう

・やり直しにより相続することになった人が亡くなった場合、相続人が増えて利権が複雑になる

このようなトラブルを引き起こさないためにも、しっかりと手続きを済ませるようにしましょう。

自分で正確に行うのは自信がない場合は外部の力に頼ることも検討してみてください。納税関係ならば税理士に、不動産に関する手続きは弁護士に依頼すると適切なサポートが受けられるでしょう。

関連記事
相続争いを裁判(調停・審判・訴訟)で解決|7つのケース別進め方
相続の相談先はどうすれば?|5つの相談先の特徴・費用・選び方のコツ

まとめ

本記事を読んで遺産分割協議のやり直しについて理解を深められたことと思います。

あらためて本文のポイントをおさらいしましょう。

遺産分割協議をやり直せるのは下記のケースです。

【遺産分割協議をやり直す条件】

 

やり直せるケース

解除

・相続人全員が合意している場合

取り消し

・詐欺・脅迫・偽造・錯誤(財産隠し)などがあった場合

無効

・相続人全員が参加していなかった場合

・判断能力のない相続人がひとりで参加していた場合

やり直せないケース

・遺産分割協議が調停・審判により成立した場合

しかしやり直せる場合でも、やり直しには下記デメリットが発生する恐れがあるので、やり直すかどうか慎重に判断する必要があります。

遺産分割協議やり直し3つのデメリット
・労力と時間がかかる
・よけいな税金がかかる
・完全にやり直せないことがある

やり直すと決めた場合は、次の手順で進めていくようにしましょう。

遺産分割協議をやり直すときの手順
1.再度相続人全員で遺産分割協議を行う
2.調停を申し立てる又は訴訟を提起する
3.不動産がある場合は所有権抹消登記と相続登記を行う
4.必要に応じて税金(贈与税・不動産取得税・登録免許税)を納める

以上、本記事が遺産分割協議をやり直すべきかどうかを判断するための役に立てば幸いです。

そしてやり直す場合は本記事を参考にしてトラブルなくスムーズに進められるよう願っております。


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