弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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「父の遺産を兄が使い込んだかもしれない。突き止めるにはどうすればいい?」
「使い込まれた遺産はどうしたら取り戻せる?」
遺産が他の相続人に勝手に使い込まれていたら強い憤りを感じますよね。同時に使い込まれた遺産を取り戻せるのか不安になることと思います。
遺産の使い込みに気づいたら下図の手順で対処していきましょう。
上記の手順で使い込まれた遺産を取り戻していきます。
しかし実際に使い込まれた遺産を取り戻すのは容易ではありません。それは図の「2.使い込みの証拠を集める」ことが難しいからです。
使い込みを証明するためには銀行や病院など各機関に照会をかけていく必要がありますが、必ずしも証拠となるものが入手できるとは限りません。巧妙な手口だと使い込みの痕跡が残らないように遺産を持ち出しているケースもあります。
使い込んだ遺産を取り戻せるかどうかは、どこまで証拠をつかめるかどうかにかかってくるでしょう。
そこで本記事では次の内容をまとめました。
本記事のポイント |
● 遺産の使い込みとは|認められる事例・認められない事例 ●使い込まれた遺産を取り戻すのは難しい理由 ●使い込まれた遺産を取り戻すために必要な3つの条件 ●遺産使い込みの証拠を集める3通りの方法 ●使い込まれた遺産を取り戻すための手順 |
本記事を読めば、遺産が使い込まれた場合の調査方法と遺産を取り戻す方法を理解して実践できるようになります。
是非最後まで読んでいってくださいね。
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あるはずの遺産がなくなっていたら、他の相続人による遺産の使い込みの可能性があります。しかし全てのケースが使い込みであるとは限りません。
使い込みとは、
◎被相続人の財産を勝手に持ち出したこと
◎その財産を自分のために使ったこと
この2つの要素が揃った状態のことを指します。この「勝手に」と「自分のために」という点が重要になります。
具体的にどのようなケースが当てはまるのか、よくある事例を見ながら判別していきましょう。
認められる場合と認められない場合を比較することで基準が理解しやすくなります。
遺産の使い込みと認められやすいのは次のような事例です。いずれも「被相続人の財産を勝手に持ち出したこと」「その財産を自分のために使ったこと」の条件を満たしています。
認められる事例① 預貯金を勝手に引き出して使い込む 父親(被相続人)が介護施設に入居するので、財産管理を任せるため長男に銀行口座のキャッシュカードを渡した。長男は父親に必要なお金の引き出しとは別に、100万円を約半年ごと数年に渡り無断で引き出し、自分の口座に移した。 認められる事例 ②資産を無断で売却する 父親(被相続人)が所有する土地の権利証と実印を長男が勝手に持ち出して、父親の土地を勝手に売却。その売却金で自分の車を買った。 認められる事例③ 生命保険を勝手に解約する 夫(被相続人)が加入している生命保険を妻が無断で契約解除し、解約返戻金を着服。そのお金を自身の交遊費に充てた。 認められる事例④ 不動産収入を横領する 母(被相続人)が経営しているアパートの賃料を娘が勝手に自分の口座に振込先を変更。賃料を着服して自分のために使い込んだ。 |
これらのようなケースでは証拠を揃えられれば遺産を取り戻せる可能性が高いので、次章以降をしっかり読んで相手に使い込みを認めさせるよう実行していきましょう。
一方、次のような事例は使い込みとは認められにくいでしょう。
認められにくい事例① 被相続人のために使った(介護費・医療費・生活費・葬儀代) 父親(被相続人)から財産管理を任されていた長男が定期的に数十万円ほど引き出していたが、相続人の医療費に使ったと主張。 →「相続人が自分のために使った」にあてはまらないため使い込みと認められない 認められにくい事例② 贈与であると主張する 母親が所有する不動産の名義が長女に変更されていたことが母親の死後に発覚。しかし長女は「母親からもらった」と主張。 →「財産を勝手に持ち出した」にあてはまらないため使い込みと認められない 認められにくい事例③ タンス預金(自宅保管)を移した 母親(被相続人)は押し入れにコツコツと現金500万円を貯めており、長女と次女もそれを知っていた。母親の死後、長女が相続手続きのため500万円を確認しようとすると、既に押し入れには一銭もなかった。次女が持ち出したに違いないと長女は疑ったが、次女は知らないと主張。 →「財産を勝手に持ち出した」「財産を自分のために使った」を客観的に証明することができないので使い込みと認められにくい |
①と③に関しては、話し合いで相手が使い込みを否定した場合、残念ながら認めさせることは難しくなります。
②については、この場合は生前贈与として特別受益を主張することができます。特別受益については詳しく解説している記事があるので、そちらで対応をご確認ください。
遺産の使い込みが発覚したら遺産を戻して欲しいと思うのは当然のことですが、現実はそう簡単ではありません。
なぜなら、「被相続人の財産を勝手に持ち出したこと」「その財産を自分のために使ったこと」この2つともを証明することは非常に難しいからです。
相手が素直に認めてくれればいいですが、多くの場合は「被相続人に頼まれて引き出した」「被相続人からもらった」「被相続人のために使った」と主張されてしまいます。
相手が使い込みを認めないのであれば証拠を示すしかありません。
しかし使い込みの証拠を揃えるのは簡単ではなく、時間や手間もかかる上、必ず立証できるとは限りません。前章で紹介した認められにくい事例③タンス預金がその顕著な例でしょう。
証拠がないともし調停や訴訟に進んだとしても勝てる見込みは低いです。悔しいですが証拠をつかめないなら泣き寝入りするしかありません。
次の「使い込まれた遺産を取り戻すために必要な3つの条件」でどのようなものが証拠になるのか、次々章の「遺産使い込みの証拠を集める3通りの方法」で証拠の集め方(自分/弁護士/裁判所)を紹介していくので、そこで証拠を集められそうか判断するようにしてください。
【使い込みは罪になるのか?】
使い込みは人のお金を勝手に使うことなので窃盗や横領にあてはまりますが、一定の親族間の場合は刑事罰が免除されることが一般的です。これは「法は家庭に入らず」、つまり身内の出来事は家庭内で解決すべきと考えられているからです(刑法第244条、第255条)。 ただし民事上の責任は親族間であっても追及されます。 関連記事 法定相続分の預貯金引き出しは罪に問われない|正しい進め方と注意点 |
相手方が遺産の使い込みを認めようとしない場合、取り戻すのは困難とお伝えしました。
相手方に認めさせるためには、「証拠があること」を含め次の項目を満たしている必要があります。
【使い込みを取り戻すために必要な3つの条件】
◎証拠を揃えている ◎時効の期限内である ◎相手が資産を持っている |
遺産の使い込みを認めさせるには客観的に使い込んだと分かる証拠が必要です。
証拠は「被相続人の財産を勝手に持ち出したこと」「その財産を自分のために使ったこと」この2つを証明するものをそれぞれ集める必要があります。
具体的に証拠として使えるものを下表にまとめました。
【勝手に持ち出した証拠となるもの】
預貯金・有価証券の取引明細 |
不自然な引き出しがあれば使い込みの可能性有。 被相続人の死亡後であれば確実に勝手引き出したことの証拠になる。5年分以上取得することが望ましい。 銀行や証券会社での保存期間は最長でも10年程度となっており、過ぎていれば破棄されている可能性がある。 |
預貯金の振込伝票・委任状 |
筆跡が被相続人本人のものかどうかを確認。違えば勝手に引き出したことの証拠になる。 銀行での保存期間は最長で10年程度となっており、過ぎていれば破棄されている可能性がある。 |
贈与契約書 |
偽造かどうか確認するため、書類に不自然な点はないかを確認。 |
【相続人が自分のために使い込んだ証拠となるもの】
医師の診断書・カルテ |
認知症や体の不自由のため被相続人自ら預貯金を引き出せる状況ではなかったことを証明できる。 病院での保存期間は3年~5年となっており、過ぎていれば破棄されている可能性がある。 |
要介護認定書・介護記録 |
寝たきりなど要介護のため被相続人自ら預貯金を引き出せる状況ではなかったことを証明できる。 介護施設での保存期間は3年~5年となっており、過ぎていれば破棄されている可能性がある。 |
医療費・介護費用・葬儀代の領収書 |
預貯金の取引履歴と照らし合わせ、引き出した金額より少なければ使い込みの疑いあり。 |
疑いのある相続人の通帳 |
預貯金の取引履歴と照らし合わせ、入出金が一致していれば使い込みを証明できる。 |
集め方(自分で/弁護し依頼/裁判所申立て)については「遺産使い込みの証拠を集める3通りの方法」で紹介していきます。
尚、被相続人の預貯金凍結後でも「払戻し制度」を利用すれば150万円を上限に引き出すことは認められており、使い込みには該当しません。この分は法定相続分の一部を既に取得したとして、後日遺産分割協議で調整が図られます。
使い込まれた遺産は話し合いで解決しない場合、不当利得返還請求という手続きで遺産を取り戻す方法があります。
しかしこの不当利得返還請求には時効があり、次のいずれかが過ぎたら権利が消滅してしまいます。
【不当利得返還請求の時効】
◎使い込みを行ったときから10年 ◎使い込みを知ったときから5年 |
時効が過ぎてしまわないように、相続が開始されたらなるべく早めに財産調査に取り掛かりましょう。
使い込みが認められて法的に返還請求が行い得るとしても、相手に資産がなければ遺産を取り戻すのは現実的に困難です。
返還が滞った場合、公正証書(執行認諾文言付)、判決書などがあれば強制執行(差し押さえ)を行うこともできますが、それでも全額回収までは難しいケースがあります。
このように使い込みが認められても全額取り戻せるとは限りません。ゆえに使い込みに気づいた時点で預貯金口座を凍結させるなど、被害を最小限に食い止めることが重要です。
関連記事 減額に注意!遺留分侵害額(減殺)請求に応じない時の対処法3つ
前章で紹介した証拠を揃えるには手間と労力を要します。ここでは3通りの方法を紹介しますので、自分のケースに最適な方法で調査していきましょう。
【証拠集め3通りの方法】
◎自分で集める ◎弁護士に依頼する ◎裁判所に職権調査嘱託を申し立てる(訴訟中) |
自分で集める場合は必要と思うものを各機関に地道に問い合わせていきます。
自分で行う場合のメリット・デメリットなどを下記にまとめました。
【自分で集める場合】
メリット |
・費用が抑えられる(書類の発行手数料や郵送代のみ) |
デメリット |
・請求先ごとに問い合わせたり訪問したりしなければいけない ・戸籍や印鑑証明など、請求に必要な書類を自分で揃えないといけない ・銀行や役所などは平日の昼間しか開いていない ・個人情報保護などを理由に開示を断られることがある |
おすすめな人 |
・調査対象の財産が少ない人 ・平日の日中時間をつくれる人 ・費用を抑えたい人 |
各書類の集め方は下記の通りです。必要書類や費用に関しては各機関によって異なるので、詳細はお問合せください。
証拠 | 収集依頼先 | 必要書類 | 費用(相場) |
預貯金・有価証券の取引明細 | 銀行・証券会社 | ・被相続人の戸籍・除籍謄本 ・申請者の本人確認書類 ・申請者の実印 ・申請者の印鑑証明書、など | 数千円 |
預貯金の振込伝票・委任状 | 銀行 | ・被相続人の戸籍・除籍謄本 ・申請者の本人確認書類 ・申請者の実印 ・申請者の印鑑証明書、など | 数千円 |
贈与契約書 | 公正役場(公正証書として作成された場合) | 要確認 | ー |
医師の診断書・カルテ | 病院 | 要確認 | 数千円〜1万円 |
要介護認定書・ 介護記録 | 受け取った相続人 または介護施設、自治体 | 要確認 | ー |
医療費・介護費用・ 葬儀代の領収書 | 受け取った相続人 または各機関や業者に再発行を依頼 | 再発行は対応してもらえない所も多い。 その場合は領収額証明書など何か金額が分かる書類を作成してもらえないか相談してみる。 | ー |
証拠集めは財産調査として弁護士に依頼することもできます。
【弁護士に依頼する場合】
メリット |
・時間や手間をかけなくてすむ ・弁護士照会制度を利用して、より広い範囲で開示請求できる ・弁護士のノウハウで効率よくスピーディに進められる ・その後の相手との交渉や裁判も継続して依頼できる |
デメリット |
・弁護士費用が高い(目安約10~30万円) |
おすすめな人 |
・調査対象の財産が多い人 ・平日の日中に時間を確保できない人 ・相手との交渉まで任せたい人 |
弁護士は「弁護士会照会制度」を利用することによって各機関から必要な書類を入手することができます。
相続人自身からの請求では個人情報保護などを理由に情報開示を断られることもありますが、弁護士照会制度の下では開示してもらえるケースが多く、より広い範囲で書類収集が可能になります。
弁護士費用は事務所や調査件数により異なりますが、約10万円~30万円を目安と考えてください。
すでに裁判中であれば「調査嘱託」という手続きを申し立てることができます。
調査委託とは… 必要と認める範囲で裁判所が各機関に情報照会をかけること。一般的には訴訟を起こした後に申立て手続きをしますが、訴訟提起前でも一定の要件を満たせば調査嘱託の申立はできます。 |
調査嘱託は3つの調査方法の中で最も広い範囲で情報を開示してもらえる方法です。
調査嘱託を申し立てれば、使い込みの疑いがある相続人の預貯金口座の取引履歴も開示してもらうことができます。
他の相続人の預金口座の内容は、弁護士会照会制度をもっても銀行側が守秘義務を理由に開示に応じようとしません。しかし調査嘱託を申し立てれば、裁判所から情報照会が行われるので銀行側も応じることになります。
使い込みの証拠を揃えられたら、いよいよ相手方の説得にかかりましょう。使い込みを認めさせるには次の手順で進めていきます。
【使い込まれた遺産を取り戻すための手順】
◎当人同士で話し合う ◎弁護士に依頼する ◎遺産分割調停を起こす(相続開始後の使い込み) ◎不当利得返還請求をする(生前の使い込み) |
まずは当人同士で話し合い、相手が使い込みの事実を認めたら返還方法について取り決めていきます。
話し合いが決裂したなら弁護士に依頼するか、遺産分割調停または不当利得返還請求を行いましょう。
裁判は自分一人でも行えますが、より有利に進めていくためには弁護士をつけることをおすすめします。
まずは当人同士で話し合いを試みましょう。それで解決するならかける時間も費用も最小限で済みます。
集めた証拠を見せて、使い込みを認めたら和解を図ります。
使い込みを認めない場合は、使い込みではない証拠を要求してみてください。
例えば「被相続人の預金口座から現金を引き出したが、被相続人の生活費に充てた」と主張するなら、その生活費に充てたことを証明するものを出してもらいます。人の財産を持ち出すからには正当な理由があるはずなので、厳しく追及しましょう。
和解に至ったら次は返還方法について相談していきます。
使い込んだ金額が法定相続分以下なら遺産分割協議で調整しましょう。法定相続分を超える金額なら、超えた分を返還してもらうよう取り決めます。
その際、後々支払いで揉めないように合意書か公正証書を作成しておくことをおすすめします。作成にあたっては下表を参考にしてください。
|
合意書 |
公正証書 |
特徴 |
法的効力はあるが強制力はない |
高い証明力と強制力(執行認諾文言付きの場合)がある |
作成方法 |
自分で作成 |
公正役場に連絡 |
書き方 |
次の項目を記載 ・表題 ・柱書 ・合意した内容 ・合意書の通数・保管方法 ・合意書の作成日付 ・当事者の署名捺印 |
公証人に作成してもらう |
費用 |
ー |
5,000円~ |
当人同士の話し合いがまとまらなかった場合は、すぐに裁判に移行するよりもまずは弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士は法律と交渉のプロであるため、相手に使い込みを認めさせられる可能性がより高まります。具体的には弁護士に間を取り持ってもらうと下記のようなことが期待できるでしょう。
【弁護士に期待できること】
◎証拠収集のアドバイスをもらえる ◎法的根拠を用いて、論理的に説得してくれる ◎相続人同士では感情的になりやすいが、弁護士が間に入ると冷静になれる ◎相続人同士は直接顔を合わせずに済む ◎裁判よりも早期解決しやすい傾向がある ◎裁判に進んでも引き続き対応を任せられる |
このように弁護士は依頼者の心強い味方として、依頼者の利益を最大化するために動いてくれます。
弁護士に依頼するメリットが多い一方で、最大のデメリットといえば費用が高額になりやすいことでしょう。
弁護士費用の相場は下記の通りです。事務所や遺産の額によって異なるので、目安としてお考え下さい。
弁護士費用相場(遺産使い込みの場合) |
着手金(約22万~55万円) + 報酬金(取得した財産の4%~16%) |
着手金とは契約するときに支払う前払い金のことですが、近年は着手金が発生しない事務所も増えてきました。その一方で、調停に進むとプラス10万円、審判・訴訟に進むとさらにプラス10万円と、段階が進むごとに追加料金が発生する事務所もあります。
報酬金は解決できたときに支払う後払い金のことで、成功報酬として取得できた遺産額に応じて支払います。
解決事例:【遺留分侵害額請求】遺産を生前に他の相続人に移されていても、遺留分侵害額請求によって回復!
関連記事:相続にかかる弁護士費用の相場が分かる!費用を抑えるコツも紹介
話し合いが合意に至らなかった場合、相続開始後つまり被相続人死亡後の使い込みについては、遺産分割調停で解決を図る方法があります。
遺産分割調停とは… 中立な立場の調停委員に間を取り持ってもらい、話し合いにより遺産分割の解決案を模索すること。 使い込みにおいては、相続開始後の使い込みで、使い込まれた額が遺産全体の一部分であったときに有効な方法。 |
調停が成立しなければ自動的に遺産分割審判に移行します。審判では協議や調停の資料などをもとに裁判官が分割方法を決定して遺産分割を終結させます。
遺産分割調停の申立て方法を下記にまとめたので、参考にしながら進めていってください。
申立てできる人 |
相続人 |
申立ての条件 |
使い込みにおいては、使い込みを疑われる相続人を除く相続人全員の合意が必要 |
申立先 |
・相手方相続人のうち一人の住所地の家庭裁判所 または ・当事者が合意で決めた家庭裁判所 裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所 |
受付時間 |
平日8:30~17:00(昼休憩有り) |
費用 |
・収入印紙1200円分/人 ・連絡用の郵便切手代 |
調停の流れ |
①家庭裁判所へ申し立てる ②裁判所から呼び出し状が届く ③調停が開催される(申立てから約1,2ヶ月後) ④調停成立なら→調停調書が届く(成立から数日後) ⑤調停不成立なら→審判に移行する |
必要書類などさらに詳しく知りたい場合は裁判所のホームページでご確認いただけます。
遺産分割調停についてはこちらの記事で詳しく解説しています。調停の流れやポイント、注意点も紹介しているので併せてご確認ください。
※補足《2019年施行の改正民法》 以前は遺産の使い込みは遺産分割調停で話し合うことができませんでしたが、法改正により使い込みを疑われる相続人以外の相続人全員の同意があれば、遺産分割の対象とすることができるようになりました。 |
生前の使い込みは不当利得返還請求を起こすことで取り戻せる可能性があります。
不当利得返還請求とは…正当な理由なく利益を得て他人に損失を及ぼした者に対して、利益の返還を求めること。 使い込みにおいては、生前の使い込みもしくは使い込まれた額が遺産の大部分を占める場合に有効な方法。 |
前述しましたが不当利得返還請求には時効があります。「使い込みを行ったときから10年」または「使い込みを知ったときから5年」を過ぎたら請求の権利が消滅してしまうので注意が必要です。
不当利得返還請求については裁判所HPに個別案内のページがありません。申し立て方法詳細については弁護士に相談するか、管轄の地方裁判所または簡易裁判所に問い合わせましょう(各地の裁判所)。
不法行為にもとづく損害賠償請求について 使い込みは「不法行為にもとづく損害賠償請求(故意または過失により損害を与えた人に対し賠償を求めること)」でも争うことができます。どちらの訴訟でも結果に違いは生じませんが、損賠賠償請求の方が時効が短い(使い込み発覚時から3年)ため、不当利得返還請求で争う方が一般的です。 |
以上、遺産の使い込みについて解説してきました。
あらためて本文の要点を振り返ります。
まずはどのようなケースが使い込みに該当するかを判別するため、使い込みと認められやすい事例・認められにくい事例を紹介しました。
基準は「被相続人の財産を勝手に持ち出したこと」「その財産を自分のために使ったこと」の2つです。
遺産使い込みと認められやすい事例 |
●預貯金を勝手に引き出して使い込む ●資産を無断で売却する ●生命保険を勝手に解約する ●不動産収入を横領する |
遺産使い込みと認められにくい事例 |
●被相続人のために使った(介護費・医療費・生活費・葬儀代) ●贈与であると主張する ●タンス預金(自宅保管)を移した |
認められやすい事例では遺産を取り戻せる可能性が高いですが、現実には証拠が揃っていないと厳しいことをお伝えしました。
次に、使い込まれた遺産を取り戻すために必要な3つの条件を紹介しました。
使い込まれた遺産を取り戻すために必要な3つの条件 |
●証拠を揃えている ●時効の期限内である ●相手が資産を持っている |
遺産を取り戻せるかどうかは証拠集めにかかっています。証拠を集める方法は次の3通りです。
証拠集め3通りの方法 |
●自分で集める ●弁護士に依頼する ●裁判所に職権調査嘱託を申し立てる(訴訟中) |
証拠が揃ったら相手の説得に取り掛かります。次の手順で進めていくようにしましょう。
使い込まれた遺産を取り戻すための手順 |
●当人同士で話し合う ●弁護士に依頼する ●遺産分割調停を起こす(相続開始後の使い込み) ●不当利得返還請求をする(生前の使い込み) |
以上、本記事を元に遺産を使い込んだ相続人にその事実を認めさせ、使い込まれた遺産を取り戻せることを願っております。