弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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「非嫡出子に相続の権利はないの?」
「内縁の妻との間にできた子にも財産を残したい」
結婚していない男女の間に生まれた子を非嫡出子と言いますが、非嫡出子はそのままでは父親の財産を相続する権利はありません。
ただし、非嫡出子でも、被相続人である父親から「認知」されることで、財産を相続する権利を持つことができます。
しかし、非嫡出子の相続では、認知や遺産分割などが親族間の亀裂を生むことも少なくなく、トラブルも生じやすいため、適切な対処のもとで慎重に手続を進める必要があります。
より確実にトラブルを回避するためには、相続の専門家である弁護士へサポートを依頼するのが最善の方法です。
そこで今回は、
・非嫡出子の相続を押さえるための 3つの基礎知識
・非嫡出子の相続でよくある4つのトラブル
・非嫡出子の相続でトラブルを防ぐための3つの対処
・非嫡出子の相続で弁護士へ依頼すべき4つの理由
について詳しく解説していきます。
この記事を読めば、非嫡出子の相続における問題を理解し、思い描く相続を実現することができます。
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まずは非嫡出子の相続について、以下の3つのポイントで基礎的な知識を確認しておきましょう。
一つずつ確認していきます。
冒頭でもお伝えしたとおり、非嫡出子とは父親と母親が婚姻関係にない状況で生まれた子供のことを言います。
法律では、基本的に婚姻関係にある両親から生まれた子供のことを嫡出子、これに対して婚姻関係にない両親から生まれた子供のことを非嫡出子と定めています。
端的に言えば、非嫡出子とは父親との親子関係が認められていない子供であり、誰が父親であるかがわかっていても、法律上は親子関係にありません。
このため、非嫡出子は、そのままでは実の父親が亡くなった場合に、父親の遺産を相続することができません。
非嫡出子が父親の遺産を相続するためには、父親から「認知」される必要があります。
認知とは、婚姻関係にない女性との間にできた子供を、父親が自分の子供であると認める法的手続きのことをいいます。非嫡出子は父親から認知されることによって初めて、法律上、父親と親子関係にあることが認められます。
反対に言えば、認知が行われない限り父親との親子関係が法的に認められず、父親の財産を相続できない状況に置かれることを意味します。
父親が認知をしようとしない場合、非嫡出子が父親に強制的に認知をさせる手段があります。
後ほど詳しく解説しますが、父親が認知を受け入れない場合でも「強制認知」や「死後認知」などの方法によって、非嫡出子の方から法的に親子関係を主張し、認知を認めさせることが可能です。
非嫡出子は、ひとたび認知されると嫡出子と全く変わらない相続権を有することになります。
認知を受けた非嫡出子は、被相続人の遺産を嫡出子と変わらない割合で受け取ることができるようになります。
平成25年までは、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とすることが民法で定められていましたが、平成25年9月4日の最高裁判所の決定によって、その規定が憲法第14条「法の下の平等」に反するとされ、同年12月に削除されました。
そのため、現在は嫡出子と非嫡出子の相続における格差は存在しません。
これは「遺留分」についても同じです。
遺留分とは、遺言書に自分が相続できる遺産の記載がない場合でも、一定の割合の遺産の相続を主張できる権利です。
このため、もし被相続人が非嫡出子に遺産を残さないよう遺言書に記載した場合でも、認知を受けた非嫡出子は遺留分を主張することができ、他の相続人はこれを拒むことはできません。
関連記事:遺留分とは?言葉の意味や請求方法をどこよりも分かりやすく解説
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非嫡出子の相続では、特に以下の4つのトラブルがよく発生します。
一つずつ確認しましょう。
非嫡出子の相続でよくあるのが、被相続人の死後に相続手続のために戸籍謄本を取り寄せたところ、非嫡出子がいることが判明したというケースです。
戸籍謄本に名前が記載されている場合、被相続人が非嫡出子を「認知」しているということを意味します。
この場合、非嫡出子は法的にも遺産を相続する権利をもつ法定相続人であり、非嫡出子を無視して相続の手続を進めることはできません。
しかし、突然身に覚えのない血族の存在が明らかになるうえ、自分が相続できる遺産も減ることになるため、他の相続人に大きな動揺を与えることになります。
関連記事:【実践的】相続人調査の進め方|5つのステップで分かりやすく解説
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認知されている非嫡出子が存在する場合、非嫡出子を無視して遺産分割協議を行うと、その協議自体が法的に認められず、はじめから相続の手続をやり直す必要が生じます。
遺言書のない一般的な遺産相続では、被相続人の死後、法定相続人全員が集まって遺産分割協議を行い、全員の同意のもとで、遺産分割の詳細を記した遺産分割協議書を作成します。
もし非嫡出子が出席しないまま遺産分割協議が進められた場合は、手続自体が無効とされ、遺産分割協議は法的な効力を持ちません。
非嫡出子の存在を知っていても住所がわからず連絡をすることができないというトラブルもしばしば起こります。
被相続人と非嫡出子が日常的に連絡を取りあっていないというケースも少なくなく、被相続人が亡くなった際に非嫡出子の連絡先が分からないというケースもよくあります。
上述のとおり、遺産分割協議は原則として相続人全員の参加が必要となるため、非嫡出子の連絡先が分からなければ遺産分割協議を進めることはできません。
この場合、被相続人の戸籍に記載された非嫡出子の本籍地を手掛かりに現在の住所を調べることになります。
非嫡出子が本籍地に住んでいれば、本籍地の役所で住所を調べることが可能です。
しかし、非嫡出子が本籍地に住んでいない場合は、住所を知るためにさらに面倒な手続が必要になります。
それでも非嫡出子の所在がわからない場合は、家庭裁判所へ「不在者財産管理人の選任」の申し立てを行うことになります。
不在者財産管理人とは所在がわからない法定相続人の代わりに遺産分割協議に参加し、不在者の財産を管理する代理人のことです。
一般的に不在者財産管理人は、弁護士や司法書士などから選任され、この手続を踏むことで、非嫡出子の所在がつかめない場合でも遺産分割協議を進めることが可能になります。
関連記事:【図解】相続人と連絡が取れない!すぐに実践できる対処法・注意点
自分自身が非嫡出子であり、実の父親に認知をお願いしたにもかかわらず、父親が認知に応じないというケースもあります。
実の父親は
・家族に不倫があった事実を秘密にしておきたい
・養育費が払えない
・非嫡出子に財産を相続させたくない
などの理由から、認知を拒否することがあります。
お伝えしたとおり、認知されていない非嫡出子は父親との親子関係が法的に認められていないため、そのままでは遺産を相続する権利がありません。
そのため、以下の2つの方法で、父親の認知を申し出ることになります。
認知を勝ち取るための2つの方法 |
・強制認知 ・死後認知 |
強制認知とは、父親が認知に応じない場合に認知を申請する法的な手続のことを言います。
強制認知を行う場合、認知を拒否する父親の住所を管轄する家庭裁判所にて認知調停申立を行います。家庭裁判所は申立を受けて調停を開催し、調停委員が仲介するかたちで父親に認知を促します。
調停が不成立であった場合も、裁判でDNA鑑定によって親子関係があるかどうかを判断し、これに従って判決が下されるため、事実上、実の父親が強制認知から逃れることは困難です。
ただし、裁判までもつれると1年以上の時間が必要になるため、非嫡出子にとっても大きな負担となることは避けられません。
被相続人が亡くなった後に、非嫡出子との親子関係があったことを認めてもらうために行う法的手続です。
非嫡出子は父親が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所に死後認知を求める訴状を提出します。
死後認知でも基本的にDNA鑑定によって親子関係を確認することになります。
父親のDNAが採取できない場合でも、父親の兄弟や子供など血縁関係にある人のDNAを調べることで、亡くなった父親との親子関係を証明することができます。
死後認知によって認知が認められた時点で、遺産相続の手続が完了していた場合、遺産相続の無効を訴えることはできませんが、遺産を相続した法定相続人に対して、自分の相続に相当する現金を請求することができます。
死後認知の請求期限は、被相続人の死亡後3年以内と定められているため、この期間内に申し立てを行う必要があります。
非嫡出子のトラブルを防ぐための方法として、効果的なものは以下の4つの方法です。
いずれも対処が難しいものではなく、相続のトラブルを回避する上でも有効な方法です。
一つずつ見ていきましょう。
まずは被相続人に非嫡出子がいるかどうかをできるだけ早く確認することが大切です。
前章でもお伝えしたとおり、非嫡出子は被相続人の死後に突然発覚するというケースもあります。あるいは被相続人の死後に突然非嫡出子が名乗り出てくるということもあります。
遺産分割協議を始めなければいけない段階で非嫡出子の存在が発覚すると、被相続人の間には
・遺産分割協議が始められない
・自分がもらう遺産が目減りする
などの理由から、大変大きな動揺が生じることになります。
これらの混乱は非嫡出子の存在を事前に知っておくだけで回避することができるものです。
非嫡出子の存在を知っていれば、
・万が一に備えて非嫡出子の住所を確認しておくことができる
・非嫡出子へ事前に連絡し、遺産相続などについてある程度の情報を伝えることができる
・非嫡出子を考慮した相続分を法定相続人の間で事前に確認できる
など、相続にかかわる様々な準備や情報交換を事前に行うことができます。
これらの対処を行うためにも、被相続人がなくなる前に、非嫡出子の有無について一度確認しておくことをお勧めします。
もし被相続人になる人に認知していない非嫡出子がいる場合には、できるだけ早く認知をしてもらうことが大切です。
・家族への発覚を恐れる
・嫡出子への相続財産が減る
などの懸念から、父親が非嫡出子の認知を渋るケースも多く見られますが、これも前章でお伝えしたとおり、本人が認知を拒んでも、非嫡出子が強制認知や死後認知などの手段に訴えれば、回避することは困難です。
最終的にはDNA鑑定によって親子関係の有無が科学的に実証されるため、本当に血の繋がった親子である場合には認知を拒むことはできません。
そうであれば、非嫡出子を認知することで法定相続人として受け入れ、これを踏まえて相続の準備をする方が賢明であると言えるでしょう。
様々な理由で非嫡出子へ財産を相続させたくないなどの状況がある場合は、遺言書によって自分の意思を伝えることができます。
非嫡出子を法定相続人に含む相続では、
・遺産のほとんどが土地建物で現金資産がない
・家業を継続するためには嫡出子に相続財産を集中させたい
などの様々な理由から、被相続人が非嫡出子に財産を相続させたくないケースが考えられます。
このような場合に有効なのが遺言書の作成です。
非嫡出子は相続財産が遺言書にまったく記載されていなくても遺留分を主張することで一定の割合の遺産を相続できるため、遺言書は決して万能ではありません。
しかし、少なくとも遺言書を書くことによって、被相続人の意思を相続に反映させられる可能性が高まります。
また、被相続人が遺言書に自分の思いを記載することでトラブルを回避できることもあります。
遺言認知 遺言書によって子供を認知する方法のことを「遺言認知」と言います。 何らかの理由で生前、認知ができなかった自分の子供に遺産を残したいという場合、遺言書に子供を認知する旨記すことで、自分の死後に子供を認知することができます。 遺言認知の場合、相続手続きにおいて遺言執行人が認知の届出をすることになります。 |
関連記事:公正証書遺言の効力とは?遺留分や時効・効力が及ばない4つのケース
関連記事:遺言書の8つの効力を解説!有効な遺言書の書き方チェックリスト付き
どうしても特定の相続人に自分の財産を相続させたい場合には、生前贈与という方法もあります。
生前贈与とは、文字どおり、被相続人がなくなる前に財産を相続人に渡すことで、これを行うことによって、生前贈与によって渡した財産を死後の遺産分割の対象から分離することができます。
ただし相続が行われる前10年以内に行われた生前贈与は、事前に相続した財産(特別受益)として相続財産にカウントされてしまうため、生前贈与を行いたい場合はできるだけ早く行う必要があります。
関連記事:特別受益とは?該当するケース10例と主張する流れ、計算方法を解説
被相続人に非嫡出子がいる場合、認知を拒否することは現実的に難しく、非嫡出子の相続権の発生を確実に避ける方法はありません。
非嫡出子が相続権を得るためには被相続人の認知が欠かせませんが、「父親から認知を拒否された」でもお伝えしたとおり、非嫡出子は強制認知や死後認知などによって認知を認めさせることが可能です。
このため、非嫡出子に遺産を渡したくないという場合、前章でお伝えした遺言書や生前贈与などを利用することで非嫡出子へ相続させる財産をできるだけ減らすという方法をとることになります。
この他にも非嫡出子への相続を減らす方法として生命保険の利用も挙げられます。生命保険は受取人を指定することができるうえ、受け取った保険金は受取人の財産となります。
そのため、非嫡出子以外の相続人を生命保険の受取人とすることで、結果的に非嫡出子に渡る相続財産を減らすことができるというわけです。
これまで非嫡出子の関わる相続で起こり得るトラブルについて詳しく解説してきましたが、トラブルを避ける最善の方法は弁護士に相談することです。
弁護士への相談は、特に以下の4つの点で大きなメリットがあります。
一つずつ確認しましょう。
弁護士に対応を依頼する最も大きなメリットは、相続人間で起こるトラブルを回避できることです。
特に非嫡出子の関わる相続では感情的な対立も起こりやすく、遺産分割協議がまとまらないということもしばしばあります。
このような状況でも弁護士は、非嫡出子を含む被相続人全員に対して適切なアドバイスを行うことで感情的な対立を避け、最適な解決案を提案することで、早期に相続の手続を終わらせることができます。
非嫡出子の有無や連絡先の調査は場合によってはたいへん手間がかかりますが、弁護士に依頼すれば相続人調査を代行してもらえます。
非嫡出子が認知されている場合は、個人の戸籍から非嫡出子の本籍地を調べ、そこから住所を調べることになりますが、本籍地以外の市町村に居住している場合は、住所にたどり着くまでにさらに複雑な調査が必要になります。
また、認知されていない非嫡出子の有無は戸籍からは判断することができないため、素人では調査そのものができません。
一方で相続税の申告は被相続人の死後10ヶ月以内に行う必要があるため、非嫡出子の調査に長時間を割くわけにもいきません。
このような状況下では、弁護士のサポートが相続手続を円滑に進める上で大きな助けとなります。
「遺言書を作成する」でもお伝えしたとおり、遺言書の作成は非嫡出子の相続で発生するトラブルを回避する手段として有効ですが、より確実性の高い公正証書遺言を作成するためには弁護士のサポートが必要となります。
遺言書には
・自筆証書遺言(被相続人による自筆の遺言書)
・公正証書遺言
の2つの種類があります。
自筆証書遺言の場合は、被相続人の死後、家庭裁判所で遺言書を開封するための「検認」という手続が必要です。
これに対して、「公正証書遺言」の場合、死後に家庭裁判所による「検認」の手続が必要なく、遺産相続の手続を円滑に進めることが可能になります。
公正証書遺言を作成するためには、公証役場に出向いたり2人以上の証人を用意するなどの対応が必要となりますが、弁護士に依頼すればこれらの手続きを全て代行してもらうことが可能です。
弁護士のサポートは、自分が非嫡出子として遺産の相続を主張する場合においても大きな助けとなります。
非嫡出子は被相続人の認知があれば、嫡出子と同等の相続権を持つことになりますが、実際には様々な事情から
・被相続人から認知を受けられない
・遺言書に非嫡出子への相続財産が記載されない
など、相続において不利な立場に置かれることも少なくありません。
認知が拒否された場合でも強制認知や死後認知などによって認知を認めさせることもできますし、遺言書に相続財産が記載されていない場合には遺留分を請求することによって、一定の割合の財産を相続することが可能です。
しかし、これらを正しく主張し、正当な規模の相続財産を受け取るためには、実際に自分が財産を受け取るためにはどのような法的手続が必要であり、どれだけの遺産の相続を主張できるのかをあらかじめ知っておくことが大切です。
相続において非嫡出子であることが不利に働かないように適切に対処するために、専門家である弁護士に相談しましょう。
関連記事:相続にかかる弁護士費用の相場が分かる!費用を抑えるコツも紹介
関連記事:遺産相続は弁護士に依頼すべき?メリット・デメリットと判断ポイント
今回は非嫡出子の相続について詳しく解説しました。
結婚していない男女の間に生まれた子を非嫡出子と言いますが、非嫡出子はそのままでは父親の財産を相続する権利はありません。
非嫡出子は被相続人である父親から「認知」されることで、財産を相続する権利を持つことができます。
また、ひとたび認知されると、非嫡出子は嫡出子と全く変わらない相続権を有することになります。
非嫡出子の相続ではトラブルが起こりやすいため注意が必要です。
本文では非嫡出子の相続で起こりやすい以下の4つのトラブルについて解説しました。
非嫡出子の相続 よくある4つのトラブル |
・被相続人の死後に非嫡出子がいることが判明した ・非嫡出子を含めず遺産分割協議を行ったところ相続の手続きが無効となった ・非嫡出子との連絡が取れない ・父親から認知を拒否された |
さらにこれらのトラブルを防ぐための対処方法として。以下の4つを紹介しました。
非嫡出子の相続でトラブルを防ぐ4つの対処 |
・事前に非嫡出子の有無を確認する ・非嫡出子がいる場合は認知をする ・遺言書を作成する ・確実に遺産を渡したい相手がいる場合には生前贈与も検討する |
これらの対処を含め、非嫡出子の関わる相続でトラブルを避けて円滑に手続きを進めたい場合、専門家である弁護士に対応を依頼することをおすすめします。