弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
「遺産相続の手続きはどんな流れ?」
「何から始めたらいい?」」
「専門家に依頼すべき?」
そう思っていませんか?親族が亡くなり、遺産相続の手続きを行わなければならなくなった時、遺産相続の流れや具体的にすべきことを知らない人も多いでしょう。多くの人が遺産相続というのは初めてのことですから、「どうしよう」「何をしたら良いかわからない」と不安に思うのは当たり前のことです。
そこで、まずは遺産相続の手続きの流れを全体的に把握し、ある程度すべきことの目安をつけておきましょう。
この図からも分かるように、遺産相続は全部で10ステップの過程があります。すべての過程を終えるまでの期限はありませんが、相続放棄や相続税の申告には期限があるため、なるべく早く手続きを進めることが重要です。
ただし、遺産相続の手続きは準備する書類が多い上に複雑なことと、直径の親族が多い場合はどこまでが相続人になるのかという判断の難しさ、さらには相続人同士の話し合いが難航する場合もあり、自分たちで進めていくのは難しい場合が多いです。
そこでおすすめなのが、遺産相続に詳しい法律の専門家に手続きを依頼することです。遺産相続の専門家に手続きを依頼すれば、時間と精神的な負担の軽減に繋がります。
とは言え、法律の専門家なので、依頼するには費用がかかります。遺産相続の手続きを依頼できる専門家の費用相場は次の通りです。
士業 | 費用相場 |
弁護士 | ・遺言執行/30万円 ・遺産分割の調停/30万円~ ・相続放棄/20万円 |
税理士 | ・相続税の申告手続き/20〜30万円(遺産総額により変動あり) |
司法書士 | ・相続人調査/1万5,000円〜3万円 ・遺産分割協議書の作成/3万円〜5万円 ・不動産の移転登記/10万円 |
行政書士 | ・遺産分割協議書の作成/3万円 ・預貯金の解約/3万円 ・車の名義変更/2万5,000円〜3万円 |
この表を見ても分かるように、法律の専門家に依頼する場合の費用相場は相続する状況や依頼内容によって大きく変動してきます。一見高いように見えても、自分で複雑な手続きを行う時間や労力、負担を考慮すればお金を払う価値があるケースであることも多くあります。
自分の状況と費用を照らし合わせて、自分が専門家に依頼すべきかどうかを慎重に判断していきましょう。
この記事では次のポイントについて解説していきます。
この記事のポイント |
◎遺産相続の手続きの全体の流れ ◎各ステップごとの遺産相続の手続きの流れ ◎遺産相続の手続きを行う際の注意点 ◎遺産相続をプロに任せた方がいい理由 ◎遺産相続をプロに任せた方がいいケース ◎遺産相続をプロに任せた場合の費用相場 |
この記事を最後までお読みになると、遺産相続の手続きの全体の流れや各ステップごとの詳しい流れを理解することができます。さらに、遺産相続の手続きを行う際の注意点や、プロに任せるべきケース、プロに任せた場合の費用相場を知ることができ、遺産相続の手続きをスムーズに進めることができるでしょう。
この記事があなたのお役に立てれば幸いです。
相続の弁護士費用に、新しい選択肢を。
サリュは、お客様の弁護士費用の負担を軽減するため、
月額料金プランと7.7%着手金無料プランを用意しました。
最良の法的サービスを、もっと身近に。
相続の弁護士費用に、
新しい選択肢を。
サリュは、お客様の弁護士費用の負担を軽減するため、
月額料金プランと
7.7%着手金無料プラン
を用意しました。
最良の法的サービスを、もっと身近に。
遺産相続の手続きで何をすればいいのかを知りたい場合、まずは遺産相続の全体の流れを把握することが大切です。
そこで、最初に遺産相続の全体の流れを見ていきましょう。
期限 | 遺産相続の手続き内容 | |
STEP1 | 相続発生時 | ①遺言書の確認 ②遺言書の検認 ③相続人の調査、確定 ④相続財産の調査 |
STEP2 | 亡くなってから 7日以内 | ①死亡診断書の受け取り ②死亡届の提出 ③死体埋葬火葬許可証の取得 |
STEP3 | 亡くなってから 10〜14日以内 | ①葬儀 ②年金受給停止の手続き ③健康保険の資格喪失届の提出 ④介護保険の資格喪失届 ⑤住民票の抹消届除票の申請 ⑥世帯主の変更届 ⑦金融機関への連絡 ⑧公共料金や各種サービスの解約 |
STEP4 | 亡くなってから 3ヶ月以内 | ①遺産分割協議の開始(目安) ②相続放棄、限定承認 |
STEP5 | 亡くなってから 4ヶ月以内 | 所得税の準確定申告 |
STEP6 | 亡くなってから10ヶ月以内 | 相続税の申告、納付 |
STEP7 | 亡くなってから1年以内 | 遺留分侵害額請求の手続き |
STEP8 | 亡くなってから2年以内 | 葬祭費、埋葬料の申請手続き |
STEP9 | 亡くなってから3年10カ月以内 | 相続税軽減の手続き |
STEP10 | 亡くなってから5年10カ月以内 | 相続税の還付請求 |
このように、相続が発生してから5年10ヶ月まですべきことがありますが、主に遺産相続の手続きが集中するのは亡くなってから1年以内です。
亡くなってから1年は、故人を亡くした悲しみもある中で遺産相続の手続きを進めていかなければなりません。
次に、それぞれのフェーズで具体的に何をすればいいのかを説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
なお、今後、2021年4月の民法改正(2023年5月施行予定)により、相続開始後10年を経過すると特別受益や寄与分の主張ができなくなります。もし、特別受益や寄与分の主張をしたい場合は、10年を経過する前に調停等を申し立てるようにしましょう。
先ほど、遺産相続の手続きについて全体の流れをご説明しました。そこで次に、期限別の各ステップごとにすべきことを具体的に説明していきましょう。
全体図の説明でも分かるように、遺産相続の流れは直接遺産に関係のない、死亡後の諸手続きも含まれます。相続の手続きを始めるためには死亡した後に取得する書類などが必要になるため、一見直接関係がないように思えても、重要になる手続きなので漏れなく行うようにしましょう。
では、遺産相続に必要な手続きの具体的な流れについて期限別に分けて説明していきます。ぜひ参考にしてください。
まず、相続が発生した時にすべきことは次の4つです。
相続発生時にすべきこと4つ |
①遺言書の確認をする ②遺言書の検認をする ③相続人の調査、確定をする ④相続財産の調査をする |
それぞれについて、具体的にどのようなことをすればいいのか、もう少し詳しく説明していきましょう。
遺産相続を行う場合、必ず最初に確認しなければならないのが遺言書の確認です。なぜなら、遺言書がある場合、故人の意思を尊重して法定相続を進めたいと考える遺族が多いからです。
遺言書の内容に必ず従わなければならないということはなく実際に遺言書通りに進めるかどうかは遺族の判断に委ねられますが、揉め事を避けるためにも最初に遺言書の有無を確認しておきましょう。
遺言書がある場所が最初から分かっていれば問題ありませんが、もし遺言書の有無や場所が分からない場合は次の方法で探します。
・故人が生前貴重品を入れていたタンスや引き出し、金庫の中
・法務局、公正証書役場
・貸金庫
多くの場合、これらの中に遺言書が保管されていることが多いので、慎重に探してみると良いでしょう。
印鑑が押された封筒に入っている遺言書を見つけたら 、勝手に封を開けたり見てはいけません。改ざんなどの不正を防ぐために、遺言書は必ず家庭裁判所での検認が必要です。
検認を依頼するのは、遺言者の最後の居住地にある家庭裁判所になります。遺言書を発見したら速やかに管轄の家庭裁判所に電話で連絡するか窓口に出向き、検認の日にちを決めましょう。
検認の流れは次の通りです。
【検認の流れ】
①遺言書の保管者または発見した相続人による検認の申立て(1通につき収入印紙800円分が必要) |
↓
②家庭裁判所より検認を行う日の通知 |
↓
③指定された検認日に、相続人の立ち会いのもと遺言書検認を実施 |
↓
④検認済み証明書の申請(1通につき150円分の収入印紙が必要) |
この図にもあるように、検認を申し立てした際と、検認済証明書を申請する際にそれぞれ費用が発生するので覚えておきましょう。
なお、遺言書が見つかった場合の対応について、当法人の弁護士が以下の動画で解説しています。こちらもご覧ください。
遺産相続を進めていく上で知っておかなければならないのは、相続人は誰か、ということです。相続人が誰かが分からなければ、遺産分割の話し合いができませんし、後から「実は自分も相続人でした」などと名乗り出られてはトラブルの火種になってしまいます。
そのような事態を避けるためにも、最初の段階で相続人の調査、確定をしておくことが必要です。
相続人を確定させるためには、故人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本、相続人全員の現在戸籍が必要です。戸籍は本籍地のある市町村役場に行けば受け取ることができます。本籍地が遠い場合は取り寄せも可能です。
さらに次のような場合には戸籍の取得や手続きが複雑になるので注意しましょう。
・故人が本籍地を移動していて複数の市役所での取得が必要
・故人に子どもがいない場合は、故人の両親の出生から死亡までの戸籍も必要になる
・本来相続人になるはずだった人が死亡してしまい、代襲相続が発生している場合。出生から死亡までの戸籍、代襲相続人の現在戸籍の取得も必要
このような事例に加え、故人が婚姻を繰り返していたり親族が多く相続人が多い場合は、戸籍の取り寄せだけでも大変な労力を費やしてしまいますので注意しましょう。
相続人を確定したら、次にすべきことは相続財産の調査です。何を誰に相続するのかということを決めるために、相続財産をあらかじめ把握しておくことが必要です。
相続財産とは何かと言うと次の通りです。相続対象になる財産にはプラスとマイナス、両方あるので注意しましょう。
(プラスの財産)
・故人の預貯金、現金
・不動産
・車
・貴金属
・骨董品
・ゴルフ会員権
(マイナスの財産)
・借金
・未払金
といったものになります。特に土地や家屋などについては権利証などもこの段階で準備しておくようにしましょう。
亡くなってから7日以内にすべきことは、次の3点です。
亡くなってから7日以内にすべきこと3つ |
①死亡診断書の受け取りをする ②死亡届を提出をする ③死体埋葬火葬許可証の取得をする |
それぞれの具体的な内容について、もう少し詳しくお話していきますね。
亡くなってから7日以内というのはまだ深い悲しみの中にいる時期ですが、これからの手続きを進めていくために、死亡診断書を受け取ることが必要です。
死亡診断書は病院に発行してもらえます。遺産相続に限らず、死亡に関連する手続きを進めていく上では死亡診断書が必須になりますので、死亡診断書はコピーを取っておくようにしましょう。
死亡届は、死亡証明書と同じ用紙で、左側にあります。必要事項を記入し、故人が亡くなった日から7日以内に市町村役場に提出しましょう。
遺体を火葬してもらうためには、死体火葬埋葬許可証を取得する必要があります。市町村役場にある火葬埋葬許可申請書に必要事項を記載して、先ほどお話した死亡届と一緒に提出すれば許可証がもらえます。
死体火葬埋葬許可証は葬儀社で必要になりますので、必ず取得しましょう。
亡くなってから10〜14日以内にすべきことは、次のとおりです。
亡くなってから10日〜14日以内にすべきこと2つ |
①葬儀を行う ②年金受給停止の手続きをする ③健康保険の資格喪失届を提出する ④介護保険の資格喪失届を提出する ⑤住民票の除票の写しを申請する ⑥世帯主の変更届を提出する ⑦金融機関へ連絡をする ⑧公共料金や各種サービスを解約する |
それぞれの流れについてお話していきましょう。
亡くなってから10日以内に、葬儀を行います。葬儀社に申し込み、葬儀社の流れに従って葬儀を執り行うことになります。葬儀費用は相続税の対象となる相続財産から控除することができるので、金額を把握しておきましょう。
故人が亡くなったら、年金受給停止の手続きを行いましょう。受給停止手続きは、住民票がある社会保険事務所で行います。
必要書類は、次の4つです。
・年金証書
・死亡診断書または火葬許可証
・戸籍謄本または除籍謄本
・故人と年金請求者の住民票の写し
年金の種類によって期限が異なり、厚生年金は亡くなってから10日以内、国民年金は亡くなってから14日以内に手続きをする必要があります。
健康保険の資格喪失届を提出する期限と手続きは、健康保険の種類によって異なります。
健康保険の種類 | 期限 | 手続き |
国民健康保険 | 亡くなってから14日以内 | 国民保険資格喪失届を市町村役場に提出し、健康保険証を返却 |
国民健康保険で75歳以上の高齢者 | 亡くなってから14日以内 | ・国民保険資格喪失届を市町村役場に提出し、健康保険証を返却 ・後期高齢者医療資格喪失届を提出 |
健康保険に加入していた会社員 | 亡くなってから5日以内 | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を会社経由で提出 |
この表からも分かるように、国民健康保険に加入していた場合は亡くなってから14日以内、会社員で健康保険に加入していた場合は亡くなってから5日以内に保険証などを返却します。
亡くなってから14日以内に、介護保険の資格喪失届も提出しましょう。故人が要介護認定を受けていたのであれば、資格喪失届と併せて介護被保険者証も返還します。
住民票の除票の写しは、市町村役場の戸籍、住民登録窓口にて対応してくれます。届出を行う人の印鑑と本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)を持参しましょう。
故人が世帯主であった場合、市町村役場に死亡届を提出する際に、世帯主変更届も提出します。
故人が所有していた預貯金は、遺産相続においては相続人の共有財産となります。そのため、口座名義人である故人が亡くなったことを金融機関に伝え、口座を凍結させましょう。他の相続人が勝手に現金を引き出してしまうことを避けるためです。
故人の生活の中で、口座から引き落とされていたものや自動契約になっているサービスを解約していく必要があります。できるだけ早く解約を行わないと基本料金を払い続けなければならないので注意が必要です。
解約が必要になるものの例をあげると次のようになります。
・電気
・ガス
・水道
・インターネット
・クレジットカード
・携帯電話
・固定電話
・NHK受信料
・そのほか毎月定額を支払っているサービス
故人が契約していたものが分からない場合は、郵便物やDMなどの中から探すようにしましょう。
故人が亡くなってから3ヶ月以内にすべきことは、次の2つです。
亡くなってから3ヶ月以内にすべきこと2つ |
①遺産分割協議を行う ②相続放棄、限定承認を行う |
遺産分割協議とは、遺産相続の具体的な話し合いのことです。亡くなってから3ヶ月を目安にしたのは、もし相続放棄をするなら亡くなってから3ヶ月以内に申し出ることが必要だからです。
相続放棄の期限は亡くなってから3ヶ月ですが、遺産分割協議を始める時期に決まりはありません。そのため、実際は亡くなってから3ヶ月を待たずに、気持ちが落ち着いたらなるべく早く遺産分割協議を始めましょう。
遺産分割協議と相続放棄・限定承認について、もう少し詳しくお話ししていきます。
先ほどもお話しした通り、遺産分割協議とは遺産相続の具体的な話し合いのことです。
遺産分割協議は相続人全員で話し合い、決めた事項は必ず「遺産分割協議書」に記載して書面として残しておきましょう。
遺産分割協議で決めるのは、誰が何を相続するかということです。この際、遺言書があれば遺言書に記載された故人の意思を尊重し、遺言書がなければ基本的には法定相続を参考にします。
被相続人との関係 | 優先順位 | 法定相続分(代表的な例) |
配偶者 | 1 | ◎配偶者のみの場合は全てを相続 ◎相続人が配偶者と子どもの場合、配偶者の法定相続分は½ ◎相続人が配偶者と親の場合、配偶者の法定相続分は⅔ ◎相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者の法定相続分は3/4 |
子ども | 2 | ◎遺産の1/2を子どもの数で均等に分ける ◎相続人が子どものみの場合は遺産の全てを子どもの数で均等に分ける |
父母や祖父母 | 3 | ◎父母、祖父母どちらもいる場合は被相続人との関係が近い世代である方が優先される |
兄弟姉妹 | 4 | ◎被相続人の配偶者、子ども、父母・祖父母がいない場合に相続人になる ◎兄弟姉妹が死亡している場合はその子どもが相続人になる |
法定相続分については以下の記事で詳しくご説明しておりますので、ご参照ください。
相続放棄とは、故人の遺産の相続を放棄することです。注意しなければならないのが、何か1つだけの相続を放棄できるわけではなく、相続放棄を選択すると故人のすべての遺産について相続を放棄することになります。
相続放棄をするメリットは、マイナスの財産を相続しなくてもよいことと、相続問題の面倒な手続きから一線を引けるということです。
限定承認とは、相続した財産の中でマイナスの遺産(借金など)を精算し、プラスになった分だけを引き継ぐということです。
相続放棄と限定承認は、どちらも原則として亡くなってから3ヶ月以内に申告しなければなりません。
故人が生前確定申告を行っていた場合、死後は確定申告ができなくなります。そのため、亡くなってから4ヶ月以内に相続人が代理で「所得税の準確定申告」を行う必要があります。
亡くなってから4ヶ月以内にすべきこと |
所得税の準確定申告 |
所得税の準確定申告とは何かと言うと、その名前の通り、通常の確定申告に準ずる内容のものです。具体的には、故人が確定申告をするはずだった年の1月1日から亡くなった日までに確定している所得金額と税額を計算して申告します。
対象となるのは、故人に事業所得や不動産収入がある場合、給与所得が2,000万円を超える場合になります。年金収入のみの場合は、400万円以下の場合は申告が不要です。
亡くなってから10ヶ月以内にすべきこと |
相続税の申告、納付 |
亡くなってから10ヶ月以内には、相続税の申告と納付手続きを行わなければなりません。ただし、相続税には基礎控除があり、
基礎控除=3,000円+(600万円×法定相続人の数) |
となります。法定相続人とは、基本的には配偶者、子ども、親、兄弟姉妹です。
相続税を延滞してしまうと、利子や延滞税などを課税される可能性があるので、相続税が発生しそうな場合はプロに相談することがおすすめです。
なお、相続税には「配偶者軽減」や「小規模宅地等の特例」などの軽減措置があります。ただ、遺産分割協議が長引き未分割で申告・納税を行った場合は特例が適用されません。
そこで、遺産分割未了の場合には申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出しておけば、申告期限から3年以内であれば遺産分割が完了した後でも税額軽減を受けることが可能です。
亡くなってから1年以内にすべきことは、遺留分侵害額請求の手続きです。
亡くなってから1年以内にすべきこと |
遺留分侵害額請求の手続き |
遺留分侵害額とは、「遺留分」を侵害された人が侵害した人に侵害額を請求できる権利のことです。少し難しいのでもう少し分かりやすく説明しますね。
まず、「遺留分」という言葉について説明します。
遺留分=相続財産のうち、法律で保障されている一定の取り分のこと
なぜ遺留分という制度があるのかと言うと、遺産相続において遺言書の内容を優先した場合に、あまりにも相続人同士に不平等が生じてしまうことを避けるためです。
相続の際は、民法で「法定相続」が定められていますが、遺言書がある場合は基本的に故人の意思を尊重します。その際、特定の相続人にとっては大変不利な状況になる可能性もあるのです。
遺留分を侵害されたとして不服に思う場合は、原則として亡くなってから1年以内に侵害額の請求ができることになります。
遺留分については以下の記事でも詳しくご説明しておりますので、ご参照ください。
葬祭費、埋葬料の申請手続きは、亡くなってから2年以内に行わなければなりません。
亡くなってから2年以内にすべきこと |
葬祭費、埋葬料の申請手続き |
ただ、2年というのはあくまでも期限ですので、実際は葬儀、埋葬が終了したら速やかに手続きすることがおすすめです。
故人が国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は、喪主に対して葬祭費が支給されます。金額は自治体によって異なりますが、2〜7万円ほどが相場です。国民健康保険の資格喪失届を提出する際に一緒に手続きを行う場合が多いです。
故人が会社員で健康保険に加入していた場合、喪主に対して葬祭費として5万円が支給されます。こちらも、健康保険の資格喪失届を提出する際に一緒に手続きを行う場合が多いです。
相続税には「配偶者軽減」や「小規模宅地等の特例」などの軽減措置があります。ただ、遺産分割協議が長引き未分割で申告・納税を行った場合は特例が適用されません。
ただし、申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出していた場合には、亡くなってから3年10ヶ月以内であれば、税額軽減を受けることが可能です。
亡くなってから3年10ヶ月以内にすべきこと |
相続税軽減の手続き |
亡くなってから5年10ヶ月以内であれば、相続税の還付請求が可能です。
亡くなってから5年10ヶ月以内にすべきこと |
相続税の還付請求 |
相続税を納付してから、改めて相続税の金額を減額できることが判明した場合、税務署に還付を請求できる仕組みです。
相続税の還付が行われるケースとしては、
・土地の評価額の見直し
・国債の評価額の見直し
・生前贈与額の見直し
などという場合です。
このケースから見てもわかるように、相続税が還付されるケースは特殊な場合で、弁護士や税理士などプロの判断が必要です。「相続税を払い過ぎて負担が大きい」と感じる場合はプロに相談して、還付ができるか相談することがおすすめです。
先ほど説明した遺産相続の手続きを進めていく上で、注意しなければならない点が2つあります。
遺産相続の手続きをする上での注意点2つ |
・遺産相続の手続きのうち、遺産分割協議は勝手に進めない ・期限に関わらず早めに手続きを進めよう |
それぞれについて、もう少し具体的に説明していきましょう。
遺産相続の手続きの流れを見ていると、単純な事務手続きから複雑な話し合いまで幅広い手続きがあることがお分かりになるかと思います。
単純な事務手続きとは例えば、役所に書類を提出したり、故人の証明書を返還するような事務的な手続きで、これらは親族のうち誰か一人に任せることができます。
ただし、内容が複雑になり、かつ相続人全員の意見を反映する必要がある遺産分割協議などは、親しい者同士で勝手に進めてしまうと相続トラブルに発展してしまう可能性があります。
遺産分割協議はきちんと日取りを決め手相続人全員で話し合いができるよう、慎重に進めていかなければなりません。
「他の相続人が遠方に住んでいるから、とりあえず近くにいる兄弟姉妹だけで話を進めておこう」などということをしてしまうと、後々大きなトラブルを招きかねないので注意が必要です。
遺産相続には手続きの種類によって期限がありますので、これまでのお話しで期限に分けて手続きの内容を説明してきました。その中でもお話ししていることではありますが、期限はあくまでも「その手続きを完了させなければならない期日」なので、その期限からスタートしてはいけません。
・簡単な手続きだと思っていたら意外に必要書類を取り揃えるのに時間がかかった
・故人の生い立ちが複雑で戸籍を取り寄せるのに時間がかかった
という事態が生じる可能性も十分にあります。そのため、遺産相続の手続きは、期限に関わらず、できるだけ早く進めていくようにしましょう。
ここまで、遺産相続の手続きを自分たちで行う場合のお話をしてきましたが、状況によってはプロに任せた方がいいこともあります。なぜなら、遺産相続の手続きはスムーズにいかないケースも多いからです。
具体的に、遺産相続の手続きをプロに任せた方がいいケースは次の5つです。
相続人が2〜3人で兄弟姉妹や親だけの場合は揉め事になる可能性は極めて低いのですが、故人に相続人がたくさんいる場合や、故人が婚姻を繰り返していて相続人の確定が難しい場合、さらに固定資産をさまざまな場所に持っている場合など、相続自体が複雑になる場合には遺産相続の手続きをプロに任せた方がいいケースもあります。
遺産相続の手続きをプロに任せた方がいいケース5つ |
①遺産相続の手続きに関する労力と精神的負担を減らしたい場合 ②相続人が多数いる場合 ③故人の相続人を確定できない場合 ④故人の遺産が多く相続税が発生しそうな場合 ⑤故人の遺産が多く揉め事に発展しそうな場合 |
5つのケースについて、どのような状況なのかをもう少し詳しく説明していきます。この記事を参考に、もしご自分のケースに当てはまるようであれば、プロに依頼することも検討してみてくださいね。
これまでのお話でもお分かりのように、遺産相続の手続きは多大な労力と精神的負担を伴います。
具体的には、たくさんの公的書類を揃えなければならないことや、遺産分割協議で相続人同士の意見が割れてしまうと話し合いを完結させるのに相当な精神的負担が生じるということです。
さらに遺産相続の手続きを行うような時期は、故人が亡くなった悲しみから立ち直れていない時期でもあります。そのような時期に様々な手続きを行うことは精神的に大きな負担となる可能性があります。
遺産相続の手続きに関する労力や精神的負担について少しでも不安に感じるのであれば、思い切ってプロに任せることをおすすめします。
遺産相続の手続きを行うためには相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。つまり、相続人が多いと全員の意見を合わせることが難しくなり、遺産分割協議が難航してしまう可能性が高いのです。
例えば相続人だけの話し合いの場合、その場ではお互いに言いたいことを言えなかったり、気を遣いすぎてしまい、後になって「やっぱりあの土地をもらいたい」などと意見を覆されてしまうこともあります。そうなると話し合いが再度振り出しに戻ってしまうので遺産分割協議の進行にかなり時間がかかってしまうでしょう。
その点、遺産分割協議をプロに任せてしまえば、遺産分割協議の進行がスムーズです。第三者が入ることによりトラブルを回避できますので、相続人が多数いる場合はプロに任せることがおすすめです。
故人の相続人の特定が難しい場合も、遺産相続の手続きをプロに任せるべきケースだと言えます。故人の相続人の特定が難しい場合とは具体的には、故人が婚姻を繰り返していたり、養子縁組をしている場合などです。
離婚した配偶者は相続人ではありませんが、故人の子どもは相続人になるからです。
もし自分たちで遺産相続の手続きを行い相続人を見逃してしまった場合、後々トラブルになることが予想されます。さらに、相続人同士の関係がほとんどないような場合、遺産相続の意思を自分たちで確認するのも精神的負担を伴うでしょう。
そのような事態を避けるためにも、故人の相続人が特定できないような場合は遺産相続の手続きをプロに任せる方が賢明です。
故人の遺産が多く、相続税が発生しそうな場合はプロに依頼することがおすすめです。相続税の申告は、相続が開始された日から10ヶ月以内に行うことが定められています。
ただ、相続税の計算は複雑で、相続人の数によって控除額が決まります。そのため、「故人の財産が多そうだから相続税がかかるのでは」と思っても、意外に相続税がかからない場合も多いです。
相続税がかかるのかかからないのか、かかるとすればいくらなのかという不安をはっきりさせるためにも、故人の遺産が多い場合は一度プロに相談することがおすすめです。
遺産が多いなど遺産相続の手続きで揉め事に発展しそうな場合は、迷わずプロに依頼することをおすすめします。「相続は争族」という例えもあるように、お金が絡むと深刻なトラブルを招きがちです。特に故人が固定資産や預貯金、株、貴金属、骨董品などを多数保有していた場合は注意が必要です。
遺産相続のプロはたくさんのケースに対応してきていますので、トラブルになりそうな場合でも落ち着いて対処してくれます。あなたも含め、相続人全員が後悔しない遺産相続を行うためにも、遺産が多い場合はプロに依頼するようにしましょう。
先ほどの説明で、遺産相続の手続きをプロに任せた方がいいケースがあることがお分かりになったかと思います。そこで気になるのが、「プロと言っても、誰に依頼すればいいの?」「いくらかかるの?」ということですよね。
遺産相続の手続きを任せられるプロとは、次の4つの士業です。
士業の種類 | 得意とする対応範囲 | 費用相場 |
弁護士 | 相続トラブルの解決 | ・遺言執行/30万円 ・遺産分割の調停/30万円~ ・相続放棄/20万円 |
司法書士 | 不動産移転登記 | ・相続人調査/1万5,000円〜3万円 ・遺産分割協議書の作成/3万円〜5万円 ・不動産の移転登記/10万円 |
税理士 | 相続税 | ・相続税の申告手続き/20〜30万円(遺産総額により変動あり) |
行政書士 | 各種書類の提出 | ・遺産分割協議書の作成/3万円 ・預貯金の解約/3万円 ・車の名義変更/2万5,000円〜3万円 |
それぞれに得意分野があり、費用相場も異なります。誰に依頼すべきかを判断するためには、あなたが一番依頼したいことを得意とする士業を選ぶことがポイントです。
そこで、あなたがどの士業に依頼すればいいのかを判断するために、4つの士業の対応範囲と費用相場について説明していきましょう。
弁護士は基本的な遺産相続の手続きはもちろん、トラブルの解決を得意とします。そのため、相続人同士の揉め事が起こりそうな場合は弁護士に依頼すると良いでしょう。
弁護士に依頼する場合の費用相場は次の通りです。
・遺言執行/30万円
・遺産分割の調停/30万円~
・相続放棄/20万円
司法書士の得意分野は、不動産の移転登記や名義変更です。そのため、不動産の相続が発生する場合は、司法書士に依頼すると良いでしょう。相続の実績が豊富な司法書士であれば、相続放棄や限定承認などのケースも取り扱えます。
司法書士に依頼する場合の費用相場は次の通りです。
・相続人調査/1万5,000円〜3万円
・遺産分割協議書の作成/3万円〜5万円
・不動産の移転登記/10万円
税理士は、言うまでもなく税金のスペシャリストなので、相続税が発生する場合や発生するか不安な場合に依頼すると良いでしょう。
税理士に依頼する場合の費用相場は次の通りです。
・相続税の申告手続き/20〜30万円(遺産総額により変動あり)
行政書士は弁護士や司法書士に比べて業務範囲が狭くなりますが、その分、比較的費用を抑えて依頼することができます。
そのため、大きな揉め事が予測されない場合の遺産相続の手続きを依頼したい場合におすすめです。
・遺産分割協議書の作成/3万円
・預貯金の解約/3万円
・車の名義変更/2万5,000円〜3万円
もし、手続きを進めていく中で相続税の発生や行政書士の範囲外の事案が生じた場合は、連携している士業を紹介してくれる場合もあります。
いかがでしたか?遺産相続の手続きについて、流れや準備するもの、プロに依頼すべきケースなどをお話ししてきました。
最後にこの記事をまとめると、
◎遺産相続の全体の流れは次の通り
期限 | 遺産相続の手続き内容 |
相続発生時 | ①遺言書の確認 ②遺言書の検認 ③相続人の調査、確定 ④相続財産の調査 |
亡くなってから 7日以内 | ①死亡診断書の受け取り ②死亡届の提出 ③死体埋葬火葬許可証の取得 |
亡くなってから 10〜14日以内 | ①葬儀 ②年金受給停止の手続き ③健康保険の資格喪失届の提出 ④介護保険の資格喪失届 ⑤住民票の抹消届除票の申請 ⑥世帯主の変更届 ⑦金融機関への連絡 ⑧公共料金や各種サービスの解約 |
亡くなってから 3ヶ月以内 | ①遺産分割協議の開始(目安) ②相続放棄、限定承認 |
亡くなってから 4ヶ月以内 | 所得税の準確定申告 |
亡くなってから 10ヶ月以内 | 相続税の申告、納付 |
亡くなってから 1年以内 | 遺留分侵害額請求の手続き |
亡くなってから 2年以内 | 葬祭費、埋葬料の申請手続き |
亡くなってから 3年10ヶ月以内 | 相続税軽減の手続き |
亡くなってから 5年10ヶ月以内 | 相続税の還付請求 |
◎遺産相続の手続きにおける注意点は次の2つ
・遺産相続の手続きのうち、遺産分割協議は勝手に進めない
・期限に関わらず早めに手続きを進めよう
◎遺産相続の手続きをプロに任せた方がいいケースは次の5つ
①遺産相続の手続きに関する労力と精神的負担を減らしたい場合
②故人の相続人が多数いる場合
③故人の相続人を確定できない場合
④故人の遺産が多く相続税が発生しそうな場合
⑤故人の遺産が多く揉め事に発展しそうな場合
◎遺産相続の手続きを依頼できる士業は次の4つ
・弁護士
・司法書士
・税理士
・行政書士
これらのうち誰に依頼するかは、それぞれの得意分野と費用を比較して決めると良い
以上になります。遺産相続の手続きは、単純な事務手続きだけでなく複雑な話し合いも含まれます。スムーズに進められるか不安な場合は、相続のプロに依頼することも検討すると良いでしょう。