弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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同志社大学法科大学院客員教授
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「父が亡くなり、相続を始めようと思ったら財産が残っていなかった。生前、父は兄に結婚資金やマイホーム資金を渡していたから、贈与で使い切ったに違いない。」
「生前贈与で父の財産を独り占めするなんて、違法じゃないの?父の財産はあきらめるしかないのだろうか。」
相続人であるにもかかわらず、他の人に多額の生前贈与が行われた結果、財産を全くもらえないとなると納得がいかないですよね。
生前贈与によって一人の人が財産を独り占めすることは違法ではありません。
ただしその場合でも、他の相続人は贈与を受けた者に対して「遺留分の請求」という方法で、財産をもらえる可能性があります。
下記3つの条件いずれかにあてはまる場合は、生前贈与を多くもらった人に遺留分として金銭を請求できます。
3つの条件の詳細は本文で解説しますが、多くの人がいずれかの条件にあてはまるでしょう。
遺留分を請求できると分かった場合は、すぐに請求の準備を進めていきましょう。
なぜなら遺留分には時効があるからです。遺留分にかかわる時効・除斥はいくつかありますが、早いもので「相続の開始と遺留分が侵害されていることの両方を知ってから1年」を過ぎると、「請求できる権利」を失ってしまいます。
本文では「生前贈与による財産独り占め」について、次の内容をお伝えしていきます。
本記事で分かること |
・遺留分とは ・生前贈与に対して遺留分を請求できる条件 ・遺留分で請求できる金額 ・遺留分の請求方法 ・遺留分でもめた場合の対処法 ・遺留分の時効 |
本記事を読めば生前贈与によって独り占めされた場合の対処法を知り、実践できるようになります。
ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
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生前贈与により、親の財産を他の人に独り占めされても、財産をもらえる可能性はあります。
ここではまず、そもそも生前贈与で財産を独り占めすることは可能なのかどうか、そして独り占めされた場合の財産をもらえる可能性についてお伝えしていきます。
以降、財産を与える人のことを「贈与者」、財産をもらう人のことを「受贈者」と表記していきます。
生前贈与によって、一人の受贈者が贈与者の財産を独り占めすることは違法ではありません。
個人が持つ財産をどう使おうが、それは所有者の自由です。
生前贈与とは、あげる人ともらう人の合意の上で、財産の受け渡しが行われています。
本人の意思で行われている以上、誰にどれだけの財産を渡そうが、周りの人が止めさせることはできません。そのような法律はないのです。
その結果、贈与者の財産を独り占めした状態になることは、十分起こり得るでしょう。
ただし、生前贈与により独り占めされても、遺留分(いりゅうぶん)という形で財産をもらえる可能性が十分にあります。
遺留分とは、財産の所有者が亡くなった場合、一定の法定相続人に保証されている最低限度の遺産の取り分のことです(民法1042条)。ただし、法定相続人の中でも兄弟姉妹・甥姪には遺留分は認められていません。
生前贈与は「遺産の前渡し」と考えられるため、生前贈与も遺留分の対象になります。
先ほど財産の使い道は所有者の自由と伝えましたが、一方で、その財産は家族の協力のもと築かれたという側面もあります。また、所有者が亡くなった後の財産は、残された家族の生活を保障する意味合いもあります。
そのため、残された家族にも一定の割合の財産を受け取る権利があるということで、遺留分の制度が設けられました。
認められている遺留分は法定相続分(誰がどれだけ相続できるかが法律で定められた割合)の半分です(直系尊属は1/3)。
例えば、遺産が2,000万円で子どもが二人なら、それぞれの法定相続分は1,000万円ずつ、遺留分はその半分の500万円ずつになります。
遺留分の請求が認められれば、たとえ遺産がゼロだったとしても、法定相続分の半分を受け取ることができるのです。
「生前贈与で遺産が残っていなかった」というケースでも、次章以降を読み進めながら、遺留分の請求を検討していくようにしましょう。
遺産がいくらか残されていた場合は、特別受益の持ち戻しを求める方法もある 遺産が残っている場合、「特別受益の持ち戻し」を求めた方が、より多く財産を取り戻せる場合があります(民法第903条)。 特別受益については下記記事でも解説してるので、詳しく知りたい場合はあわせてご一読ください。 |
生前贈与は遺留分の対象になると伝えましたが、どんな生前贈与でも対象になるわけではありません。
生前贈与で遺留分が認められるためには、下記3つの条件の内いずれかに該当している必要があります。
【生前贈与で遺留分が認められるための3つの条件】
・死亡前1年以内の生前贈与であること ・死亡前10年以内に相続人に対して行われた特別受益であること ・あげる人・もらう人双方が遺留分を侵害することを知っていたこと |
この3つの条件は民法で定められたものです。
民法第1044条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。 2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。 3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。 引用:民法 | e-Gov法令検索 |
それぞれどのような条件なのか、詳しく見ていきましょう。
財産の所有者が、亡くなった時からさかのぼって1年以内に誰かに生前贈与していた場合は、その受贈者に対して遺留分を請求できます。
受贈者は相続人に限りません。愛人や知人に贈与した場合も、愛人や知人に対して遺留分を請求できます。
【具体的なケース】 ・病気になり死期を察した父親が、亡くなる3ヶ月前に愛人に全財産1億円を贈与した。 →父親の相続人である長男は、愛人に対し遺留分5,000万円(1億円×遺留分割合1/2)を請求できる。 |
特定の相続人に対し、相続開始前10年以内の特別受益といえる生前贈与があれば、その受贈者に対して遺留分を請求できます。
この条件は受贈者が「相続人」であることに限ります。愛人や知人、相続権のない親族に対しては請求できません。
そして生前贈与の内容が「特別受益」である必要があります。
特別受益とは、ここでは上記条文の「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る」の部分を指します。
つまり、生前贈与に限って言うと、下記にあてはまるものが特別受益です。
【生前贈与の中で特別受益にあてはまるもの】
・婚姻・養子縁組のための贈与…結婚挙式費用・結納金、養子縁組の持参金、など ・生計の資本としての贈与…住宅購入資金・多額の教育費・扶養の範囲を超える生活費、など |
ただし、いずれも贈与の額や目的、状況によって、特別受益と判断されるかどうかはケースバイケースです。
特別受益についてより詳しく知りたい場合は、下記記事をご確認ください。
以上のことから、この条件の具体的な例として下記ケースが挙げられます。
【具体的なケース】 ・亡くなった父が、8年前に長女が家を建てるとき、2,000万円の資金援助をした。そのため、亡くなったときはほとんど遺産が残っていなかった。 →父親の相続人である次女は、長女に対し遺留分500万円(2,000万円×遺留分割合1/2×相続分割合1/2)を請求できる。 |
贈与者と受贈者の双方が、生前贈与を行うと他の相続人の遺留分を侵害することを知っていた場合、遺留分を請求することができます。
この条件にあてはまる場合は、受贈者も時期も問いません。誰であろうが何年前であろうが請求できます。
では、「他の相続人の遺留分を侵害することを知っていた」とは、どのような状況を指すのでしょうか。
これは、「これ以上財産が増える見込みがないのに、財産の大半(遺留分を侵害する額)を贈与した」かどうかが論点になります。
具体的には下記項目から総合的に判断することになります。
・贈与の時期
・贈与する人の年齢
・贈与する人の健康状態
・贈与する財産の全財産に占める割合
・贈与する人の財産が将来増加する可能性
贈与の時点で、贈与者が高齢であったり健康状態が悪かったりして、財産が増える見込みがない場合、多額の財産を贈与すると、遺留分の侵害が予想できたと判断されるでしょう。
【具体的なケース(認められる事例)】 ・母親が12年前に定年退職した際、退職金2,000万円を全て次女に贈与した。以降は貯金と年金で生活し、亡くなる頃には貯金がほぼなくなっていた。 →「財産が増える見込みがないのに財産の大部分を贈与した」=「遺留分を侵害することを知っていた」として、長女は次女に対し遺留分500万円(2,000万円×遺留分割合1/2×相続分割合1/2)を請求できる。 |
一方、贈与者がまだ仕事に就いていて財産が増える見込みがあるなら、財産の大半を贈与したとしても「遺留分を侵害した」という認識があったとは言えません。
【具体的なケース(認められない事例)】 ・15年前、父親が長男にマイホーム購入資金として3,000万円を贈与した。しかし、その5年後に父親が経営する事業が経営悪化。その後財産状況が回復することなく、病気で亡くなってしまった。 →贈与の時点では、財産が増える見込みがあったため、遺留分を侵害することを知っていたとは言えない。よって、他の相続人は長男に遺留分を請求できない。 |
しかし、実際の事例では判断するのが難しく、このケースではもめる傾向があります。
その場合、「他の相続人の遺留分を侵害することを知っていた」ことを遺留分の権利者が立証できないと、遺留分は認められません。
この条件で遺留分を請求する場合は、認めてもらうのが難しいので、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士については6章で紹介します。
遺留分が認められた場合、いくらもらえるのかを見ていきましょう。
ここでは次の内容をお伝えしていきます。
【遺留分で請求できる金額について】
・請求できる遺留分の割合 ・遺留分のシミュレーション ・遺留分は受贈者から金銭で受け取る |
遺留分をいくら請求できるかは民法で定められています(民法第1042条)。
各相続人の遺留分の割合を下表にまとめたのでご確認ください。
【遺留分の割合】
法定相続人の 組み合わせ |
遺産額に対する遺留分の割合 |
||
配偶者 |
子ども(直系卑属) |
親(直系尊属) |
|
配偶者のみ |
1/2 |
ー |
ー |
配偶者と子ども |
1/4 |
1/4 |
ー |
配偶者と親 |
2/6 |
ー |
1/6 |
子どものみ |
ー |
1/2 |
ー |
親のみ |
ー |
ー |
1/3 |
子ども・親が複数人いる場合は表の割合からさらに人数分で割ります。たとえば、相続人が子ども3人である場合、子ども1人あたりの遺留分は1/2×1/3=1/6です。
前節の表をもとに、実際どのぐらいもらえるのかシミュレーションしていきましょう。
いくつかパターンを用意したので、自分の状況に似ているパターンを参考にしてください。
【シミュレーション①受贈者が相続人】 ・贈与者:父 ・受贈者:長女 ・贈与の額:4,000万円 ・相続人:母・長女・次女 ・遺産:0円 母がもらえる遺留分=4,000万円 × 1/4 = 1,000万円 次女がもらえる遺留分=4,000万円 × 1/4 × 1/2 = 500万円 |
【シミュレーション②受贈者が相続人以外】 ・贈与者:父 ・受贈者:内縁の妻 ・贈与の額:6,000万円 ・相続人:長男・次男・三男 ・遺産:0円 長男・次男・三男がそれぞれもらえる遺留分=6,000万円 × 1/2 × 1/3 = 1,000万円 |
【シミュレーション③遺産が少し残されていた】 ・贈与者:父 ・受贈者:長男 ・贈与の額:2,000万円 ・相続人:長男・長女 ・遺産:400万円 遺産は長女が受け取るとする。遺産の総額に対する長女の遺留分は、 (2,000万円 + 400万円) × 1/2 × 1/2 = 600万円 長女は遺産400万円を受け取っているので、長女が長男に請求できる遺留分は、 600万円 - 400万円 = 200万円 である。 |
法改正により、贈与者が亡くなったのが2019年7月1日以降なら、遺留分は原則受贈者から金銭で受け取ることになりました(民法第1046条)。
贈与者の財産をもらうのではなく、遺留分侵害額に相当する額の金銭を受贈者から支払ってもらうのです。
たとえば、父親が長男に自宅(評価額2,000万円)を贈与したとします。次男が遺留分を請求した場合、長男は遺留分500万円を現金で次男に支払うことになります。
自宅そのものの所有権を1/4もらえるわけではないのでご注意ください。
ただし、2019年6月30日までに亡くなったケースについては、現物を返還する方法で精算します。
遺留分はあくまで権利なので、請求しないともらえません。
ここからは遺留分を請求する方法を紹介していきます。
【遺留分を請求する方法】
① 話し合いで請求する ② 配達証明付き内容証明郵便を送る ③ 遺留分侵害額請求の調停を起こす ④ 遺留分侵害額請求の訴訟を起こす |
まずは「①話し合いで請求する」から取り組み、話し合いがまとまらなければ②→③→④へと進んでいきましょう。
ただし、「受贈者と絶縁している」「遺留分を認めてくれなさそう」など、話し合いが難しい状況であれば、「②配達証明付き内容証明を送る」から始めるようにしてください。
まずは受贈者に、「生前贈与が自分の遺留分を侵害していたので、遺留分を請求したい」ことを伝えましょう。
受贈者が遺留分の支払いに合意してくれれば、合意書を作成しましょう。
合意書の作成は必須ではありませんが、作成しておかないと「支払いが行われない」などのトラブルが生じるおそれがあります。
合意書の形式は自由ですが、有効な文書にするためにも下記項目を守って作成するようにしてください。公正証書で作成するとより確実です。
【遺留分の合意書作成のポイント】
・作成日付・支払われる金額・支払い期日・支払い方法を必ず記載する ・必ず双方が署名捺印をする |
ひな形は下記の通りですので、内容をコピーしてご活用ください。
合意書 〇〇 〇〇(以下、甲という)と✕✕ ✕✕(以下、乙という)は、被相続人■■ ■■の相続に関し、遺留分侵害について以下の通り合意した。 記 第1条 甲と乙は、次の各事項を相互に確認する。 (1)平成▲年▲月▲日に乙が被相続人から現金2,000万円の贈与されたこと (2)被相続人の遺産はなかったこと (3)甲と乙は被相続人の子として、遺産に対しそれぞれ4分の1の遺留分を有していること (4)(1)の生前贈与が甲の遺留分を侵害したこと 第2条 乙は、甲からの遺留分侵害額請求に対する価額弁償金として、500万円の支払義務があることを認め、これを令和◎年◎月◎日限り、甲の指定する銀行口座に振り込んで支払う。振込手数料は乙の負担とする。 以上の合意成立を証するため、本書を2通作成し、甲乙双方が記名捺印の上、各1通ずつ保有するものとする。 以上 令和●●年●●月●●日 甲(住所) (氏名) 印 乙(住所) (氏名) 印 |
話し合いが難しそうであれば、配達証明付き内容証明郵便を送りましょう。
内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に・どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明する郵便のことです。
ここでは内容証明郵便を送る目的と送付方法に分けて紹介していきます。
【内容証明郵便について】
・内容証明郵便を送る2つの目的 ・内容証明郵便の送付方法 |
内容証明郵便を送るのには2つの目的があります。
【内容証明郵便を送る2つの目的】
・時効前に請求したことを証明するため
・相手にプレッシャーを与えるため
まずひとつ目の目的は、時効前に遺留分を請求したことを証明するためです。
後述しますが、遺留分の請求には時効があります。
内容証明郵便を配達証明付きで送ることで、「請求した日」と「相手に到達したこと」の2点を証拠として残すことができます。
ふたつ目の目的は、相手にプレッシャーを与えることです。
口頭で「遺留分を請求したい」と伝えただけでは、相手にされないことがあります。
内容証明郵便を送ることによって、相手に本気度が伝わり、「対応しなければまずい」と思い直してもらい、話し合いが進むことが期待できます。
内容証明郵便の作成方法については細かくルールが定められています。
下記郵便局の案内を参考にしながら進めてください。
上記のルールに従った上で、書面に下記内容を記載するようにしましょう。
【内容証明郵便に書くべき内容】
・請求する人の名前 ・請求する相手 ・請求の対象となる遺贈・贈与・遺言の内容 ・遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求する旨 ・請求する日時 |
内容証明郵便を送っても話し合いがまとまらなかった場合、「遺留分侵害額請求」の調停を起こす方法があります。
調停とは、調停委員に間を取りもってもらい、話し合いにより解決を図る裁判手続きのことです。中立の立場である調停委員が双方の言い分を聞き取り、解決に向けてのアドバイスや妥協案を提示してくれます。
調停が成立すると、合意の内容をまとめた調停調書が作成されます。もし調停調書の内容通りに支払いが行われない場合は、強制執行を行うことが可能です。
調停の申立ては下記を参考に進めていくようにしましょう。
【遺留分侵害額の請求調停申立ての手続き】
申立先 |
下記いずれか ・相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所 ・当事者が合意で定める家庭裁判所 (遺産分割調停を申し立てている場合はその申立て裁判所) 裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所 |
費用 |
・収入印紙1200円分 ・連絡用の郵便切手 |
必要書類 |
・申立書 ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)謄本 ・相続人全員の戸籍謄本 ・遺言書の写し ・遺言書の検認調書謄本の写し(検認がある場合) ・遺産に関する証明書(預貯金通帳の写しや、固定資産評価証明書など) 他、状況に応じて別途追加書類が求められる |
さらに詳しく知りたい場合は裁判所HPからご確認ください。
申立書も同ページからダウンロードできます。
調停が不成立だった場合、遺留分侵害額請求の訴訟で決着をつけることになります。
訴訟では、提出された証拠や主張をもとに裁判所が判決を下します。裁判官が提示した和解案に双方が合意して解決する場合もあり、遺留分侵害額請求ではこちらの方が一般的です。
いずれにせよ、訴訟に進めば最終的には遺留分の問題が解決に至ります。
なお、遺留分の訴訟を起こす場合は、調停とは別の裁判所にあらためて訴状を提出する必要があります。
どの裁判所に提出するかは、下表をご参照ください。
【遺留分侵害額請求の訴状提出先】
裁判所の種類 | ・遺留分の請求金額が140万円を超える→地方裁判所 ・遺留分の請求金額が140万円以下→簡易裁判所 ※裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所 |
管轄 | 下記いずれか ・相手方のうち1人の住所地 ・請求者の住所地 ・亡くなった人の最後の住所地 ・当事者が合意で定める場所 |
遺留分でもめた場合、弁護士に相談することをおすすめします。
具体的には、「当人同士で話し合って解決するのは難しそう」と分かったタイミングですぐに相談するのがベストです。
本章では下記内容について見ていきましょう。
【弁護士について】
・弁護士に相談した方がいい理由 ・弁護士費用の相場 |
なぜ弁護士に相談した方がいいのか、その理由はいくつかありますが、ここでは代表的な3つをお伝えしていきます。
【弁護士に相談した方がいい理由】
・代理人として相手と交渉してもらえるから ・生前贈与の立証をサポートしてもらえるから ・内容証明送付・調停・訴訟をサポートしてもらえるから |
弁護士に依頼すると、代理人として相手と直接交渉してもらえます。
それにより、次のような効果が期待できるでしょう。
・弁護士が登場することで、相手に真剣度が伝わり、話し合いがまとまりやすい
・身内同士の話し合いでは感情的になりやすいが、第三者が間に入ることで冷静になれるので、話し合いが進みやすい
・会いたくない相手と顔を合わせずに済む
・交渉のストレスから解放される
このように、弁護士に任せることで、話し合いがスムーズにまとまることが期待できます。
弁護士に依頼すれば、「遺留分の対象になる生前贈与があったこと」の立証をサポートしてくれます。
相手が遺留分を認めない場合、「遺留分の対象になる生前贈与があったこと」を立証するのは、遺留分を請求する側の責任です。
立証できなければ、裁判手続きに進んでも遺留分は認められません。
しかし、贈与者と受贈者以外の人が、生前贈与を立証するのは難しい部分があります。
特に、生前贈与で遺留分が認められる条件が「あげる人・もらう人双方が遺留分を侵害することを知っていたこと」で主張する場合は、自力で立証するのは容易ではないでしょう。
弁護士なら、証拠集めのノウハウがあるので、立証できる可能性が高くなります。
弁護士に依頼すれば、内容証明の送付や調停、訴訟も全面的にサポートしてもらえます。
一般の人は裁判に不慣れなため、裁判所で論理的に意見を述べることは難しい部分もあるでしょう。
弁護士なら調停委員や裁判官に納得してもらえるよう主張することに長けているので、安心してやりとりを任せられます。
また、内容証明や調停、訴訟の手続きは煩雑であるため、不慣れな人が行うと時間も手間もかかります。弁護士に任せれば準備をスムーズに進められるでしょう。
弁護士に依頼すれば、一人で進めるより遺留分をもらえる可能性が高まるものの、費用が高額になるのではと不安になりますよね。
弁護士に遺留分のもめ事を依頼した場合、かかる費用は数十万円~数百万円が目安です。依頼者が請求する遺留分の金額が大きくなるほど費用も高くなります。
弁護士費用は下記料金体系で設定するのが一般的です。事務所によって大きく異なるので、依頼の際は必ず見積もりを確認するようにしてください。
遺留分侵害額請求の弁護士費用 |
着手金(20~40万円) + 報酬金(遺留分侵害額の4%~16%)+ その他費用(数万円~) |
※着手金…依頼時に支払う前払い金。
※報酬金…解決時に支払う後払い金。取得できた金額に応じて金額設定される。一般的には金額が上がるにつれ割合(%)が下がる。
弁護士費用は決して安くはありません。しかし、本来請求できる権利のある遺留分が、知識・力不足によりもらえなかったという結果になることは避けたいですよね。
遺留分をもらえる可能性を上げるためには、弁護士の力を借りることを強くおすすめします。
遺留分には時効・除斥期間があるので、できるだけ早く請求するようにしましょう。
遺留分については「遺留分の請求権(2つ)」と「金銭の支払いの請求権」の3つの期間制限が関わってきます。
遺留分は下記いずれかを過ぎてしまうと請求することができません。
・「相続が開始したこと」「遺留分が侵害されていること」の両方を知ってから1年
・相続が開始してから10年
(民法第1048条)
上記の期間が過ぎる前に、「遺留分を請求する」旨を受贈者に伝える必要があります。
口頭だと言った言わないでもめるおそれがあるので、「配達証明付き内容証明郵便」を送るようにしましょう。
時効は遺留分を請求してしまえば安心というわけではありません。
遺留分の請求の時効とは別に、「金銭債権の消滅時効」にも注意が必要です。
金銭債権とは支払いを求める権利のことで、この場合遺留分を請求した時点から5年経過すると、金銭を請求することができません(民法166条)。
この金銭債権の消滅時効は、裁判を起こすことで時効を更新することができます。
内容証明郵便を送ってからも、交渉かまとまらない場合は、5年以内に裁判を起こして時効をリセットするようにしましょう。
本記事では生前贈与による独り占めについて解説してきました。
あらためて本文のポイントを振り返りましょう。
まずは、誰にどれだけ財産を渡すかは本人の自由であり、生前贈与による独り占めは違法ではないことをお伝えしました。
そのうえで、生前贈与で独り占めされた場合は、遺留分を請求するという方法で、財産を受け取れる可能性があります。
下記条件にあてはまる場合は、遺留分の請求を検討してみましょう。
生前贈与で遺留分が認められるための3つの条件 |
・死亡前1年以内の生前贈与であること ・死亡前10年以内に相続人に対して行われた特別受益であること ・あげる人・もらう人双方が遺留分を侵害することを知っていたこと |
遺留分を請求する方法は下記の通りです。
遺留分を請求する方法 |
① 話し合いで請求する ② 配達証明付き内容証明郵便を送る ③ 遺留分侵害額請求の調停を起こす ④ 遺留分侵害額請求の訴訟を起こす |
遺留分でもめた場合は、弁護士に相談するようにしましょう。
遺留分の請求には時効があるので、なるべく早く請求するようにしてください。
以上、生前贈与で独り占めされてしまった場合でも、遺留分として財産を受け取れることを願っております。