弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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不動産(土地・家など)を相続した場合、亡くなった方の名義から相続した人の名義に変わるため、相続登記(所有権移転登記)が必要になります。
しかし、この相続登記を「いつまでに行えばいいか分からない……」という方は多いのではないでしょうか。
それもそのはずで、2024年4月1日施行に法改正される予定であり、この数年で状況が変わるため、期日がいつまでか分かりにくい状況にあるといえるでしょう。
分かりやすく解説すると、法改正前と法改正後は、以下のように相続登記の期限が異なります。
義務化後は、この期限内に相続できない場合、10万円以内の過料に処される対象となります。
遺産分割協議がまとまらないなどの理由で期限内の相続登記ができない場合には、「相続人申告登記」を行っておくことが必要です。
義務化後にしなければいけないことをケース別にまとめると、以下のようなフローチャートとなります。
なお、義務化前であっても、相続登記を放置しておけば、不動産の売却も活用もできず、無駄に相続人が増えるなどのリスクがあります。
義務化前に相続した不動産についても義務化の対象となるため、義務化前でも早めに進めることをおすすめします。
このように、相続登記の期限は今は特に複雑なため、現時点でよく分からないのも無理はありません。
この記事では迷いやすい注意点も漏れなく解説しているので、ぜひ最後までお読みいただき、相続登記の期限についてや、具体的に何をすべきなのかをしっかりと把握するのにお役立てください。
※この記事の内容は、2023年2月時点の内容となります。 |
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民法と不動産登記法の改正(2024年4月1日施行)により、相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)の期限は以下のようになります。
改正前と改正後によって期限が異なるため注意しましょう。
現状〜2024年3月31日(法改正前)の相続登記の期限 |
期限を定めた法律がないため、期限は特に定められていない 相続登記をせずに放置していても問題はない(もちろん罰則もない) |
2024年4月1日から改正民法が施行 相続登記が義務化される |
2024年4月1日以降(法改正後)の相続登記の期限 |
❶義務化後の相続で不動産を取得した場合 ・相続で所有権を取得した人:不動産取得を知った日から「3年以内」または ・遺産分割協議で取得した人:遺産分割協議の成立日から「3年以内」 |
❷義務化前の相続で不動産を取得している場合 以下のどちらか遅い方が期限となる ・相続で所有権を取得した人:不動産取得を知った日から「3年以内」または ・遺産分割協議で取得した人:遺産分割協議の成立日から「3年以内」 ・施行日から3年以内(2027年3月31日まで) |
法改正後は、義務化以前の相続も相続登記義務化の対象となるため、注意が必要です。
法改正の前と後でどのように変わってくるのか、それぞれ詳しく解説していきます。
2024年3月31日まで(法改正前)までは、期間を定める法律がないため、相続登記の期限は特にありません。相続した土地や建物の所有権を亡くなった人のまま放置していても問題ありません。
つまり、法改正前であれば相続登記しなくても良い、ということです。罰則ももちろんありません。
しかし、前述した通り、法律が改正され、2024年4月1日からは相続登記が義務化されます。
2024年4月1日から相続登記の義務化を定めた法律が施行され、以下の期限が設けられます。
・相続で所有権を取得した人:不動産取得を知った日から「3年以内」または ・遺産分割協議で取得した人:遺産分割協議の成立日から「3年以内」 |
詳しくは後述しますが、正当な理由なく相続登記しなければ、10万円以下の過料を処される罰則もあります。
2024年4月1日に改正法が施行されると、義務化される前の相続も義務化の対象になります。
過去の相続については、以下のどちらか遅い日が期限となります。
❶相続で所有権を取得した人:不動産取得を知った日から「3年以内」または 遺産分割協議で取得した人:遺産分割協議の成立日から「3年以内」 ❷施行日から3年以内(2027年3月31日まで) |
つまり、通常のケース(相続開始と同時に不動産取得を知った場合)では、施行日のほうが遅いため、相続登記の期限は施行日から3年以内にあたる2017年3月31日となります。
例:相続登記が義務化される前である2023年1月1日に被相続人が亡くなり、2023年2月6日に遺産分割協議が終了した場合。 ❶遺産分割協議から3年:2026年2月5日 ❷施行日から3年:2027年3月31日 施行日から3年後の方が遅いので、期限は2027年3月31日となる |
一方、相続開始が施行日よりも前でも、施行日よりも後に不動産を取得したことを知った場合には、不動産取得したことを知ってから3年が期限となります。
例:登記が義務化される前である2024年1月1日に被相続人が亡くなり、遺言書による遺贈で不動産を取得したが、そのことを知ったのが2024年6月2日(施行日後)だった。 ❶相続により所有権を取得したことを知った日から3年:2027年6月1日 ❷施行日から3年:2027年3月31日 相続により所有権を取得したことを知ってた日から3年後の方が遅いので、期限は2027年6月1日となる |
施行前に相続して放置している不動産がある場合は、2027年3月31日までに必ず相続登記するようにしましょう。
ここからは改めて、民法と不動産登記法の改正(2024年4月1日施行)の相続登記義務化のポイントを解説していきます。
今まで(改正前)は、不動産を相続で取得した場合の所有権移転登記(相続登記)には期限はありませんでした。そのため、「先祖代々住んでいた家を相続したら、名義がおじいちゃんのままだった」というケースも多く存在します。
しかしその弊害で、相続登記がされないまま放置された所有者不明の土地が増えて社会問題となり、民法が改正されることが決まったのです。
所有者不明土地の解消に向けて改正される法律には、民法、不動産登記法等一部改正法、相続土地国庫帰属法があります。
これらの法改正の中で、相続登記の義務化に関する3つのポイントをまとめて紹介します。
出典:法務省「法改正等の概要解説パンフレット(2022.9版)」
期限については、以下の2つのルールが定められています。
遺産分割協議をせず、相続や遺贈によって不動産を取得した場合は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないと決まっています。
「所有権を取得したことを知った日から」というのが大切なポイントであり、不動産を取得したことを知らなければ3年の期間はスタートしないということです。
遺産分割協議で話し合いがまとまった場合には、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記が必要です。
相続登記の義務化には罰則が設けられており、正当な理由がないのに義務に違反した場合、10万円以下の過料の適用対象となります。
逆に言えば、正当な理由がある場合には、相続登記できなくても過料の対象外になります。
この場合の正当な理由について、法制審議会民法・不動産登記法部会第10回会議(令和元年11月19日開催)で以下のような議論がなされているので、参考にしてください。
「正当な理由」がある場合の例としては,①数次相続が発生して相続人が極めて多数であることにより,戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するときや,②遺言の有効性が争われる訴訟が係属しているとき,③登記申請義務者に重病等の事情があったとき,④登記簿は存在しているものの,公図が現況と異なるため現地をおよそ確認することができないときなどが考えられる。これらの正当な理由については,明確化の観点から,あらかじめ類型化して(通達等において)明示しておくことが考えられる。
法務省「部会資料19 中間試案のたたき台(不動産登記制度の見直し)【PDF】」
つまり、数次相続(相続した人が死亡して新たな相続が発生すること)で相続人が多数になり相続人の把握や書類準備に時間がかかるケースや、遺言の有効性を裁判で争っているケースなどでは、期間内に相続登記できなくても、過料は免れられる可能性があります。
一方、単に「遺産分割協議がまとまらない」「相続人に行方不明の人がいる」などの場合は原則として過料の対象になると考えていた方が安全です。
このようなケースの対処法については、この後の「【ケース別】相続登記義務化への対応方法」を参考にしてください。
相続登記の法改正で注意したいポイントとして、法改正以前に相続した不動産についても対象になるという点です。
これについては、「民法等の一部を改正する法律 附則」に以下のように明示されています。
民法等の一部を改正する法律 附則
引用:法務省「民法等の一部を改正する法律」
第5条
6 第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第 号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。
難しく書いてありますが、つまりは、施行日の前に所有権取得を知ったケースや遺産分割協議が終わっているケースでは、施行日の方が遅いので、施行日から3年以内が期限です。
施行日は2024年4月1日なので、2027年3月31日が期限となります。
一方、法改正前に相続した不動産であっても、その不動産を取得したことを知らなければ、3年の期限はまだスタートしていない状態です。改めて、その不動産を取得したことを知った日から3年以内が期限となります。
【ケース別の相続登記の期限】
ケース |
相続登記の期限 |
2023年1月1日に被相続人が亡くなり 2023年2月6日に遺産分割協議が終了した |
遺産分割協議から3年:2026年2月5日 施行日から3年:2027年4月1日 施行日の方が遅いので、期限は2027年3月31日 |
2023年1月1日に被相続人が亡くなったが 不動産を取得したことを知らないままで 2024年5月5日に知った |
知ってから3年:2027年5月4日 施行日から3年:2027年4月1日 知ってから3年の方が遅いので、期限は2027年5月4日 |
ここまで解説した通り、現時点(法改正前)では相続登記をせずに放置していたとしても特に罰則もなく期限もありません。しかし、法改正後は何かしらの対処が必ず必要となります。
スムーズに遺産分割ができて相続登記ができる状態ならば、3年以内に相続登記をすれば問題ありません。
問題となるのは、遺産分割協議がまとまらない(分割割合が決まらない、一部の相続人と連絡が取れないなど)場合で、3年以内に相続登記が難しいケースです。
このようなケースではどうしたら良いのか、相続の状況などをわかりやすくチャート図にしたので、参考にしてください。
次の章から、ケース別に具体的に解説していきます。
ここまでの内容を踏まえて、結論を一旦まとめます。
法改正により2024年4月1日から相続登記が義務化されるため、既に不動産を相続で取得し、相続登記が済んでいない方は、2027年3月31日までに相続登記が必要となります。
また、相続登記が難しい場合には、その旨をしっかりと申請しなければなりません。
【ケース別の相続登記義務化後の対応】
ケース |
相続登記が義務化された後の対応 |
2024年3月31日までに 相続により不動産を取得した人 |
2027年3月31日までに相続登記の申請が必要 →方法は「相続登記(所有権移転登記)の流れ3ステップ」 |
2024年4月1日以降に 相続により不動産を取得した人 |
不動産取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が必要 →方法は「相続登記(所有権移転登記)の流れ3ステップ」 |
遺産分割協議がまとまらないなどの理由で 期限までに相続登記できない人 |
相続登記ができなくても、代わりに「相続人申告登記」が必要 →詳しくは「期日に間に合わない場合は「相続人申告登記」を行おう」 |
不動産を相続するか迷っている人 |
相続土地国庫帰属制度も活用しよう →詳しくは「相続したくない場合は相続土地国庫帰属制度も活用しよう」 |
何をすべきかは、この後の5章~7章で、それぞれ詳しく解説していきます。
ここまで解説した通り、今後は相続や遺贈により不動産を相続した場合、期限内での相続登記が必須となります。
なお、相続登記というのは通称であり、正式な手続き名は「相続を原因とする所有権移転登記」といいます。
ここからは、相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)のやり方を具体的に解説していきます。
相続登記する際には、申請書と一緒に戸籍謄本や住民票などの書類の提出が必要となるため、まずは必要書類を集める必要があります。
特に、被相続人が何度も転籍している場合や相続人の数が多い場合には、多くの書類を取得しなければならず、時間がかかることもあります。余裕をもって、しっかり準備を行いましょう。
遺言により不動産を取得した場合には、以下の書類が必要となります。
【遺言により不動産を取得した場合の相続登記の必要書類リスト】
書類名 | 取得先 |
❶被相続人(亡くなった方)の⼾籍謄本及び除籍謄本 ※出生から死亡までの連続したものが必要 | 被相続⼈の本籍地の市区町村役場 |
❷被相続⼈(亡くなった⽅)の住⺠票の除票 ※本籍地記載のもの。戸籍の附票でも可。 | 被相続⼈の最後の住所地の市区町村役場(※⼾籍の附票は被相続⼈の本籍地の市区町村役場) |
❸相続人全員の⼾籍謄本または抄本 ※被相続人の死亡日以降に作成されたもの | 各相続⼈の本籍地の市区町村役場 |
❹相続関係説明図 | 法務局サイトにひな形あり |
❺不動産を相続する人(新しい登記名義人)の住民票 | 相続人の居住する市町村役場 |
➏固定資産税納税通知書またはる固定資産税評価証明書 ※登録免許税を計算するために必要 | 市町村から送付されてくるもの |
❼遺言書 | ー |
❽検認済証明書(自筆証書遺言の場合) | 家庭裁判所 |
遺言書が自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所での検認が必要です。家庭裁判所で交付された検認済証明書も忘れずに、相続登記の申請時に持参しましょう。
遺産分割協議によって不動産を取得した場合には、以下の書類が必要となります。
【遺産分割協議を行った場合の相続登記の必要書類リスト】
書類名 | 取得先 |
❶被相続人(亡くなった方)の⼾籍謄本及び除籍謄本 ※出生から死亡までの連続したものが必要 | 被相続⼈の本籍地の市区町村役場 |
❷被相続⼈(亡くなった⽅)の住⺠票の除票 ※本籍地記載のもの。戸籍の附票でも可。 | 被相続⼈の最後の住所地の市区町村役場(※⼾籍の附票は被相続⼈の本籍地の市区町村役場) |
❸相続人全員の⼾籍謄本または抄本 ※被相続人の死亡日以降に作成されたもの | 各相続⼈の本籍地の市区町村役場 |
❹相続関係説明図 | 法務局サイトにひな形あり |
❺不動産を相続する人(新しい登記名義人)の住民票 | 相続人の居住する市町村役場 |
➏固定資産税納税通知書または固定資産税評価証明書 ※登録免許税を計算するために必要 | 市町村から送付されてくるもの |
❼遺産分割協議書 | ー |
❽法定相続人全員の印鑑証明書 | 相続人の居住する市町村役場 |
必要書類が準備できたら、法務局公式サイトにある登記申請書の様式を使って、登記申請書を作成しましょう。
遺言書による相続なのか、遺産分割協議による相続なのかなど、状況に応じて申請書の様式が異なるので注意しましょう。
登記申請書を作成できたら、相続登記に必要な「登録免許税」の金額の印紙を添付して申請します。印紙は法務局内で購入することもできるので、現金を持っていくと良いでしょう。
登録免許税は、固定資産税評価額の合計(千円未満切り捨て)×税率(0.4%)です。 計算した後、100円未満は切り捨てます。 固定資産税評価額は、不動産の所有者宛てに毎年送付される「固定資産税納税通知書」に記載があります。 例えば、固定資産税納税通知書に記載された不動産評価額が381万4,960円なら、千円未満を切り捨てた381万4,000円に0.4%をかけると15,256円となるため、百円未満を切り捨てた15,200円が登録免許税となります。 |
相続登記の申請を行う場所は、不動産の所在地を管轄する法務局です。法務局の公式サイト「管轄のご案内」で確認しましょう。
相続登記の書類集めが大変な場合は、司法書士に書類の取得から依頼する方法もおすすめです。なお、当事務所には司法書士の資格を持つスタッフもおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
法務局への申請から登記完了までは1週間~10日程度かかるのが一般的です。登記が完了すると、登記完了証などの書類が送付されます。
「登記完了証」や「登記識別情報通知書」、その他還付される書類を受け取りましょう。この書類の到着をもって、相続登記が完了となります。
遺産分割協議がまとまらないなどの理由で相続登記の期日までに相続登記を完了できない場合には、必ず期日までに「相続人申告登記」を行いましょう。
相続人申告登記とは、「まだ相続登記はできないけれど、遺産分割協議が済んだら相続登記しますよ!私が相続人ですよ!」と申告することです。
申告することで、相続登記の申請業務を履行できます。一人の相続人が、相続人全員分をまとめて申出をすることも可能です。
つまり、この「相続人申告登記」をしておけば、とりあえず3年以内の相続登記の義務を免れることが可能です。
一方、3年の期限内に相続登記できず相続人申告登記も行わない場合は、罰則の対象になります。そうならないためにも、必ず忘れずに相続人申告登記を行いましょう。
ただし、この時点では正式な相続登記はできていないため、遺産分割協議が終わり次第、協議の日から3年以内に忘れずに相続登記を行いましょう。
相続人申告登記の具体的なやり方や雛形などはまだ発表されていませんが、自分が「当該所有権の登記名義人の相続人である旨」を申し出て書類を提出する流れになるでしょう。
相続により取得した土地を活用したい相続人がいないなど、誰も相続したくない場合には、要らない土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」があるので活用しましょう。
相続土地国庫帰属制度は、2023年4月27日からスタートする新しい制度です。この制度を使えば、望まずに取得した土地を手放し、国に引き取ってもらうことが可能です。
制度を利用するための負担金が必要ですが、使わない土地に毎年払う固定資産税、メンテナンス費用などを無くすことができます。
出典:法務省「所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わります。」
売れる見込みのない要らない土地がある場合には、ぜひ活用を検討してみましょう。
なお、売れない土地の相続についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
ここまで相続登記の義務化後にすべきことを解説してきましたが、義務化前であったとしても、早めの相続登記をおすすめします。
理由は2つあり、相続登記しなければ売却・活用できないなどのデメリットが多いから、そして、義務化が間近であり4〜5年以内には相続登記しなければならないからです。
相続登記しないで放置するデメリット ・相続した不動産を売却できない ・相続した不動産を貸し出したり活用したりする時に、共有者全員の同意が必要となる ・相続した不動産を担保にすることができない ・相続人がさらに亡くなるなど数次相続が起き、相続人が増えて複雑になる ・相続人が病気などで意思表示できなくなると手続きが複雑になる |
相続登記せずに共有状態で放置している間に相続人が亡くなったり、病気で意思表示できなくなったりすると、相続手続きがさらに複雑になってしまいます。
2024年4月1日の義務化後は、義務化前の相続も対象になるので、放置していてもどうせ2027年3月末までには相続登記しなければなりません。どうせしなければならないことなので、できれば余裕があるうちに終わらせておくことをおすすめします。
もし「遺産分割協議が揉めていてまだ決まっていない」という場合には、できるだけ早く決着させましょう。トラブルをスピーディーに解決させたい方は、ぜひ遺産相続トラブルに強い当事務所にご相談ください。
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この記事では、「相続登記はいつまでにする必要があるのか」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
▼相続登記の期限
現状〜2024年3月31日(法改正前)の相続登記の期限 |
期限を定めた法律がないため、期限は特に定められていない 相続登記をせずに放置していても問題はない(もちろん罰則もない) |
2024年4月1日以降(法改正後)の相続登記の期限 |
❶義務化後の相続で不動産を取得した場合 ・相続で所有権を取得した人:不動産取得を知った日から「3年以内」または ・遺産分割協議で取得した人:遺産分割協議の成立日から「3年以内」 |
❷義務化前の相続で不動産を取得している場合 以下のどちらか遅い方が期限となる ・相続で所有権を取得した人:不動産取得を知った日から「3年以内」または ・遺産分割協議で取得した人:遺産分割協議の成立日から「3年以内」 ・施行日から3年以内(2027年3月31日まで) |
相続登記の義務化には以下の3つのポイントがあります。
❶期限の基本ルールは「相続による取得を知った日」から3年以内 (取得した日ではない点に注意) ❷正当な理由なく申請しないと10万円以下の過料対象となる ❸法改正以前に相続した物件も対象になる |
法改正後(2024年4月1日以降)は、3年以内に何かしらの申請が必要となります。
・遺産分割協議がまとまった場合(または協議なしに相続):相続登記 ・遺産分割協議がまとまらない場合:相続人申告登記 |
また、相続したくない土地を国に返す制度も新設されるため、相続するか迷っている場合は「相続土地国庫帰属制度」の活用も検討しましょう。
義務化前は相続登記に期限がありませんが、2024年4月1日の義務化以降、3年以内の相続登記が必須となります。
相続により既に不動産を取得している場合やこれから取得する場合は、なるべく早くに遺産分割協議をまとめ、余裕をもって相続登記することをおすすめします。