代襲相続の遺留分はどうなる?孫にあり、甥姪にない理由を正しく解説

代襲相続の遺留分とは
この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

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「代襲相続の場合も遺留分はあるの?ないの?」

「孫が子の代わりに代襲相続する時には、遺留分はどうなる?遺留分も一緒に引き継げるの?」

代襲相続や遺留分の考え方は難しく、さまざまな疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。

結論から言うと、代襲相続する孫には遺留分が認められていますが、代襲相続する甥姪には遺留分が認められていません

甥姪が代襲相続する場合に遺留分が認められない理由は、そもそも兄弟には遺留分がないからです。兄弟は、相続できる法定相続人の中でも相続順位が3位と低く、遺留分までは認められてないのです。

この記事では、代襲相続と遺留分の関係はもちろん、2つのそれぞれの言葉の意味を、相続初心者の方でも理解できるように分かりやすく解説していきます。

代襲相続とは、遺言がなく法定相続人が相続するシーンで出てくる言葉です。一方、遺留分とは、遺言がある場合の話で、本来なら(法定相続による相続なら)財産をもらえたはずの人がもらえない場合に一定の財産を請求できるというものです。

こうした基礎的な知識を前提情報として説明せずに解説しているサイトも多いため、「他の記事を読んだけど、いまいち理解できなかった」という方こそ、ぜひこの記事をお読みください。

また、記事の後半では、代襲相続の遺留分について、あなたが置かれている立場別にどうしたらよいかを解説しているため、先に確認したい方は以下をお選びください。

遺留分をもらいたい場合にすべきこと

遺留分を請求された場合にすること

代襲相続人に遺留分を請求されたくない場合(生前の対策)

代襲相続の遺留分について網羅的に理解したい方は、ぜひこの記事を最後まで読み進めてください。

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目次

代襲相続でも甥姪の遺留分はない(孫の遺留分はある)

代襲相続や遺留分の詳しい解説は次の章で行いますが、まず「代襲相続」と「遺留分」の関係について、結論から押さえておきましょう。

冒頭でも述べた通り、代襲相続する孫には遺留分が認められていますが、代襲相続する甥姪には遺留分が認められていません

代襲相続人

亡くなった人の孫

亡くなった人の甥姪

本来の相続人

亡くなった人の子ども

亡くなった人の兄弟

遺留分の有無

遺留分あり🔴

遺留分✖

遺留分が侵害

されている場合

遺留分侵害額請求を

行うことで取り戻せる

亡くなった人の兄弟には遺留分がないので請求できない

子の代襲相続で孫が相続する場合:遺留分あり

亡くなった人の子どもの代襲相続で孫が相続する場合には、遺留分を請求する権利もそのまま引き継ぐため、遺留分が侵害されている場合、請求することができます。

例えば、亡くなったAさんに配偶者と3人の子ども(長男・長女・次女)がいたケースで、遺言が無い場合。

次女が先にAさんよりも亡くなっていて、次女に子がいれば、次女の子(Aさんから見ると孫)が代襲相続できます。

また、次女の子は、遺留分もそのまま受け継ぎます。そのため、遺言があって遺留分が侵害されている場合には、請求する権利があります。

※請求する場合の流れは「遺留分をもらいたい場合にすべきこと」で解説しています。

兄弟の代襲相続で甥姪が相続する場合:遺留分なし

亡くなった人の兄弟の代襲相続で甥姪が相続する場合には、そもそも兄弟には遺留分がないため、遺留分を請求することはできません。

例えば、Aさんが亡くなった場合の相続で、親はAさんより前に亡くなっており、子がいない場合、遺言が無い場合、配偶者と兄弟が法定相続人となります。

このケースで、相続するはずだったAさんの妹がAさんよりも先に亡くなっていて、Aさんの妹に子がいれば、Aさんの妹の子ども(Aさんから見ると姪)が代襲相続できます。

しかし、遺言の指定により、Aさんの姪が財産を受け取れなくても、遺留分はありません。なぜならば、そもそも、兄弟には遺留分は認められておらず、Aさんの妹には遺留分がないからです。

遺留分がそもそも無いので、引き継ぐこともできません。

代襲相続の遺留分を理解するための基礎知識

前章では結論だけ簡潔に述べましたが、本質からしっかり理解したい方に向けて基礎知識を解説します。

もしある程度の知識はすでに持っているという方は、知っている部分は読み飛ばしていただいて構いません。

相続の基本(相続できる順番は決まっている)

代襲相続や遺留分について解説していく前に、まず相続の基本をお伝えします。ここを理解していないと、誰が代襲相続できるのかを理解するのが難しいため、しっかり理解していきましょう。

相続が起こったときに、亡くなった人の配偶者は必ず相続できます。しかし、その他の相続人は、以下のように相続できる順番が決まっています。

亡くなった人に子どもや孫などがいる場合、子どもや孫に相続権があるため、親や兄弟姉妹は相続できません。

逆に、亡くなった人に子どもなどがいなければ、親や祖父母が相続できます。さらに、親や祖父母もいない場合に、兄弟姉妹が相続できます。

以下が、誰が相続できるかを示したチャート図です。

代襲相続とは

次に、代襲相続とは何かを解説していきます。

代襲相続とは、以下のような理由で、本来相続人となるはずだった人が受け取れない場合に、その人の子どもが代わりに相続することをいいます。

代襲相続が起こるケース
❶本来相続人となる人が、相続が起こる前の時点で、すでに死亡していた場合
❷本来相続人となる人が、相続欠格者の場合
❸本来相続人となる人が、相続排除された場合

❶のケースが代襲相続で多いパターンです。

例えば、父親であるAさんが亡くなり、Aさんの妻とAさんの子どもで相続する場合を想定しましょう。

Aさんには長男B・長女C・次女Dがいましたが、次女Dがすでに他界していて次女Dの息子E(Aさんから見ると孫)がいる場合には、代わりにDの息子Eさんが相続できます。

この場合、Aさんの遺産を受け取る権利があるのは、Aさんの妻、長男B、長女C、孫Eの4人となります。

なお、直系卑属(亡くなった方の子どもや孫など下に続く代のこと)は、代襲相続は何度でも下に続きます。

例えば、亡くなった方の子どもが既に亡くなっており、孫も亡くなっている場合には、さらにその子(ひ孫)が代襲相続できます。これを再代襲といいます。

しかし、亡くなった人の兄弟の代襲相続は1代限りです。例えば、亡くなった人の弟が既に亡くなっている場合、弟の子(甥)は代襲相続できますが、その弟の子(甥)も亡くなっている場合にはその子(甥の子)は代襲相続できません。

本来の相続人

亡くなった人の子ども

(直系卑属)

亡くなった人の

兄弟

再代襲の有無

孫が代襲相続できない場合

さらにその子どもが相続できる

相続できない場合

甥姪の子の再代襲はなし

遺留分とは

遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人が必ず受け取れる遺産の取り分のことをいいます。この取り分は、遺言があったとしても奪われません。

例えば、相続人が配偶者のみの場合(子も親も兄弟もいないケース)、遺言で「遺産の全額を〇〇という団体に寄付する」と書かれていたとしても、配偶者には遺産の2分の1を受け取る権利があります。

以下が、相続人の組み合わせパターンごとの遺留分の割合です。

先ほど「兄弟の代襲相続で甥姪が相続する場合:遺留分なし」で解説した通り、兄弟姉妹にはそもそも遺留分がありません。

そのため、兄弟の代襲相続で甥姪が相続する場合も、引き継ぐことができる遺留分はないため、甥姪に遺留分はありません。

つまり、代襲相続人である甥姪は、遺言がない場合には相続できますが、遺言がある場合には相続できないことがあるので注意しましょう。

なお、遺留分は自動的にもらえるものではないので、「遺留分侵害額請求」という方法で相手方に請求する必要があります。

これについては「遺留分をもらいたい場合にすべきこと」で後述します。

代襲相続であっても相続割合・遺留分割合は変わらない

相続順位や代襲相続、遺留分の基礎知識を理解できたところで、代襲相続と遺留分の関係について整理していきます。

「代襲相続の場合、相続できる割合や遺留分割合が減ってしまうのではないか?」という疑問を持つ方がいるかもしれません。

しかし、そんなことはありません。代襲相続だからといって、相続割合や遺留分割合が少なくなることはないので安心してください。

代襲相続が起こる場合、代襲相続人(代襲相続を受ける人)は、被代襲者(代襲相続される人)の権利をそのまま受け継ぎます。そのため、相続割合も遺留分を請求できる権利もそのまま代襲相続人に引き継がれることになります。

例えば、生涯独身だったAさんが亡くなり、親も祖父母も亡くなっているため、Aさんの兄弟のみで遺産を相続するケースを想定してみましょう。

Aさん(長男)は、次男Bさんと長女Cさんの3人兄弟だったとします。

このケースで代襲相続が無い場合、法定相続分に従い、長男Bさんと長女Cさんは遺産を2分の1ずつ相続することになります。

この場合で、長女CさんがAさんの相続以前に亡くなっている場合、Cさんの息子Dさんが、長女Cさんの代わりに代襲相続することになります。

相続分の割合は代襲相続でも変わらないため、次男Bさんと、Cさんの息子Dさんは、それぞれ2分の1ずつ相続します。

なお、もし長女Cの子どもが複数人いる場合は、長女Cが本来受け取るはずだった2分の1の財産を、長女Cの子どもたちが等分して受け取ることになります。

例えば長女Cの子どもが3人いるならば、2分の1を3人で分けるので、6分の1ずつ相続します。

相続分と同様に、遺留分についても、代襲相続であっても割合は変わりません。

あなたの状況別の代襲相続・遺留分の有無

ここからは、相続人の立場別に代襲相続が起こるのかと遺留分があるのかどうかを解説していきます。ご自分の立場がどれにあたるか確認して、該当する箇所を見てください。

配偶者の代襲相続・遺留分の有無

あなたが配偶者の場合、代襲相続(子が代わりに相続すること)は起こりません。なぜならば、子どもにはそもそも相続権があるからです。

なお、配偶者の連れ子(亡くなった人との親子関係がない子ども)が代襲相続することは無いので注意しましょう。

配偶者には遺留分があります。遺留分が侵害されている場合には、相手に請求することができます。

 遺留分代襲相続
配偶者あり代襲相続は起こらない

配偶者の遺留分は以下の通りです。

❶相続人が配偶者のみの場合配偶者の遺留分は、遺産の2分の1
❷相続人が配偶者と子どもの場合配偶者の遺留分は、遺産の4分の1
❸相続人が配偶者と親の場合配偶者の遺留分は、遺産の3分の1
❹相続人が配偶者と兄弟の場合配偶者の遺留分は、遺産の2分の1 (兄弟には遺留分はないため)

子どもの代襲相続・遺留分の有無

亡くなった人の子どもが既に死亡しているなどの場合、代襲相続は起こります。また、子どもの代襲相続は、代が続く限り何代でも続きます

例えば、亡くなった人Aさんの長男Bさんが亡くなっている場合、長男Bさんの息子Cさん(Aさんの孫)が代襲相続できますが、息子Cさんも亡くなっている場合、息子Cさんの子Dさん(Aさんのひ孫)が代襲相続できます。

子どもには遺留分もあります。遺留分が侵害されている場合には、相手に請求することができます。

また、代襲相続が起こった場合、遺留分の権利もそのまま受け継がれるため、代襲相続人にも遺留分があります。

 遺留分代襲相続
子どもあり代が続く限り代襲相続は起こる

子どもの遺留分は以下の通りです(代襲相続人も全く同じ割合です)。

❶相続人が子どものみの場合子どもの遺留分は、遺産の2分の1
(子どもが複数人いる場合は、人数で等分する)
❷相続人が配偶者と子どもの場合子どもの遺留分は、遺産の4分の1
(子どもが複数人いる場合は、人数で等分する)

親の代襲相続・遺留分の有無

亡くなった人に子どもがいない場合で、配偶者と親がいる場合は、配偶者と親に相続権があります。この場合の代襲相続の有無と、代襲相続人の遺留分は以下になります。

 遺留分代襲相続
あり代襲相続は起こらないが親の代わりにその親が相続可能

亡くなった人の親が既に死亡しているなどの理由で受け取れない場合、代襲相続は起こりませんが、親の親が代わりに受け取ることが可能です。

少しややこしいのですが、親の代わりにその親(亡くなった人の祖父母)が相続することを民法上「代襲相続」とはいいません(代襲相続とは、子が代わりに受け取ることなので)。

ただし、代わりに受け取ることはできるので覚えておきましょう。


Aさんが亡くなったケース。
Aさんには配偶者がいるが子どもがいないため、相続順位2位の親に相続権があります。
しかし、Aさんの両親は既に他界していました。  

この場合、Aさんの祖父母が存命ならば、祖父母に相続権が継承されます。
遺留分を請求する権利も、同様に継承されます。

現実的にはあまりないケースですが、祖父母が全員既に亡くなっており曾祖父母が存命ならば、曾祖父母に相続権が継承され、上の代まで何代でもさかのぼることが可能です。

また、親の親が代わりに相続するケースでは、遺留分も同様の権利として継承します。

兄弟姉妹の代襲相続・遺留分の有無

亡くなった人に兄弟がいる場合、兄弟の相続順位は3番目なので、亡くなった人に直系卑属(子どもや孫)も、直系尊属(親や祖父母)もいない場合のみ、兄弟に相続権があります。

この場合の代襲相続の有無と、代襲相続人の遺留分は以下になります。

 遺留分代襲相続
兄弟姉妹なし代襲相続は1代限定で起こる

子どもの代襲相続・遺留分の有無」で解説した通り、子どもの代襲相続の場合は、代が続く限り何代でも再代襲が可能です。しかしながら、兄弟の代襲相続は「1代限り」と決まっているので注意しましょう。

つまり、兄弟の子は代襲相続しますが、兄弟の子も既に亡くなっている場合に、兄弟の孫までは代襲相続できません。


Aさんが亡くなったケース。Aさんには配偶者(Bさん)がいるが子どもも親もいないため、相続順位3位の兄弟に相続権があります。例えば、Aさんが3人兄弟だった場合、兄Cさん、妹Dさんに相続権があります。

  この場合で、妹Dさんがすでに亡くなっており、妹Dさんに息子Eさん(Aさんの甥)がいる場合は、Eさんが代わりに相続します。このケースでは、配偶者Bさん、兄Cさん、甥Eさん(妹Dさんの代わり)が相続人となります。  

配偶者が4分の3、残りの4分の1を兄弟全体で受け取るため、相続割合は、
・配偶者Aさんが4分の3
・兄Cさんが8分の1
・甥Eさんが8分の1(妹Dさんの代襲相続)

なお、兄弟には相続権はありますが遺留分はありません。したがって、兄弟の代襲相続が起こった場合にも、遺留分はありません。

不公平な遺言が残されていた場合でも、遺留分侵害額請求は行えませんので覚えておきましょう。

遺留分をもらいたい場合にすべきこと

ここからは、自分が代襲相続人(既に死亡している親の代わりに相続する場合など)で、遺留分をもらいたい場合にどうしたら良いかを解説していきます。

遺留分が侵害されている場合は請求する(請求しないともらえない)

亡くなった方が遺言を残していない場合は、相続人全員で話し合い、「法定相続分」という法律で定められた割合をベースに遺産を分割していきます。

問題が起こるのは、あなたに不利な遺言が残されていて、あなたの遺留分が侵害されている場合です。「遺留分が侵害されている」というのは、あなたが最低限もらえるはずの財産をもらえていない状態を指します。

遺留分が侵害されている場合には、遺留分を侵害している相手に請求する必要があります。請求しないともらえないので、必ず請求権を行使しましょう。

例えば、亡くなった方の相続人が、亡くなった方の配偶者とあなた(孫)だけだった場合を想定してください。本来ならば、あなたの親(亡くなった方の子ども)に相続権がありますが、あなたの親は既に亡くなっているとします。

この場合、代襲相続人であるあなたの遺留分は、遺産総額の4分の1です。遺産総額が4,000万円だとしたら、あなたには最低限1,000万円をもらう権利があります。

1,000万円もらう権利があるはずなのに、遺言に「私の財産は全て妻に相続させる」と書いてあったとしたら、あなたの遺留分が侵害されている状態に該当します。

※自分の遺留分の割合が分からない方は、以下の記事を参考にしてください。

代襲相続人は被代襲者(本来相続するはずだった人)と同じ権利を持っているので、被代襲者の割合を確認しましょう。

このように遺留分が侵害されている場合は、「遺留分侵害額請求」という手続きをすることで遺留分を取り戻すことが可能です。この遺留分侵害額請求を起こさなければ、自動的に遺留分が返ってくることはないので注意しましょう。

なお、この遺留分侵害額請求の方法に決まりはなく口頭でも良いことになっていますが、証拠を残すために、配達記録付き内容証明郵便を利用するのが確実です。

さらに詳しくは「遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)とは?請求方法と注意点を解説」の記事を参考にしてください。

時効に注意してなるべく早く遺留分侵害額請求を行う

侵害されている遺留分を確実に取り戻すためには、時効に注意する必要があります。

遺留分侵害額請求できる権利には、以下の通り、【1年の消滅時効】と【10年の除斥期間】があります。

遺留分侵害額請求権の

消滅時効(1年)

・相続が開始したこと

・遺留分が侵害されていること

  の両方を知ってから1年

 遺留分侵害額請求権の

除斥期間(10年)

相続が開始してから(被相続人が亡くなってから)10年

時効が完成してしまうと、遺留分を請求できる権利がなくなってしまうため、遺留分を受け取ることが難しくなります。遺留分が侵害されている事実に気づいた時点で、なるべく早く請求権を行使するようにしましょう。

さらに詳しくは以下の記事をご覧ください。

遺留分を請求された場合にすること

ここからは、「代襲相続人から遺留分を請求されてしまった」場合にどうしたら良いかを解説していきます。前章で解説している内容とは立場が真逆になるので注意してください。

ここで想定されるのは、例えば以下のようなケースです。

【被相続人(亡くなった人)】Aさん ※妻はAさんよりも前に死亡
【法定相続人】Bさん(Aさんの長男)、Dさん(Aさんの長女Cの娘)※CさんはAさんより先に死亡  

Aさんには2人の子ども(長男Bと長女C)がいましたが、長女Cは駆け落ちして娘を産んだ後、Aさんよりも前に亡くなっていました。
長女Cは生前に「私は遺産は要らない」と宣言しており、Aさんは「全ての財産を長男Bに相続させる」という旨の遺言をのこしていました。  

しかし、長女Cの娘であるDさんから「遺留分があるはずだから請求する」と言われ、遺留分侵害額請求をされてしまいました。

このような場合に、どうしたら良いかを解説します。

遺留分侵害額請求が正当ならば拒めない

遺留分侵害額請求をされた場合、その内容が正当ならば拒むことはできません。

つまり、❶遺留分を請求する権利を持っている❷遺留分請求の時効が成立していない、❸請求されている遺留分額が正当である、の3点が揃っている場合は、請求にしたがって払う必要があります。

遺留分を請求された時に取るべき3ステップ

遺留分侵害額請求をされた場合には、以下の3つを確認し、相手の主張が妥当かどうか判断しましょう。

遺留分を請求されたらすべきこと

1. 相手に請求する権利があるか確認する

(兄弟姉妹やその代襲相続人、相続放棄・遺留分放棄している人、権利を剥奪されている人は請求できません)

2. 遺留分の請求の時効が成立していないか確認する

3. 請求されている遺留分侵害額が正当か確認する

なお、3つ目の遺留分侵害額のチェックは重要です。

不動産をどの方法で評価するかや生前贈与の存在を明らかにできるかによって、請求されている遺留分侵害額を大幅に減額できる可能性があるからです。

できれば相続に詳しい弁護士に相談し、正確な遺留分侵害額を計算してもらいましょう。

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代襲相続人に遺留分を請求されたくない場合の生前対策

最後に、代襲相続人に遺留分を請求されたくない場合に、生前に対策しておけることを解説しておきます。

ただし、前述した通り遺留分は遺言よりも優先されるものであり、あくまで「お願い」のレベルなので注意しましょう。

なお、遺言と遺留分の関係について知りたい場合や、遺留分を請求されない場合の遺言書の書き方をさらに詳しく知りたい方は、「遺言書より遺留分が優先!それでも渡したくない時の遺言の残し方を解説 」の記事も参考にしてください。

遺言書の「付言事項」でお願いをする

代襲相続人に遺留分を請求されたくない場合、遺言書の「付言事項」の部分に、「遺留分の請求をしないように」とお願いを書いて、遺言者の想いを伝える方法があります。

遺言書の「付言事項」というのは遺言の最後に設ける部分で、自由に「遺言者の最後のメッセージ」を述べることができる場所です。法的効力はないため、必ずしもその通りになるとは限りませんが、遺言書を読む相手の感情に訴えることが可能です。

例えば、配偶者にだけ遺産を残したい気持ちがあり、子どもや代襲相続人である孫に遺留分を請求されたくない場合には、以下のような付言事項を用意するといいでしょう。

付言事項の文例

妻である〇〇には苦労をかけました。本当にありがとう。

最後まで尽くしてくれた妻〇〇が平穏無事に暮らせることを願って遺言を作成しました。

子どもや孫たちは私の意思を汲み取ってくれると確信しています。

家族に思い出が詰まった我が家で、いつまでも幸せに暮らしてほしいと思っています。

私が亡くなった後に、遺産相続のトラブルが起こらないことを願っています。

これが、私の最期の望みです。

付言事項を残しても、遺留分権利者が遺留分請求を諦めるかは確実ではありませんが、一定の効果はあるでしょう。

遺留分の対象外となる生命保険金を活用する

代襲相続人による遺留分を少なくする方法として、生命保険金(死亡保険金)を活用する方法があります。

生命保険金は遺留分の対象とならないため、財産を多く相続させたい相手に生命保険金を用意しておくことで、請求される遺留分の金額を小さくできます。

※遺留分を計算する場合には、相続財産にプラスして、10年以内の特別受益(一部の相続人だけが得た生前贈与などの利益)や1年以内の贈与を含めて計算します。
生命保険金は原則として特別受益には当たらないため、遺留分計算に含まれません。  

ただし、あまりに生命保険金(死亡保険金)が高額であるなど、特別受益にあたると判断された判例もあります。

例えば、被相続人Aさんの法定相続人が、Aさんの妻(Bさん)とAさんの孫(Dさん=Aさんの子どもCさんの代襲相続)である場合を想定しましょう。

Aさんは、妻Bさんに全て相続させたいと思い、「現金5,000万円を全額Bに相続させる」という旨の遺言をのこしていました。

しかし、この場合、法定相続人である孫Dさん(代襲相続)には、4分の1(法定相続分2分の1×遺留分2分の1)の遺留分があり、5,000万円×4分の1=1,250万円を請求する権利があります。

そこで、遺留分対策として、妻Bさんを受取人にした1,000万円の終身保険(契約者と被保険者はAさん)に加入する方法があります。

妻Bさんが受け取った生命保険金は遺留分計算の対象にならないため、遺留分は4,000万円×4分の1=1,000万円となり、Dさんからの遺留分を減らすことができるのです。

保険金の金額が多いと特別受益とみなされる可能性があるため、金額の設定には注意が必要ですが、こうした遺留分対策があることも覚えておくと良いでしょう。

まとめ

この記事では、代襲相続と遺留分をテーマに詳しい内容を解説してきました。最後にこの記事の内容を簡単に振り返ります。

代襲相続と遺留分の言葉の意味を簡単にまとめると、以下の通りです。

なお、代襲相続があるケースは、子の代わりに孫が代襲相続する場合か、兄弟の代わりに甥姪が代襲相続する場合の2パターンに分かれます。

代襲相続がある場合に、遺留分もあるのか無いのか?というと、結論は以下になります。

後半では、それぞれの立場から「こういう場合はどうしたら良い?」について解説しました。

代襲相続人になった孫が遺留分をもらいたい場合には、以下の2つのポイントに気を付けましょう。

❶遺留分が侵害されている場合は請求する(請求しないともらえない)
❷時効に注意してなるべく早く遺留分侵害額請求を行う

あなたが、他の法定相続人から遺留分を請求された場合には、以下のポイントに気を付けてください。

❶遺留分侵害額請求が正当ならば拒めない
❷遺留分を請求された時に取るべき3ステップ
1. 相手に請求する権利があるか確認する
(兄弟姉妹やその代襲相続人、相続放棄・遺留分放棄している人、権利を剥奪されている人は請求できません)
2. 遺留分の請求の時効が成立していないか確認する
3. 請求されている遺留分侵害額が正当か確認する

また、もしあなたが遺言をのこす立場であり、特定の相続人から遺留分を請求されたくない場合には、以下の生前対策が有効です。

❶遺言書の「付言事項」でお願いをする
❷遺留分の対象外となる生命保険金を活用する

相続は時には「争族」となり、相続人同士の関係を悪化させてしまうものです。トラブルに発展しそうになった場合には、なるべく早くに弁護士に相談するのが大切です。

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