【実践的】遺言がある場合の相続手続き7ステップ|注意点とコツも紹介

遺言書がある場合の相続手続き
この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。

「亡くなった家族の遺言書を見つけた。どう対処すればいいのだろう?」

遺言書が見つかったけれどもどのように相続手続きを進めればいいか分からず不安を抱えている方も多いと思います。

遺言書がある場合にはない場合とは異なった手続きや書類が必要になります。

遺言書がある場合、相続手続きは下記の流れで進めていきます。

STEP1とSTEP2は全員が行いますが、それ以外は該当する方のみが行います。

このように相続手続きはやるべきことが多く、手続きが煩雑で手間と時間がかかります。

さらに、遺言の内容が偏っていれば他の相続人から遺留分侵害額を請求されたり、遺言の内容に納得していない相続人から妨害される可能性もあります。

これらの課題を抱えながら一般の人が相続を進めていくのは非常に負担が大きいでしょう。

そこで本記事では、遺言書がある場合の相続のポイントをお伝えしていきます。

本記事で分かること
・遺言がある場合の相続の進め方
・遺言がある場合に知っておくべき遺留分の請求について
・スムーズな相続のために遺言執行者選任がおすすめな理由

本記事を読めば遺言書を見つけたときの対処法と相続の手続きを理解して実践できるようになります

ぜひ最後までご覧ください。

相続の弁護士費用に、新しい選択肢を。

サリュは、お客様の弁護士費用の負担を軽減するため、
月額料金プラン7.7%着手金無料プランを用意しました。
最良の法的サービスを、もっと身近に。

遺産相続問題は弁護士へ
相続の弁護士費用相場コラム

相続の弁護士費用に、
新しい選択肢を。

サリュは、お客様の弁護士費用の負担を軽減するため、
月額料金プラン
7.7%着手金無料プラン
を用意しました。
最良の法的サービスを、もっと身近に。

遺産相続問題は弁護士へ
相続の弁護士費用相場コラム

目次

遺言がある場合の相続の進め方

遺言書が発見された場合どのように相続を進めていけばいいのでしょうか。

遺言書がある場合は原則として遺言書の内容どおりに相続を進めていきます。これは亡くなった人の意思が法定相続(法律で定められた相続人の範囲と割合)よりも優先されるためです。(民法第902条・964条)

遺言がある場合とない場合ではすべきことが異なる部分があり、預貯金引き出しなどの手続きでも必要な書類が変わってきます。

まずは遺言がある場合の相続手続きの流れ全体を把握しましょう。下表の手順に従って手続きを進めていくようにしてください。

【遺言がある場合の相続の進め方】

すべきこと対象
STEP1遺言書の種類を確認する全員
STEP2他の相続人に知らせる全員
STEP3遺言書の検認を申し立てる自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合
STEP4遺言執行者に手続きを任せる遺言執行者が指定されている場合
STEP5効力を確認する自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合
STEP6遺産分割協議をする・相続関係者全員が同意した場合
・財産の受け取りを指定された人が相続放棄した場合
・遺言に明記されていない財産がある場合
・遺言が相続分の指定のみの場合
STEP7預貯金を引き出す
相続登記をする
相続税申告をする
(期限10ヶ月)
→預貯金がある場合

→不動産がある場合

→基礎控除額を超えている場合

STEP1とSTEP2は全員が行うべきものですが、STEP3以降は対象者のみ行うものです。

《STEP1》遺言書の種類を確認する

遺言書が見つかったらまずは遺言書の種類を確認しましょう。遺言書の種類によって次に取るべき対応が異なります。

遺言書の種類は下記3種類あります。

【遺言書の種類】

・公正証書遺言
・自筆証書遺言
・秘密証書遺言

このSTEP1では遺言書の見分け方と、各遺言書の特徴について理解していきましょう。

遺言書の見分け方

この3種類を見分けるためには封筒を確認してみてください。下記の違いがあるはずです。

この際、封のされている遺言書は開封しないよう注意しましょう。理由は後ほど説明します。

【遺言書の見分け方】

遺言書の種類見分け方
公正証書遺言・表題が「遺言公正証書」
・公正役場の名前が記載されている
自筆証書遺言
秘密証書遺言
・上記以外

秘密証書遺言は件数が非常に少ない(年間100件ほど)ため、見つけた遺言書は公正証書遺言または自筆証書遺言のどちらかであることがほとんどでしょう。

封筒を見て公正証書遺言だと確認できた場合は、そのまま封筒を開けて内容を確認して問題ありません

各遺言書の特徴

遺言書の種類が分かったら各遺言書の特徴を把握しましょう。特徴を知ることでそれぞれのその後の手続きを理解できます。

【各遺言書の特徴】

遺言書の種類公正証書遺言自筆証書遺言秘密証書遺言
特徴・本人が遺言内容を口述し公証人が遺言書を作成
・証人がいる
・原本は公証役場で保管
・本人が遺言書を作成
・証人はいない
・本人が保管
・本人が遺言書を作成し公証役場が遺言書の作成を記録する
・証人がいる
・本人が保管
効力(※1)基本的にあり要確認要確認
検認不要原則必要必要

(※1)遺言書の形式に不備がなく、有効なものであるかどうか

■公正証書遺言

公正証書遺言は公証役場で公証人が作成するものであるため、最も確実性の高い遺言書です。偽造などのリスクがないため、裁判所での検認は必要ありません。

■自筆証書遺言

自筆証書遺言は本人により作成・保管されていたものであるため、遺言書の存在を相続人に知らしめ、また遺言書の偽造・変造を防止するために裁判所での検認が必要です。また、遺言書の有効性も確認しなければなりません。

■秘密証書遺言

秘密証書遺言は本人が作成した遺言書の存在を公証役場が記録しているだけでなので、自筆証書遺言と同じく、検認と有効性の確認が必要になります。

法務局に保管してある自筆証書遺言について
自筆証書遺言書保管制度」を利用して法務局で保管してもらっている自筆証書遺言については、破棄・隠匿・改ざん等のリスクがないため、検認は不要です。

《STEP2》他の相続人に知らせる

遺言書の存在を確認したら他の相続人に遺言書を発見したことを知らせましょう。

遺言の内容が自身に不都合だからといって隠匿した場合は相続人の資格を失う可能性があります。偽造したり処分したりすることも絶対にやめましょう。

民法でも下記のとおり定められています。

(相続人の欠格事由)

第891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
(略)
5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

民法 | e-Gov法令検索

なお、自筆証書遺言と秘密証書遺言については次の検認手続きで結局裁判所から相続人全員に通知が行きます。

また、自筆証書遺言で法務局に保管されている場合は、遺言書の閲覧を行うと、特段の手続きをせずとも他の相続人全員に通知が行く仕組みになっています。

《STEP3》遺言書の検認を申立てる

自筆証書遺言または秘密証書遺言を見つけたら裁判所に検認の申立てを行う必要があります。

検認とは家庭裁判所で遺言書を開封し、遺言書の状態や内容を確認する手続きのことです。

遺言書の偽造や変造などを防止するために行います。

検認が済んだら「検認済証明書」が発行され、裁判所で検認を受けた遺言書であることが客観的に証明されます。

この証明書がないとSTEP7の手続きは行えないので、必ず検認を受けるようにしましょう。

ここでは検認の流れや申立て方法、注意点を紹介していきます。

【遺言書の検認申立て】

・検認の流れ
・検認の申立て方法
・注意点①遺言書は勝手に開封してはいけない
・注意点②検認で遺言書の効力は証明されない

検認の流れ

検認は次の流れで進めていきます。申立てから証明書を受け取るまで約2~3ヶ月かかると見込んでおきましょう。

【検認の流れ】

①検認を申立てる
②相続人全員に対して検認期日の通知が届く
③検認を行う
④検認済証明書を取得する

①検認を申し立てる

次節で解説します。

②相続人全員に対して検認期日の通知が届く

申立てが受理されると、裁判所から相続人全員に検認を行う期日の連絡が行きます。

なお、申立人以外の相続人は欠席しても問題ありません。

③検認を行う(申立てから1~2ヶ月後)

出席した相続人全員と裁判所の職員の立ち合いのもと、遺言書を開封して内容を確認します。

所要時間は15分程度です。

④検認済証明書を取得する

裁判所の案内に従って検認済証明書の発行申請を行います。

検認の申立て方法

下表を参考に申し立てを進めていきましょう。

【検認の申立て方法】

申立先亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所
(管轄の裁判所の検索→裁判所の管轄区域
必要書類・申立書(裁判所HPからダウンロード可:遺言書の検認の申立書 | 裁判所
・亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
※相続の状況によって他にも必要な書類がある場合があります
費用・収入印紙800円分
・検認済証明書代150円
・連絡用の郵便切手代

必要書類の中で戸籍の取得方法についてはこちらの記事の《SUTEP4》をご参照ください。

申立ての詳細については裁判所HPでご確認いただけます。

遺言書の検認 | 裁判所

注意点①遺言書は勝手に開封してはいけない

自筆証書遺言(法務局に保管してあるものを除く)と秘密証書遺言は検認期日まで勝手に開封してはいけません。

先に開封してしまうと偽造や変造がないことを証明できなくなってしまうためです。

この点は民法でも下記のとおり定められています。

(遺言書の検認)
第1004条
 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

民法 | e-Gov法令検索

勝手に開封した場合、5万円以下の過料が課される恐れがあるので注意しましょう。

(過料)
第1005条
 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。

民法 | e-Gov法令検索

注意点②検認で遺言書の効力は証明されない

検認は遺言書の偽造・変造を防ぐことが目的であり、遺言書が有効か無効かを判断する手続きではありません。

検認を受けた場合であっても遺言書が無効になるケースもあります。

《STEP4》遺言執行者に手続きを任せる

遺言書において遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者に連絡を取って相続手続きを任せるようにしましょう。

遺言執行者とは、遺言どおりに相続が実行されるよう必要な手続きを行う人物のことです。

民法では下記のとおり規定されています。

(遺言執行者の権利義務)
第1012条 
 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
3 第644条、第645条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。

民法 | e-Gov法令検索

遺言執行者が指定されている場合、以降の手続きは遺言執行者が中心となって進めることになります。

なお、遺言以外の方法で遺言執行者が指定されていた場合は、相続人への連絡や遺言書の検認も遺言執行者が行います。

遺言執行者は相続人たちの意思によって選任することも可能です。詳細はこの後で紹介します。

《STEP5》遺言書の効力を確認する

遺言書の内容を確認して形式が有効かどうかを確認しましょう。

遺言書は法律で定められた形式を満たしていないと無効になります。

形式に不備があった場合、そのまま相続を進めようとすると他の相続人と揉めたり、STEP7の手続きが行えなかったりするおそれがあります。

事前に下記基準を満たしているかどうか確認したうえで進めていくようにしましょう。

【遺言書の有効要件】

◎全文・日付・氏名を自筆で記載し捺印してある
◎作成日付が〇〇年〇月〇日と特定できるよう正確に書かれている(吉日などの表現は不可)
◎訂正・追加がある場合はその箇所が分かるように示された上で、訂正・追加した旨の付記と署名があり、訂正・追加した箇所に押印がある(上記3項目は民法968条の規定)
◎預貯金や有価証券は金融機関や口座番号などが正確に書かれている
◎不動産は登記事項証明書どおりに書かれている

財産目録はパソコンで作成されたものや通帳・登記事項証明書のコピーでも可能ですが、全ページに署名押印が必要です(民法968条)。

《STEP6》遺産分割協議をする

遺産分割協議とは相続人全員で遺産の分割方法について話し合って取り決めることです。

通常、遺言書がある場合は遺言書の内容が優先されるため、遺産分割協議を行う必要はありません。しかし下記に当てはまる場合は遺産分割協議が必要または可能になります。

【遺言書はあるが遺産分割協議が必要・可能なケース】

・相続関係者全員が同意した場合
・財産の受け取りを指定された人が相続放棄した場合
・遺言書に明記されていない財産がある場合
・遺言が相続分の指定のみの場合

■相続関係者全員が同意した場合

相続関係者全員が同意した場合は、遺産分割協議にて遺言書の内容とは異なる遺産分割方法を決めることが可能です。一人でも同意しない人がいる場合は認められません。

ここでの相続関係者とは、相続人・遺言により財産を受け取る相続人以外の第三者・遺言執行者のことを指します。

■財産の受け取りを指定された人が相続放棄した場合

遺言により財産の受け取りを指定された人が相続放棄した場合は、その相続分のみ誰が取得するかを話し合う必要があります。

■遺言書に明記されていない財産がある場合

遺言書に記載されていない財産がある場合は、その財産を誰が取得するかを話し合う必要があります。

■遺言が相続分の指定のみの場合

例えば遺言書に「財産は長男に8割、次男に2割譲る」など相続割合についてのみ書かれている場合は、誰がどの財産を取得するかを話し合う必要があります。

遺産分割協議を行った場合、STEP7の手続きにおいて「遺産分割協議書」が必要になります。遺産分割協議書の作成方法については下記サイトも参考にしてみてください。

遺産分割協議 : 三井住友銀行

《STEP7》預貯金を引き出す

ここからは実際に遺産を取得する手続きについて見ていきましょう。

まずは預貯金の引き出しについて、遺言書がある場合は下記書類を揃えて金融機関に提出します。

金融機関によって必要な書類が異なるので、事前にどのような書類が必要か問い合わせるようにしましょう。

【金融機関に提出する書類:遺言がある場合】




共通
・遺言書
・所定の申請用紙(事前に金融機関窓口で入手またはHPからダウンロード)
・亡くなった人の死亡が分かる戸籍(除籍)謄本★
・預金通帳、キャッシュカード
・預貯金を相続する人の実印
・預貯金を相続する人の印鑑証明書(発行日から3ヶ月または6ヶ月以内)★
自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合・検認済証明書
※自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書の場合は「遺言書情報証明書」を提出(04 相続人等の手続 | 自筆証書遺言書保管制度
遺言執行者がいる場合・遺言執行者の印鑑証明書(相続人の印鑑証明書は不要になる)
・遺言執行者の選任審判書謄本(審判で選任された場合)

必要書類の中で★印がついている書類については下記を参考に取得してください。

書類の取得方法についても市町村役場によって異なる場合があるので、必ず役場のHPを確認するようにしましょう。

【亡くなった人の戸籍(除籍)謄本の取得方法】

申請できる人配偶者または直系の血族
申請先亡くなった人の最終本籍地の役所






必要書類
<窓口>
・戸籍交付申請書(窓口またはHPから入手)
・申請する人の戸籍謄本(相続関係を証明するため)
・印鑑
・本人確認書類
・委任状(申請する人が亡くなった人の配偶者・直系血族以外の場合)
<郵送の場合>
・戸籍交付申請書
・定額小為替(手数料分を郵便局で入手)
・申請する人の戸籍謄本のコピー(相続関係を証明するため)
・本人確認書類のコピー
・委任状(申請する人が亡くなった人の配偶者・直系血族以外の場合)
・返信用封筒(切手貼付)
手数料戸籍謄本…1通450円
除籍謄本…1通750円
発行までの期間<窓口>即日
<郵送>~1週間

【印鑑証明書】

コンビニ交付

マイナンバーカードをお持ちの場合はこちらでご確認ください。

コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付【コンビニ交付】 | 証明書の取得方法

市町村役場

申請できる人

本人または代理人

申請先

印鑑登録をしてある市町村の役場・郵便局など

必要書類

・印鑑登録証

・本人確認書類

手数料

300円前後

発行までの期間

<窓口>即日

<郵送・オンライン>1週間

預貯金引き出しの詳細についてはこちらの記事でも解説しています。併せてご一読ください。

《STEP7》相続登記をする

相続登記とは、亡くなった人が所有する不動産の名義を相続人に変更することをいいます。

必要書類と登記方法に分けて見ていきましょう。

相続登記に必要な書類

遺言がある場合の相続登記は下記の書類を準備します。

【必要書類:遺言がある場合】





共通
・登記申請書(裁判所HPから用紙と見本をダウンロード可:不動産登記の申請書様式について:法務局→公正証書遺言は17)、自筆証書遺言は18))
・遺言書
・不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
・亡くなった人の戸籍(除籍)謄本・亡くなった人の住民票(除票)★
・相続する人の戸籍謄本
・相続する人の住民票
・相続する人の印鑑証明書
・固定資産評価証明書★
自筆証書遺言
・秘密証書遺言の場合
・検認済証明書※自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書の場合は「遺言書情報証明書」を提出(04 相続人等の手続 | 自筆証書遺言書保管制度
遺言執行者がいる場合・遺言執行者の印鑑証明書(相続人の印鑑証明書は不要になる)
・遺言執行者の選任審判書謄本(審判で選任された場合)

亡くなった人の戸籍謄本や相続人または遺言執行者の印鑑証明書については《STEP7》預貯金を引き出すをご確認ください。

★印がついている書類について詳しく解説していきます。市町村役場によって取得方法が異なる場合があるので、必ず役場のHPを確認するようにしましょう。

【亡くなった人の住民票取得方法】

申請できる人相続人
申請先亡くなった人が最後に住んでいた住所地の役場







必要書類
<窓口>
・申請書(窓口またはHPから入手)
・申請する人の戸籍謄本(相続関係を証明するため)
・印鑑
・本人確認書類
・委任状(申請する人が親族以外の場合)
<郵送>
・申請書
・定額小為替(手数料分を郵便局で入手)
・申請する人の戸籍謄本のコピー(相続関係を証明するため)
・本人確認書類のコピー
・委任状(申請する人が親族以外の場合)
・返信用封筒(切手貼付)
手数料300円
発行までの期間<窓口>即日
<郵送>~1週間

【固定資産評価証明書】

申請できる人相続人
申請先不動産が所在する管轄の市町村役場
必要書類<窓口>
・申請書
・申請する人の戸籍謄本(相続関係を証明するため)
・亡くなった人の死亡が分かる戸籍(除籍)謄本
・本人確認書類
<郵送>
・申請書
・申請する人の戸籍謄本のコピー(相続関係を証明するため)
・亡くなった人の死亡が分かる戸籍(除籍)謄本のコピー
・本人確認書類のコピー
・定額小為替(手数料分を郵便局で入手)
・返信用封筒(切手貼付)
手数料200円~400円
発行までの期間<窓口>即日
<郵送>~1週間
備考最新の年度のものが必要(4月で切り替え)

相続登記方法

必要書類が揃ったら法務局に提出して相続登記を行います。

相続登記の方法は下表の通りです。

【相続登記の方法】

申請先不動産の住所地を管轄する法務局
(管轄の法務局の検索→管轄のご案内:法務局

申請方法
・窓口
・郵送
・オンライン(不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)


費用
・登録免許税(課税価格の0.4%)
※登録免許税の計算方法と納税方法については国税庁・法務局のHPに掲載されています。
No.7191 登録免許税の税額表|国税庁○登録免許税はどのように計算するのですか?
※先に登録免許税を金融機関にて納付し、領収書を登記申請書に貼り付けて申請
(登録免許税が3万円以下なら収入印紙で納付可)

相続登記の詳細については法務局HPをご確認ください。

相続登記の申請をされる方へ (相続登記申請手続のご案内)

相続登記は手続きも煩雑で時間がかかるため、自身で行うのが難しい場合は司法書士に依頼することも検討しましょう。

《STEP7》相続税申告をする

遺産総額が基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超える場合は相続税が発生します。

ここでは相続税申告の必要書類と申告方法について紹介していきます。

相続税申告に必要な書類

遺言がある場合、最低限必要になる書類は下記のとおりです。

【必要書類:遺言がある場合】





共通
・相続税申告書
(国税庁HPからダウンロード可能:[手続名]相続税の申告手続|国税庁→年度を選択)
・遺言書
・申請する人の戸籍謄本(相続関係を証明するため)
・亡くなった人の死亡が分かる戸籍(除籍)謄本
・財産に関する資料
・本人確認書類
自筆証書遺言
・秘密証書遺言の場合
・検認済証明書
・遺言書情報証明書
※自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書の場合は「遺言書情報証明書」を提出
04 相続人等の手続 | 自筆証書遺言書保管制度

相続税申告の必要書類は個別のケースにより大きく異なるため、詳細は国税庁の資料をご確認ください。

(参考) 相続税の申告の際に提出していただく主な書類

次の申告手続きも含め、相続税申告は非常に煩雑で時間がかかる手続きです。

自身で行うのが難しい場合は早めに税理士に依頼しましょう。実際に申告件数の約9割は税理士に依頼して申告されたものです。

相続税の申告方法

必要書類が準備できたら税務署に申告と納税を行いましょう。

下表を参考にしながら進めていくようにしてください。

【遺言書がある場合の相続税申告の方法】

提出先亡くなった人の最後の住所地を所轄する税務署
(税務署検索→税務署の所在地などを知りたい方|国税庁

提出方法
下記いずれかの方法
・窓口(平日8:30-17:00)
・郵送
・e-Tax(相続税の申告書がe-Taxで提出できるようになりました。
期限相続人が亡くなったことを知ってから10ヶ月以内
手数料なし


納付方法
下記いずれかの方法
・納付書(任意の税務署に貰いに行く)によって税務署
・金融機関
・コンビニエンスストアで納付
・クレジットカードで納付(詳細:国税クレジットカードお支払サイト

注意すべきは申告・納付ともに相続人が亡くなったことを知ってから10ヶ月以内に済ませることです。この期限を過ぎてしまうと延滞税が課されるので注意してください。

10ヶ月以内であれば申告と納付の順番は問いません。

注意!偏った遺言内容は遺留分を主張される可能性がある

ここまで遺言がある場合の相続手続きについて紹介してきました。本章では遺言がある場合に知っておくべきことについて解説していきます。

遺言の内容が「全財産を〇〇に譲る」など偏った内容の場合、財産を取得する人は他の相続人から遺留分を主張される可能性があります。

遺留分とは、相続人(兄弟姉妹以外の法定相続人)に保証されている最低限度の相続分のことです(民法1046条)。亡くなった人の家族の生活を保障するためにこの制度が設けられました。

遺留分を請求されたら原則金銭で支払いに応じなければいけません(民法1047条)。

遺留分の割合は民法で定められており、相続人の関係性や人数によって変わります(民法1042条)。

【遺留分の割合】

法定相続人の

組み合わせ

遺産額に対する遺留分の割合

配偶者

子ども(直系卑属)

親(直系尊属)

配偶者のみ

1/2

配偶者と子ども

1/4

1/4

配偶者と親

2/6

1/6

子どものみ

1/2

親のみ

1/3

例えば、父が亡くなり、相続人は母と長男の2人だったとします。しかし遺言書が見つかり、「長男に全財産4,000万円を譲る」と書かれていました。

この場合、母は4,000万円の1/4である1,000万円を長男に請求することができます。

遺言どおりスムーズに相続を進めるためには遺言執行者を選任するとよい

本記事では遺言がある場合の相続手続きを中心に解説してきましたが、手続きが煩雑だったり、忙しくて時間がなかったり、あるいは他の相続人が邪魔をしてきたりして、相続がスムーズに進まないことも少なくありません。

そのようなケースに備えて、遺言執行者を選任することをおすすめします。

遺言執行者は遺言で指定されている場合もありますが、利害関係人が選任を請求することもできます。

本章では遺言執行者について下記内容を見ていきましょう。

・遺言執行者とは
・遺言執行者を選任するメリット・デメリット
・遺言執行者に選任できる人
・遺言執行者の選任方法

遺言執行者とは

先に少し述べましたが、遺言執行者とは遺言どおりに相続が実行されるよう必要な手続きを行う人物のことです。

(遺言執行者の権利義務)

第1012条

 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。

3 第644条、第645条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。

民法 | e-Gov法令検索

遺言執行者は相続に関する下記の業務を行う義務と権限を有します。

【遺言執行者の業務内容】

・遺言書の検認
・預貯金の引き出し
・相続登記
・各種名義変更
・遺贈
・寄付
・子どもの認知(遺言執行者しかできない手続き)
・相続人の廃除やその取消し(遺言執行人しかできない手続き)、等
※相続税申告は業務外

そして相続人は遺言執行者の指示に従って相続を進めていく必要があり、遺言の内容に納得がいかないからといって妨害してはいけません

民法でも下記のように規定されています。

(遺言の執行の妨害行為の禁止)

第1013条

 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

民法 | e-Gov法令検索

遺言執行者を選任するメリット・デメリット

遺言執行者の選任には下記のメリット・デメリットが発生します。

【遺言執行者選任のメリット・デメリット】

メリット・遺言の内容が実現されやすくなる
・煩雑な相続手続きを任せられる
・手間と時間を省くことができる
・揉め事やトラブルが起こりにくい
デメリット・知識・経験不足の人を選任するとスムーズに進まない危険性がある
・遺言執行者への報酬が発生する(目安:遺産総額の0.5~3%)

このようなメリット・デメリットをふまえ、遺言執行者の選任をおすすめするのは次のようなケースです。

【遺言執行者を選任すべきケース】

・相続手続きの時間を確保できない場合
・相続手続きに不安がある場合
・相続手続きを妨害しようとする人がいる場合
・遺言による認知がある場合
・廃除したい相続人がいる場合

相続手続きを迅速かつ正確に進めたい場合はぜひ遺言執行者の選任をご検討ください。

遺言執行者になることができる人

未成年者や破産者でなければ遺言執行者になることができます。一般的には次のような人が遺言執行者に選任されることが多いです。

【遺言執行者に選任できる人】

・相続人(未成年者と破産した人を除く)
・弁護士
・司法書士
・税理士
・行政書士 など

遺言執行者は相続人でもなることができますが、スムーズな手続きのためには専門家に依頼することをおすすめします。

では、どの専門家に依頼すればいいか、それぞれの特徴と依頼するメリットをまとめました。

【ケース別おすすめの専門家】

専門家特徴依頼するメリット
弁護士法律の専門家であり交渉に強い相続関係者同士での揉め事も相談できる
司法書士法律と書類作成に強い不動産の名義変更ができる相続登記に強い
税理士税金のスペシャリスト相続税申告も任せられる
行政書士書類作成に強い       ー

専門家にはそれぞれ得意分野があるので、依頼する場合は相続に強い専門家を選ぶようにしましょう。

例えば弁護士の場合、刑事事件を得意とする弁護士もがいれば医療事故を得意とする弁護士もいます。相続案件は必ず相続に強い弁護士を選ぶようにしましょう。

遺言執行者の選任方法

遺言執行者の候補が見つかり手続きを任せたい場合は、裁判所に「遺言執行者の選任」申立てを行います。

申立てについては下記を参考にしてください。

【遺言執行者の選任申立て方法】

申立先亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所(管轄の裁判所の検索→裁判所の管轄区域
申立できる人・相続人
・遺言で財産の受け取りに指定された人
・遺言者の債権者
必要書類・申立書
・遺言書のコピー
・検認済証明書のコピー(自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合)
・亡くなった人の死亡が分かる戸籍(除籍)謄本
・利害関係を証明する書類(相続人の場合は戸籍謄本)
※個別のケースにより追加で書類提出が求められることがあります
費用・収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手

申し立ての詳細は裁判所HPにてご確認いただけます。

遺言執行者の選任 | 裁判所

まとめ

本記事では遺言がある場合の相続について解説してきました。

最後にもう一度本文の要点を確認しましょう。

遺言がある場合は下表の手順に従って相続手続きを進めていくようにしてください。

【遺言がある場合の相続の進め方】

すべきこと対象
STEP1遺言書の種類を確認する全員
STEP2他の相続人に知らせる全員
STEP3遺言書の検認を申し立てる自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合
STEP4遺言執行者に手続きを任せる遺言執行者が指定されている場合
STEP5効力を確認する自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合
STEP6遺産分割協議をする・相続関係者全員が同意した場合
・財産の受け取りを指定された人が相続放棄した場合
・遺言に明記されていない財産がある場合
・遺言が相続分の指定のみの場合
STEP7・預貯金を引き出す
・相続登記をする
・相続税申告をする(期限10ヶ月)
→預貯金がある場合
→不動産がある場合
→相続税の基礎控除額を超えている場合

また、遺言がある場合は下記内容についても理解しておきましょう。

遺言がある場合の相続で知っておくべきこと
・注意!偏った遺言内容は遺留分侵害額を請求される可能性がある
・遺言どおりスムーズに相続を進めるためには遺言執行者を選任するとよい

以上、本記事がトラブルなく遺言通りスムーズに相続が実現できることに役に立てば幸いです。

まずは弁護士との無料相談で、相続のお悩みをお話ください。

初回の相談は無料です。争いになっていなくても、相続開始直後からのご相談を受け付けております。
ご相談はご来所、お電話の他、ZOOMなどのオンラインも可能です。
お気軽にお問い合わせください。

お電話でご相談予約

受付時間
10:00~18:00(土・日・祝日を除く)

メールでご相談予約

受付時間
24時間受付

遺産相続問題は弁護士へ

サリュは全国10拠点

まずは弁護士との無料相談で、
相続のお悩みをお話ください。

初回の相談は無料です。争いになっていなくても、相続開始直後からのご相談を受け付けております。
ご相談はご来所、お電話の他、ZOOMなどのオンラインも可能です。
お気軽にお問い合わせください。

お電話でご相談予約

受付時間
10:00~18:00(土・日・祝日を除く)

メールでご相談予約

受付時間
24時間受付

遺産相続問題は弁護士へ

サリュは全国10拠点

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次