弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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同志社大学法科大学院客員教授
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「相続人の中に、認知症の家族・親族がいる場合、通常通り相続ができるのか?」
「何か特別な対策が必要なのか?」
などといった疑問をお持ちではないでしょうか。
実は、認知症の相続人がいる場合、通常通りの相続は進められなくなります。
具体的には、認知症になってしまうと、注意力や記憶力がない状態になり、「意思能力がない」とみなされるため、遺産分割の合意などの法律行為を行えず、相続手続きを進めることができない場合があります。
相続人の誰かが認知症を発症している場合は、事前に対策を講じないと
・家族や親族で思い描いていた形での相続ができない
・相続が発生しても、手続きが進まず、財産をすぐに承継できない
などの想定外の事態に陥ってしまう可能性が高いです。
そのため、認知症の場合の相続手続きについて理解を深めた上で、事前にとりうる対策を準備しておくことが重要になってきます。
そこで今回の記事では、以下のポイントを解説します。
記事を最後まで読み進めていただき、家族や親族で思い描く形で相続手続きを進めるために、事前にどのような準備や対策が必要か、ポイントを抑えていきましょう。
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冒頭でもお伝えした通り、認知症の場合、法律行為をする上で必要な意思能力がないものとみなされる場合があります。
意思能力とは、簡単にいうと、目の前で起きている事実や状態を認識したうえで、自分の発言や行動によってどのような結果や効果が生じるのかを理解できる力のことをいいます。この意思能力が遺産分割時に存在しない場合には、遺産分割協議は無効となります。
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
民法
認知症になってしまうと、新しいことが覚えられなくなり、情報処理能力が低下します。季節や日時を把握できなくなり、さらに症状がひどくなると、幻覚や妄想などを生じることもあります。
そのため、相続人の中に、このような認知症の家族や親族がいる場合、相続人同士が自由に遺産分割協議をすることが難しくなってきます。
この章では、その理由を詳しく解説します。
既に説明した通り、そもそも契約を締結したり、遺産分割により相続財産の取得者を決定するなど、一定の法律上の効果を伴う行為(法律行為)を行う上では、事実を認識し、自らの行動や発言がどのような法律上の効果を有するかを理解するという意思能力が必要です。
日常会話では、判断能力という言葉を主に使いますが、法律上は、意思能力という言葉が使われます。
もし、意思能力がない人が契約や合意などの法律行為を行った場合、その法律行為は無効になってしまいます。
認知症といっても、軽度の認知症から重度のものまで様々です。
意思能力の有無は、「こういう場合に意思能力がないと判断される」などといった明確な基準がなく、個別のケースに応じて判断されますが、中度から重度の認知症の場合には意思能力がないと判断される可能性が高いです。
また、軽度の場合であっても、意思能力がないと判断されます。
中には、「認知症の相続人がいることは黙っていればバレない」と考えている人もいますが、結果的に明らかになってしまう可能性は非常に高いです。
相続人が認知症であると明らかになる場面は、相続財産の処分を行う際の本人確認の時です。
例えば、被相続人の口座残高を認知症の相続人の口座へ動かそうとするとき、必ず銀行窓口で本人確認があります。その際、本人の意思で手続きが進められなければ認知症であると明らかになる可能性が高いです。
ここで認知症だと明らかになると、遺産分割協議で取り決めた内容は白紙となりますので認知症の相続人がいる際は、細心の注意を払って相続手続を進める必要があります。
判断能力(意思能力)がない認知症の相続人と合意を締結したとしても、無効になってしまう可能性があります。
そのため、一度意思能力がないと判断されてしまうと、相続において以下の問題が発生します。
これらの詳細は「相続人が認知症の場合に起こる3つの問題」で解説しますが、このような問題が発生し、相続手続きでとりうる選択肢が狭まってしまうため注意が必要です。
具体的な事例を通してみていきましょう。
例えば、上記の図のような家族がいるとします。
このケースの場合、被相続人である男性が亡くなった場合、被相続人の妻、そして被相続人の子供である、長男・次男の合計3名が相続人になります。
相続人3名の中に、認知症になってしまった人がいなければ、相続の手続きは、以下いずれかの対応を取ることができます。
一方で、もし相続人の1人である妻が認知症になっていたとしましょう。
その場合、遺言書が作成されていたのであれば遺言書通りに相続財産を分割できますが、遺言書が作成されていない場合は、遺産分割協議によって、法定相続分に従った相続とは大きく異なる割合で相続財産を分割するのが難しくなります。
例えば、被相続人の妻が認知症を発症する前から、「被相続人の財産は事業を承継する長男と次男に承継する」という方向で話し合っていたとしても、それを実現するのが難しくなってくるのです。
以上のように、相続人の中に認知症の家族や親族がいる場合、通常の相続手続きができない可能性が高いため、相続発生前に起きうる問題や取るべき対策について理解を深めておくことが重要です。
次章以降で詳しく解説していきますので、最後までご確認ください。
相続人が認知症の場合、認知症の相続人は相続財産について判断する意思能力がないものと判断される可能性が高いです。
そのため、相続人が認知症の場合は以下のような3つの問題があります。
具体的にどのような問題なのか、みていきましょう。
前提として、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。そのため、認知症により意思能力がない相続人がいる場合は、法律行為を行うことができないため、遺産分割協議を行うことはできません。
仮に、重度の認知症の相続人がいる状況で遺産分割協議を締結したとしても、有効な合意ができるような意思能力がないと判断され、無効となる可能性が高くなります。また、認知症の相続人の代わりに代筆したり、代理人となって署名することも認められていません。
遺産分割協議を行わないと、不動産や預貯金の名義変更ができず、不動産の活用や現金の引き出しが不可能となります。さらに固定資産税などの維持コストは相続人全員で支払わなくてはいけなくなります。
認知症の相続人が遺産分割をするためには、成年後見人という代理人を定めて、遺産分割を代理してもらうことで遺産分割協議を成立させる必要があります。
成年後見人制度については、「成年後見人制度を利用する」で詳しく解説していきます。
土地や建物などの不動産は現物を分割することできません。不動産の所有者が死亡し、相続が開始すると、遺産分割協議が成立するまでの間は、相続財産となった不動産はいったん相続人全員の共有となります。共有となってしまうと、相続人全員の合意なしには、相続不動産を売却・賃貸することができません。
そのため、合意を締結する意思能力がない認知症の相続人がいる場合には、相続不動産を処分するのが難しくなってきます。
【不動産の相続登記は可能】 法律で定められた法定相続分で相続登記をする場合、遺産分割協議をしなくても相続登記を行うことができます。つまり、相続人の中に認知症の人がいても法定相続分どおりの相続登記が可能です。 例えば、被相続人が亡くなり、相続人が認知症の配偶者と子の2人だった場合、子の申請により2分の1ずつの相続登記を行うことができます。
ただし、不動産を売却したい場合や建物の建て替えをしたい場合は要注意です。 不動産の売却や建て替えには共有者全員の同意が必要となり、共有の1人が認知症の場合は意思決定ができず、同意が得られません。結局、認知症の相続人に成年後見人を就ける必要がでてくるので登記だけ行っても意味がなくなります。 |
被相続人に多額の借金等の負債があっても、認知症の相続人は相続放棄をすることができません。
例えば、被相続人が借金を抱えていて、プラスの財産を踏まえてもマイナスとなってしまう場合、相続人全員が相続放棄をすることが基本です。
しかしながら、認知症の相続人は意思能力がないため、本人だけでは相続放棄の手続きを行うことができません。
相続放棄の手続きを行うためには、成年後見人を立てる必要があり、通常の相続手続きと比べても大きな手間が発生します。
成年後見人制度については、「成年後見人制度を利用する」で詳しく解説していきます。
相続人のうち一人が認知症である場合、以下の3つの対処法があります。
①相続開始前に遺産を残す人が遺言書を作成する
②相続開始前に遺産を残す人が家族信託を利用する
③相続開始前後を問わず認知症となった相続人に成年後見人制度を利用する
状況に応じて対処法を検討し、準備を進めておくことが重要です。
それぞれの対処法の概要を説明していきます。
遺言書とは、被相続人本人が、自らの死後相続財産をどのように分割するかを意思表示した文書のことを言います。
遺言書を作成し相続財産の承継者を指定しておけば、遺産分割協議を行うことなく遺言書通りの相続が可能です。
そのため、相続財産である不動産などを、後継である息子に承継させたいなど、法定相続割合とは異なる形で相続財産を分割をしたい場合などといったケースでは、遺言書の作成がおすすめになってきます。
詳しくは、「遺言書を作成するのがおすすめなケース」で解説していきます。
遺言書の作成についても、事前に確認するべき注意点があるので、自身のケースで遺言書作成がベストかどうか検討していきましょう。
遺言書だけでなく、家族信託を利用することによっても、生前に財産を誰にどのように分割するかを決めることができます。
家族信託とは、本人の財産を、信頼できる家族に移転し、本人が望む目的に沿って、財産を管理・運用することを委託することを言います。
具体的には、本人(委託者)が家族の1人を受託者として、財産の管理・運用を委託します。このとき、委託者は、信託財産から経済的利益を得る権利をもつ受益者を指定します。
受益者には、委託者本人を指定することもでき、また委託者以外の個人や団体、法人を指定することも可能です。
上記の図を例にとってみていきましょう。
被相続人である父親と、相続人である息子が信託契約を締結するとします。被相続人である父親(委託者)の財産の管理・処分を、相続人である息子(受託者)に信託することで、息子は、信託財産を、受益者(この例では、父親)の利益に叶う形で管理・処分することができるようになります。
信託契約で移転した信託財産の名義は、委託者から受託者に変わるため、被相続人である父親が亡くなった場合の相続時において、信託財産は遺産分割協議の対象にはなりません。
そのため、例えば相続人である被相続人の妻が認知症である場合、相続が発生する前に、父親から息子への家族信託を設定しておくことで、
ことが可能になります。
そのため、相続発生を待たずして、財産の管理・処分を相続人に任せたいケースでは、家族信託の設定を検討することがおすすめです。
詳しくは、「家族信託を設定するのがおすすめなケース」で解説していきます。
家族信託は、遺言書作成と比べて費用が高いなどのデメリットがあるため、自身のケースで、望ましい選択かどうか詳しく確認していきましょう。
相続開始前だけでなく、上記2つの対策を講じることなく相続が開始してしまった後における対策は、成年後見制度を利用することです。
成年後見人制度とは、認知症や知的障害などにより、財産管理や契約締結などの法律行為を自身で執り行うことが難しい人を保護するために、成年後見人が本人に代わって法律行為を行う制度のことをいいます。
相続が発生した際、認知症の相続人がいる場合は遺産分割協議などの合意ができませんが、成年後見人を立てることで、相続人全員で遺産分割協議を合意することが可能になります。
そもそも、成年後見人制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。
成年後見人制度の2つの種類 |
|
法定後見 |
本人の判断能力が衰えた後、本人や家族が裁判所に申し立てることによって、本人の代理で法律行為などを担う後見人を立てることができる制度 |
任意後見 |
本人の判断能力が衰える前に、契約を締結することで、判断能力が衰えた場合に本人の代理で法律行為などを任せるべく、取り決めておくことができる制度 |
認知症であることが発覚している段階では、法定後見制度を活用し、成年後見人を立てることができます。
成年後見人を立てることで、相続手続きにおいて以下のことが可能になります。
そのため、認知症の相続人がいる場合は、基本的には成年後見人制度を検討することが重要です。
ただ、遺産分割協議が可能とは言っても、成年後見人は本人の利益を守る責任があるため、認知症となってしまった相続人に財産を承継せず、他の相続人に承継させるなどといった柔軟な形での合意は難しいという限界があります。
そういったデメリットも含め、「成年後見人制度を利用するのがおすすめなケース」で詳細を確認していきましょう。
まず、遺言書を作成するメリット・デメリット、それを踏まえた、遺言書を作成するべきおすすめのケースを紹介していきます。
遺言書を作成することで、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット |
デメリット |
●事業の後継である長男に相続財産を概ね承継させるなど、法定相続割合とは大きく異なる形で相続財産を分割することが可能 ●遺産分割協議を行うことなく、スムーズに相続財産を分割できる |
●有効な遺言書を作成するための手間や費用がかかる ●二次相続については、遺言書で指定できない |
遺言書を作成する上では、ある程度の手間や費用がかかるものの、ほとんどデメリットはないと言って良いでしょう。なぜなら、遺言書作成によって、相続発生時の遺産分割協議を行う手間や費用、トラブルが大きく防げるからです。
そして、成年後見人を立てて遺産分割協議を行う場合と違って、遺言書を作成することで、柔軟な相続が可能になります。
例えば、事業の後継である長男に相続財産を概ね承継させ、認知症の母親にはほとんど承継させないなど、家族・親族全体にとって望ましい形で相続財産を承継させることが可能になります。
以上のメリット・デメリットを踏まえると、遺言書の作成がおすすめなのは以下のケースです。
【おすすめなケース】 ●被相続人が、誰にどのような割合で相続させたいかという意思が明確であるケース ●相続財産である不動産などを、後継である息子に承継させたいなど、法定相続割合とは異なる形で相続財産を分割をしたいケース ●相続発生後、スムーズに手続きを終え、財産を承継したいケース |
このように、被相続人の意思で、柔軟に相続財産を分割したい場合は、遺言書作成がおすすめです。
実際に遺言書を作成する上では、法律上有効な書類を作成することが重要になってきます。
以下の記事では、遺言書が無効になってしまうケースや、有効な遺言書を作成するためのチェックリストをご紹介しています。
実際に遺言書の作成を検討する場合は、以下の記事も併せて確認するようにしましょう。
次に、家族信託を設定するメリット・デメリット、それを踏まえた、家族信託を設定するべきおすすめのケースを紹介していきます。
家族信託を設定することで、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット |
デメリット |
●相続発生を待たず、被相続人の生前から財産の管理や運用を相続人に任せることができる ●遺言書と異なり、二次相続についても承継方法を指定できる |
●信託を受けていない相続人が不公平感を感じ、トラブルに発展してしまう ●自身で家族信託を設定するよりも、専門家に依頼して設定することが一般的で、その場合費用が高額 ●何度も書き直せる遺言書と異なり、一度契約を締結すると、関係者の同意なしに信託契約を訂正できない |
専門家に依頼して家族信託を設定する場合、費用が高額になってしまうというデメリットはありますが、被相続人が生前の段階から財産の管理や処分を承継でき、二次相続についても細やかに指定できるなど、メリットも大きいです。
以上のメリット・デメリットを踏まえると、家族信託の設定がおすすめなのは以下のケースです。
【おすすめなケース】 ●専門家への依頼費用と比して、相続財産が高額である場合 ●被相続人の生前から、財産の管理や処分を承継したい場合 ●高額な相続税の発生を踏まえて、二次相続の承継方法についても指定をしたい場合 |
このように、相続財産が高額で、相続税額を踏まえて、被相続人の生前から管理や処分を進めておきたい場合は家族信託の設定がおすすめです。
実際に家族信託を設定する上では、家族で委託内容を合意した上で、信託契約を締結し、公正証書を取得するなど、専門的な知識が求められます。
そのため、自身で設定するのではなく、
・弁護士
・司法書士
・税理士
・金融機関(信託銀行など)の担当者
などといった、専門家にアドバイスを求めるのがおすすめです。
最後に、成年後見人制度を活用するメリット・デメリット、それを踏まえた、成年後見人制度を活用するべきおすすめのケースを紹介していきます。
成年後見人を立てることで以下のようなメリット・デメリットがあります。ただ、相続開始後においては、相続人の1人が認知症となり意思能力を欠いている場合、遺産相続手続きを円滑に進めるためには、成年後見制度を利用するほか方法がありません。そのため、相続開始前に何らの対策も講じることができなかった場合には、以下のメリット・デメリットを考慮するまでもなく、成年後見制度を利用しましょう。
メリット |
デメリット |
●遺産分割協議が可能になる ●それに伴い、相続不動産の処分や税制特例の活用が可能になる ●被相続人が借金を抱えている場合の相続放棄が可能に ●相続後の預金解約手続き等が可能に |
●成年後見人は、認知症の本人の利益を保護する責任を負うため、長男に財産を全て承継させるなど、家族間で合意して柔軟に相続財産を分割することができない ●成年後見人に、家族以外の専門家が任命された場合、後見人に対して継続的に、一定金額の報酬を支払う必要がある |
基本的に、認知症の相続人がいる場合は遺産分割協議を行うことはできませんが、成年後見人制度を活用することで、遺産分割協議が可能になります。
しかしながら、成年後見人は、認知症の相続人を保護することが求められているため、成年後見人制度を活用して遺産分割協議を行っても、柔軟な合意は難しくなってしまう点に注意が必要です。
例えば、認知症の相続人に相続財産をほとんど分割せず、他の相続人に多くの相続財産を分割するような合意をしたい場合があるとします。
そのように分割することが、家族にとって公平であるような事情があったとしても、成年後見人は認知症である相続人個人の利益を保護することが求めらているため、そのような合意を締結することは難しくなってきます。
また、成年後見人として誰が就任するかは裁判所が決定しますが、外部の専門家が成年後見人として選ばれた場合、成年後見人に対して継続的な報酬を支払わないといけないというデメリットもあります。
以上のメリット・デメリットを踏まえると、成年後見人制度の活用がおすすめなのは以下のケースです。
【おすすめなケース】 ●認知症の相続人に対しても、法定相続割合と同程度の割合で相続財産を承継させたいケース ●相続不動産の処分や相続税節税のための特例の活用を望むケース ●被相続人が借金を抱えているケース |
法定相続割合とは異なる、柔軟な形で相続財産を分割したい場合は、遺言書の作成や家族信託の設定がおすすめですが、法定相続割合と同程度の割合で相続財産を承継しつつも、相続税軽減のための特例の活用等を望むケースは、成年後見人の活用を活用するのがいいでしょう。
実際に成年後見人制度の活用を検討する場合、そもそも成年後見人制度はどのような制度で、成年後見人は具体的に何ができるのかを理解するだけでなく、具体的な成年後見人制度の選任プロセスについても理解を深めることが重要です。
以下のサイトでは、成年後見人制度について、わかりやすく解説されているため、ぜひご覧ください。
認知症の相続人がいる場合、成年後見人を立てることや、遺言書作成、家族信託などの対処法が有効です。
しかしながら、いずれも法律の専門知識がない中で進めてしまうと、想定外の事態を招いてしまったり、思うような相続を実現できない可能性もあります。
例えば、以下のようなトラブルが想定されます。
・成年後見人制度について理解しておらず、成年後見人と遺産分割協議が合意できず、トラブルになる
・遺言書や家族信託を作成・設定するものの、要件を満たしておらず、無効となってしまう
特に、相続人同士で相続財産を分割するのではなく、一部の相続人で承継するのが望ましいケースなど、相続人の間でトラブルが生じる可能性が高い場合は、家族だけで進めてしまうと調停や裁判に発展してしまうなど、大きなリスクもあります。
このように、相続人間のトラブルが生じる可能性が高い場合は、弁護士に相談することが非常におすすめです。
ぜひお気軽に無料相談をお申し込みください。
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今回の記事では、相続人に認知症の家族・親族がいる場合の問題点から、事前に把握しておきたい具体的な対処方法についてお伝えしていきました。
認知症の相続人がいるが、家族・親族にとって望ましい形で相続はできるか?という漠然とした不安について、具体的にやるべきことが明らかになったのではないでしょうか?
本記事をまとめると、以下になります。
◎相続人が認知症の場合に起こる問題3つ
◎相続人が認知症の場合に検討すべき対処法3つ
本記事の内容を参考に、相続のトラブルを防ぐために、事前の対策を進めていきましょう。