弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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「内縁の夫が亡くなった場合、内縁の妻は遺産をどれぐらいもらえるのか」
「籍は入れていないけど何十年も連れ添ってきたのだから、内縁の夫の遺産を受け取る権利はあるはず」
近年では事実婚の夫婦に対する制度も整い始め、一部の法律では法律婚の夫婦(婚姻届けを提出している夫婦)と同等の権利が認められるようになりました。
しかし相続においては、内縁の妻は原則相続人にはなれません。相続人になれる「配偶者」とは戸籍上の妻だけです。
とはいえ全く財産を受け取れないわけではなく、内縁関係でも財産を受け取る方法はいくつかあります。
上図の通り内縁の妻ができることは生前と死後によって異なります。2つを比較して分かるように、夫の財産を受け取るためには生前にしっかりと対策を行うことが重要なのです。
亡くなってしまった後ではできることは限られており、条件に恵まれない限り遺産を受け取ることができません。
内縁の夫亡き後も不安なく暮らしていくためには、夫が元気なうちからなるべく早く相続対策を行うようにしましょう。
本記事では内縁関係の夫婦の相続について次のようにまとめました。
本記事の内容 |
1.内縁の妻に相続権はない【原則】 2.内縁の妻が遺産を受け取るには生前対策が重要! 3.《生前》内縁の妻が遺産を受け取るための方法3つ 4.《死後》相続において内縁の妻ができること3つ 5.【注意】内縁の妻の相続税は負担が大きい 6.内縁の妻の子どもは相続できるの? |
本記事を読めば内縁関係の夫婦の相続について正しく理解できるようになります。
そして生前の場合は自分たちに合った相続対策を選んで実行できるようになり、死後の場合もできる限りの対処法を知って実践できるようになります。
是非最後まで読んでいってくださいね。
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内縁関係の夫婦は原則お互いの財産を相続する権利はありません。
相続が発生した場合、遺言が残されていない限り相続人になれるのは配偶者と血族のみと民法で定められています。(民法で定められた相続人のことを法定相続人と呼ぶ)
《民法》 ”被相続人の配偶者は、常に相続人となる。 この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。”(890条) 引用:民法 | e-Gov法令検索 |
※血族の根拠法令…民法887、889、900条
ここでいう配偶者とは法律婚の夫婦=「戸籍上の妻・夫」を指します。つまり、「婚姻届けを出しているかどうか」が法定相続人になれるかどうかを決定するのです。
そのため、婚姻届けを出していない内縁関係の夫婦は法定相続人にはなれません。
たとえ何十年と生計を共にして一緒に暮らしていようが、何年も献身的に介護をしていようが、実態がどれだけ夫婦同然だったとしても、一枚の婚姻届けが出されていない限りは一銭も相続する権利はないのです。
実態ではなく紙切れ一枚の差で決まってしまうというのは虚しさと悔しさが残りますよね。残念ながらそれが現状の法律です。
しかし、内縁の妻は法定相続人にはなれないからといって、内縁の夫の財産を全く受け取れないわけではありません。内縁関係でも財産を受け取る方法はいくつかあるので、次章以降でその方法について見ていきましょう。
前章で述べたとおり、内縁の妻は法定相続人にはなれませんが、対策次第で内縁の夫の財産を受け取ることができます。
その方法は下記の通りで、内縁の妻ができることは生前と死後に分けられます。
内縁の妻が生前にできること |
・遺言を残してもらう ・生前贈与してもらう ・生命保険の受取人にしてもらう →いずれかの対策を講じれば財産を受け取れる |
内縁の妻が死後にできること |
・特別縁故者になる|他に相続人がいない場合 ・遺族年金を請求する ・内縁の夫名義の家に住み続ける →一部の権利や金銭を得られる可能性はあるが、 財産を受け取れる可能性は極めて低い |
2つを比較して分かるように、内縁の夫の財産をしっかり受け取れるようにするためには、生前に相続対策を行っておくことが非常に重要です。
亡くなってしまった後では「相続人が一人もいない」という条件でかつ裁判所に認められないと財産は受け取れません。
手遅れになってしまう前に、内縁の夫が元気なうちから二人で相談して対策を実施するようにしましょう。
ただ、亡くなってしまった後でもできることはあります。すでに内縁の夫が亡くなってしまっている場合は、4章で紹介している項目を実行するようにしてください。
まだ内縁の夫が健在の場合はそのまま次の3章に読み進めていき、3章で紹介している相続対策の中から自分たちに合った方法を選択しましょう。
◎すでに内縁の夫が亡くなっている場合→《死後》相続において内縁の妻ができること3つへ(リンクから移動していただけます)
◎まだ内縁の夫が健在の場合→次章《生前》内縁の妻が遺産を受け取るための方法3つへ
相続はいつなんどき発生するか分からず、また相続対策を行うには時間(数週間~数年)を要することがあります。不測の事態に備えてなるべく早く取り掛かるようにしましょう。
まだ内縁の夫が健在の場合、内縁の夫の財産を受け取るためには次の3つの方法があります。
【生前|内縁の妻が遺産を受け取るための方法3つ】
◎遺言を残してもらう《おすすめ》 ◎生前贈与してもらう ◎生命保険の受取人にしてもらう |
この3つの方法について確実性が高くかつすぐに実行できるものから順に紹介していきます。どの方法が自分たちに合っているか二人で話し合って決めていきましょう。
相続対策として最もおすすめなのが遺言を残してもらうことです。
遺言の内容は亡くなった人の意志が反映されるため法定相続よりも優先されます。遺産の受取人は相続人でなくても親族でなくても問題ありません。「自宅を内縁の妻〇〇に譲る」と書かれていれば、その通りに相続が行われることになるのです。
遺産を渡したい人に確実に渡せるという点で、遺言は最も効果的な相続対策と言えます。
それでは具体的に遺言書の作成方法と注意点について見ていきましょう。
遺言書の書き方は下記3通りの方法があります。
【遺言書の種類】
公正証書遺言 | 公証人に遺言書を作成してもらい、公証役場で保管してもらう |
自筆証書遺言 | 自身で遺言書を作成・保管する |
秘密証書遺言 | 自身で遺言書を作成した後公証人に封紙に署名・捺印をもらい、自身で保管する |
この中で秘密証書遺言は年間100件前後とほとんど利用されていないため、ここでは公正証書遺言と自筆証書遺言について紹介していきます。
それぞれの特徴や進め方を確認して、どちらを選ぶべきか夫婦でよく相談しましょう。
公正証書遺言は公証人に遺言書を作成してもらい、公証役場で遺言書を保管してもらいます。自筆証書遺言に比べ時間や手間、費用がかかる分、安全性と確実性が高い方法です。
【公正証書遺言のメリット・デメリット】
メリット | ・公証役場で保管してもらえる ・無効になるリスクが極めて低い ・改ざんされるリスクがない |
デメリット | ・費用がかかり、高額になるケースがある ・作成手続きに手間と時間がかかる ・証人2名の立会いが必要 |
公正証書遺言は次の作成手順と必要書類、手数料を参考にしながら進めていくようにしてください。
【公正証書遺言の作成方法】
依頼先 |
任意の公証役場(近くの公証役場を探す→公証役場一覧 | 日本公証人連合会) |
作成手順 |
①公証人に依頼する(まずはメールまたは電話予約) ②必要書類を提出する ③公証人が遺言者公正証書を作成する ④公証役場に遺言者本人と証人2名が出向き、公正証書の原本に署名・押印する |
必要書類 |
・遺言者の戸籍謄本 ・遺言者の印鑑登録証明書(発行3ヶ月以内) ・財産を渡したい相手(この場合内縁の妻)の住民票 ・財産に不動産がある場合は登記事項証明書と固定資産評価証明書 ・証人になる人2名の氏名、住所、生年月日などを記したメモ ※他にも別途書類が必要になる場合があります。 |
作成日数 |
約2~3週間 |
【必要書類の取得方法】
遺言者の戸籍謄本 |
・本籍地の市町村役場 ・コンビニ(マイナンバーカード利用手続き済の場合) |
印鑑登録証明書 |
・住所地の市町村役場 ・コンビニ(マイナンバーカード利用手続き済の場合) |
財産を渡したい相手の住民票 |
・相手の住所地の市町村役場 ・コンビニ(マイナンバーカード利用手続き済の場合) |
登記事項証明書 |
・法務局(各種証明書請求手続:法務局) |
固定資産評価証明書 |
・不動産の住所地の市町村役場 |
【公正証書遺言の手数料】
遺産額 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超~200万円 | 7,000円 |
200万円超~500万円 | 10,000円 |
500万円超~1,000万円 | 17,000円 |
1000万円超~3,000万円 | 23,000円 |
3,000万円超~5,000万円 | 29,000円 |
5,000万円超~1億円 | 43,000円 |
1億円超~3億円 | 43,000円(超過額5,000万円ごとに+13,000円) |
3億円超~10億円 | 95,000円(超過額5,000万円ごとに+11,000円) |
10億円以上 | 249,000円(超過額5,000万円ごとに+8,000円) |
手続きの詳細については日本公証人連合会の案内をご確認ください。
Q4.公正証書遺言は、どのような手順で作成するのですか。 | 日本公証人連合会
自筆証書遺言は自分で遺言書を作成・保管します。公正証書遺言に比べ費用がかからず、すぐに作成できるというメリットがありますが、書き方に不備があると遺言が無効になってしまうなどのデメリットがあります。
【自筆証書遺言のメリット・デメリット】
メリット | ・費用がかからない ・いつでも何度でも作成できる |
デメリット | ・遺言書に不備があると無効になる ・相続人が発見次第、家庭裁判所で検認してもらう必要がある ・死後に見つけてもらえない恐れがある ・偽造される恐れがある |
自筆証書遺言の作成方法について決まった書式はありませんが、次の要件を必ず満たしている必要があります。もし一か所でも不備があれば無効になるおそれがあるので、慎重に書き進めましょう。
【自筆証書遺言で必ず守るべき5つの項目】
①遺言者が全文手書きで書く 財産目録はパソコン作成や登記事項証明書のコピーでも可。その場合は全ページに署名押印する ②作成した日付を明確に書く(令和〇〇年〇月〇日と書く。「吉日」などは不可) ③署名・押印をする(実印推奨) ④相続財産を正確に記載する 不動産は登記簿謄本通りに、預貯金は金融機関の支店名・預金の種類・口座番号まで正確に記載する ⑤訂正や追記はその場所が分かるように示し、訂正または追加した旨を書き添え、署名押印する |
下記は法務省岐阜地方法務局の案内に載せてある遺言書記載例ですので、是非書き方の参考にしてみてください。
出典:岐阜地方法務局
【自筆証書遺言のリスクを軽減する自筆証書遺言書保管制度】 自筆証書遺言のデメリットである紛失や隠ぺい、改ざんなどのリスクに対しては、法務省の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することで対策を行うことができます。 自筆証書遺言書保管制度とはその名の通り自身が作成した遺言書を預かってくれる制度です。紛失・亡失のおそれがなく、利害が対立する人による破棄・隠ぺい・改ざんなどを防ぐことができます。 (※遺言書の有効性は保証されません) また、この制度を利用すれば死亡後の家庭裁判所での遺言書検認が必要ありません。費用も公正証書遺言より低め(遺言書保管の申請3,900円/件、遺言書の閲覧請求1,400円~/回)なので、自筆証書遺言を選ぶ場合は是非利用をご検討ください。 制度の詳細や利用方法についてはこちらをご確認ください。 自筆証書遺言書保管制度 |
遺言書を作成するときは他の相続人にも最低限度の財産を渡すように書くようにしましょう。
なぜなら「全財産を内縁の妻〇〇に譲る」という内容の遺言を残した場合、他の相続人が内縁の妻に対して遺留分を請求する可能性があるからです。
遺留分とは… 法定相続人(配偶者・子など直系卑属・親など直系尊属)に法律上保証されている最低限度の財産のこと。相続人の生活を保証するために設けられた制度 |
例えば内縁の夫が亡くなり、遺言で「全財産である現金6,000万円を内縁の妻に渡す」と書かれていたとします。しかし法定相続人である子どもが3人いた場合、子ども1人あたりの遺留分は遺産の6分の1が認められています。
子どもたちが全員内縁の妻に遺留分を請求すれば、内縁の妻は子どもたちにそれぞれ6分の1=1,000万円ずつ渡さなければいけません。
遺留分の割合は民法で定められており、相続人の関係性や人数によって変わります。
【遺留分の割合】
法定相続人の 組み合わせ |
遺産額に対する遺留分の割合 |
||
配偶者 |
子ども(直系卑属) |
親(直系尊属) |
|
配偶者のみ |
1/2 |
ー |
ー |
配偶者と子ども |
1/4 |
1/4※ |
ー |
配偶者と親 |
2/6 |
ー |
1/6※ |
子どものみ |
ー |
1/2※ |
ー |
親のみ |
ー |
ー |
1/3※ |
※複数人いる場合は人数分で割る
このように、せっかく遺言書を作成したのに死後遺留分で揉めるようなことは避けたいですよね。遺言書を作成する際はあらかじめ法定相続人の遺留分に配慮しながら内容を考えるようにしましょう。
【遺言と死因贈与の違い】 遺言と似たような方法として死因贈与という方法があります。 死因贈与とは財産を渡す人(贈与者)と受け取る人(受贈者)の間で「贈与者が死亡したときは受贈者に指定した財産を渡す」という契約を結ぶことです。 遺言は渡す側の意思だけで作成するのに対し、死因贈与は渡す側と受け取る側双方の合意が必要になります。 死因贈与は口頭でも契約が成立しますが、後々のトラブル防止のため契約書を作成しておく方がよいでしょう。契約書作成については次節の生前贈与でご確認ください。 尚、死因贈与にかかる税金は贈与税ではなく相続税になります。 |
関連記事:法定相続分・遺留分の違いとは?権利者や割合をわかりやすく図解
関連記事:公正証書遺言でも遺留分は請求できる!手順を分かりやすく解説
内縁の夫の財産を妻に渡す手段として「生前贈与」という方法もあります。
生前贈与とは贈与者が生きている間に財産を他者に無償で渡すことを指します。
生前贈与も遺産を渡したい人に確実に渡せるという点は遺言と同じですが、年間110万円を超えると贈与税を納めなければいけません。さらに贈与税は相続税よりも一般的には高く設定されています。
そのため贈与税が発生しないように年間110万円以下に抑えようとすれば、希望額を全額渡せるようになるまで何年もかかる場合があります。
生前贈与を行う場合はこのような性質を理解した上で進めるようにしましょう。
ここでは生前贈与のやり方について紹介していきます。
【生前贈与の手順】
STEP1.贈与契約書を作成する
STEP2.贈与を行う
【配偶者の2,000万円控除の特例は利用できない】 贈与では「年間110万円以下なら贈与税が発生しない」という控除の他に、配偶者ならば最高2,000万円まで控除できるという特例があります。しかし内縁の妻は法律上配偶者ではないため、この特例は適用されません。 |
贈与者(内縁の夫)と受贈者(内縁の妻)との間で贈与の内容について合意が得られたら、贈与契約書を作成しましょう。
贈与契約書は必ず作成しなければいけない訳ではありませんが、後々の相続トラブルを予防するためには作成しておく方が安心です。
贈与契約書がないと相続が発生したとき相続人と揉めたり、税務署に贈与であることの証明ができなくなったりする恐れがあります。
贈与契約書について決まった書式はありませんが、本人の意思で贈与が行われたことを証明できるよう、次の3つの項目は必ず守るようにしましょう。
【贈与契約書作成で必ず守るべき3つの項目】
◎署名押印する(実印推奨) ◎住所・作成日付は手書きで書く ◎印鑑証明書を添付する |
このとき、贈与税が発生しないよう年間110万円以下に納める場合は、その都度契約書を作成しなければいけません。例えば「10年間毎年100万円を贈与する」という契約を交わした場合は贈与税が発生してしまうので注意しましょう。
金銭を贈与する場合の記入例は下記の通りです。よろしければ内容をコピーしてご利用ください。
【贈与契約書例】
贈与契約書 贈与者〇〇(以下「甲」という。)と、受贈者〇〇(以下「乙」という。)は、以下の通り贈与契約を締結した。 第1条 甲は乙に対し、現金〇〇万円を贈与することを約し、乙はこれを承諾した。 第2条 甲は乙に対し、前条の贈与金を令和〇年〇月〇日までに、乙が指定する下記銀行口座に振り込んで支払うものとする。 銀行名: 支店名: 口座番号: 名義人: 以上を証するため、本書を2部作成し、記名、押印のうえ、甲乙各1部を保有する。 令和〇年〇月〇日 甲 (住所) (氏名) ㊞ 乙 (住所) (氏名) ㊞ |
【ご利用の注意点】
・コピー貼り付け後、書式は整えてください。
・〇〇の部分と空欄部分を記入してください。(作成日付・住所・氏名は手書き)
契約書で決めた内容通りに財産の引き渡しや不動産の移転登記を行いましょう。
金銭の場合は、トラブルを避けるために手渡しではなく振込みで行うことをおすすめします。
振込だと金融機関に記録が残るため、税務調査を受けたときも贈与だということを証明できます。
生命保険の受取人を内縁の妻にしてもらうという方法も内縁の夫の財産を受け取る方法のひとつです。
しかし一般的に生命保険の受取人は戸籍上の配偶者か2親等以内の親族に限られており、多くの保険会社では内縁の妻を受取人にすることはできません。
ただし近年では内縁の妻でも一定の条件をクリアすれば受取人に指定できる場合もあるので、詳細は加入している(または加入を検討している)保険会社に問い合わせてみましょう。
【内縁関係ならば非課税限度額は適用されない】 生命保険は一定額まで相続税が課税されない非課税枠がありますが、適用できるのは相続人に限られるため、内縁の妻は適用できません。 |
内縁の夫が亡くなった後に内縁の妻ができることは限られていますが、下記の権利が認められる場合があります。
【死後|相続において内縁の妻ができること3つ】
◎特別縁故者になる|他に相続人がいない場合 ◎遺族年金を請求する ◎内縁の夫名義の家に住み続ける |
上記3つの権利は必ずしも認められるとは限りませんが、認められれば今後の暮らしへの不安を軽減できるでしょう。条件にあてはまる場合は主張または請求してみることをおすすめします。
亡くなった内縁の夫に相続人が一人もいない場合、内縁の妻は「特別縁故者」として財産を受け取れる可能性があります。
特別縁故者とは… 亡くなった人と特別親しい関係にあった人。 法定相続人が一人もいない場合、通常は遺産は国のものになるが、亡くなった人と特別な縁故関係にあったことが裁判所に認められれば第三者でも財産を受け取ることができる。
相続人が誰もいない場合は「特別縁故者に対する相続財産分与」の申立てを検討しましょう。
申立て方法は下表の通りです。
【特別縁故者に対する相続財産分与の申立て方法】
申立人 | ・亡くなった人と生計を同じくしていた者 ・亡くなった人の療養看護に努めた者 ・その他亡くなった人と特別の縁故があった者 |
申立先 | 亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所 (管轄の裁判所を調べる→裁判所の管轄区域) |
申立期限 | 相続人が誰もいないことが確定してから3ヶ月以内 |
費用 | ・収入印紙800円 ・裁判所との連絡用切手 |
必要書類 | ・申立書 ・申立人の住民票または戸籍附票 |
詳細は裁判所のホームページをご確認ください。申立書もそこからダウンロードしていただけます。
内縁の妻でも条件を満たせば遺族年金を受け取ることができます。
遺族年金とは国民年金または厚生年金保険の被保険者が亡くなったとき、その人物によって生計を維持されていた配偶者や子どもなどに給付される年金です。
相続と違い、遺族年金は内縁関係の夫婦でも受け取ることができると厚生年金保険法で定められています。
《厚生年金保険法》 ”この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。”(3条2項) 引用:厚生年金保険法 | e-Gov法令検索 |
遺族年金を受給するためにはいくつか要件があるので、下表で要件を満たしているかどうかご確認ください。
【遺族年金の受給資格】
遺族基礎年金 遺族厚生年金 共通 |
・亡くなった人と事実上婚姻関係にあったこと ・亡くなった人と生計維持関係があったこと ・亡くなった人に戸籍上の妻がいないこと(戸籍上の妻がいる場合はそちらが優先される) |
遺族基礎年金 |
・亡くなった人との間に18歳までの子どもがいること (子どもは認知または養子縁組によって亡くなった人と法律関係がある必要がある) |
要件を満たせているなら請求手続きを進めていきましょう。請求方法については日本年金機構のホームページをご確認ください。
内縁の夫名義の家に一緒に住んでいた場合、内縁の夫が亡くなると同時に出て行くよう要求されたら困りますよね。
内縁の妻の場合、相続権はなくても内縁の夫の家に死亡後もそのまま住み続けることを認められる可能性があります。
例えば内縁の夫が亡くなり、一緒に住んでいた自宅を夫と前妻の子が相続したとします。内縁の妻は前妻の子から立ち退きを要求されたとしても、必ずしも出て行かなければならないとは限りません。
長年介護をするなどの貢献を行い、内縁の夫も、内縁の妻が死ぬまで居住することを想定していたにもかかわらず、相続人が正当な理由なく立ち退きを求めているといった事案においては、引き続き住み続けることが認めてもらえる可能性があります。
実際に最高裁昭和39年10月13日の判例では、立ち退き請求は権利の濫用にあたるとして認められないという判決が下されました。
ただ、持ち家・借家ともどのような場合でも引き続き居住することが認められるというわけではありません。
もし相続人や大家と揉めた場合は、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
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相続税は財産が一定額(基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に発生します。
内縁の妻が財産を相続する場合は相続税の負担が大きくなることを心得ておきましょう。
相続税には様々な優遇措置がありますが、内縁の妻はそれらの制度を利用することができません。具体的には下記項目において、戸籍上の妻よりも負担が大きくなるので注意が必要です。
【内縁関係の夫婦は税負担が大きい理由】
◎相続税が2割加算される ◎基礎控除の額が増えない ◎控除が受けられない |
内縁の妻が受け取った財産には通常の税額1.2倍の相続税が課せられます。
これは、遺産とは本来配偶者や子どもなどごく近しい親族が相続するものであり、それ以外の人が遺産を受け取ることは偶然性によるところが大きいと考えられるためです。
そのため内縁の妻だけでなく、配偶者と一親等の血族以外(兄弟姉妹や甥姪、孫、その他第三者)が相続する場合は相続税が2割加算されます。
相続税は財産が基礎控除額を超えると発生しますが、その基準額は相続人の人数によって変わってきます。
基礎控除額の計算方法は《3,000万円+600万円×法定相続人の数》であるため、人数が多ければ多いほど基礎控除額が増える仕組みです。
しかし繰り返しますが内縁の妻は法定相続人ではないため、この人数に含むことができません。
例えば相続人が誰もおらず内縁の妻が全て相続した場合、基礎控除額は3,000万円のみとなるので、3,000万円を超える遺産額に対しては相続税を納めなければいけません。
戸籍上の妻や法定相続人には下記の控除が適用されますが、内縁の妻には認められていません。
【内縁の妻は受けられない控除・特例など】
◎配偶者控除…配偶者が相続する財産のうち法定相続分または1億6,000万円までは相続税がかからない ◎小規模宅地等の特例…要件を満たす不動産の評価額を最大80%まで引き下げられる ◎障害者控除…相続人が障害者である場合「85歳になるまでの年数×10万円」を税額から差し引ける ◎非課税限度額…相続人全員が受け取った保険金の総額のうち「法定相続人数×500万円」までは相続税がかからない |
このように本来相続人ではない内縁の妻が相続する場合は、税金面でも負担が大きいことを覚えておきましょう。
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内縁の妻は原則相続人になれませんが、その子どもはどうなるのでしょうか。
内縁の妻の子どもは相続権があるケースとないケースがあります。
【内縁の妻の子どもの相続権】
内縁の夫との子ども |
内縁の夫が認知している→相続人になれる |
内縁の夫が認知していない→相続人になれない |
|
内縁の夫以外の人との子ども |
内縁の夫と養子縁組をしている→相続人になれる |
内縁の夫と養子縁組をしていない→相続人になれない |
相続における子どもの権利についても配偶者の場合と同様、亡くなった人の戸籍上の子どもであれば法定相続人になることができます。
つまり、内縁の夫との間に生まれた子どもの場合は認知を、前の夫との間に生まれた子どもの場合は養子縁組をしてもらっていれば、遺産を受け取ることができるのです。
たとえ内縁の夫との子どもであろうと、認知してもらっていなければ法律上は内縁の夫の子どもではないので相続権はありません。
では認知してもらう前に亡くなってしまった場合は諦めるしかないのでしょうか。
その場合は死後3年以内なら「死後認知」という訴えを起こすことができます。訴えが認められれば子どもは法定相続人になるので遺産を受け取ることができます。
尚、子どもの相続割合は嫡出子(婚姻中の夫婦の間に生まれた子ども)と変わりません。例えば内縁の夫が亡くなり遺産が2,000万円だったとしましょう。相続人は内縁関係の夫婦の子ども1人と前妻の子ども1人の計2名である場合は、それぞれ2分の1=1,000万円ずつ相続することになります。
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本記事を読んで内縁の妻の相続について理解を深められたことと思います。
あらためて本文のポイントを振り返りましょう。
まず、内縁の妻には原則相続権がないことをお伝えしました。そして相続権を持たない内縁の妻が夫の財産を確実に受け取るためには、生前の相続対策が重要であるとお話しましたね。
その生前対策が下記3つです。この中から自分たちに合う方法を選んで実践していきましょう。
内縁関係の夫婦|生前の相続対策3つの方法 |
1.遺言を残してもらう《おすすめ》 2.生前贈与してもらう 3.生命保険の受取人にしてもらう |
すでに内縁の夫が亡くなっている場合は、できることは限られていますが次の権利が認められる可能性があります。
内縁関係の夫婦に認められる権利(死後) |
1.特別縁故者になる|他に相続人がいない場合 2.遺族年金を請求する 3.内縁の夫名義の家に住み続ける |
内縁の妻が夫の財産を受け取ることができた場合、基礎控除額を超えれば相続税が発生します。その場合内縁の妻は本来相続人ではないため税負担が大きくなることに注意しましょう。
内縁関係の夫婦は税負担が大きい理由 |
1.相続税が2割加算される 2.基礎控除の額が増えない 3.控除が受けられない |
内縁の妻に子どもがいる場合、子どもの相続権は下表の通りです。相続人になれるケースとなれないケースがあります。
【内縁の妻の子どもの相続権】
内縁の夫との子ども |
内縁の夫が認知している→相続人になれる |
内縁の夫が認知していない→相続人になれない |
|
内縁の夫以外の人との子ども |
内縁の夫と養子縁組をしている→相続人になれる |
内縁の夫と養子縁組をしていない→相続人になれない |
以上、内縁の妻の相続について解説しました。
本記事を元に生前にしっかりと相続対策を行い、内縁の夫が自分のために残してくれた財産を受け取ることができるようになれば幸いです。