公正証書遺言がもめる理由は無効と遺留分!それぞれの立場から解説

弁護士法人サリュ代表弁護士 西村 学
この記事の監修者
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「公正証書遺言が見つかったけど、この遺言を無効にできないか?」

「遺留分が侵害されているから、侵害額を請求したい!」

「家族がもめる原因にならないよう、公正証書遺言を作成したい」

公正証書遺言は無効になりにくい遺言方法ですが、それでも、残された遺族の中でトラブルになることがあります。その場合、「遺言の無効」または「遺留分」の2つが主な論点となります。

今回の記事では、公正証書遺言でもめる場合にはどのようなケースがあるのか、また、もめないための遺言者へのアドバイスについても、網羅的に解説していきます。

「遺言を無効にしたい人(または無効を主張された人)」、「侵害されている遺留分を請求したい人(または請求された人)」、「もめない公正証書遺言を残したい人」の3つの立場の方に向けて、どの立場からでも読める内容にしました。

遺言を無効にしたい人(または無効を主張された人)
公正証書遺言が無効になる5つのケース
公正証書遺言の無効を主張する場合の流れ3ステップ
侵害されている遺留分を請求したい人(または請求された人)
遺留分が侵害されている場合は請求できる
遺留分を請求する場合の流れ4ステップ
もめない公正証書遺言を残したい人
公正証書遺言で「もめない」ための遺言の残し方

上記のリンクをクリックすると該当箇所にジャンプできますので、ぜひ読みたい場所に飛んで内容を確認してください。相続トラブルを円滑に解決できるよう、ぜひこの記事の内容を参考にしてみてください。

目次

公正証書遺言でもめる場合「無効」「遺留分」が論点となる

公正証書遺言でもめる場合、「遺言を無効にしたい」または「遺留分を請求したい」という2つの論点がメインとなります。

遺言を無効にしたい遺言能力がなかった、証人が欠格者だったなどの理由で公正証書遺言を無効にできれば、遺言に従う必要がなくなる
遺留分を請求したい遺留分(一定の相続人に最低限保証される遺産の取り分)が侵害されている(受け取れていない)場合、請求することで取り戻せる

「遺言の無効」を論点にする場合

公正証書遺言は、3種類ある遺言書の中で「最も無効になりにくい」形式です。しかし、公正証書遺言であっても無効になるケースがあります。

遺言の無効を論点に争う場合は、以下をご覧ください。

公正証書遺言が無効になる5つのケース

公正証書遺言の無効を主張する場合の流れ3ステップ

【注意】遺言の無効を争う場合にも、遺言が有効だった場合に備えて、「遺留分が侵害されていないか」を事前に確認しておきましょう。
遺留分を請求する権利には最短1年の時効があるため、遺言無効を争っているうちに時効を迎えてしまわないよう気を付けてください。

「遺留分」を論点にする場合

遺留分とは、一定の相続人(配偶者・子ども・親等) に最低限保障される遺産の取り分のことです。遺言があっても、この遺留分が侵害されている場合(つまり、遺留分相当の財産を受け取れていない場合)には、不足分を請求する権利があります。

遺留分を論点に争う場合については、以下の項目をご覧ください。

遺留分が侵害されている場合は請求できる

遺留分を請求する場合の流れ4ステップ

公正証書遺言が無効になる5つのケース

公正証書遺言は法律の知識を持つ公証人が作成するため、無効になりにくい遺言方法です。しかし、以下のような場合には無効になる可能性があります。

公正証書遺言が無効になる5つのケース
❶遺言者に「遺言能力がなかった」と認められる場合
❷「口授を欠いていた」と認められる場合
❸立ち会った証人が欠格者だった場合
❹遺言者の真意と遺言内容に錯誤があった場合
❺遺言内容が公序良俗に反する場合

遺言者に「遺言能力がなかった」と認められる場合

遺言者(遺言を残す人)が遺言した時点で「遺言能力がなかった」と認められる場合には、公正証書遺言であっても無効になります。

(遺言能力)

第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

民法961条・963条

ポイントは「認知症や精神障害により、遺言を残す能力を持っていたか」という点です。遺言当時の遺言者の診療録や看護記録を調べたり、担当した主治医に確認したりする方法があります。

遺言作成時に遺言能力がなかったことが認められれば、遺言を無効にできます。

「口授を欠いていた」と認められる場合

「口授を欠く」というのは、「遺言者が遺言内容を公証人に口頭で伝えていなかった」ということです。

公正証書遺言を作成する際に「口授を欠いていた場合」には、その遺言は無効にできます。なぜならば、公正証書遺言が有効になるための要件に「口授すること」が定められているからです。

(公正証書遺言)

第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

 民法969条

ただし近年では、事前に遺言内容を打ち合わせておき、作成当日には公証人が記載内容を読み上げて確認するだけで遺言書を作成できてしまう場合があります。打ち合わせ時に第三者が介入し、遺言作成を主導するケースがありえるのです。

裁判例で口授を欠くことが認定されたケースとしては、大阪高判平成26年11月28日判タ1411号92頁があります。この裁判例では、遺言者には当時認知症の兆候があり、公証人の説明に対する「はい」という返事が遺言内容を理解・許容する趣旨の発言だったか疑問であるという理由で、公正証書遺言が無効となっています。

立ち会った証人が欠格者だった場合

公正証書遺言を作成する場合には、証人2名が立ち会う必要があります。この証人が欠格者だった場合には、その遺言は無効となります。

(証人及び立会人の欠格事由)

第九百七十四条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。

一 未成年者

二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

民法974条

証人が未成年者だった場合や、推定相続人やその家族、受遺者(遺言で指定された相手)やその家族、公証人の家族や4親等以内の親族であった場合など、欠格事由に該当する証人が立ち会っていた場合には無効にできます。

無効にしたい方は、遺言書作成時の証人を誰が担当したかを確認すると良いでしょう。

遺言者の真意と遺言内容に錯誤があった場合

遺言者が「本来残したかった遺言内容」と「実際に残した遺言内容」が異なる場合、その事実が認められれば遺言を無効にできます。錯誤とは、書き間違いや言い間違い、勘違いなどが含まれます。

錯誤が認められたケースとして、東京高裁平成25年12月19日判決の例を紹介します。

遺言者Aは、Yを自分の子と思っており、その親子関係を前提に、全財産をYに遺贈する旨の公正証書遺言を作成していました。しかしAの死後に行われたDNA鑑定の結果、AとYには血縁関係が認められませんでした。

このケースは、Yが実子であることを前提に残された遺言であり、公正証書遺言は「錯誤により無効」と裁判所に判断されました。

遺言内容が公序良俗に反する場合

(公序良俗)

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

民法90条

遺言内容が公序良俗に反する場合には、民法90条により無効になります。「公序良俗に反する」とは、社会的あるいは道徳的に認められないことを言います。

例えば、正式な妻子がいるのに「愛人に全財産を譲る」という遺言を残し、妻子の生活基盤が脅かされる場合には、公序良俗違反が認められる可能性があります。

ただし、どのようなケースが公序良俗違反になるかはケースバイケースです。判断が難しい場合は弁護士に相談してみると良いでしょう。

公正証書遺言の無効を主張する場合の流れ3ステップ

前章で解説したような「遺言無効」の可能性がある場合は、以下の3ステップで遺言無効を主張していきましょう。

【ステップ1】他の相続人・受遺者の意見を確認する

「遺言を無効にするためには裁判が必要」と考える方も多いかもしれませんが、相続人や受遺者(遺言で指定されて財産を受け取る人)全員が同意すれば、遺言と異なる遺産分割を行うことが可能です。そのため、調停や訴訟の前にまず、相続人や受遺者と話し合ってみましょう。

全員の同意を得ることができなければ、調停・訴訟で決着をつけることになります。

【ステップ2】家事調停を申し立てる

遺言無効確認は家庭に関する事件であり、原則として訴訟の前に「調停」を申し立てる必要があります。調停とは家庭裁判所で話し合うことです。調停委員が第三者として間に入り、遺言が無効かどうかについて話し合いでの解決を目指します。

印鑑・調停手数料(1,200円)・郵送のための切手代・戸籍謄本を準備して家庭裁判所に調停申立の手続きを行い、裁判所が決めた調停期日に調停を行うことになります。

ただし、調停はあくまで「話し合い」であり、調停で解決が難しいと予想される場合には、調停を早期に打ち切って、次の「遺言無効確認訴訟」を提起することが得策です。

【ステップ3】遺言無効確認訴訟を起こす

遺言無効確認訴訟とは、遺言が法律的に無効であることを裁判所に認めてもらうための裁判です。裁判では証拠を提出したり書面での主張が必要となったりするため、弁護士に依頼するのが一般的です。

訴訟では、遺言の無効を主張する相続人が原告となり、当事者の主張やそを裏付ける証拠を基に審理が進みます。訴訟の結果、遺言が無効と認められれば、公正証書遺言の無効を確定できます。

逆に、遺言が有効と判断される場合には原告の請求が棄却されます。この場合、多くのケースでここから遺留分侵害額請求に移行します。

遺留分が侵害されている場合は請求できる

遺留分とは、一定の相続人(配偶者・子ども・親など) に最低限保障される遺産の取り分のことです。遺言によってもらえる財産が遺留分よりも少ない場合、多くもらっている相続人または受遺者に不足分を請求できます。

例えば相続人が配偶者のみの場合、配偶者の遺留分割合は2分の1です。相続財産が1億円ならば、遺言でどんな指定がされていたとしても、最低限5,000万円相当の財産を受け取る権利があります。

遺留分を請求した場合、その請求が正当ならば、請求された側は支払わなければなりません。

遺留分は自動的にもらえるものではないため、侵害されている人が侵害している相手に「遺留分侵害額請求」をする必要があります。また、遺留分侵害額請求ができる期間には時効による制限があるため気を付けてください。

遺留分侵害額請求の時効・除斥期間
❶「相続が開始したこと」「遺留分が侵害されていること」の両方を知ってから1年
❷相続が開始してから(被相続人が亡くなってから)10年

時効については、以下の記事もぜひお読みください。

遺留分を請求する場合の流れ4ステップ

遺留分を請求する場合の流れは、以下4ステップで進めます。

遺留分侵害額請求を行う4ステップ
❶遺留分侵害額を特定するための財産調査を行う
❷配達証明付き内容証明を送る(相続開始から1年以内)
❸それでも決着しない場合は、請求調停
❹それでも決着しない場合は、請求訴訟

なお、請求ステップについてさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事もご覧ください。

遺留分侵害額を特定するための財産調査を行う

遺留分が侵害されているかどうかを含め、正確な「遺留分侵害額」を計算するためには、「相続財産の全体がいくらあるのか」を調べる必要があります。そのためにまず行うのが「財産調査」です。

自分で調べる方法と専門家に依頼する方法がありますが、不動産の評価額などで揉めそうな場合には専門家に依頼する方法がベストです。

遺産の総額が出たら、その遺産総額に自分の遺留分割合を掛けて、遺留分がいくらかを算出します。例えば相続人が配偶者のみの場合、個別の遺留分割合は2分の1となるため、遺産総額が1億円なら遺留分は「5,000万円」となります。

つまり、公正証書遺言で「遺産は全て友人Aに遺贈する」とあった場合も、5,000万円の「遺留分侵害額請求」を行うことができます。

遺留分割合については以下の記事で丁寧に解説しています。

配達証明付き内容証明を送る(相続開始から1年以内)

侵害されている遺留分の金額が分かったら、遺留分を侵害している相手に対して、配達証明付き内容証明を送りましょう。

遺留分侵害額請求には決まった形式がありません。後々になって「請求されていない」「請求された時点で時効を迎えていた」などと言われないよう、送った日付と内容を証明できる配達証明付き内容証明郵便を利用しましょう。

なお、遺留分侵害額請求ができる権利は、相続開始と遺留分侵害を知ってから1年、または相続開始から10年で消滅してしまいます。そのため、配達証明付き内容証明は相続開始から1年以内に送ると安心です。

まとまらない場合は、請求調停

内容証明郵便を送った後、話し合いで合意に至れば、侵害額を現金で受け取って解決となります。

他方、合意に至らない場合には、遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。

調停とは、裁判所にて、第三者である調停委員が参加して話し合いで解決を図ることをいいます。合意が得られれば、その内容を記載した調停調書が作成されます。

それでもまとまらない場合は、請求訴訟

調停でもまとまらない場合には、訴訟で決着をつけることになります。訴訟で遺留分侵害額請求が認められれば、強制執行が可能となり、相手の財産を差し押さえることも可能です。

公正証書遺言で「もめない」ための遺言の残し方

最後に、公正証書遺言で「もめない」ための遺言の残し方について、アドバイスを紹介します。

もめない公正証書遺言の残し方
❶遺言能力があるうちに早めに遺言を作成しよう
❷遺留分に配慮して遺言を作成しよう
❸納得してもらえるよう「付言事項」に思いを綴ろう
❹生前に相続内容について話し合っておこう

遺言能力があるうちに早めに遺言を作成しよう

公正証書遺言が無効になる5つのケース」で解説したとおり、せっかく公正証書遺言を残しても、「遺言当時に遺言能力がなかった」とされてしまえばその遺言は無効となります。

例えば、認知症の兆候が見られるようになってから遺言を用意すると、後で「その当時、遺言能力はあったのか」が論点になり、相続トラブルが発生する可能性があります。

遺された人たちが遺言でもめないために、遺言能力があるうちに早めに遺言を作成しておくことが大切です。

遺留分に配慮して遺言を作成しよう

有効な公正証書遺言を残したとしても、近親者には遺留分に相当する遺産を受け取る権利があります。これは「遺留分が侵害されている場合は請求できる」で解説したとおりです。

遺留分を侵害されている人には請求権があるので、将来的に行使される可能性が濃厚です。そのため、遺留分を侵害しない内容にする(特定の相手に多めに財産を渡すが遺留分は侵害しないようにする)か、または、遺留分を請求されたとしても現金を払えるように配慮すると良いでしょう。

例えばAさんに対して、遺留分を侵害するような評価額の不動産を遺贈する場合、Aさんは遺留分侵害額請求をされる可能性が高くなります。遺留分侵害額は現金精算となるため、Aさんの手元に現金がなければAさんは不動産を売却しなくてはいけなくなります。このようなケースでは、遺留分侵害額を支払える現金も同時にAさんに遺贈するのがスマートです。

納得してもらえるよう「付言事項」に思いを綴ろう

もめない公正証書遺言のポイントとして、遺言書の「付言事項」を利用する方法も有効です。

付言事項は、遺言者から家族への思いを綴ることができるメッセージをいいます。付言事項には法的効力はありませんが、自由に自分の言葉で文章を綴ることができます。

そのような遺言内容にした趣旨や「家族で争わないでほしい」などのメッセージを残すことで、相続トラブルを回避できるかもしれません。

生前に相続内容について話し合っておこう

公正証書遺言を作成する前に家族会議を開き相続内容について話し合っておくことも方法でしょう。

生前に議論しておけば納得感が高まり、公正証書遺言でもめる事態を避けられるかもしれません

例えば「住んでいた家を長男に渡し、現金を次男に渡そう」と考えていたとします。しかし実際には次男の方が家を受け取りたい気持ちが大きいかもしれません。また、特別受益に伴う不公平を感じている相続人がいた場合、事前に話し合っておけば後々のトラブルを避けられます。

家族が集まる年末年始などに、相続に関する家族会議を開いてみると良いでしょう。

まとめ

この記事では、公正証書遺言がもめるのはどんな時か、2つの論点についての解説と具体的なステップを紹介しました。

遺言を無効にしたい人(または無効を主張された人)
公正証書遺言が無効になる5つのケース
公正証書遺言の無効を主張する場合の流れ3ステップ
侵害されている遺留分を請求したい人(または請求された人)
遺留分が侵害されている場合は請求できる
遺留分を請求する場合の流れ4ステップ

また、できる限りもめない公正証書遺言を残すためのアドバイスについても解説しました。

もめない公正証書遺言を残したい人
公正証書遺言で「もめない」ための遺言の残し方

あなたが解決したい悩みについて、納得のいく答えを得ることができたなら幸いです。

公正証書遺言でもめてしまい当人同士だけでは解決が難しいならば、弁護士に相談することをおすすめします。

当事務所では無料相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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