弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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土地を相続した場合、相続登記(不動産の名義変更)用に遺産分割協議書を用意する必要があります。しかし、「どうやって作れば良いか分からない」という方がほとんどではないでしょうか。
遺産分割協議書は、文例をコピーしてアレンジするだけで、自分で簡単に作成することができます。
実際にこの記事では、以下の5つのケース別に、コピペして使える遺産分割協議書の雛型をご用意しました。
【遺産分割協議書の雛形5パターン】
・土地のみを特定の相続人が相続する場合の遺産分割協議書の雛型 ・土地のみを共有名義で相続する場合の遺産分割協議書の雛型 ・複数の土地をそれぞれ相続した場合の遺産分割協議書の雛型 ・土地と建物を相続した場合の遺産分割協議書の雛型 ・【応用編】土地を代償分割で分ける場合の遺産分割協議書の雛型 |
なお、文例だけでなく、2章からは遺産分割協議書の全体の書き方についても詳しく解説しています。
「法律に詳しくないけれど遺産分割協議書を自分で用意したい」「要件を満たす遺産分割協議書の書き方を知りたい」という方は、ぜひご活用ください。
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早速、相続で土地を取得した場合の遺産分割協議書の書き方について解説していきます。
なお、冒頭でも書きましたが、相続登記の際に提出する遺産分割協議書の場合、「不動産の部分のみ」を書けば問題ありません。
不動産以外に現金や株式などを相続していたとしても、現金や株式などの情報は載せなくても良いということです。
早速、相続登記用の遺産分割協議書の雛型を以下に載せるので、文面をコピーしてご活用ください。
土地のみ特定の相続人が相続する場合の遺産分割協議書の雛型です。
遺産分割協議書 被相続人 田中太郎(令和○年○月○日死亡) 生年月日 昭和○年○月○日 本籍 東京都杉並区阿佐谷南○丁目○番地 最後の住所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 上記被相続人 田中太郎の死亡により開始した相続について、田中まり、田中崇、田中宏の相続人全員が遺産分割協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。 相続人田中まりは、次の土地を相続する。 所在 埼玉県草加市八幡町 地番 510番66 地目 宅地 地積 185.75平方メートル 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を3通作成し、署名押印の上、各自1通を保管する。 令和○年○月○日 住 所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 相続人 田中 まり 印 住 所 岡山県岡山市東区西大寺東○ー○ー○ 相続人 田中 崇 印 住 所 京都府京都市東山区下池田町○ー○ 相続人 田中 宏 印 |
※氏名は自署(手書き)で、印鑑登録証明書と同じ字体で書きましょう。
土地の所在・地番・地目・地積は、土地の登記簿(登記事項証明書)の表題部に記載されている情報を転載しましょう。
土地のみを共有名義で相続する場合の遺産分割協議書の雛型です。
遺産分割協議書 被相続人 田中太郎(令和○年○月○日死亡) 生年月日 昭和○年○月○日 本籍 東京都杉並区阿佐谷南○丁目○番地 最後の住所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 上記被相続人 田中太郎の死亡により開始した相続について、田中まり、田中崇、田中宏の相続人全員が遺産分割協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。 下記の土地は、田中まりが持分2分の1、田中崇が持分2分の1を相続する。 所在 埼玉県草加市八幡町 地番 510番66 地目 宅地 地積 185.75平方メートル 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を3通作成し、署名押印の上、各自1通を保管する。 令和○年○月○日 住 所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 相続人 田中 まり 印 住 所 岡山県岡山市東区西大寺東○ー○ー○ 相続人 田中 崇 印 住 所 京都府京都市東山区下池田町○ー○ 相続人 田中 宏 印 |
※氏名は自署(手書き)で、印鑑登録証明書と同じ字体で書きましょう。
土地の所在・地番・地目・地積は、土地の登記簿(登記事項証明書)の表題部に記載されている情報を転載しましょう。
複数の土地をそれぞれ相続した場合の遺産分割協議書の雛型です。
遺産分割協議書 被相続人 田中太郎(令和○年○月○日死亡) 生年月日 昭和○年○月○日 本籍 東京都杉並区阿佐谷南○丁目○番地 最後の住所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 上記被相続人 田中太郎の死亡により開始した相続について、田中まり、田中崇、田中宏の相続人全員が遺産分割協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。 1. 相続人田中まりは、次の土地を相続する。 所在 埼玉県草加市八幡町 地番 510番66 地目 宅地 地積 185.75平方メートル 2. 相続人田中崇は、次の土地を相続する。 所在 岡山県岡山市東区西大寺東 地番 501番地9 地目 宅地 地積 196.55平方メートル 3. 相続人田中宏は、次の土地を相続する。 所在 京都府京都市東山区下池田町 地番 210番1 地目 宅地 地積 174.85平方メートル 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を3通作成し、署名押印の上、各自1通を保管する。 令和○年○月○日 住 所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 相続人 田中 まり 印 住 所 岡山県岡山市東区西大寺東○ー○ー○ 相続人 田中 崇 印 住 所 京都府京都市東山区下池田町○ー○ 相続人 田中 宏 印 |
※氏名は自署(手書き)で、印鑑登録証明書と同じ字体で書きましょう。
土地の所在・地番・地目・地積は、土地の登記簿(登記事項証明書)の表題部に記載されている情報を転載しましょう。
土地と建物をそれぞれ相続した場合の遺産分割協議書の雛型です。
遺産分割協議書 被相続人 田中太郎(令和○年○月○日死亡) 生年月日 昭和○年○月○日 本籍 東京都杉並区阿佐谷南○丁目○番地 最後の住所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 上記被相続人 田中太郎の死亡により開始した相続について、田中まり、田中崇、田中宏の相続人全員が遺産分割協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。 1. 相続人田中まりは、次の土地を相続する。 所在 埼玉県草加市八幡町 地番 510番66 地目 宅地 地積 185.75平方メートル 2. 相続人田中崇は、次の建物を相続する。 所在 埼玉県草加市八幡町510番66 家屋番号 510番66 種類 居宅 構造 木造かわらぶき2階建 床面積 1階75.25㎡ 2階56.75㎡ 3. 相続人田中宏は、次の遺産を相続する。 武蔵野銀行 ○○支店の被相続人名義の預金 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を3通作成し、署名押印の上、各自1通を保管する。 令和○年○月○日 住 所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 相続人 田中 まり 印 住 所 岡山県岡山市東区西大寺東○ー○ー○ 相続人 田中 崇 印 住 所 京都府京都市東山区下池田町○ー○ 相続人 田中 宏 印 |
※氏名は自署(手書き)で、印鑑登録証明書と同じ字体で書きましょう。
土地の「所在」「地番」「地目」「地積」は、土地の登記簿(登記事項証明書)の表題部に記載されている情報を転載しましょう。
建物も同様に、登記簿(登記事項証明書)に記載されている「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」を正確に記載してください。
最後に応用編として、土地を代償分割で分ける場合の遺産分割協議書の雛型も掲載します。
代償分割とは、特定の相続人が土地を相続する代わりに、他の相続人に代償金を支払う分割方法をいいます。
例えば、相続財産が1,000万円の価値を持つ土地のみで、2人の子ども(Aさん・Bさん)で遺産を分割する場合を想定してみてください。この場合、Aさんが土地を相続する代わりに、Bさんに500万円の代償金を支払うことで遺産を平等に分割できます。
遺産分割協議書 被相続人 田中太郎(令和○年○月○日死亡) 生年月日 昭和○年○月○日 本籍 東京都杉並区阿佐谷南○丁目○番地 最後の住所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 上記被相続人 田中太郎の死亡により開始した相続について、田中崇、田中宏の相続人全員が遺産分割協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。 1. 相続人 田中崇は、次の土地を相続する。 所在 埼玉県草加市八幡町 地番 510番66 地目 宅地 地積 185.75平方メートル 2. 相続人 田中崇は、前項に記載された遺産を取得する代償として、相続人 田中宏に対して、金500万円を令和○年○月○日までに支払う。 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を2通作成し、署名押印の上、各自1通を保管する。 令和○年○月○日 住 所 岡山県岡山市東区西大寺東○ー○ー○ 相続人 田中 崇 印 住 所 京都府京都市東山区下池田町○ー○ 相続人 田中 宏 印 |
※氏名は自署(手書き)で、印鑑登録証明書と同じ字体で書きましょう。
土地の所在・地番・地目・地積は、土地の登記簿(登記事項証明書)の表題部に記載されている情報を転載しましょう。
遺産分割協議書 被相続人 田中太郎(令和○年○月○日死亡) 生年月日 昭和○年○月○日 本籍 東京都杉並区阿佐谷南○丁目○番地 最後の住所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 上記被相続人 田中太郎の死亡により開始した相続について、田中崇、田中宏の相続人全員が遺産分割協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。 1. 相続人 田中崇は、次の土地を相続する。 所在 埼玉県草加市八幡町 地番 510番66 地目 宅地 地積 185.75平方メートル 2. 相続人 田中崇は、前項に記載された遺産を取得する代償として、相続人 田中宏に対して、金500万円を令和○年○月○日までに支払う。 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を2通作成し、署名押印の上、各自1通を保管する。 令和○年○月○日 住 所 岡山県岡山市東区西大寺東○ー○ー○ 相続人 田中 崇 印 住 所 京都府京都市東山区下池田町○ー○ 相続人 田中 宏 印 |
先に雛型をお見せしましたが、ここからは改めて、土地を含む遺産分割協議書の書き方をパートごとに詳しく解説していきます。
実は、遺産分割協議書には決まった書式はありません。そのため、遺産分割協議書の雛型を探すと、細かい表現の違う文面が見つかるでしょう。
ただし、決まった書式は無いといいつつも、必要な情報が記載されていなければ、せっかく作成しても法的に無効になってしまいます。
そのため、今回これから紹介する書き方を参考に、法的に有効な遺産分割協議書を作っていくのがおすすめです。
ここでは、土地などの不動産以外(例えば預貯金、株式、自動車など)についても文例を載せておくので、ぜひ参考にしてみてください。
【文例1】
遺産分割協議書 被相続人 田中太郎(令和○年○月○日死亡) 生年月日 昭和○年○月○日 本籍 東京都杉並区阿佐谷南○丁目○番地 最後の住所 埼玉県草加市八幡町○ー○ |
【文例2】
遺産分割協議書 被相続人の表示 氏名 田中太郎 生年月日 昭和○年○月○日 死亡日 令和○年○月○日 本籍地 東京都杉並区阿佐谷南○丁目○番地 最後の住所 埼玉県草加市八幡町○ー○ |
タイトルは「遺産分割協議書」としましょう。
その後に、被相続人(亡くなった方)の情報を書きます。氏名・生年月日・死亡した日・本籍地・最後の住所地を書いて、被相続人が誰であるか明確に特定できる情報を書いてください。
本籍地は「除籍謄本」、最後の住所は「住民票(除票)」などを参考に、正確に記載してください。
【文例1】
上記被相続人 田中太郎の死亡により開始した相続について、田中まり、田中崇、田中宏の相続人全員が遺産分割協議を行い、次のとおり遺産分割協議が成立した。 |
【文例2(被相続人の情報を含める場合)】
田中太郎(本籍:東京都杉並区阿佐谷南○丁目○番地)が令和○年○月○日死亡したことに伴う相続につき、共同相続人である田中まり、田中崇、田中宏は、下記のとおり遺産分割協議を行い、これに同意した。 |
前書き・前文は、具体的な相続財産を記す前に記載する文章のことです。
ここには必ず相続人全員の名前を記載し、相続人全員で遺産分割協議をして作成した書面である旨を記してください。
遺産分割協議で決めた相続財産の分割方法について記載していきます。まずは不動産についての書き方です。
【文例】
1. 相続人田中まりは、次の土地を相続する。 所在 埼玉県草加市八幡町 地番 510番66 地目 宅地 地積 185.75平方メートル |
土地の「所在」「地番」「地目」「地積」は、土地の登記簿(登記事項証明書)の表題部に記載されている情報を転載しましょう。一般的な住所とは異なるので注意しましょう。
【文例】
1. 次の不動産については、相続人 田中まりが取得する。 <土地> 所在 埼玉県草加市八幡町 地番 510番66 地目 宅地 地積 185.75平方メートル <建物> 所在 埼玉県草加市八幡町510番66 家屋番号 510番66 種類 居宅 構造 木造かわらぶき2階建 床面積 1階75.25㎡ 2階56.75㎡ |
土地の「所在」「地番」「地目」「地積」は、土地の登記簿(登記事項証明書)の表題部に記載されている情報を転載しましょう。
建物も同様に、登記簿(登記事項証明書)に記載されている「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」を正確に記載してください。
どちらも、一般的な住所とは異なるので注意しましょう。
【文例】
1. 次の不動産については、相続人 田中崇が取得する。 (一棟の建物の表示) 所在 東京都○○区○○1丁目2番地3 構造 鉄筋コンクリート造陸屋根4階建 床面積 1階 400.00㎡ 2階 400.00㎡ 3階 400.00㎡ 4階 200.00㎡ (専有部分の建物の表示) 家屋番号 東京都○○区○○1丁目2番地3 建物の名称 502 種類 居宅 構造 鉄筋コンクリート造4階建 床面積 5階部分 50.00平方メートル (敷地権の目的たる土地の表示) 土地の符号 1 所在 東京都○○区○○1丁目 地番 2番地3 地目 宅地 地積 1,050.00㎡ (敷地権の表示) 敷地権の種類 所有権 敷地権の割合 1,000分の33 |
上記の情報は全て、不動産登記簿(登記事項証明書)の表題部に記載されているものを正確に書き写しましょう。
マンションは、土地や戸建てと比べると記載項目が多いので、書き漏れが無いよう注意しましょう。
不動産以外にも取得した相続財産がある場合には、以下のように遺産分割協議書に記載していきます。
【文例】
相続人田中まりは、次の遺産を取得する。 1 ○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号123456 2 ゆうちょ銀行 通常貯金 記号○○ 番号○○ |
預貯金を取得した場合には、金融機関名、支店名、種別(普通預金など)、口座番号を正確に記載しましょう。残高は差異があった場合に修正の手間が発生するため、記載しないことをおすすめします。
【文例1(個別に記載する方法)】
次の株式は相続人田中まりが相続する。 ○○証券○○支店の被相続人口座の株式 ・ ○○株式会社 株式500株 |
【文例2(包括的に記載する方法)】
相続人田中まりは、次の遺産を取得する。 ○○証券株式会社○○支店(口座番号○○)に預託している被相続人の金銭、MRF、投資信託、公社債、預け金を含む全ての財産及びその他財産一切の権利 |
有価証券を相続した場合は、証券会社の残高証明書などを参考に、遺産分割協議書に記載しましょう。
自動車を相続で取得した場合は、自動車登録番号と車台番号を記載します。
【文例】
相続人田中まりは、次の遺産を取得する。 普通乗用車1台 自動車登録番号 杉並123 あ 4567 車台番号 AB123C-1234567 |
自動車登録番号と車台番号は、車検証に記載されていますので、正確に書き写しましょう。
遺産分割協議が終了した後に相続財産が見つかった場合の対応についても記載しておくことができます。
【文例1(特定の相続人が相続する場合)】
本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、相続人○○がこれを取得する。 |
【文例2(法定相続分の割合で分割する場合)】
本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、各相続人の法定相続分の割合で取得するものとする。 |
【文例3(価格によって取り扱いを変える場合)】
本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産については、遺産の価格が10万円未満の場合は相続人○○が取得する。価格が10万円以上の場合には、相続人全員での協議によって決定する。 |
このように、遺産分割協議後に見つかった相続財産の取り扱いを決めておくことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
なお、特に記載をしない場合、新たに見つかった相続財産のみについて遺産分割協議を行って、誰が財産を取得するかを決めます。
遺産分割協議書の後書き・末尾文には、相続人全員での協議が成立した旨であることを記載します。
【文例】
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を○通作成し、署名押印の上、各自1通を保管する。 |
相続人全員が原本を1通ずつ保管できるよう、相続人の人数分の遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議書の最後の項目は、日付と相続人全員の署名欄です。
【文例】
令和○年○月○日 住 所 埼玉県草加市八幡町○ー○ 相続人 田中 まり 印 住 所 岡山県岡山市東区西大寺東○ー○ー○ 相続人 田中 崇 印 住 所 京都府京都市東山区下池田町○ー○ 相続人 田中 宏 印 |
※氏名は自署(手書き)で、印鑑登録証明書と同じ字体で書きましょう。
日付は、遺産分割協議が成立して、遺産分割協議書を作成した日を記載します。
署名欄には、住所・氏名・実印が必要です。本籍までは書かなくて構いません。
氏名だけは、自署(手書き)で書く必要があります。遺産分割協議書の他の部分はパソコンで作成しても良いですが、印刷する際に氏名欄だけは記載せずに、空白にしておくと良いでしょう。
氏名の右側には、自治体に印鑑登録している「実印」を押します。
※法律上は、実印でなくても構いません。しかし、法務局や金融機関に遺産分割協議書を提出する際には印鑑登録証明書の添付が必須ですので、協議書に押すハンコも実印が望ましいと考えられます。 |
ここまで解説した内容を参考に相続した土地の遺産分割協議書が書けたら、いよいよ管轄の法務局に足を運んで「相続登記(相続による所有権登記)」を行います。
なお、以前は相続登記は義務ではなかったため、相続した土地の名義を亡くなった方のままにしていても罰則などはありませんでした。
しかしながら、2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続による不動産取得を知った日から「3年以内」に相続登記しなければならなくなります。
正当な理由なく相続登記を放置してしまうと、10万円以下の過料に処される対象となるので注意しましょう。
義務化前の相続で不動産を取得している場合も、施行日から3年以内が期限となるため、できるだけ早めに相続登記を済ませることをおすすめします。
早速、相続登記の流れを解説していきます。
相続登記には、遺産分割協議書以外にもさまざまな書類が必要となります。
以下に、遺産分割協議により不動産を取得した場合の必要書類リストを記載します。
【遺産分割協議を行った場合の相続登記の必要書類リスト】
書類名 | 取得先 |
❶被相続人(亡くなった方)の⼾籍謄本及び除籍謄本 ※出生から死亡までの連続したものが必要 | 被相続⼈の本籍地の市区町村役場 |
❷被相続⼈(亡くなった⽅)の住⺠票の除票 ※本籍地記載のもの。戸籍の附票でも可。 | 被相続⼈の最後の住所地の市区町村役場(※⼾籍の附票は被相続⼈の本籍地の市区町村役場) |
❸相続人全員の⼾籍謄本または抄本 ※被相続人の死亡日以降に作成されたもの | 各相続⼈の本籍地の市区町村役場 |
❹相続関係説明図 | 法務局サイトにひな形あり |
❺不動産を相続する人(新しい登記名義人)の住民票 | 相続人の居住する市町村役場 |
➏固定資産税納税通知書または固定資産税評価証明書 ※登録免許税を計算するために必要 | 市町村から送付されてくるもの |
❼遺産分割協議書 | ー |
❽法定相続人全員の印鑑登録証明書 | 相続人の居住する市町村役場 |
被相続人および相続人全員の戸籍謄本、住民票などを全て揃えるのには時間も手間もかかります。相続人で協力しあって、準備しましょう。
書類の準備ができたら法務局に提出しに行くのですが、法務局はどこでも良いわけではなく、不動産の所在地を管轄する登記所(法務局や出張所)に提出しなければなりません。
管轄する法務局を調べるためには、法務局公式サイトの「管轄のご案内」ページを確認しましょう。
例えば、相続した土地の所在地が東京都の場合は、東京法務局が管轄となります。
管轄が分かったら、管轄の法務局の公式サイトから、登記手続案内を確認しましょう。例えば、東京法務局の公式サイトなら「登記手続きのご案内」ページを確認します。
窓口に赴いて相続登記をする場合には完全予約制となるため、電話して予約日時を確定させて、予約した日に法務局に書類を提出します。
あとは、法務局公式サイトにある登記申請書の様式を使って相続登記用の「登記申請書」を作成し、登記所に申請を行います。
※遺産分割協議した場合の相続登記の書類は、「20)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」を使います。
申請書の提出時には、「登録免許税」の金額分の印紙も必要となるので、現金を持っていくと良いでしょう。
登録免許税は、固定資産税評価額の合計(千円未満切り捨て)×税率(0.4%)です。計算した後、100円未満は切り捨てます。
法務局への申請から登記完了までは1週間~10日程度かかるのが一般的です。登記が完了すると、登記完了証などの書類が送付されます。
専門家ではない一般の方が自分で相続登記申請をする場合、「この書類が足りない」「ここが間違っている」と、何回も呼び出されることが多くあります。 「平日日中に何回も登記所に足を運べない」という方は、司法書士や弁護士など専門家にあらかじめ依頼してしまうのも手です。時間と手間をかけたくない方は、検討してみましょう。 |
最後に、土地の遺産分割協議書についてよくある質問とその答えを用意しました。ぜひ参考にしてください。
相続登記の手続きで提出する場合、遺産分割協議書の「相続財産」の部分は、不動産のみの記載で問題ありません。
なぜならば、相続登記の手続き上で法務局が知りたいのは「誰が不動産を相続するか」であり、預貯金や株券の情報は不要だからです。
例えば、実家を誰が相続するかが遺産分割協議でまとまらないケースなどで、先に預貯金の払い戻しや証券口座の名義変更手続きを済ませることがあります。
後日、実家を相続する相続人が決まった時に、相続登記用に不動産のみを記載した遺産分割協議書を作成して提出すれば問題ありません。
法務局がスムーズに登記を進められるよう、法務局が知りたい情報を漏れなく間違いなく記載しましょう。
土地を相続して相続登記する際、土地を法定相続分と同じ割合で共有で所有する場合には遺産分割協議書は必要ありません。
例えば、相続人が、被相続人の配偶者Aと2人の子どもB・Cの場合、法定相続割合は配偶者Aが2分の1、子どもB・Cがそれぞれ4分の1です。
1つの土地を法定相続割合どおりに共有する場合(配偶者A:土地の2分の1、子どもB:土地の4分の1、子どもC:土地の4分の1を取得)には、相続登記で遺産分割協議書を提出する必要はありません。
なお、土地を共有名義にすると「自由に売却や活用ができない」などのデメリットもあるため、しっかりデメリットを把握した上で選択することをおすすめします。
遺産分割協議書は専門家に依頼せずに自分たちだけで作成することが可能です。本記事で紹介している雛型や書き方を参考にして、作成してみましょう。
しかしながら、複雑なケースの場合は、専門家に依頼することも検討すると良いでしょう。
例えば、相続人間で遺産の分け方に争いが生じている場合には、弁護士に依頼することがおすすめです。他の相続人との交渉は弁護士にしかできない(行政書士や司法書士は行えない)ので注意しましょう。
また、遺産分割協議書の作成だけを依頼する場合には、司法書士や行政書士に依頼することもできます。相続登記も依頼する場合には、登記の専門家である司法書士がいいでしょう。
本記事では「土地を相続した場合の遺産分割協議書」について解説してきました。最後に、本記事で紹介した内容をまとめておきます。
▼本記事で紹介した遺産分割協議書の雛形5パターン
・土地のみ特定の相続人が相続する場合の遺産分割協議書の雛型 ・土地のみを共有名義で相続する場合の遺産分割協議書の雛型 ・複数の土地をそれぞれ相続した場合の遺産分割協議書の雛型 ・土地と建物を相続した場合の遺産分割協議書の雛型 ・【応用編】土地を代償分割で分ける場合の遺産分割協議書の雛型 |
また、基礎知識として遺産分割協議書の全体の書き方についても解説しました。
・タイトルと被相続人の情報 ・前書き ・前文 ・相続財産について(不動産) ・その他の相続財産(預貯金・株式・自動車) ・遺産分割協議後に見つかった相続財産の取り扱い ・後書き ・末尾文 ・日付と相続人全員の署名欄 |
遺産分割協議書を作成した後は、以下の流れで相続登記を行いましょう。
・相続登記に必要な書類を準備する ・管轄の登記所を調べて申請方法を確認する ・登録申請書を作成して登記所で申請する |
相続登記するためには、相続人全員で意見をまとめて遺産分割協議書を用意する必要があります。
もし遺産の分け方で対立している場合には、ぜひ当事務所(弁護士法人サリュ)にご相談ください。