生命保険金は原則遺留分に含まれない!例外ケースと判断基準を解説

この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。

「生命保険金は遺留分に含まれる?」

「多額の生命保険金を受け取った他の相続人に対して不公平さを感じる。遺留分として請求できる?」

生命保険は受取人として指定された1人の相続人が、保険金を受け取ります。生命保険金は金額も大きいため、他の相続人に分配がなければ、不公平に感じてしまいますよね。

結論からお伝えすると、生命保険金は原則として遺留分に含まれません。

そのため、生命保険金を受け取った相続人に対して不公平さを感じていても、原則として遺留分の計算に含めることはできないのです。

ただし、例外として生命保険金が遺留分の対象となるケースもあります。

しかし、生命保険金が遺留分の対象として判断されるには、ある一定の基準をクリアする必要があります。

また、他の遺産があるにもかかわらず、生命保険金に対してのみ遺留分請求をする場合、失敗すると請求自体が認められないという結果になることもあります。そのため、遺留分を主張する場合は慎重に進めることが大切です。

そこで今回は、生命保険金が遺留分の対象となる例外ケースと、生命保険金が遺留分の対象と判断される基準について詳しく解説します。

本記事の内容
・生命保険金が原則として遺留分に含まれない理由
・例外として生命保険金が遺留分の対象となるケース
・生命保険金が遺留分の対象と判断される基準

この記事を最後まで読み進めると、生命保険金を遺留分として含め、遺留分侵害額請求ができるかどうかの判断をすることができます。

他の相続人が生命保険金を受け取り、不公平と感じている人は最後まで読み進めて下さい。

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目次

生命保険金は原則として遺留分に含まれない

生命保険金は、原則として遺留分の対象になりません。

生命保険金は、保険会社から保険金受取人に対して支払われるものなので、被相続人の財産ではなく保険金受取人固有の財産として扱われます。

そのため、生命保険金は原則として、遺留分の計算の基礎となる相続財産に含まれないとされているのです。

下記は、生命保険契約によって発生する「死亡保険金が遺留分の計算に含まれないことが原則である」とした平成16年に実際にあった最高裁判決です。

平成16年10月29日の最高裁判決
本件は、遺産分割事件において、共同相続人の1人を死亡保険金の受取人とする養老保険契約に基づく死亡保険金請求権が特別受益ないしこれに準ずるものとして持戻しの対象となるかが争われた事案である。  

「被相続人を保険契約者及び被保険者とし、共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらない

上記の判決によると、「死亡保険金請求権は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらない」とあるため、生命保険金は原則として遺留分の対象外であることがわかります。

(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

出典:e-GOV 民法九百三条

【例外】生命保険金が遺留分の対象になるケース

しかし、どんな状況でも生命保険金が遺留分の対象とならないかというと、そうではありません。

例外として、下記2つのケースは生命保険金が遺留分の対象となる可能性があります。

【生命保険金が遺留分の対象となる可能性があるケース】

①受け取る相続財産が著しく不公平な場合
②保険金の受取人が被相続人となっていた場合

具体的に詳しく解説します。

受け取る相続財産が著しく不公平な場合

保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に著しく不公平が生じる場合は、生命保険金が遺留分の対象になることがあり得ます。

先ほどの最高裁判決の中でも、下記のように述べられています。

平成16年10月29日の最高裁判決
「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が同条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象となると解する」

ここでは、生命保険金は原則として特別受益には該当しないとしつつも、一定の場合には特別受益に準じた取扱をすることを認めています。

【特別受益とは?】  

一部の相続人だけが被相続人から受けた利益のこと。(贈与・遺贈・死因贈与が対象)
相続人間の不公平を無くして、公平に相続財産を分けるための制度です。  

詳しくは、下記の記事をご覧ください。

特別受益は、遺留分算定の基礎に含まれるため、遺留分の対象にもなると考えられます。

具体的には、生命保険金が資産全体の多くの割合を占めている場合には、他の相続人との間に著しい不公平が生じるため、遺留分の対象となると判断される可能性があります。

例えば、相続財産が500万円を兄妹2人で均等に財産を分割。兄が生命保険の受取人として1億円を受け取るとした場合、兄は総額1億250万円、妹は250万円の受け取りとなり、かなりの不公平が生じます。

このようなケースであれば、生命保険金が不相当に過大であると評価される可能性が高いと言えます。

仮に、生命保険金が遺留分として認められれば、相続財産1億500万円の4分の1である2625万円が遺留分となります。

【寄与分なども合わせて総合的に判断される】  

生命保険金が遺産全体のかなりの割合を占めている場合でも、受取人である相続人が生前被相続人の介護を一手に引き受けていた場合は寄与分(被相続人の財産維持・増加に貢献した相続人が通常もらえる相続分に加えて受け取れる遺産のこと)が考慮され、遺留分の対象とならないこともあります。

 生命保険金が遺留分となるかどうかは、事案ごとに様々な事情を考慮して総合判断されることに注意しましょう。  

寄与分については、詳しく下記の記事にて解説しています。合わせてご覧ください。

保険金の受取人が被相続人となっていた場合

生命保険の契約者および受取人が、被相続人であった場合は遺留分に含めることができます。

大前提として、保険事故発生前に保険料負担者が亡くなった場合には、その生命保険契約に関する権利の取扱いは以下のようになります。

「契約者=保険料負担者=被相続人」の場合  
被相続人が生命保険契約の契約者であるとき、生命保険契約に関する権利は被相続人の「本来の相続財産」となります。  

したがって、他の相続財産と同様に、遺産分割協議によって相続人の中から新たな契約者を決め、承継する事となります。

生命保険金を被相続人が受け取る場合、生命保険金は被相続人のものとなるため、相続財産に含まれます。

例えば、保険の契約者が夫、被保険者が妻、保険金受取人を夫としていた場合、夫が死亡しても被保険者が死亡しているわけではありませんので、夫の相続人全員の共有財産として保険契約が継続します。

したがって、保険契約は夫の固有財産となるため、解約返戻金の相当額が相続財産として評価され、遺留分として含めることができます。

生命保険金が遺留分の対象と判断される基準

具体的に、生命保険金が遺留分の対象と判断される基準としては、「受け取った保険金の額」と「遺産総額」との比率を計算して、不公平が到底容認できないほど著しいかどうかを判断します。

その他、下記の事情も含めて判断がなされます。

【生命保険金が遺留分の対象と判断される基準】

・同居の有無
・介護等の貢献の度合いなど、保険金受取人である相続人とその他の相続人との関係
・各相続人の生活実態

例えば、上記の例で被相続人の相続財産500万円、生命保険金が1億円であったという場合には、遺産総額に占める生命保険金の割合が大きいと考えられます。

生命保険金の受取人が被相続人と同居して介護に貢献していたなどの特別な事情がない限りは、特定の相続人だけが高額な生命保険金を受け取ることは著しく不公平と言えます。

そうなれば、生命保険金が遺留分算定の基礎となる財産に含まれる可能性が高いでしょう。

生命保険金を遺留分侵害額請求するなら他の財産も含めて請求しよう!

生命保険金を含め遺留分侵害額請求をするなら、他の財産も含めて請求をするようにしましょう。

遺留分侵害額請求は、侵害された遺留分を取り戻す権利です。

遺留分は、相続財産に占める遺留分の割合に遺留分権利者の法定相続分を掛け合わせたものが、その人の実際の遺留分額となります。

つまり、生命保険金を含め遺留分侵害額請求をする場合は、生命保険金とその他の相続財産を含め遺留分侵害額請求をする必要があるのです。

例えば、相続財産500万円を250万円ずつ兄と妹で相続、兄が受け取った生命保険金が1億円、相続人の妹が遺留分侵害額請求をする場合で見ていきましょう。

この場合の遺留分は、相続財産500万円+生命保険金1億円=1億500万円の2分の1を相続人2人で均等割りした金額2625万円です。そのうち妹は、250万円を相続分として受け取っているため、差し引いた2375万円を遺留分侵害額として請求することとなります。

生命保険金のみに対して遺留分侵害額請求をして、請求が失敗すると請求自体が全く認められない可能性が高くなります。


手間と費用を無駄にしないためにも、他の財産も含めてまとめて請求しましょう。

生命保険を遺留分侵害額請求したい方は弁護士に相談すべき

相続人の一人が多額の生命保険金を受け取り、遺留分侵害額請求をしたいと考えている方は、弁護士に相談をしましょう。

遺産相続に納得がいかなかったり、不公平を感じる場合、他の相続人との話し合いや交渉で解決を目指すことはできますが、なかなか一筋縄ではいきません。

ここまでお伝えしたとおり、生命保険金は原則として遺留分として含まれません。

ですが、【例外】生命保険金が遺留分の対象になるケースでお伝えしたように、例外的に遺留分の対象となる場合もあります。

しかし、どのようなケースが遺留分に含まれるのか、明確な判断基準があるわけではなく、個人で手続きを進めるのはかなり困難です。

弁護士に相談をすれば、生命保険金が遺留分の対象となるケースなのか、プロの観点からアドバイスを受けることができます。

また、生命保険金の受け取りで不公平と感じている相手との交渉が上手くいかない場合や、話し合いが進まない場合、弁護士に依頼をすれば代理人として交渉を進めてもらうことが可能です。

そのため、遺留分侵害額請求を検討している場合は、まずは弁護士に相談をしてみましょう。

生命保険金を遺留分侵害額請求したい方は当事務所へ


生命保険金を遺留分に含めて請求したいとお悩みがあれば、ぜひ弁護士法人サリュの無料相談をぜひ利用ください。  

当事務所は、創業当時に一般的だった「法律相談は30分5,000円」という常識を打ち破り、いち早く無料法律相談を実施してきました。  

初めての人でも安心してご利用いただけるよう、依頼者様に寄り添った手厚いサポートを提供しています。  

・生命保険金を受け取った相続人に不公平さを感じる
・生命保険金を遺留分に含めて遺留分侵害額請求をしたい
・不利な相続はしたくない  

このような場合は、当事者同士の話し合いでは解決することが難しいことが多いです。依頼者様それぞれの状況に合わせて相続手続きをどうするべきかの的確なアドバイスを致します。  

まずは、無料で相談を受け付けておりますのでお気軽にお問合せ下さい。

まとめ

この記事では、生命保険と遺留分の関係について詳しく解説をしてきました。

最後にまとめると、生命保険は原則として遺留分に含むことはできません。

ただし、例外として下記2つのケースは生命保険金が遺留分の対象となる可能性があります。

【生命保険金が遺留分の対象となる可能性があるケース】

①受け取る相続財産が著しく不公平な場合
②保険金の受取人が被相続人となっていた場合

具体的に、生命保険金が遺留分の対象と判断される基準は、以下のとおりです。

【生命保険金が遺留分の対象と判断される基準】

・受け取った保険金の額と遺産総額との比率
・同居の有無
・介護等の貢献の度合いなど、保険金受取人である相続人とその他の相続人との関係
・各相続人の生活実態

生命保険金を遺留分侵害額請求するなら、他の財産も含めて請求をします。

生命保険金のみに対して遺留分侵害額請求をして、請求が失敗すると請求自体が全く認められない可能性が高くなるため注意しましょう。

どのようなケースが遺留分に含まれるのか、明確な判断基準があるわけではなく、個人で手続きを進めるのはかなり困難です。

生命保険金を含め遺留分侵害額請求をする場合は、弁護士法人サリュの無料相談に一度ご連絡ください。

このようなケースは、当事者同士の話し合いでは解決することが難しいことが多いです。依頼者様それぞれの状況に合わせて相続手続きをどうするべきかの的確なアドバイスを致します。

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