弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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同志社大学法科大学院客員教授
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「相続放棄」とは、被相続人の相続財産について相続する権利を放棄することをいいます。「相続財産に借金が多い」「親子の縁を切ってるから相続すらしたくない」などの場合に選択する方が多いでしょう。
相続放棄の手続きを「弁護士に依頼すべきか」悩む方がいるかもしれませんが、失敗したくないなら、弁護士に依頼すべきです。
なぜならば、原則として被相続人の死後3カ月以内に行わなければならず、スケジュールがタイトとなっているから。さらに、相続放棄の手続きに不備があると、やり直しができないため二度と相続放棄できなくなるからです。加えて、弁護士に依頼すると、相続放棄に必要な書類準備も任せられるからです。
さらに「依頼先は司法書士じゃダメなの?」と思う方もいるかもしれませんが、弁護士がベストといえます。
この記事では、なぜ相続放棄は専門家に依頼すべきなのか、なぜ依頼先は弁護士が良いのかを詳しく解説していきます。さらに、弁護士に依頼した場合の流れや、依頼費用の相場、注意点まで網羅的に解説します。
相続放棄を弁護士に依頼すべきか迷っている方は、この記事だけ読めば全ての疑問がクリアになるはずです。ぜひ最後まで読んでみてください。
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冒頭でも解説した通り、相続放棄を行う場合、自分で手続きを行うよりも、専門家に手続きを依頼するのがベストです。その理由は、主に3つあります。
相続放棄の手続きを専門家に依頼すべき理由 ❶自分で手続きして却下されると二度と相続放棄の申述ができなくなるから ❷相続放棄できる期間が「原則3カ月」と短いから ❸相続放棄に必要な面倒な書類準備も任せられるから |
自分で手続きを行えば数千円で済みますが、リスクがあることをしっかり覚えておくと良いでしょう。
相続放棄を専門家に依頼すべき最も大きな理由は、「自分で手続きをして却下されてしまった場合に、二度と相続放棄の申述ができなくなるから」です。
相続放棄を行うには、裁判所に「相続の放棄の申述」を行い、裁判所の判断により「受理(許可)」か「却下」のどちらかの結果が届きます。多くの場合は受理(許可)されますが、不備などがあり申述が却下されてしまうと、二度目の相続放棄の申述はできません。
※却下された場合に「即時抗告」という不服申し立て手段はありますが、この即時抗告が認められることは稀です。
相続放棄できる期間(熟慮期間)は、原則として、相続の開始があったことを知ってから3カ月以内です。正当な理由がない限り、この熟慮期間を過ぎた相続放棄は認められません。
3カ月というのはあっという間で、故人が亡くなってから葬式や四十九日の法要、遺品整理などに追われているうちに過ぎ去ってしまいます。
相続放棄の手続きに時間を割けないケースも多いため、専門家に手続きを依頼すると安心です。
相続放棄を自分で行わずに専門家に依頼すべき理由として、面倒な書類準備も任せられるメリットがあります。
相続放棄には以下のような書類が必要となります。この書類を準備するのが大変なケースも多く存在します。
相続放棄に必要な書類の例(配偶者の場合) 1. 相続放棄の申述書 2. 被相続人(亡くなった方)の住民票除票又は戸籍附票 3. 被相続人(亡くなった方)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 4. 申述人(相続放棄する方)の戸籍謄本 |
※故人と相続人の関係によって、準備すべき書類の数が異なります。詳細は、裁判所「相続の放棄の申述」を確認してください。
例えば、姪・甥による代襲相続の場合、上記に加えて、被相続人(亡くなった方)の出生時から死亡時まで全ての戸籍謄本や、代襲者(亡くなっている人)の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本なども必要となり、用意すべき戸籍謄本の数が膨大になる可能性があります。
書類準備も専門家に依頼してしまえば、こうした煩雑な書類の取り寄せも一括して取り寄せることができます。
相続放棄を専門家に依頼する場合、主に選択肢は「弁護士」または「司法書士」の2つになるでしょう。
しかし、いくつかの理由から「相続放棄の依頼先は弁護士がベスト」といえます。その理由について解説していきます。
相続放棄の依頼先として弁護士がベストな理由 【理由1】司法書士だとできないことが多い 【理由2】3カ月の期間を過ぎても放棄できる可能性がある 【理由3】債権者への対応も任せられる 【理由4】相続放棄に関する最適なアドバイスができる |
相続放棄を弁護士に依頼する場合の費用は「着手金10万円~15万円+実費」が相場です。一方で、司法書士に頼むと4万円~7万円といわれています。司法書士の方が安価なため、「司法書士で良いのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、司法書士には「代理権」がないため、本人に代わって手続きを代行することはできません。依頼したとしても書類作成しか代行できず、結局は依頼者自らが行わなければならないのです。結果として、手間も時間もかかってしまいます。
一方、弁護士は代理権があり、本人に代わって直接手続きを進めることが可能です。
相続放棄できる期間が「3カ月」と限られていることを考えると、手間も時間もかからない弁護士に依頼するのが最もおすすめです。
前述した通り、相続放棄は原則として、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に行わなければなりません(民法第915条1項本文)。期間が過ぎると原則として相続放棄できません。
しかし、ある一定の事情が認められれば、その期間を過ぎても相続放棄できる可能性があります。
例えば、「親と全く連絡を取っていなかったため、親が亡くなったことを知らなかった」などのケースが該当します。その詳しい事情が妥当であることを認めてもらえれば、相続放棄が可能になります。
具体的には「上申書(事情説明書)」を作成して提出するのですが、認めてもらうためには専門的な知識が必要となります。そのため、期間を過ぎてから相続放棄したいケースでは、相続放棄できる可能性を上げるため、早めに弁護士に依頼しましょう。
依頼先が弁護士なら債権者との交渉も可能なため、相続放棄と同時に、債権者への対応も同時に依頼することができます。
相続放棄する場合、遺産の中に借金などが含まれているケースが多いでしょう。相続放棄が完了すれば堂々と支払いを断ることができるでしょうが、相続放棄完了前に借金の借入先から支払督促が来る可能性があります。
弁護士に債権者対応も依頼すれば、相続放棄までの間も安心して過ごすことができるでしょう。
相続放棄を弁護士に依頼すれば、相続放棄に関するさまざまな助言・アドバイスを受けることができます。
例えば、「本当に相続放棄が良いのか?限定承認が良いのか?」を素人が判断するのは難しいものです。相続放棄がベストな選択かどうか、弁護士に相談にすることができます。
※相続を放棄するかどうかを考える際に、他の選択肢として「限定承認」があります。限定承認とは、借金などのマイナスの遺産を清算し、財産が余るならその分を相続する、という方法です。 |
その他、手続きに必要な書類や入手先などについても詳しくアドバイスをもらうことができます。
相続放棄を弁護士に依頼した場合の流れは、以下のようになります。
ステップ1 | 相続放棄を弁護士に依頼 |
ステップ2 | 弁護士が書類作成・家庭裁判所への申述を代行 |
ステップ3 | 家庭裁判所からの相続放棄照会書に回答をする |
ステップ4 | 相続放棄申述受理通知書を受け取って完了 |
まずは、どの弁護士に相続放棄を依頼するか決めて相談を申し込みます。依頼する弁護士を選ぶ際は、「相続放棄の実績が豊富か」「弁護士費用が明示されているか」などを最低条件に選ぶのがおすすめです。
詳しくは、「相続放棄に強い弁護士に依頼することが大切」で後述しています。
弁護士に相続放棄を依頼すると、あとは弁護士の方で必要な手続きを代行してくれます。具体的には、必要書類の収集(戸籍謄本など)、家庭裁判所に提出する申述書の作成などです。
戸籍謄本や住民票などの準備は、実費がかかるので、依頼者本人が取得できるものは取得すると良いでしょう。
相続放棄の申述から1週間~10日程度で、家庭裁判所から「相続放棄照会書」が届きます。照会書が届いたら回答書を返送する必要があります。
弁護士が手続きを代行している場合は弁護士宛てに直接届くことが多いでしょう。弁護士宛てに直接照会書が届いた場合は、弁護士が回答書の記入も代行してくれます。
万が一、依頼者の自宅宛てに照会書が届いたら、弁護士に助言を受けて対応しましょう。
相続放棄が完了すると、担当弁護士または申述人宛てに「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これで相続放棄の手続きは完了となります。
借金などがある場合の債権者への通知が必要な場合は、弁護士から改めて通知をするなどの対応を行います。
相続放棄の手続きを弁護士に依頼した場合の費用は、【着手金10万円~15万円程度+実費】が相場です。また、複数の相続人が同時に依頼する場合には、2人目からは依頼費用が安くなるケースが多いでしょう。
着手金 | 10万円~15万円程度が一般的 (故人が亡くなってから3カ月以内の相続放棄手続きの基本料金) |
実費 | 戸籍謄本の収集を依頼する場合の実費 |
別途費用が発生するケースの例 | ・申述期間(故人が亡くなってから3カ月)を過ぎている場合 ・債権者対応を行う場合 ・海外在住者の場合 ・財産調査を行う場合 |
※弁護士事務所によって異なる場合があります。
着手金でできる範囲は、故人が亡くなってから3カ月以内の相続放棄の申述手続きが一般的です。熟慮期間を過ぎてからの相続放棄には、別途費用がかかることが多いです。また、戸籍謄本の収集などを依頼する場合は実費がかかります。
依頼する範囲や事例によって、弁護士費用がさらに上乗せされるケースもあるので注意しましょう。なるべく弁護士費用を抑えたいなら、戸籍謄本の取得は依頼者本人が行うなどすると良いでしょう。
最後に、相続放棄を弁護士に依頼する場合の注意点について解説していきます。
相続放棄を弁護士に依頼する前に知っておくべき注意点 ❶相続放棄できる期限は原則3カ月以内 ❷遺産を使ったり処分したりすると相続放棄できなくなる ❸相続放棄が受理されると取り消しはできない ❹相続放棄すると代襲相続もできなくなる ❺相続放棄に強い弁護士に依頼することが大切 |
一般的には相続人は故人が亡くなってすぐにその事実を知ることが多いはずなので、相続放棄できる期間は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」です。
(相続の承認又は放棄をすべき期間) 第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。 引用:民法第915条1項 |
期限が過ぎると相続放棄できなくなるため、期限が迫っている場合には早めに弁護士に相談しましょう。
相続放棄とは、被相続人の相続財産について相続する権利(プラスの財産もマイナスの財産も全て)を放棄することをいいます。そのため、遺産に手を付けてしまうと相続放棄できなくなるので注意しましょう。
なお、相続放棄した後でも遺産を使ったり勝手に処分したりすると、相続放棄が無効と扱われる可能性があるので気をつけてください。
相続放棄を申請して受理されると、撤回することはできません。「相続放棄したけど、財産が見つかったので相続放棄を取り消したい」「相続放棄をやめて限定承認に変更したい」のようなことはできないので注意しましょう。
ただし、脅迫や詐欺、錯誤(思い違い)によって相続放棄した場合、未成年者が法定代理人の同意を得ないで相続放棄した場合、成年被後見人が相続放棄した場合、後見監督人がいるにもかかわらず、後見監督人の同意を得ずに後見人が相続放棄した場合、被保佐人が保佐人の同意を得ないで相続放棄した場合、取り消しできる可能性があります。
ただしあくまでこれは例外であり、自分の意思で(錯誤などがなく)相続放棄した場合は撤回できません。
相続放棄する場合は、十分に検討した上で手続きを進めるようにしましょう。
代襲相続とは、相続人である親に代わって子どもが相続することをいいます。親が相続放棄した場合は、その子どもも代襲相続できなくなるので注意しましょう。
例えば、相続順位1位である被相続人(亡くなった方)の子どもAが既に亡くなっている場合、相続する権利はその子どもB(亡くなった方の孫)に引き継がれます。ただし、子どもAが相続放棄してしまうと、その相続人は初めからいなかったものとして扱われるため、孫Bも代襲相続できなくなります。
前述した通り、相続放棄を却下されてしまうと二度と相続放棄の申述ができなくなります。相続放棄に失敗しないためには、相続放棄に強い弁護士に依頼しましょう。
相続放棄に強い弁護士の条件 ❶相続放棄の手続きを処理した経験や実績をたくさん持っている ❷相続放棄まわりのノウハウ(債権者対応など)も豊富 ❸相続放棄に特化した価格メニューを公開している ❹できれば、相続放棄の解決事例をWebサイトで公開している |
もし相続放棄を依頼する弁護士選びに迷ったら、ぜひ当事務所「弁護士法人サリュ」にご相談ください。
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海外に居住している方の相続放棄や、相続開始から3カ月経過後の相続放棄など、難しいケースでも対応させていただいています。
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この記事では、「相続放棄を弁護士に依頼すべきか?」という点について詳しく解説してきました。最後にこの記事の内容を簡単に振り返ってご紹介します。
まず、相続放棄は自分で行わずに専門家に依頼した方が良い!ということを説明しました。
相続放棄の手続きを専門家に依頼すべき理由 ❶自分で手続きして却下されると二度と相続放棄の申述ができなくなるから ❷相続放棄できる期間が「原則3カ月」と短いから ❸相続放棄に必要な面倒な書類準備も任せられるから |
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司法書士に依頼しても、結局は自分で手続きをしなければならないため、手間がかかります。手間をかけたくない方は弁護士に依頼するのがおすすめです。
相続放棄が却下されてしまうと、二度と相続放棄の申述を行うことはできなくなります。失敗したくない方はぜひ相続放棄に強い弁護士に依頼し、確実に相続放棄を実現させましょう。