弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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同志社大学法科大学院客員教授
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「親が亡くなったけど、親名義の預貯金はいつ、どうやって引き出せばいいのだろう。」
「勝手に引き出すのは違法なのだろうか。」
亡くなった人の預貯金はいつ・どのようにしたら引き出せるのか気がかりですよね。
結論から言えば、相続人全員の同意をとって相続手続きを経て引き出すのが原則ですが、他の相続人の同意がなくても、預金の払戻しをすることができる「預金の払戻し制度」があります。
預金の払戻し制度とは別に、勝手に引き出した場合は、勝手に引き出すことが刑事上立件されて罪に問われることは少ないですが、他の相続人に無断で引き出すなど、引き出し方を間違えてしまうと民事上の不当利得には該当する可能性は十分にあります。他の相続人と民事上のトラブルに発展するおそれがあるため、引き出しは順当な手続きを経て慎重に行わなければいけません。
本記事では、スムーズに預貯金を引き出せるよう、または必要に応じて適切なタイミングで預貯金を引き出せるよう次のように内容をまとめました。
本記事のポイント |
相続する預貯金を引き出せるタイミング 相続する預貯金を引き出す流れと方法、注意点 |
この記事を読めば預貯金の引き出しについて必要な知識が身に着き、トラブルなく預貯金を相続できるようになります。
是非最後まで読んでいってくださいね。
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口座の名義人が亡くなったら、通常は、親族が、金融機関に死亡した事実を伝え、それを知った金融機関は、口座を凍結します。これは死亡時の預貯金額を確定させることと、勝手な引き出しを防止することが目的です。
その後、亡くなった人名義の預貯金は、原則、相続手続きが終わったら引き出せるようになります。
亡くなった人名義の預貯金は相続人全員の共有になります。誰が預貯金を承継するかを法的に確定させてから引き出すことが望ましいため、亡くなった人名義の預貯金は相続手続き(※)が終わるまで引き出せない仕組みになっています。
※ 相続手続きとは、遺言書がある場合は遺言書の検認手続きを指し、遺言書がない場合は遺産分割協議(または調停・審判)のことを指します。
とはいえ、相続手続きが完了するまでは平均して数ヶ月、遺産分割協議が長引けば1年以上かかるケースも少なくありません。その間預貯金を全く引き出せないと相続人の生活等に支障が出ることも考えられます。
そこで、相続手続き前に、他の相続人の同意がなくても、預金を引き出すことができる制度が法律で2つ用意されております。それは、金融機関単独の判断による払戻しと、家庭裁判所の判断による払戻しです。
なお、法律上の制度ではありませんが、事実上、金融機関に死亡した事実を隠して凍結させずに、口座の利用を継続するという事例も存在しています。
死亡した人の預金を引き出せるタイミング | |
相続手続き後 | 原則 相続手続きが終わらないと引き出しができない |
相続手続き完了前 の 預金の払戻し制度 | 例外1 金融機関単独の判断による払戻し ・戸籍等の必要書類が揃っている ・上限150万円 |
例外2 家庭裁判所の判断による払戻し ・遺産分割調停または審判中であること ・払戻しの必要性があること ・他の相続人の利益を害しないこと | |
凍結前 | 例外3 凍結していない預金があるとき ・亡くなった人のために使い、証拠を保管すること |
【凍結前の引き出しは違法ではないのか?】 正当な手順を経ず亡くなった人の口座から預貯金を引き出したとしても、家族の場合は刑事上立件されて罪に問われることは少ないです。日本では「法は家庭に入らず」という考え方から、窃盗や横領について親族間で起こったことは刑事上の罪が免除される法律があるからです。また、引き出したとしても、それが被相続人の必要経費の支払いなどに使われていて相続人が利益を得ているのか不明確な場合が多いことも理由です。 ただし民事上では責任を問われる可能性があるので、凍結前の引き出しは慎重に行う必要があります。詳しくはトラブルを回避するための注意点をご覧ください。 |
次章以降ではそれぞれの段階で引き出すための条件や方法を順にお伝えしていきます。気になる章がある場合は下記リンクから移動してくださいね。
最初に原則である相続手続き後に預貯金を引き出す流れと方法について紹介していきます。
亡くなった人の預貯金引き出しに関する重要な基礎知識の部分となるので、しっかり読んでいってくださいね。
まずは預貯金を引き出すまでの流れを理解しましょう。
引き出しについて理解するには口座凍結についても知っておく必要があるので、ここでは口座の凍結からお伝えしていきます。
口座の名義人が亡くなったらまずはその事実を金融機関に伝えて口座の凍結手続きをしましょう。
金融機関は口座の名義人が亡くなったことを知ると口座を凍結させて引き出しなどができないようにします。これは死亡時の預貯金額を確定させることと、勝手な引き出しを防止することが目的です。
亡くなったら自動的に口座が凍結される仕組みだと思っている人も多いと思いますが、役所と金融機関にそのような連絡システムはないので、誰か(主に親族)が亡くなったことを連絡しに行かなければなりません。
連絡は電話で伝えることもできますが、凍結解除のための手続き用紙を受け取っておくと後々スムーズなため、窓口に伝えに行くのがおすすめです。
口座を凍結したら次は遺産分割協議を始めます。これは相続人が複数人いて遺言書がない場合のみ必要なので、遺言書がある場合や相続人が一人の場合はスキップしてください。
凍結した口座を解除して引き出すためには、その預貯金を誰がいくら相続するのかを確定し、金融機関にそれを証明しなければいけません。
そのためには遺産分割協議を行い、相続人全員が押印した遺産分割協議書を作成して提出する必要があります。
遺産分割協議とは… 共同相続人全員で相続財産の分け方を話し合って取り決めること。全員の合意がないと成立しない。 |
スムーズにいけば1ヶ月以内に終わることもありますが、分け方で揉めるようなら数年かかることも珍しくありません。
遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合は遺産分割調停・審判に移行して相続財産の分け方を決定します。
誰が預貯金を相続するか取り決めたら、必要書類を準備して銀行に提出します。
必要書類の詳細については次節で詳しく解説しますが、相続のケースによっては多くの書類が必要になるので、STEP2と並行しながら進めていくといいでしょう。
必要書類が受理されたら数週間で口座の凍結が解除され、預貯金を引き出せるようになり、預貯金に関する相続手続きは完了です。
書類の確認に時間を要する場合は1ヶ月近くかかることもあると心得ておきましょう。
相続した預貯金を引き出す方法とは即ち必要書類を揃えて提出することです。必要書類は相続の形式によって異なるので、自分に必要な書類を下表で確認して揃えましょう。
金融機関によっては必要な文書や発行日付の期限が異なるので、事前にどのような提出物が必要か必ず確認してください。
【金融機関に提出する書類】
共通 | ・各金融機関が定める相続の用紙(STEP1で取得しておく) ・預金通帳 ・キャッシュカード ・預貯金を相続する人の実印 ・預貯金を相続する人の印鑑証明書 |
遺言書がある場合 | ・遺言書 ・検認調書または検認済証明書(自筆証書遺言の場合) ・亡くなった人の戸籍謄本または除籍謄本→① |
遺産分割した場合 | ・遺産分割協議書→② ・亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本または除籍謄本→③ ・相続人全員の戸籍謄本→④ ・相続人全員の印鑑証明書 |
上記表の①~④の書類については、集め方や提出の目的、注意事項について個別に解説していきます。
亡くなったことを証明するために必要な書類です。
死亡届が受理されると戸籍謄本にも「死亡」と明記されます。その戸籍に在籍者が一人もいなくなり、戸籍が閉鎖されたものを除籍謄本と呼びます。
取得は下記に従って進めましょう。
【亡くなった人の戸籍謄本または除籍謄本の取得方法】
申請できる人 | 配偶者または直系の血族 |
申請先 | 亡くなった人の最終本籍地の役所 |
必要書類 | <窓口>・戸籍交付申請書(窓口で入手)・申請する人の戸籍謄本(相続関係を証明するため)・印鑑・本人確認書類・委任状(申請する人が亡くなった人の配偶者・直系血族以外の場合)<郵送>・戸籍交付申請書(役場からダウンロードして記入)・定額小為替(手数料分を郵便局で入手)・申請する人の戸籍謄本のコピー(相続関係を証明するため)・本人確認書類のコピー・委任状(申請する人が亡くなった人の配偶者・直系血族以外の場合)・返信用封筒(切手貼付) |
手数料 | 戸籍謄本…1通450円除籍謄本…1通750円 |
発行までの期間 | <窓口>即日<郵送>~1週間 |
遺産分割で相続の分け方を決めた場合、誰が預貯金を相続するのかを示すために遺産分割協議書が求められます。
遺産分割協議書に決まった書式はありませんが、いくつか決まりがあるので下記にまとめました。
【遺産分割協議書作成の書き方】
<必須記載事項> ・亡くなった人の氏名・住所・死亡日・最後の本籍 ・どの預金を誰が取得するのか明確になっていること ・遺産分割協議が成立した日付 ・相続人全員の氏名・住所・自署・実印の押印 <記入時の注意点> ・戸籍や住民票、不動産登記のとおり一字一句間違えずに記入する必要がある ・一人でも欠けていたら無効 |
遺産分割協議書は、どの預金を誰が取得するかを明確に記載することが必要です。遺産分割協議書は全国の金融機関で利用できます。
銀行によっては、相続届出などの名称で、とりあえず相続人全員が署名して相続人代表者の口座に入金するための独自のフォーマットを用意しているところもあります。それを利用しても解約はできますが、その書式は、相続人代表者が誰にいくら分配するかなどに触れられていないものになりますので、その分配方法をめぐって、後になってもめることもあります。できれば、しっかりと遺産分割協議書を作成して解約しましょう。
なお、遺産分割協議が調停・審判に移行した場合は、遺産分割協議書ではなく調停調書・審判書を金融機関に提出します。
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍は、遺産分割協議書に記載されている相続人が、すべての相続人なのかをどうか、相続人に漏れがないかを裏付ける書類として求められます。遺言書がある場合には、亡くなったことさえ証明できればいいので、被相続人の死亡時の除籍謄本または戸籍謄本で足りるのですが、遺言書が無いために遺産分割をする場合には、相続人に漏れがないことを証明するために、出生から死亡までの戸籍が必要となります。
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を全て集めると、法定相続人は誰なのか、何人いるのかが漏れなく確認できます。
出生から死亡までの戸籍とは… 戸籍は転籍や結婚・離婚、改製のたびに新しい戸籍が作られる。 新しい戸籍には除籍した人など一部の項目が引き継がれない。 |
取得方法は①と同じ方法を死亡から出生まで辿って繰り返していきます。
戸籍が変わるたびに請求する役所も異なることが多いので、数が多い場合は全て揃えるまで1ヶ月近くかかると想定しておきましょう。
法定相続人全員の戸籍謄本も③同様に遺産分割協議書に記載されている相続人全員の情報が正しいか確認するために必要な書類です。
戸籍の集め方は①を参考にしてください。
ここで知っておきたいのが、代襲相続が発生しているケースについてです。
代襲相続とは… 相続人が既に他界している場合、その子孫が代わりに相続すること。 例)父が亡くなり相続が発生したが、息子は既に他界。代わりに孫が息子の分を相続する。 |
この場合、既に他界している相続人の出生から死亡までの戸籍も必要書類として揃えなければいけません。
③で解説したとおり、出生から死亡までの戸籍を全て揃えないと代襲相続人が誰であるかを証明できないからです。
このケースだと③の分も含め集めなければいけない戸籍の数が多くなります。中には20通、30通にものぼるケースがあるので、他の相続人と協力しながら集めるようにしましょう。
【戸籍取得は専門家に依頼することもできる】 戸籍は弁護士・司法書士・行政書士に取得を代行してもらうことができます。自分で集めるのが難しい場合は依頼を検討しましょう。 費用は事務所によって大きく異なりますが、数万円~10万円が目安です。取得する戸籍の数が多い場合は追加料金(1通約2,000円+実費)が発生するところが多いので、事前に見積もりをとって確認するようにしてください。 |
相続手続きが完了しておらず凍結中であっても、払戻し制度を利用すれば預貯金の一部を引き出すことが可能です。
これは遺産分割協議が長引いた場合に相続人が生活費や葬儀代等を工面できるようにするために2019年より施行された制度です。
制度の利用には下記2通りの方法があります。
これらの制度を利用するには一定の要件を満たして所定の手続きを行う必要があります。それぞれ詳しくみていきましょう。
金融機関に必要書類を提出すれば、法定相続分の3分の1の金額(上限150万円)まで、遺産分割協議が終わっていなくても先に引き出すことができます。
引き出せる額 = 相続開始時の預金額 × 3分の1 × 法定相続分(上限150万円) 例)口座の預金額:300万円、法定相続人:2名(長男と次男で2分の1ずつ)の場合 各相続人が引き出せる額 = 300万円 × 1/3 × 1/2 = 50万円 |
この額は1つの金融機関につき引き出せる額なので、複数の預金口座がある場合は金融機関ごとに払戻し制度を利用することが可能です。
この制度を利用するには下記に従って進めていきましょう。
【金融機関による払戻し制度の利用方法】
申請できる人 | 相続人 |
認定要件 | 特になし |
払戻し額 | 上限150万円 |
申請先 | 亡くなった人の預金口座がある金融機関 |
必要書類 | ・亡くなった人の出生から死亡までの戸籍または除籍謄本 ・相続人全員の戸籍謄本 ・申請人の印鑑証明書 |
払戻しまでの期間 | 申請してから数週間~1・2ヶ月 |
提出書類は<相続した預貯金を引き出す方法|必要な書類一覧の場合と大きく変わりません。必要書類を全て揃えるまで1・2ヶ月前後かかると想定しておいてください。
つまり遺産分割協議は終わっていないけど書類を揃えられた段階ならこの制度を利用できるということが分かりますね。遺産分割協議と並行して書類集めにも早めに取り掛かるようにしましょう。
金融機関単独による払戻し制度では上限は150万円までしか払戻しできないため、それ以上に必要な場合には、家庭裁判所の仮分割の保全処分を申し立てます。家庭裁判所が家庭裁判所の判断による払戻し制度を利用する場合は、金額に上限はなく、他の相続人の利益を侵害しない範囲で、裁判所が認めた額を払戻しすることができます。
ただし、この制度を利用できるのは遺産分割調停または審判が申し立てられている場合に限ります。協議の段階では利用できないので注意しましょう。
具体的な手続きについては下記を参考に進めていってください。
【家庭裁判所の判断による払戻し制度の利用方法】
申請できる人 | 相続人 |
認定要件 | ・遺産分割調停または審判中であること ・払戻しの必要性があること ・他の相続人の利益を害しないこと |
払戻し額 | 家庭裁判所が定めた額 |
申請先 | 遺産分割調停・審判を申し立てている先の家庭裁判所 |
必要書類 | ・家庭裁判所の審判書謄本 ・申請人の印鑑証明書 |
払戻しまでの期間 | ー |
ここまで説明してきたように、死亡した人の預金は、いったん、金融機関が凍結をしますが、相続手続きを完了させるか、払戻し制度を利用するかで引き出すことができます。
しかし、いずれも手続きに一定の期間を要するため、亡くなった人の医療・介護費用や葬儀代を預貯金から支払いたい場合は手続きが終わるまで待てない場合があります。
そのため、「最初から預金を凍結させなければいいのでは?」という考えが出てきます。他の相続人の同意があれば、罪に問われる可能性はありません。そのため、他の相続人にも同意を取りながら、死亡した人の預金を引き出して死後の臨時費用に充てて、残った財産を平等に分割するというケースは多く存在します。
しかし、他の相続人の同意を得ていない場合、相続人同士で民事上のトラブルに発展する可能性があるので、それを理解した上で預貯金を取り扱うようにしましょう。
ここでは、凍結前に預貯金を引き出せる条件と、トラブルを回避するための注意点について解説していきます。
凍結前は、亡くなった人の必要経費の支払いのために使うのであれば相続人が引き出しても、相続人の間では問題はありません。もし、引き出せないとなると、特定の相続人が必要経費の支払いを立て替えることになりますが、その立替金は最終的には相続人の間で清算することになるため、清算のタイミングが変わるだけだからです。
キャッシュカードを預かっていて暗証番号を知っていれば特に手続きすることなく引き出すことは可能です。
亡くなった人のために引き出したことが証明できるように、領収書やレシートを保管しておいて現金出納帳を作成しておきましょう。
そうしないと自分が使うために引き出したと疑われ、他の相続人や税務署に追及されるリスクが高まります。
亡くなった人の生活費の範囲ならばメモ書き程度でも問題ありませんが、医療・介護費用や葬儀代の支払いなど高額になる場合は特に注意が必要です。
凍結前に預貯金を引き出すことは様々なトラブルを引き起こす要因になります。下記項目に注意しながら慎重に進めていきましょう。
【凍結前に預貯金を引き出すときの注意点】
◎自分のためには使わない ◎他の相続人にも知らせる ◎死亡直前に引き出した額は相続財産に含める |
凍結前に引き出したお金を使い込んだり、自分の口座に入金したりすることはやめましょう。次のような事態を招くおそれがあります。
【預貯金を自分のために引き出すことで起こり得るトラブル】
・「相続財産の使い込み」とみなされて他の相続人と揉める ・亡くなった人に負債があったとしても相続放棄ができなくなる ・贈与とみなされて贈与税が課せられる ・手許現金として、税務署から追徴課税される |
引き出し行為が、相続人の必要経費の支払いと認められない場合は、不当利得返還請求や損害賠償請求の民事訴訟まで発展するケースもあります。
預貯金の引き出しは相続時に通帳や取引履歴によって明るみになります。くれぐれも預貯金額をごまかすような行為はやめましょう。
亡くなった人のために使うお金であっても、預貯金の引き出しの情報は他の相続人と共有しましょう。
さもないと他の相続人に使い込みを疑われ、相続財産をめぐって争いが起きるリスクが高まります。そうなると遺産分割も長引いてしまい、結果的に相続分の預貯金を引き出せる時期も遅れてしまいます。
何のために・いくら引き出したのかを領収書を見せながら伝えて、他の相続人にも納得してもらうようにしましょう。
死亡直前に引き出して、死亡後に医療・介護費用や葬儀代のために使ったとしても、死亡した瞬間は、手許現金と債務が存在していると評価できるため、計算上は相続財産に計上します。
これは相続税の申告を正しく行うためです。
例えば死亡直前に葬儀代を引き出すとします。その後口座にある金額が死亡時の預貯金額として確定しますが、引き出した葬儀代も相続財産に含めて相続税申告を行わなければいけません。その上で葬儀代は控除されます。
例)口座の預貯金額:5000万円 死亡直前に葬儀代として200万円引き出す ↓【相続税の申告手続き】 誤 相続課税の対象:4800万円 正 相続課税の対象:5000万円 →葬儀代200万円を控除 |
葬儀代として引き出した手元現金を計上しないと、もし税務調査が入ったら調査官に細かく追及されます。追徴課税の対象になるおそれがあるので、死亡直前に引き出した額についても正しく申告するようにしましょう。
本記事を読んで相続する預貯金の引き出しについて理解できたでしょうか。
あらためて本文の内容を振り返ります。
まずは預貯金を引き出せる3つのタイミングについて紹介しました。
預貯金を引き出すタイミング |
《原則》相続手続き(遺産分割または遺言検認)後 《条件付》相続手続き完了前または凍結前 |
続いてそれぞれの段階で引き出すための要件や方法などをお伝えしました。
預貯金を引き出す方法 |
相続手続き後に引き出す手順・方法・書類 相続手続き完了前に引き出す条件・方法・書類 凍結する前に引き出す条件・注意点 |
以上、本記事を元に相続する預貯金をトラブルなくスムーズに引き出せることを願っております。