弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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「相続登記が義務化されたと聞いたけど、それってどういうこと?」
「何年か前に不動産を相続したけど相続登記がまだ出来ていない。義務化されたらやらなくちゃだめ?」
令和6年4月1日に相続登記が義務化されました。
これにより、相続(遺言も含む)によって不動産を取得した相続人は、所有権を取得したことを知った日もしくは、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなりました。
万が一、期限内に正当な理由がないのに相続登記をしなかった場合は、10万円以下の過料が科せられることとなるため、注意が必要です。
また、施行日前に相続した不動産についても対象となります。
そのため、不動産を相続したけど不動産の名義変更を行っていない場合は、相続登記を行う必要があります。
ただし、相続登記の期限は所有権を知った日によって変わるため、期限内に行えるようにしっかり確認をして申請を行うようにしましょう。
そこでこの記事では、相続登記の義務化について詳しく解説をし、申請期限について分かりやすく解説します。記事の最後には、相続登記の手続きの流れもお伝えします。
本記事のポイント |
・相続登記に義務化によって対応すべきことがわかる ・相続登記に申請が必要となる人がわかる ・相続登記を素早く行うべき理由がわかる ・相続登記の手続き方法がわかる ・万が一、期限内に手続きが出来ない場合の対応方法がわかる |
この記事を最後まで読めば、相続登記の義務化によって対応が必要なのか判断ができ、申請するためのすべきことが分かります。
相続によって不動産を取得した人は、最後までしっかり読み進めてください。
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冒頭でお伝えしたとおり、令和6年4月1日より相続登記が義務化となりました。
【相続登記とは】 被相続人が所有していた不動産の名義を、相続人の名義へ変更する手続きのことをいいます。 |
これにより、相続(遺言も含む)により不動産を取得した相続人は、期限内に相続登記を行わなければなりません。
相続登記の義務化についておさえておくべきポイントは、以下の3つです。
【相続登記義務化のポイント】
・相続登記義務化後の申請期限は3年
・義務化施行前の相続に関しても対象になる
・期限内に登記をしなければ罰則(10万円以下の過料)
ひとつずつ詳しく解説します。
相続登記義務化後の申請期限は3年となります。
義務化後に相続で不動産を取得した場合の相続登記の期限は、2つのパターンに分かれます。
・相続で所有権を取得した人:不動産取得を知った日から3年以内(ただし法定相続分に関して) ・遺産分割協議で取得した人:遺産分割協議の成立日から3年以内(ただし法定相続分を超えて所有権を取得した場合) |
遺産分割協議をせず、相続や遺贈によって不動産を取得した場合は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内(ただし法定相続分に関して)に相続登記の申請をしなければならないと決まっています。
遺産分割協議で話し合いがまとまった場合には、遺産分割が成立した日から3年以内(ただし法定相続分を超えて)所有権を取得した場合に相続登記が必要です。
2024年4月1日の相続登記義務化施行前に不動産を相続し、相続登記を行っていない場合も相続登記を行わなければなりません。
ただし、義務化施行前の相続に関しては、期限の考え方が違いますので注意しましょう。
施行前の相続については、以下のどちらか遅い日が期限となります。
①相続で所有権を取得した人:不動産取得を知った日から3年以内 遺産分割協議で取得した人:遺産分割協議の成立日から3年以内 ②施行日から3年以内(2027年3月31日) |
例えば、相続開始日が2022年10月1日であった場合、そこから3年は2025年9月30日です。そうすると、施行日から3年の方が遅い日となるため、2027年3月31日が申請期限となります。
施行前に相続して放置している不動産がある場合は、2027年3月31日までに必ず相続登記するようにしましょう。
相続登記の義務化には罰則が設けられており、正当な理由なく期限内に登記をしなかった場合は、10万円以下の過料の適用対象となります。
そのため、相続にて不動産を取得した場合は、期限内に相続登記の手続きを行ってください。
ただし、正当な理由がある場合には、相続登記できなくても過料の対象外になります。
この場合の正当な理由について、法制審議会民法・不動産登記法部会第10回会議(令和元年11月19日開催)で以下のような議論がなされているので、参考にしてください。
「正当な理由」がある場合の例としては、
①数次相続が発生して相続人が極めて多数であることにより、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するとき
②遺言の有効性が争われる訴訟が係属しているとき
③登記申請義務者に重病等の事情があったとき
④登記簿は存在しているものの,公図が現況と異なるため現地をおよそ確認することができないときなどが考えられる。
これらの正当な理由については、明確化の観点から、あらかじめ類型化して(通達等において)明示しておくことが考えられる。
出典:部会資料19 中間試案のたたき台(不動産登記制度の見直し)
つまり、数次相続(相続した人が死亡して新たな相続が発生すること)で相続人が多数になり相続人の把握や書類準備に時間がかかるケースや、遺言の有効性を裁判で争っているケースなどでは、期間内に相続登記できなくても、過料は免れられる可能性があります。
一方、単に「遺産分割協議がまとまらない」「相続人に行方不明の人がいる」などの場合は原則として過料の対象になると考えていた方が安全です。
このようなケースの場合は、相続人申告登記を行うことで相続登記が期限内に行えなかったとしても、罰則の対象とはなりません。
相続人申告登記については、5章で詳しく解説をしますので、そちらをご覧ください。
相続登記が義務化されたことによって、相続により不動産を取得した人は全員、相続登記申請を行わなければなりません。
具体的には、以下のように不動産を取得した場合は、速やかに相続登記を行いましょう。
【相続登記を行うべきケース】
・相続人の間で遺産分割がまとまり不動産を取得する場合 ・遺言により不動産の取得をする場合 ・施行前に相続で不動産を取得している場合 |
1章でお伝えしたとおり、相続により不動産を取得しているにも関わらず、期限内に相続登記を行わなかった場合は、10万円以下の過料が科せられます。
また、相続登記を行うには必要な書類を揃える必要があり、時間がかかるケースもあります。
そのため、期限に遅れないよう速やかに手続きを進めるようにしましょう。
その他にも、相続登記を先延ばしすることのリスクがあります。次の章で詳しく解説しますので、確認をしていきましょう。
相続登記が義務化され、申請期限まで3年という期間があります。
そのため、「すぐに行わなくても良いだろう」と、考える人もいると思いますが、相続登記は速やかに行うことをおすすめします。
なぜなら、相続登記を先延ばしにすることで以下のリスクがあるからです。
【相続登記を先延ばしにするリスク】
・不動産の権利関係が複雑化する可能性がある ・不動産の売却・贈与・活用ができない ・不動産が差し押さえられる可能性がある |
どのようなリスクがあるか確認をして、速やかに手続きを行って行きましょう。
相続登記を放置したまま長期間が過ぎると、不動産の権利関係が複雑化してしまう可能性があります。
例えば、相続人が死亡した場合は、その子どもが相続人となり、その子どもも亡くなれば、その子の子どもが相続人となり、相続人が増えていくことになります。
その結果、相続人間で面識がない場合や、連絡が取れないなどで、相続人全員で合意して相続登記手続きを行うことが困難となってしまうのです。
このように権利関係が複雑化する前に、速やかに相続登記手続きを行いましょう。
相続登記をしないままでいると、登記簿上の所有者は被相続人のままです。
登記簿上の所有者が被相続人のままでは、不動産の売却や贈与などを行うことはできません。
不動産の売却や贈与をする場合は、実際の所有者と登記簿上の所有者が必ず一致していないとダメだからです。
すぐに売却などをする予定がないからといって放置すると、いざ売却をしようとした時に手続きができなくなる可能性があったり、他の相続人から手続きの協力が得られない可能性もあります。
そのため、速やかに相続登記手続きを行うようにしましょう。
相続人の中に借金を滞納している相続人がいた場合は、不動産を差し押さえられる可能性があります。
債権者が「代位登記」という手続きにより、債務者が相続した持ち分を差し押さえることができるのです。
このような事態を回避するには、差し押さえられる前に全ての相続人が相続登記もしくは、相続放棄の手続きを済ませておく必要があります。
このようなことが起こらないために、速やかに相続登記を行いましょう。
実際に相続登記の手続きをする場合の流れは以下のとおりで進めていきます。
このSTEPで進めていけば、相続登記は問題なく行うことができます。
ひとつずつ詳しくお伝えします。
まずは、相続登記に必要な書類の準備を進めていきましょう。
相続登記に必要な書類は、遺産分割協議で相続した場合や、遺言書がある場合などの状況によって、必要な書類が異なります。
以下の表を参考に必要書類を確認してください。
【相続登記で必要な書類一覧】
ケース | 書類名 | 入手先 |
どのケースでも 必ず必要な書類 ※法定相続分 どおりに相続する 場合は 追加書類なし | 被相続人の 出生から死亡までの戸籍・除籍謄本 ※遺言書による相続は死亡時のみ | 市区町村役場 |
被相続人の 住民票の除票または戸籍の附票 | ||
相続人全員の戸籍謄本 | ||
不動産取得者の住民票 | ||
相続する不動産の固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場 | |
収入印紙 | 郵便局・コンビニ・法務局など | |
登記申請書 | 法務局HPより書式ダウンロードし作成 | |
遺産分割協議により 相続する場合 | 遺産分割協議書 | 自分で作成 |
相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村役場 | |
遺言により 法定相続人が 相続する場合 | 遺言書(検認済証明書) | – |
遺言により 法定相続人以外が 相続する場合 | 遺言書(検認済証明書) | – |
遺言執行者の印鑑証明書 ※選任されていた場合 | 市区町村役場 | |
遺言執行者選任審判謄本 ※家裁の審判で選任された場合 | 家庭裁判所 | |
相続人全員の印鑑証明書 ※遺言執行者が選任されていない場合 | 市区町村役場 |
このように相続登記には、相続をした状況によって必要な書類が異なるため、ご自身の状況と合わせて漏れなく準備をすることが大切です。
書類の詳細や取得方法について詳しくは、下記の記事で解説をしています。合わせてご確認下さい。
相続登記を行う場合は、登録免許税の支払いが必要です。
登録免許税の支払いは、登録免許税分の収入印紙を準備します。
登録免許税の計算は、不動産の固定資産評価額×0.4%(税率)を掛けて算出をします。固定資産評価額は、固定資産評価証明書を入手することで確認が可能です。
例えば、不動産の固定資産評価額が2,000万円の場合の登録免許税は、2,000万円×0.4%=8万円です。
相続登記手続きは、対象の不動産住所地を管轄する法務局の窓口へ行き、必要書類一式を提出して申請を行います。
対象の不動産所在地の管轄する法務局は、法務局のHPにてご確認ください。
申請を行った後は、法務局で書類の審査と登記に1週間~10日ほど時間がかかります。
相続登記の手続きが完了すると、法務局から登記識別情報通知書が発行されます。
相続登記した不動産の登記事項証明書の取得は、窓口で申請し受け取りをしましょう。その際、相続登記した内容と登記事項証明書の記載内容に間違いがないか確認しておきましょう。
ここまで相続登記の義務化について詳しく解説をしてきましたが、下記のように期限内に登記ができないというケースもあります。
【期限内に登記が出来ないケース】
・音信不通の相続人がいて遺産分割協議がまとまらない場合 ・遺産分割で相続人同士で揉めて不動産の所有者がきまらない場合 |
上記のようなケースでは、期限内に登記ができず過料の対象となってしまう可能性があります。
このような場合、より簡単に相続登記義務を履行することができるように、「相続人申告登記」制度が新設されました。
相続人申告登記の申出をすることで、相続登記義務を履行したこととなり、期限内に相続登記が行えなかったとしても過料の対象となることはありません。
相続人申告登記の申出は、相続人が複数いる場合でも単独で申し出ることができます。
ただし、申出をした相続人のみが義務を履行したことになるため、注意しましょう。
例えば、相続人3人のうち2人が相続人申告登記の申出をした場合、申出をした2人は相続登記の義務を履行したことになりますが、申出をしていない1人は義務履行をしたことになりません。
そのため、申出をしていない人が不動産を相続した場合は、過料の対象となります。
また、相続人申告登記はあくまでも「登記名義人の相続人のひとり」と名乗るだけのものなので、申出をしたとしても不動産の所有権を取得したことにはなりません。
遺産分割が完了し、不動産を相続することが決定した場合は、速やかに相続登記の手続きを行うようにしましょう。
この記事では、相続登記の義務化について詳しく解説をしてきました。最後にまとめましょう。
令和6年4月1日より相続登記が義務化となりました。
これにより、相続(遺言も含む)により不動産を取得した相続人は、期限内に相続登記を行わなければなりません。
相続登記の義務化についておさえておくべきポイントは、以下の3つです。
【相続登記義務化のポイント】
・相続登記義務化後の申請期限は3年
・義務化施行前の相続に関しても対象
・期限内に登記をしなければ罰則(10万円以下の過料)
以下のように不動産を取得した場合は、速やかに相続登記を行いましょう。
【相続登記を行うべきケース】
・相続人の間で遺産分割がまとまり不動産を取得する場合 ・遺言により不動産の取得をする場合 ・施行前に相続で不動産を取得している場合 |
上記のケースの場合は、速やかに相続登記を行いましょう。
相続登記を先延ばしにすることで以下のリスクがあるからです。
【相続登記を先延ばしにするリスク】
・不動産の権利関係が複雑化する可能性がある ・不動産の売却・贈与・活用ができない ・不動産が差し押さえられる可能性がある |
また、遺産分割が進まず期限内に相続登記が行えない場合は、「相続人登記申請」を行いましょう。
この記事が相続登記の義務化についてお困りの方の力になれることを願っています。