異母兄弟に相続で連絡を取る手順|無視されたときの対処法も解説

この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。

「父が亡くなり相続手続きのために戸籍を確認したら、異母兄弟がいることが発覚!会ったこともないのにどうやって連絡したら良いの?」

このように、親が亡くなった後に異母兄弟がいることが発覚することは少なくありません。

相続に関しては、異母兄弟にも相続権が発生します。そのため、異母兄弟を無視して相続手続きを進めることはできず、連絡を取り遺産分割協議にて遺産の分割方法を決定しなければなりません。

異母兄弟に連絡をする方法は、以下のステップで進めれば問題ありません。

しかし、正直なところ異母兄弟と連絡を取りたくないと思っている人も多いでしょう。

異母兄弟へ上記のステップで連絡をしたとしても、連絡が取れなかったり、無視されたりすることもあり、トラブルに発展することが非常に多い事例です。

トラブルに発展しそうな場合はもちろん、異母兄弟と直接連絡をとることが億劫な方は、早めに弁護士に相談することがおすすめです。

連絡が取れないままにしていると、遺産分割協議が進まなかったり、相続税の申告が遅れてしまい多くの税金を収めなければいけなくなったりする可能性があるので注意が必要です。

そこでこの記事では、異母兄弟に相続に関する連絡をする方法を分かりやすく解説し、連絡が取れない場合の対処法についても紹介します。

この記事のポイント
・連絡先の分からない異母兄弟へ連絡を取る方法がわかる
・トラブルを避けるための連絡手段がわかる
・どうしても連絡が取れない場合の対処法がわかる

この記事を読めば、相続に関して異母兄弟への連絡をしなければいけない場合の進め方が分かります。

記事の最後には、異母兄弟がいて遺言書がある場合の注意点も解説していますので、最後まで読み進めてください。

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目次

異母兄弟に相続で連絡する方法4STEP

相続で異母兄弟がいる場合の連絡方法は、以下のステップで進めていきましょう。

STEP1 連絡先を入手する
STEP2 手紙を作る
STEP3 手紙を送る(配達されたかどうかが分かる方法が望ましい)
STEP4 連絡が取れたら遺産分割協議を開催する(会いたくない場合は手紙に記載)

このステップで進めれば、会ったことがない場合や、連絡先を知らない異母兄弟であっても、連絡をすることができます。

相続で異母兄弟と連絡を取らなければいけない人は、ステップに沿って進めていきましょう。

STEP1|連絡先を入手する

異母兄弟の連絡先が分からない場合は、下記の方法で入手をしましょう。

【連絡先の入手方法】

①親戚などに聞く
②戸籍の附票を取得する

まずは、異母兄弟の連絡先を親戚などが知っていそうな場合は、聞いて入手をするようにしましょう。連絡先は、電話番号でなくても住所が分かれば大丈夫です。

親戚などに聞いても連絡先が分からない場合は、戸籍の附票を取得してその人の最新の住所を調べて行きます。

【戸籍の附票とは】
戸籍が作られてから(または入籍してから)現在までの住所の移り変わりが記録されています。
本籍地の市区町村で保管・管理されています。

戸籍の附票にはその人の住所履歴が記載されているため、それを確認することで最新の住所を知ることができます。

戸籍の附票を取得する方法は、次の手順で進めていきましょう。

戸籍の附票は、本籍地で保管されているため、戸籍の附票を申請するためには探したい相手の本籍を知ら得なければいけません。

相手の本籍は、法定相続人なら亡くなった人の戸籍に記載されているため、まずは亡くなった人の戸籍を取り寄せるところから始める必要があります。

亡くなった人の死亡までの戸籍を全て集める

まずは、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を全て集めます。そのどこかに、探したい相手とその本籍地が記載されているのでひとつひとつ確認をしていきましょう。

【出生から死亡まで戸籍全てとは】
戸籍は、転籍や結婚・離婚、改製のたびに新しい戸籍が作られるが、新しい戸籍には除籍した人など一部の項目が引き継がれません。

そのため、相続手続きでは相続関係を証明するために、亡くなった人の出生から死亡まで全ての戸籍が必要となります。

亡くなった人の戸籍を取得するには、次の必要書類を用意して亡くなった人の本籍地の市区町村役場に請求します。
詳細は、各市区町村役場によって異なるため、事前にホームページで確認するか、電話で問合せをしてください。

※なお、なお、2024年3月1日から、戸籍謄本の広域交付制度が始まったため、一定の条件の下で、最寄りの市区町村役場で被相続人の出生から死亡までの戸籍が一括して取得できるようになりました。
詳細は、法務省のHPをご覧ください。

【亡くなった人の戸籍取得方法】

請求できる人亡くなった人の配偶者・直系血族(原則)
手数料の目安1通450円
必要書類窓口・戸籍交付申請書(窓口で入手)
・申請する人の戸籍謄本(相続関係を証明するため)
・印鑑
・本人確認書類
・委任状(申請する人が亡くなった人の配偶者・直系血族以外の場合)
郵送・戸籍交付申請書(役場からダウンロードして記入)
・定額小為替(手数料分を郵便局で入手)
・申請する人の戸籍謄本のコピー(相続関係を証明するため)
・本人確認書類のコピー
・委任状(申請する人が亡くなった人の配偶者・直系血族以外の場合)
・返信用封筒(切手貼付)
入手までの期間窓口即日
郵送~1週間

本籍地の役場に戸籍の附票を請求

亡くなった人の戸籍から探したい相手と本籍を見つけ出せたら、その本籍地の市町村役場に戸籍の附票を請求しましょう。

請求方法は下記のとおりですが、市区町村役場によって異なる場合もあるので、事前にホームページで確認するか、電話で問合せしてください。

【探したい相手の戸籍の附票を取得する方法】

請求できる人本人・配偶者・直系血族(原則)
手数料の目安1通450円
必要書類窓口・戸籍の附票交付申請書(窓口で入手)
・申請する人の戸籍謄本(相続関係を証明するため)
・印鑑
・本人確認書類
郵送・戸籍の附票交付申請書(役場からダウンロードして記入)
・定額小為替(手数料分を郵便局で入手)
・申請する人の戸籍謄本のコピー(相続関係を証明するため)
・本人確認書類のコピー
・返信用封筒(切手貼付)
入手までの期間窓口即日
郵送~1週間

原則、戸籍の附票は本人・配偶者・直系血族しか申請できません。

それ以外の人が申請する場合は、相応な理由が必要です。

しかし、遺産分割を進めるために必要であることは、正当な理由に当たります。

そのため、遺産分割の共同相続人であり、自ら遺産分割事件を申し立てるために、相手方の戸籍の附票が必要であることを伝え請求すれば取得できます。

ただし、各市区町村の窓口によって細かい手続き方法が異なりますので、事前に電話で確認すると安心です。

STEP2|手紙を作る

戸籍の附票を取得して現住所がわかったら、早速連絡を取っていきましょう。

連絡方法は、手紙を送る方法がおすすめです。

面識がない場合や、長い間会っていない場合は、いきなり訪問したり電話したりすると相手も警戒してしまいます。

手紙であれば、波風を立てず相手も受け入れやすくなります。

手紙はなるべく丁寧に書いて、連絡が欲しいことを伝えましょう。具体的には、以下の内容を記載すると良いです。

【手紙に書く内容】

自分が誰か:名前をきちんと名乗り、亡くなった父親の子供であることを記載
父親が亡くなった事実:父親が亡くなったこと、亡くなった日付を記載
遺産の内容:遺産にどういったものがあるか記載(遺産に負債がある場合も必ず記載)
住所を知った経緯:相続手続きのために戸籍謄本・戸籍の附票を取得して調べたことを説明
手紙を出した理由:相続手続きに協力して欲しい旨を記載
連絡先や返信期日:こちらの連絡先の電話番号等を書き、いつまでに連絡が欲しいか記載

以下、例文です。

下記の雛形を活用して、手紙を書いてみましょう。

STEP3|手紙を送る

手紙の準備ができれば、相手へ手紙を送りましょう。

このとき、問題なく手紙が届いたかどうかを確認できるように、書留、特定記録郵便、レターパック等で送付するとよいでしょう。

STEP4|連絡が取れたら遺産分割協議をする(会いたくない場合は手紙に記載)

異母兄弟と連絡が取れたら、遺産分割協議を開催し、具体的な遺産分割方法について相続人全員で決定していきましょう。

遺産分割協議とは、遺産相続の具体的な話し合いのことです。

遺産分割協議では相続人全員で話し合い、決めた分割内容は必ず遺産分割協議書」に記載して書面として残しておくことが大切です。

また、中には異母兄弟と会いたくないという方もいるでしょう。その場合は、他の相続人と話し合った遺産分割案を手紙に記載し、意思確認を取ることがおすすめです。

手紙に記載した内容で異論がなければ、遺産分割協議書を作成し、署名・捺印をもらえば相続手続きを進めることができます。

万が一、分割案に異論がある場合や、連絡や返事がもらえない場合は、速やかに弁護士に相談するようにしましょう。

異母兄弟の同意が取れない状態や連絡がとれないままでは、相続手続きを進めることはできません。

詳しくは、連絡を無視・拒否される場合は弁護士に依頼するで解説します。

【ケース別】もしも異母兄弟と連絡が取れないときの対処法

1章でお伝えしたステップに沿って異母兄弟と連絡を取ろうと行動をしても、どうしても連絡が取れないということも起こります。

万が一、連絡が取れなかった場合の対処法について、以下3つのケースに分けて紹介します。

【異母兄弟と連絡が取れない場合の対処法】

・【住所がわからない場合】不在者財産管理人を申し立てる
・【7年以上行方不明の場合】失踪宣告を申し立てる
・【連絡を無視・拒否される場合】弁護士に依頼する

連絡が取れない場合は、しっかり確認して適切な対処をしていきましょう。

【住所がわからない場合】不在者財産管理人を申し立てる

探したい相手が戸籍に記載されている現住所に住んでおらず、居所の手がかりがつかめない場合は、不在者財産管理人の申立てを行う必要があります。

不在者財産管理人とは・・・不在者に代わって財産を管理する人。家庭裁判所が選任する。

探したい相手が既に住民票から抹消されている場合も、この方法が有効です。

相続人の1人と連絡が取れず、行方不明だからといって、存在を無視して相続を進めることはできません。行方がつかめないなら代理人を立てて遺産分割を進めることとなります。

不在者財産管理人の申立ては、下記の方法で進めていきましょう。

【不在者財産管理人の申立て方法】

ただし、家庭裁判所で不在者財産管理人が選任されるまでには3ヶ月~半年程度の時間がかかります。

そのため、遺産分割協議を急いで行う必要がある場合は、速やかに申立てを行いましょう。

不在者財産管理人の役割や、選任方法については以下の記事で解説しています。詳しく知りたい方は、合わせてご覧ください。

【海外にいる相続人と連絡が取れないケース】
最後の住所が海外になっていて連絡が取れない場合は、外務省に「所在調査申込」を行います。
(詳細:所在調査(三親等内の親族からの依頼)|外務省
外務省から所在が判明しない旨の回答が返ってきたら、家庭裁判所に不在者財産管理人の申立てを行います。

【7年以上行方不明の場合】失踪宣告を申し立てる

相手が7年以上行方不明の場合は、失踪宣告を申し立てることが可能です。

失踪宣告とは・・・行方が分からず、一定の要件を満たした者を法律上、死亡したものとみなす制度行方不明とは・・・居所が分からず生死不明の状況

失踪宣告が認められると行方不明者は死亡扱いとなるため、その人抜きで相続手続きを進めることができます。

失踪宣告は、失踪者を死亡扱いすることで、自分が取得できる遺産の割合が増える場合に有効な方法です。具体的には次のようなケースが該当します。

【失踪宣言をした方がいいケース例】

亡くなった人(被相続人):父
失踪者:異母兄弟(法定相続分6分の1)
自分:息子(法定相続分6分の1)
他の相続人:母(法定相続分2分の1)、兄(法定相続分6分の1)

異母兄弟に失踪宣告が認められると、異母兄弟の相続分は自分と兄で分配になり、法定相続分が4分の1ずつに増える。

このように失踪宣告を申し立てることによって利益があるなら失踪宣告を、そうでないなら不在者財産管理人申立てを進めて行く方がスムーズです。

なぜなら、失踪宣告は不在者財産管理人の申立てよりもハードルが高いからです。

手続きが複雑で必要書類の準備も難しく、申立てが認められるまで一般的に半年以上の期間が必要となります。

失踪宣告が自分にとってメリットが小さい場合は、不在者財産管理人の申立てを進めた方が無難と言えます。

失踪宣告の申立て方法は、以下のとおりです。

【失踪宣告の申立て方法】

申立てできる人利害関係人
申立先不在者の最後の住所を管轄する家庭裁判所裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所
費用・収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手(金額は各裁判所に要確認)
・官報公告料4,816円
必要書類・申立書
・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・不在者の戸籍の附票
・失踪を証明する資料
・申立人と不在者の利害関係を証明する資料
選任までの期間半年~1年

申立て方法について、さらに詳しく知りたい場合は、裁判所のホームページをご確認ください。

【連絡を無視・拒否される場合】弁護士に依頼する

どんなに連絡をしても無視されたり、拒否されたりする場合は、弁護士に依頼し早急に解決できるよう進めましょう。

連絡が取れない場合は、自宅へ直接訪問して話を聞いてもらうようにお願いすることもできます。

しかし、何かしらの理由で連絡を無視・拒否しているような相手であれば、トラブルになりかねません。

また、異母兄弟と会わずに遺産相続手続きを完了させたい場合も、弁護士に依頼することがおすすめです。弁護士に依頼をすれば、あなたの代理人として遺産分割協議の話し合いを進めてくれます。

弁護士は交渉のプロであるため、依頼人と他の相続人の間に入って遺産相続手続きが進められるように対応をしてくれます。

弁護士は依頼人の利益を最大化することが仕事あるため、自分が望んでいる遺産分割方法を実現できる可能性も高くなります。

【相続に関する相談は相続に強い弁護士に依頼しよう!】
弁護士に依頼をする時は、相続に強い弁護士に依頼するようにしましょう。

弁護士の活動領域は幅が広く、刑事事件に強い弁護士、企業法務が専門の弁護士、離婚や相続などの親族問題が得意な弁護士など、多くの専門分野に分かれています。

どの弁護士でも相続問題に対応することは可能ですが、刑事事件に強い弁護士に依頼したところで知識やノウハウ、最新の情報に疎い場合が多くなります。

遺産相続トラブルに強い弁護士であれば、過去のさまざまな事例から的確なアドバイスを受けることが可能です。また、豊富な経験からトラブルの種を察知し未然に防ぐことができます。

私たち弁護士法人サリュでは、無料で相談を受け付けております。
まずは、お気軽にお問合せ下さい。

遺言書で異母兄弟への相続内容が記されてなくても連絡は必要!

亡くなった父親が遺言書を残していた場合、相続では遺言の内容が優先されます。

例えば、遺言書の内容が「今の家族だけに財産を相続させる。前妻の子には一切相続させない。」といった趣旨のものであったとします。

この場合、異母兄弟と遺産分割協議をする必要はありません。遺言の内容に従って、今の家族だけで相続手続きが可能です。

だからと言って、連絡しないまま手続きを進めることは、後のトラブルを考えるとおすすめできない場合もあります。

なぜなら、法定相続人となる異母兄弟には必ず「遺留分」を相続する権利があるからです。

遺留分とは・・・一定の相続人に最低限保証される遺産取得分のこと。遺言の内容よりも遺留分が優先される。

遺留分の請求の期限は、相続の開始及び遺留分が侵害されていることを知ってから1年とされているため、相続の事実や遺言書の内容が知らされなければ期限が来ることはありません。

また遺留分侵害額請求の除斥期間は10年とされているため、異母兄弟に相続の発生を知らせなかった場合、相続後10年間は遺留分を請求されるリスクが継続することになります。

10年以内に異母兄弟が相続や遺留分侵害の事実を知れば、その時点で遺留分を請求され、後から大きなトラブルになる可能性も否定できません。

こういった状況を避けるためにも、相続が発生した場合は、異母兄弟へ適切に連絡を行うことをおすすめします。

遺留分について詳しく知りたい方は、下記の記事で解説していますので、合わせてご覧ください。

まとめ

この記事では、異母兄弟へ相続の連絡をする方法について詳しく解説をしてきました。最後におさらいしましょう。

相続で異母兄弟がいる場合の連絡方法は、以下のステップで進めていきましょう。

STEP1 連絡先を入手する
STEP2 手紙を作る
STEP3 配達証明付き内容証明郵便で手紙を送る
STEP4 連絡が取れたら遺産分割協議を開催する(会いたくない場合は手紙に記載)

このステップで進めれば、会ったことがない場合や、連絡先を知らない異母兄弟であっても、連絡をすることができます。

上記のステップに沿って異母兄弟と連絡を取ろうと行動をしても、どうしても連絡が取れないということも起こります。その場合は、以下の対処法を進めましょう。

【異母兄弟と連絡が取れない場合の対処法】

・【住所がわからない場合】不在者財産管理人を申し立てる
・【7年以上行方不明の場合】失踪宣告を申し立てる
・【連絡を無視・拒否される場合】弁護士に依頼する

父親が「異母兄弟へ相続させない」旨の遺言書をのこしていても、異母兄弟へ相続内容についての連絡をするようにしましょう。

連絡をしないでいると、後から多額の遺留分を請求される可能性があるため、注意が必要です。

この記事が、異母兄弟の相続連絡について悩んでいる方のお力になれることを願っています。

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