遺留分侵害額(減殺)請求の調停が不成立になったときの流れと対処法

この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。

「遺留分侵害額(減殺)請求の調停が不成立となったらどうなる?」

「調停不成立となったら遺留分を取り戻すことはできない?」

遺留分侵害額(減殺)請求を行っても、相手が応じてくれない場合や話し合いで折り合いがつかない場合は、調停での解決が見込めず不成立となってしまう場合があります。

遺留分侵害額(減殺)請求の調停が不成立となり、引き続き遺留分侵害額(減殺)請求を行うには、地方裁判所または簡易裁判所で「遺留分侵害額請求訴訟」を提起して訴訟で争うこととなります。

具体的に遺留分侵害額(減殺)請求の流れは、以下のとおりに進みます。

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を起こし、裁判所で正当な判決を下してもらうことで、遺留分侵害額(減殺)請求の精算ができるようになります。

ただし、訴訟を提起する場合、個人で進めることはおすすめできません。

訴訟は、調停の話し合いとは違い、本格的な裁判です。適切な主張や立証ができなければ、本来勝てるはずの裁判であっても負けてしまう可能性もあります。

そのため、訴訟を提起する場合は弁護士に相談するようにしましょう。

ただし、弁護士であれば誰に相談しても良いという訳ではありません。

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟について、相談する弁護士を間違えてしまうと望む結果が得られない可能性があるので、弁護士の選び方には注意が必要です。

そこでこの記事では、遺留分侵害額(減殺)請求調停が不成立となった後の流れについて、詳しく解説をします。

この記事のポイント
・遺留分侵害額(減殺)請求調停が不成立となった後の流れ
・遺留分侵害額(減殺)請求訴訟に必要な費用
・遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を弁護士に依頼すべき理由
・遺留分侵害額(減殺)請求訴訟で勝つ弁護士を選ぶ方法

この記事を最後まで読んでいただくと、遺留分侵害額(減殺)請求訴訟の進め方がわかり、正当な遺留分を取り戻すための手だてが見つかります。

遺留分侵害額(減殺)請求調停が不成立となった後、遺留分を取り戻せるか不安に思っている方は、最後まで読み進めて下さい。

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目次

遺留分侵害額(減殺)請求の調停が不成立だと裁判になる

冒頭でお伝えしたとおり、遺留分侵害額(減殺)請求の調停が不成立となった場合は、訴えを提起し、訴訟で争います。

遺留分は、一定の相続人が最低限もらえる相続の取り分であり、遺言によっても奪えないものです。そのため、正当な遺留分額であれば遺留分を受け取る権利があります。

しかし、遺留分侵害額(減殺)請求を行っても次の場合は、調停の申立てをしても不成立となってしまいます。

【調停が不成立となるケース】

・相手が請求に応じない場合
・調停の話し合いで折り合いがつかない場合

調停は、当事者同士の話し合いの場です。相手が調停に出席をしなかったり、調停でお互いの主張の折り合いがつかず合意に至らなかったりした場合は、調停不成立となります。

調停が不成立となれば、遺留分を受け取ることはできません。

引き続き遺留分侵害額(減殺)請求を行うには、訴訟を起こし裁判所で正当な判断をしてもらうことで、正当な遺留分を取り戻す方法でしかできません。

訴訟の中で、あなたの正当な遺留分の主張と証明ができれば、裁判所が相手方に支払う旨の判決を出します。相手方が支払いに応じなければ、財産を差し押さえることも可能です。

遺留分侵害額(減殺)請求が不成立となった後の流れ

実際に、遺留分侵害額(減殺)請求調停が不成立となった後、どのような流れで進んでいくのか解説します。

流れは、次のとおりです。

ひとつずつ詳しく解説します。

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟の提起をする

調停が不成立となった場合、地方裁判所もしくは簡易裁判所に訴訟提起をして、一から争うことが必要です。

訴訟を提起することができる裁判所は、次のとおりです。

【訴訟の提起できる裁判所】

・相手方の住所地を管轄する裁判所
・被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所
・不動産に関する訴えについては不動産の所在地を管轄する裁判所
・金銭債権については義務履行地を管轄する裁判所
・当事者が合意で定める裁判所※請求する金額によって管轄が下記のように変わる。
140万円を超える場合:地方裁判所
140万円以下の場合:簡易裁判所

訴訟においては、当事者双方が主張を行い、主張を裏付ける証拠を出し合って審理を進めていきます。

そのため、訴状には誰に対してどのような請求をするのかを記載します。また、訴状に記載した自らの主張を裏付ける証拠書類とあわせて、一緒に裁判所に提出することが必要です。

訴訟を開始する

訴状を裁判所に提出すると、裁判所では訴状に不備がないか確認をして、不備がなければ訴状が受理されます。

訴状が受理されると原告の都合を確認しながら「第一回口頭弁論期日」をした上で、訴状などを被告人に送達します。第一回口頭弁論期日は、訴訟提起から1ヶ月後の日程で指定されることが一般的です。

訴状の送達を受けた被告は、原告に対する答弁や、原告の主張する事実に対する認否を「答弁書」という書面に記載して、証拠と合わせて期日までに裁判所に提出します。

最初の期日は、原告と裁判所で決定するため、被告の都合は考慮されません。

しかし、初回期日に出席ができなくても、被告が答弁書を提出していれば、初回期日で擬制陳述(答弁書を陳述したことにする)をすることも可能です。

その後、おおむね1ヶ月ごとに期日が指定されて、原告および被告が交互に主張と反論を繰り返します。

このような主張と反論を繰り返す事で、当事者間に争いがある事実はなにか、証拠によって認定する必要がある事実はなにか、などを明らかにしていき、裁判所は心証を固めていきます。

判決が下る

双方の主張と、証拠を元に裁判所が判決を下します。

判決言渡期日が指定され、判決が言い渡されることになります。

判決書には支払うべき金額や判断理由、訴訟費用の負担割合のみが記載されており、具体的な支払い期限や振込先口座は記載されません。

支払期日や支払方法については、判決後に双方が話し合いで決めることとなります。

判決に不服があれば控訴をする

判決内容に不服がある場合は、控訴によって争うことも可能です。

控訴は、判決の送達を受けた日から2週間以内に行う必要があります。2週間以内に双方から控訴提起がなければ、判決は確定します。

判決に不服がある場合は、期限内に控訴を行うように注意しましょう。

遺留分侵害額(減殺)請求の訴訟にかかる費用

実際に遺留分侵害額(減殺)請求の訴訟を提起した場合にかかる費用についても、気になりますよね。

訴訟は、民事訴訟法などの法律で手続きに厳格なルールが定められています。

訴訟となると相手方も代理人をつけてくることが予想されますので、遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を提起する際には、相続に詳しい弁護士に依頼することが鉄則です。

そのため、ここでは次の2つに分けて費用詳細をお伝えします。

・最低限必要な費用(実費)
・弁護士に依頼する場合の費用

訴訟を提起する際の費用をしっかり把握していきましょう。

最低限必要な費用(実費)

遺産分割侵害額請求調停が不成立となった場合は、以下の料金が最低限必要となります。

訴訟を起こす場合
金額(遺留分請求額)に応じた裁判所手数料
100万円まで:10万円ごとに1,000円
500万円まで:20万円ごとに1,000円
1,000万円まで:50万円ごとに2,000円
1億円~10億円まで:100万ごとに3,000円
10億円を超える部分:500万円ごとに1万円
50億円を超える部分:1,000万円ごとに1万円  

※弁護士に依頼する場合は別途弁護士依頼費用が必要です。

例えば、遺留分請求額が500万円であれば、25,000円が裁判手数料として必要となります。

弁護士に依頼する場合の費用

遺留分侵害額(減殺)請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は、以下のとおりです。

詳細

費用相場

初回の相談料

5,000円~1万円程度(30分~1時間程度)

※相談無料の弁護士事務所もあります

着手金(初期費用)

10万円~30万円程度の弁護士事務所が多い

※請求額に応じて価格を細かく設定している場合もあり

成功報酬

(回収できた場合)

回収額や弁護士事務所により変動

↓日本弁護士連合会の旧報酬基準に従った目安

・回収額が300万円以下:回収額の17.6%

・回収額が300万円超3,000万円以下:回収額の11%198,000

・回収額が3,000万円超3億円以下:回収額の6.6%1518,000

・回収額が3億円超:回収額の3.3%8118,000

※回収額にかかわらず、固定で経済的利益の〇%としている事務所もあり

その他

出張費や日当、事務手数料、実費(印紙代や切手代など)

例えば、遺留分500万円回収が回収できた場合は、着手金30万円+748,000円が費用相場となります。別途、出張費や事務手数料なども必要です。

ただし、弁護士費用は自由化されているため、依頼する事務所によって費用に幅があります。

あくまでも参考にしていただき、費用については弁護士事務所へ問合せをして確認をするようにしましょう。

弁護士法人サリュの遺留分侵害額(減殺)請求の弁護士費用は「遺産相続の弁護士費用」のページをご確認ください。

また、弁護士費用についてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事で詳しく解説しておりますので合わせてご覧ください。

遺留分侵害額(減殺)請求で訴訟を起こすなら早めに弁護士に相談すべき

遺留分侵害額(減殺)請求で訴訟を提起するなら、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

理由は、以下の3つです。

【遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を弁護士に相談すべき理由】

・訴訟は個人で戦うことが難しい
・適切な遺留分の請求ができる
・迅速な対応が期待できる

弁護士に相談すべき理由をしっかり確認して、どうすべきかしっかり判断をしましょう。

訴訟は個人で戦うことが難しい

訴訟は、交渉や調停のような話し合いではなく、本格的な裁判手続きです。

自分の言い分がある場合には、法廷で直接発言するのではなく「準備書面」という文書にまとめて裁判所に提出しなければなりません。また、その主張を裏付ける証拠がある場合は、合わせて提出する必要があります。

個人で裁判で勝つために、どのように準備書面を作成すれば良いのか判断する事は難しいです。

また、相手方も訴訟となれば弁護士を依頼する可能性が高いため、相手の出方なども考えながら主張をしなければなりません。

仮に適切な主張や立証ができなければ、本来勝てるはずの裁判であっても負けてしまう可能性もあります。

そのため、訴訟を提起する場合は弁護士に依頼することが大切なのです。

適切な遺留分の請求ができる

遺留分侵害額(減殺)請求では、遺留分をどれだけ請求できるか、正確に算定することが大切です。

遺留分の正確な計算は難しく、見落としがあると実際よりも少なく請求してしまう可能性があります。

弁護士に依頼すれば、専門知識を駆使して調査や計算を行うため、最大の利益を得ることができます。

例えば、他の相続人が生前贈与を受けていた事実があれば、遺留分計算の基礎となる財産に加えて計算すべきです。

個人では、このような細かな財産を計算に入れ忘れているケースが多々あります。

このようなミスなく、適切な遺留分を請求するためにも早めに弁護士へ相談すべきなのです。

迅速な対応が期待できる

訴訟を提起しようと考えている段階は、すでに調停での解決が見込めない状況でしょう。

このまま諦めず、遺留分侵害額(減殺)請求を続けるのであれば、いち早く訴訟の準備に取り掛かるべきです。

訴訟を提起するためには、訴状や主張を裏付ける証拠など、様々な法的書面の準備が必要となります。このような書類は、あらためて一から準備をするために手間も時間も必要です。

そこで、弁護士に相談をすれば、迅速に訴訟を提起する準備をお願いできます。さらに、専門的な知識を元に、あなたの有利な判決が出るために力を尽くしてくれます。

スムーズに訴訟の提起をするために、早めに弁護士へ相談すべきなのです。

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟をする時の弁護士の選び方

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を行うには、弁護士に依頼すべきということが理解できたと思います。

では、実際にどのような弁護士に依頼すれば良いのか悩むポイントです。

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟をする時の弁護士の選ぶ時は、以下の3つを押さえておきましょう。

【遺留分侵害額(減殺)請求訴訟をする時の弁護士の選び方】

・自分と同じような状況の解決実績がある弁護士を選ぶ
・費用倒れにならない弁護士を選ぶ
・初回相談時に具体的な解決策を提示してくれる弁護士を選ぶ

訴訟を提訴し、満足の行く結果を手に入れるための参考にご確認下さい。

自分と同じような状況の解決実績がある弁護士を選ぶ

弁護士は、法律全般の専門家であるため、基本的にはどの弁護士でも遺留分侵害額(減殺)請求に対応できます。

しかし、医者にも専門分野があるように、弁護士も専門分野があります。そのため、遺留分や相続の分野に強い弁護士に依頼するようにしましょう。

弁護士の公式サイトを見れば、相続問題に詳しい弁護士がいるか確認することができます。

また、その中でも自分と同じような状況の解決実績がある弁護士を選ぶと、より満足のいく結果に導いてくれる弁護士と言えます。

解決事例がホームページに掲載なければ、電話相談の際に聞いてみるのもよいでしょう。

当事務所では遺留分侵害額(減殺)請求の解決実績が豊富です。
実際の解決事例は下記よりご確認ください。

費用倒れにならない弁護士を選ぶ

遺留分侵害額(減殺)が低い場合は、弁護士費用が回収した金額よりも上回る可能性があります。

そうなってしまえば本末転倒です。そのような場合は、着手金が少ない弁護士を選ぶと良いでしょう。

ただし、着手金が少ない場合でも最低報酬額や日当が定められていると、費用倒れになり得ます。

そうならないために、初回相談時に費用について明確に説明をしてもらい、費用倒れをしない弁護士を選ぶようにしましょう。

初回相談時に具体的な解決策を提示してくれる弁護士を選ぶ

最後に、初回相談時の対応が良いかも、弁護士を選ぶうえで重要なポイントです。

具体的には、初回相談時で以下のような対応をしてくれる弁護士であれば、安心して任せることができます。

【良い弁護士の対応例】

・相談者の話にしっかりと耳を傾けてくれる
・相談者が望む結果を得られる解決策を提示してくれる
・具体的にどの程度の遺留分額が取り戻せそうか提示してくれる
・訴訟で勝てそうかどうか教えてくれる
・最終的な弁護士費用がいくらか明確に教えてくれる

逆に、訊きたいことが訊けないとか、伝えたいことが伝えにくいという場合は、弁護士とのコミュニケーションが円満にできずストレスとなってしまいます。

最終的によりよい結果が得られない可能性が生じます。

そのため、初回の面談時に気になる点は遠慮なく質問し、疑念が残る場合は他の弁護士に相談してみるようにしましょう。

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まとめ

この記事では、遺留分侵害額(減殺)請求調停が不成立となった後の流れについて詳しく解説をしてきました。

遺留分侵害額(減殺)請求の調停が不成立となった場合は、訴えを提起して訴訟で争うこととなります。

遺留分侵害額(減殺)請求調停が不成立となるケースは以下の2つです。

【調停が不成立となるケース】

・相手が請求に応じない場合
・調停の話し合いで折り合いがつかない場合

遺留分侵害額(減殺)請求調停が不成立となった後は、下記の流れで進んで行きます。

遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を提起するなら、早めに弁護士に相談すべきです。

理由は、以下の3つです。

【遺留分侵害額(減殺)請求訴訟を弁護士に相談すべき理由】

・訴訟は個人で戦うことが難しい
・適切な遺留分の請求ができる
・迅速な対応が期待できる

訴訟は、交渉や調停のような話し合いではなく、本格的な裁判手続きです。

適切な主張や立証ができなければ、本来勝てるはずの裁判であっても負けてしまう可能性もあります。

このようなことにならないために、安心して任せられる弁護士を選び、依頼するようにしましょう。

【遺留分侵害額(減殺)請求訴訟をする時の弁護士の選び方】

・自分と同じような状況の解決実績がある弁護士を選ぶ
・費用倒れにならない弁護士を選ぶ
・初回相談時に具体的な解決策を提示してくれる弁護士を選ぶ

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