相続で介護が寄与分として認められるのは難しい!証拠集めの方法

相続で介護を寄与分として認めさせるのは難しい?
この記事の監修者
弁護士西村学

弁護士 西村 学

弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授

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「長年、親の介護をしているから相続の時は他の兄弟より多く相続したい」

「介護をしていた実績は、寄与分として認められる?」

被相続人の生前に献身的に介護をしてきた人にしたら、他の相続人と同等に遺産を分けることを不公平に感じることでしょう。

このような不公平を救済するために、被相続人の生前に介護をしていた相続人には、「寄与分」が認められる場合はあります。

しかし、介護をしていたらどんな場合でも寄与分が認められる訳ではありません。むしろ正直にお伝えすると、「難しい」と言えます。

認めてもらう可能性を高めるためには、下記の「必要な要件」を満たす必要があります。

それだけではなく、要件を満たしたことを証明するための十分な証拠を準備し、他の相続人や裁判官を納得させなければ、寄与分は認められないのです。

そこでこの記事では、寄与分が認められる可能性を高めるために知っておくべき条件と、認めてもらうために必要な証拠を具体的にわかりやすく解説します。

本記事のポイント
・介護が寄与分として認められるための条件
・介護が寄与分として認められにくい理由
・介護の寄与分を認めてもうために必要な証拠
・寄与分が認められた判例と認められなかった判例
・寄与分を認めてもらうためにやるべきこと
・相続人じゃなくても寄与分が主張できる方法

記事の最後には、寄与分を認めてもらうためにやるべきことを解説しますので、介護による寄与分を受け取りたい人は最後までしっかり読み進めてください。

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目次

相続において介護は寄与分を認められる可能性はある

冒頭でお伝えしたとおり、被相続人の生前に介護をしていた相続人は、寄与分が認められる可能性があります。

寄与分とは、相続人の中で被相続人の財産維持に貢献した人がいる場合、その貢献度に応じて相続財産を増額するという制度です。

民法で寄与分は、次のように定められています。

第904条の2 
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。  

出典:e-Gov「民法第九百四条の二」

被相続人の看護をしていた相続人は、療養看護をしていたことで、被相続人が自らの看護や介護にかかる費用を支出せずに済んだ場合、療養看護型の寄与分が認められます。

ただし、この場合の療養看護とは、被相続人につきっきりで看護や介護をしていたといえる程度が必要です。日常生活の合間に食事の世話をしていたという場合や、入院中の被相続人をたまに見舞っていたという程度では認められません。

なぜなら、民法は親族間に扶養義務を定めているため、親の介護が扶養義務の範囲内ということになれば、寄与分として考慮すべきではないのです。

このようなことから、療養介護型の寄与分が認められるハードルが非常に高く、どんなに長い期間介護をしていたとしても寄与分が認められないケースもあるので注意しましょう。

療養介護が寄与分として認められるのはどういったケースなのか、次の章から詳しく解説していきます。

【相続人以外の親族が無償で介護していた場合は特別寄与料の主張ができる!】  

生前、被相続人の介護を相続人の配偶者が行っていたというケースは少なくありません。しかし、寄与分の主張ができるのは、相続人に限られます。  

しかし、このようなケースを救済するために2019年より「特別寄与料」の制度が始まりました。  

これにより、相続人以外の親族であっても、無償で介護をしていたことに対する貢献料を受け取ることができるようになっています。  

詳しくは、後で解説しますのでご確認ください。
【例外】相続人じゃなくても親族なら「特別寄与料」の主張ができる

介護が寄与分として認められるための6つの要件

被相続人の介護を行っていたとしても、必ず寄与分が認められる訳ではありません。

ここまでお伝えしてきたとおり、介護が寄与分として認められるにはハードルが高く、寄与分が認められるための要件を満たす必要があります。

介護が寄与分として認められるための要件は以下の6つです。

【介護が寄与分として認められる要件】

・療養介護が被相続人にとって必要不可欠だったこと
・特別な貢献であること【重要】
・被相続人から対価を受け取っていないこと
・療養介護が一定期間以上であること
・片手間ではなくかなりの負担があったこと
・療養介護と被相続人の財産の維持・増加に貢献していること

寄与分が認められるか判断するために、ご自身の介護実績が上記の要件を満たしているかどうか、しっかり確認していきましょう。

療養介護が被相続人にとって必要不可欠だったこと

療養介護が寄与分として認められるためには、療養介護が被相続人にとって必要不可欠であったかどうかが重要です。

例えば、被相続人が脳梗塞で半身不随となってしまい、人の手を借りないと生活できないため介護をしていたなど、療養介護がないと成り立たない状況であった必要があります。

一方、被相続人が介護施設に入居していて、着替えや必要なものを届けるために毎日お見舞いに行っていた場合は、寄与分は認められません。

【療養介護が必要であったかの判断は「要介護認定」がひとつの目安】  

被相続人に療養介護が必要だったかどうかの判断基準として、一般的には要介護認定の結果を参考にします。  

療養介護の寄与分が認められるのは、被相続人が「要介護2」以上の状態であったことがひとつの目安です。  

要介護2は主に次のような状態の要介護者が該当します。  

・歩行や起き上がりが自分1人でできない場合が多い
・食事、着替えは自分で行うのがやや難しい
・排泄は一部援助が必要  

被相続人が要介護認定を受けなければ、必ずしも寄与分が認められないという訳ではありません。ただし、療養介護が必要不可欠であったことを立証するためには、要介護2以上に相当する状態であることが必要です。

特別な貢献であること【重要】

寄与分が認められるためには、療養看護が身内の助け合いのレベルを超えて、特別な貢献でなければいけません。

民法では、以下のように親族は互い支え合うべきと定めています。

・夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない(民法752条:夫婦の協力扶助義務)
・直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある(民法877条:親族の扶養義務)

出典:民法|e-GOV

つまり、夫婦や家族で身の回りの世話をした程度では、法律上の扶養義務の範囲であり、「特別な貢献」とは呼べないのです。

具体的な線引きは判断が非常に難しいところですが、次のようなケースを参考にして判断をしていきましょう。

〇特別な貢献と見なされるケース×特別な貢献とは見なされないケース
・自宅介護で毎日昼間は30分おき、夜間は2時間おきに被相続人の世話をしていた
・同居していて被相続人の生活費も全て負担していた
・入院している被相続人を週に数回見舞いに行き、身の回りの世話や雑用をこなしていた
・通院のため週に数回車を出して付き添っていた

被相続人から対価を受け取っていないこと

寄与行為が認められる条件のひとつは、療養介護を「無償」で行っていたことです。

単に報酬を受け取るだけでなく、「不動産を譲り受けた」「お礼として結婚式を他の兄弟より多く出してもらった」なども対価を受け取ったと見なされる可能性があります。

また、療養介護をする代わりに「生活費は全て被相続人の財産で生活していた」という場合も同様です。

療養介護が一定期間以上であること

寄与分を認められるためには、療養介護が一時的ではなく、継続性がないと認められません。

どれくらい療養介護を続けていれば認められるかは、明確に決まっていません。

しかし、数か月程度ではなく、数年以上の療養介護がないと継続性が認められないと考えておきましょう。

片手間ではなくかなりの負担があったこと

被相続人の療養介護をすることで、多大な手間と労力がかかっていた必要があります。

例えば、療養介護をするために仕事を辞めた場合や、勤務時間を大幅に減らした場合など、自分の生活を崩してまで貢献していた状況であった場合です。

寄与分が認められるためには、療養介護をしていた人が、ある程度専従していたことが必要です。

療養介護と被相続人の財産の維持・増加に貢献していること

寄与分が認められるためには、被相続人の財産の維持・増加に貢献していることが条件のひとつです。

そのため、療養介護をすることで被相続人の財産を減らさずに済んだという事実が必要となります。

例えば、自宅介護をすることで介護施設やヘルパーを雇うための費用が「年間300万円ほど浮いた」などです。

費用が浮くことで、財産の維持をすることができるため、寄与分が認められやすくなります。

介護の寄与分を認めてもらうために必要な証拠

寄与分を認めてもらうためには、先にご説明した要件を満たしていたことを立証するための証拠が必要です。

療養介護の寄与分を主張するために必要な証拠は、次の3つが挙げられます。

【療養介護の寄与分を立証する証拠】

・要介護認定の資料、医師の診断書
・介護サービスの利用に関する記録
・自分で介護をした事実に関する記録

寄与分を認めてもらうために、必要な証拠を確認して主張する準備をしていきましょう。

ひとつずつ解説します。

要介護認定の資料または医師の診断書

被相続人がどの程度介護を必要としていたか証明するために、要介護認定の資料や医師の診断書を準備しましょう。

要介護認定は、住んでいる市町村の窓口に申請が必要です。被相続人が要介護認定の申請を事前に行っていなければ、要介護認定の資料はありません。

被相続人が要介護認定を申請し、要介護の認定がされていれば「介護保険資格者証」が要介護認定を受けている証拠になります。

要介護認定の資料が無い場合は、医師の診断書を準備しましょう。

医師の診断書は、被相続人のかかりつけ医師へ依頼することで取得することができます。診断書を取得するには、3,000〜5,000円程度の費用が必要となります。

介護サービスの利用に関する記録

被相続人が利用した介護サービスの利用費用を負担していた場合は、介護サービスを利用した証拠を準備しましょう。

証拠書類としては、介護サービスの契約書、領収書、銀行口座の振替記録などが該当します。

被相続人が介護サービスを利用していた事実と、相続人が費用を支払っていた事実を証明することが必要です。

仮に、介護サービスを利用していた証拠はあっても、相続人が費用を支払っていた証拠が立証できなければ、寄与分が認められない可能性があります。

自分で介護をした事実に関する記録

寄与分を主張する人が、被相続人の介護をしていたことを証明するための証拠が必要です。

「介護をしていた」という事実だけではなく、「介護をしていた期間」「介護に費やしていた1日の時間」「介護の内容」などが分かる証拠が必要です。

その証拠として有力となるのが、介護日誌です。

介護日誌があれば、介護をしていた期間、時間、内容が全て網羅されているため、療養介護の負担がどれだけあったかを証明することができます。

また、介護のために仕事を休んだ場合は、勤怠表なども証拠となります。

【証拠集めが十分か不安な場合は弁護士に相談がおすすめ!】  

寄与分を認めてもらうために「証拠集めがこれで十分なのか?」「証拠として認められるのか?」不安に思われる場合は、弁護士に相談をしましょう。  

ここまでお伝えしたとおり、寄与分が認められるにはハードルが非常に高く、十分な証拠と合わせて主張をするための準備が必要となります。  

弁護士に相談をすれば、寄与分を認められるために十分な証拠と主張ができる準備ができているのか、的確にアドバイスをもらうことができます。  

弁護士に依頼をすると高額な金額がかかることを恐れる人も多いですが、多くの弁護士事務所では初回無料相談を行っています。  

まずは無料相談を活用して、弁護士より的確なアドバイスをもらえば、自信を持って主張を進められるようになるでしょう。

介護が寄与分として認められにくい2つの理由

ここまで療養介護が寄与分として認められるために必要な要件と、必要な証拠について詳しく解説してきました。

しかし、寄与分は相続人間の不公平をなくすために設けられた制度ですが、認められるためにはハードルが高く、そう簡単に認められるものではありません。

なぜ寄与分が認められにくいのでしょうか。認められにくい理由は、以下の2つです。

【寄与分が認められにくい理由】

・寄与分の要件を満たすことが難しい
・裏付け書類を揃えることが難しい

ひとつずつ詳しく解説致します。

寄与分の要件を満たすことが難しい

先にお伝えしたとおり、療養介護が寄与分として認められるためには、厳しい要件を満たす必要があります。

特に特別な貢献であること【重要】で解説した、「扶養義務を超えた特別な貢献であったこと」を満たすことが難しいのです。

例えば、同居している親子であれば、歳を取った親の面倒を見ることは、法律上当たり前とされています。そのため、「病院の送り迎えをしていた」「食事や掃除など家のことを全て行っていた」という程度では、同居している親子であれば当たり前とされてしまう可能性が高くなってしまいます。

というのも、寄与分を認めてもらうということは、他の相続人が受け取る相続分が減ることを意味します。

遺産分割は、民法に則って法定相続分が定められているのに、それを簡単にひっくり返せてしまうのであれば他の相続人の権利が脅かされかねません。

それにより、法定相続分を修正するに値する寄与行為であるかどうか、要件を厳しく設定し要件に満たない程度の貢献では寄与分が認められないのです。

裏付け書類を揃えることが難しい

要件を満たしている場合でも、それを裏付ける書類を揃えなくてはいけません。しかし、書類を揃えることが非常に難しいことが、寄与分が認められにくい理由のひとつです。

介護をしている時は、忙しい毎日で介護日誌を細かくつけているという人は、多くありません。また、領収書の記録や保管を行っていないケースも多いでしょう。

しかし、特別な貢献をしていたことを裏付ける証拠としては、先にお伝えした証拠を揃えなければ、他の相続人や裁判官を説得することができず、寄与分の主張をあきらめなければならないケースもあります

【判例】生前の介護が寄与分と認められた例・認められなかった例

ここまで被相続人の介護が寄与分として認められるための要件や証拠、認められにくい理由について詳しく解説をしてきました。

実際に療養介護が認められた判例と認められなかった判例を、それぞれ見ていきましょう。

自分のケースでは、寄与分が認められるのかどうか判断するためにも、しっかり確認してください。

療養介護が寄与分として認められた判例

療養介護が寄与分として認められるには、「無償性」「継続性」「専従性」が重視されますが、とくに争点となるのが「特別の貢献」であったかどうかです。

下記の判例は、療養介護が特別な貢献であったとされ、寄与分が認められました。

【認められた判例】   
被相続人=A
被相続人の子=B
Bの妻=C  

Aは持病の悪化と老衰のため寝たきりの状態となり、Aの息子Bとその妻Cが自宅看護を行っていた。Aの病状が進行するとCは30分以上の外出をすることができず、Cは昼夜つきっきりで看護をしていた。結果Cは寝不足と疲れから自律神経失調症を患った。Cの多大な貢献と負担が認められ、2年4ヶ月分120万円の寄与分が認められた。
※当時特別寄与の制度がなかったため、CはBの代行者として看護したとみなされ、Bの寄与分という形で認められた  

(神戸家裁豊岡支部 平成4年12月28日審判)

この判例のポイントは、「自宅介護」をしていたこと、「30分以上外出ができず昼夜つきっきり」であったこと、その結果「自律神経失調症を患った」ことにあります。

これが「継続性」「専従性」であり、「特別な貢献」であると認められたと考えられます。

療養介護が寄与分として認められなかった判例

下記の判例は、療養介護が必要な状態であると認められなかった判例です。

【寄与分を認められなかった判例】
被相続人=A
被相続人の子=B
子Bの妻=C  

Cは通院や入浴の介助など被相続人Aの世話を約13年間、主として担ってきたものの、Bは子らの中で唯一、成人後も継続して被相続人Aが所有する不動産において被相続人Aと同居してきたこと、被相続人Aは、退院後は、一日中付添いが必要な状態にあったわけではなく、自分でトイレに立ったり、食事を食べたりすることはできたことなどを考慮すると、(Cの行為をBの行為と評価して)同居の直系親族としての通常期待される扶養義務の範囲を超える療養看護をしたとまでは評価できないとして、寄与分を否定した。  

(静岡家庭裁判所沼津支部平成21年3月27日審判)

この判例は、先にお伝えした要件のひとつである「療養介護が必要不可欠であったかどうか」が満たされておらず、寄与分が認められませんでした。

療養介護が寄与分として認められるためには、被相続人の病や老化の進行度合いによって、寄与として認められるかどうかで判決が分かれます。

そのため、寄与分を主張する場合は先の要件を満たしているか、しっかり確認をしていきましょう。

介護を寄与分として認めてもらうためにやるべき4STEP

介護を寄与分として認めてもらうためには、以下のステップで寄与分を請求していきましょう。

【寄与分を認めてもらうためのSTEP】

STEP1 遺産分割協議で主張する
STEP2 弁護士に依頼して代わりに主張してもらう
STEP3 遺産分割調停を起こす
STEP4 遺産分割審判で主張する

寄与分を認めてもらうために、しっかり確認をしていきましょう。

STEP1 遺産分割協議で寄与分を主張し、相続人全員に認めてもらう

まずは、遺産分割協議で療養介護による寄与分があることを主張しましょう。

遺産分割協議とは、遺産の分け方を相続人同士で話し合って決めることを言います。相続の分け方は、遺産分割協議で相続人全員の同意を得て決定されます。

寄与分は、被相続人に対して特別な貢献をした分に対して、他の相続人より多く遺産を受け取れる権利ですが、その権利は自ら主張をしないと認められません。

療養介護をしてきた分「しっかりと報われたい」「他の相続人より多く相続するべき」と思うなら、自ら声をあげて他の相続人に訴えかけましょう。

相続人全員が納得すれば、寄与料は相続人で自由に決めて問題ありません。

しかし、相続人の中でひとりでも合意しない人がいれば、遺産分割協議は不成立となります。

寄与分を認めることで、他の相続人の遺産取り分が減るため、認めたくない相続人がいてもおかしくありません。

このような場合は、次の方法で説得をしてみてください。

【寄与分を認めてもらうためにやること】

・証拠を見せる
・調停に移ると相続が長期化することを伝える

寄与分は、比較的関係性の近い相続人同士で話し合って決定できる遺産分割協議が、最も寄与分が認められやすい手続きです。

そのため、特別な貢献をしていた事実を証明する証拠を揃え、相続人全員が納得するように寄与分について丁寧に説明し合意を得られるように進めていきましょう。

STEP2 弁護士に依頼して代わりに主張してもらう

遺産分割協議で相続人全員の合意が取れなかった場合は、弁護士に依頼して代わりに主張をしてもらうことがおすすめです。

弁護士が代わりに主張をすることで、相手も感情的にならず法的な考え方を受入れやすくなり、話がまとまる可能性が非常に高くなります。

また、弁護士は依頼者の利益を最大化するために動いてくれます。依頼者が多くの寄与分を取得できるよう、交渉のプロとして他の相続人を説得してくれたり、法律の専門家として様々な解決案や妥協案を提示してくれたりすることが期待できます。

弁護士に依頼をすれば、交渉が決裂した場合でも次の手続きである遺産分割調停の手続きや代理人なども依頼できるので安心です。

【弁護士に依頼した場合の費用の目安】
弁護士に依頼すると高額な費用がかかるイメージがある人も多いと思いますが、実際に弁護士に依頼した場合の費用目安は次のとおりです。  

・着手金:22万~33万円
・報酬金:取得した財産の4%~16%  

弁護士費用は、遺産額や法律事務所によって大きくことなるため、必ずHPや見積書で詳細を確認しましょう。  

弁護士に依頼すべきか悩んだ際は、初回の無料相談を活用して弁護士に依頼すべきか判断することがおすすめです。

STEP3 遺産分割調停を起こす

遺産分割協議で相続人全員の合意が得られなければ、家庭裁判所に「遺産分割調停」や「寄与分を定める処分調停」を申立て、遺産の分割方法に関する話し合いと共に、寄与分を主張します。

「遺産分割調停」は、中立な立場である調停員に間を取り持ってもらい、当事者同士の話し合いで解決案を模索することです。調停委員会が双方の話を聞き入れ、アドバイスや解決案を提案することで解決をサポートしてくれます。

「寄与分を定める処分調停」とは、寄与分を決めるための調停です。調停の進め方としては、遺産分割調停と同様で、調停委員会が間に入り寄与分を決めるサポートをします。

どちらの調停も、裁判所から指定された期日に裁判所に行き、対立する相続人が交互に調停室に入って調停委員に意見を延べ、調停員会が話し合いをまとめるという流れで進められます。

この時、弁護士に依頼をしていれば調停の申立て手続きや、代理人として依頼者に代わって調停員会と話し合いを進めてもらうことが可能です。

調停では、感情的な話ではなく、法的な根拠を元に寄与分を主張する事が好ましいため、弁護士に任せることでのぞむ結果を得やすくなります。

遺産分割調停の流れや方法について詳しく知りたい方は、以下の記事を合わせてご覧ください。

STEP4 遺産分割審判で主張する

遺産分割調停で話し合いがまとまらず不成立となった場合は、自動的に「遺産分割審判」に移行します。遺産の分割方法について判決をしてもらうだけなら新たな申し手をする必要はありません。

ただし、寄与分について判断をしてもらうためには、別途「寄与分を定める処分審判」を申し立てる必要があるため注意しましょう。

審判とは、相続人それぞれの主張や提出された資料などをもとに、裁判所が遺産分割の内容を決定する手続です。そのため、相続人間の話し合いや合意は必要ありません。

また、審判が確定すると、その内容を覆すことはできなくなります。

そのため、審判で寄与分が認められれば、寄与分を考慮した遺産分割が行われます。一方、寄与分が認められなければ、遺産分割審判で決定した方法で遺産分割を行うこととなります。

遺産分割審判の流れや進め方について詳しく知りたい方は、以下の記事を合わせてご覧ください。

【例外】相続人じゃなくても親族なら「特別寄与料」の主張ができる

これまで寄与分が認められるのは、原則相続人だけでした。

しかし、実際は「息子の妻が介護をしていた」など相続人以外の人が療養介護の寄与行為を行っていたケースは少なくありません。

そのような事例を救済するために、2019年より特別寄与料の制度が施行されました。

特別寄与料とは、相続人以外の親族が被相続人を無償で療養介護していた場合、相続人に寄与料を請求できる制度のことです。

民法では、以下のように定められています。

第1050条 
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

出典:e-Gov「民法第千五十条」

これにより、相続人でなくても被相続人に貢献した人なら、寄与料を受け取ることができるようになりました。

特別寄与料が認められる要件については、通常の寄与制度と変わりませんが、以下の2点には注意しましょう。

【特別寄与料の注意点】

・主張できる親族は「6親等内の血族、3親等内の姻族」に限る
・請求できる期間に制限がある

特別寄与料を請求したいと考える場合は、注意点をしっかり確認しましょう。

主張できる親族は「6親等内の血族、3親等内の姻族」に限る

特別寄与料が主張できる親族は「6親等内の血族、3親等内の姻族」とされています。詳しい親族の範囲は、以下の図をご覧ください。

このように、自分のはとこ(祖父の兄弟の孫)や自分の妻の甥っ子まで含まれることとなり、かなり広い範囲の親族が特別寄与料を主張できるようになっています。

しかし、親族ではない人が無償で介護をしていたからといっても、特別寄与料を主張することはできませんので注意しましょう。

請求できる期間に制限がある

特別寄与料を請求したい場合は、家庭裁判所に申立てを行いますが、申立てができる期間には制限があるので注意しましょう。

申立てができる期間は、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月」または「相続開始の時から1年」以内という短い期間制限になっています。

請求期限が短いため、相続人たちの遺産分割協議を待っていたら、請求できる期間が過ぎているということもあり得ますので、請求をする場合は早めに申立て手続きを進めるようにしましょう。

まとめ

この記事では、相続において介護をしていた人の寄与分について詳しく解説をしてきました。

相続において介護をしていた相続人は、寄与分が認められる可能性があります。

ただし、寄与分が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

【介護が寄与分として認められる要件】

・療養介護が被相続人にとって必要不可欠だったこと
・特別な貢献であること【重要】
・被相続人から対価を受け取っていないこと
・療養介護が一定期間以上であること
・片手間ではなくかなりの負担があったこと
・療養介護と被相続人の財産の維持
・増加に因果関係があること

寄与分を認めてもらうためには、上記の要件を満たしたことを立証するための下記の証拠が必要です。

【療養介護の寄与分を立証する証拠】

・要介護認定の資料、医師の診断書
・介護サービスの利用に関する記録
・自分で介護をした事実に関する記録

ただし、寄与分は相続人間の不公平をなくすために設けられた制度ですが、認められるためにはハードルが高く、そう簡単に認められるものではありません。

認められにくい理由は、以下の2つです。

【寄与分が認められにくい理由】

・寄与分の要件を満たすことが難しい
・裏付け書類を揃えることが難しい

介護を寄与分として認めてもらうためには、以下のステップで寄与分を請求していきましょう。

【寄与分を認めてもらうためのSTEP】

STEP1 遺産分割協議で主張する
STEP2 弁護士に依頼して代わりに主張してもらう
STEP3 遺産分割調停を起こす
STEP4 遺産分割審判で主張する

また、2019年から寄与分は相続人以外の親族も「特別寄与料」として請求することが可能となりました。

この記事が、被相続人の介護を理由に寄与分を主張したいと考えている人のお役に立てることを願っています。

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