弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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同志社大学法科大学院客員教授
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「兄弟が行方不明だけど、遺産分割協議はどうやって進めたらいいの?」
「不在者財産管理人の選任ってどうしたらいいの?」
不在者財産管理人とは、行方が分からず連絡もまったく取れない行方不明者(不在者)の財産を、本人に代わって管理する人のことです。
行方不明の相続人がいるままでは遺産分割協議を行うことはできません。そこで、「不在者財産管理人」を選任してもらい本人に代わって遺産分割協議に参加してもらうことで、遺産分割の手続きが進められるようになります。
しかし、不在者財産管理人は自分たちで自由に選任することはできません。不在者と利害関係のある配偶者や親族が家庭裁判所へ申立てをし、選任してもらう必要があります。
家庭裁判所で不在者財産管理人が選任されるまでには3ヶ月~半年程度の時間がかかります。そのため、遺産分割協議を急いで行う必要がある場合は、速やかに申立て行うことが大切です。
今回この記事では、相続人の中に行方不明者がいる場合に遺産分割協議で必要となる不在者財産管理人についてわかりやすく解説し、選任方法や必要となる費用について紹介します。
この記事のポイント |
・ 不在者財産管理人とはなにか ・不在者財産財産管理人の選任が必要なケース ・不在者財産管理人の選任方法と必要な費用 |
相続人が行方不明で遺産分割協議が進まず困っている人は、ぜひ最後まで御覧ください。
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不在者財産管理人とは、行方が分からず連絡がまったくとれない行方不明者(不在者)の財産を管理する人です。相続の場面では、行方不明の相続人に代わり財産を管理する人です。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。そのため、相続人の1人が行方不明で連絡が取れない状況では遺産分割協議を行うことができません。
そこで、不在者財産管理人を選任してもらうことで、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加してもらい、全員同意で協議することで相続手続きを進められるようになります。
不在者財産管理人は、不在者の配偶者などの利害関係者の申立てにより家庭裁判所で選任されます。申立ては下記の方法で進めていきます。
【不在者財産管理人の申立て方法】
申立てできる人 | 配偶者、共同相続人、債権者、検察官など |
申立先 | 不在者の最後の住所を管轄する家庭裁判所 裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所 |
費用 | 収入印紙800円分 連絡用の郵便切手(金額は各裁判所に要確認) |
必要書類 | ・申立書 ・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書) ・不在者の戸籍の附票 ・財産管理人候補者の住民票または戸籍の附票(推薦の場合) ・不在を証明する資料 ・不在者の財産に関する資料 ・申立人と不在者の利害関係を証明する資料 |
選任までの期間 | 数ヶ月~半年 |
家庭裁判所へ選任の申立てを行ったあと、家庭裁判所は不在者であるかどうかの審理を行います。この審理には数か月ほどを要し、不在者財産管理人の選任まで半年ほどの時間がかかることが通常です。
遺産分割協議に期限はありませんが、相続税の申告と納税は死後10ヶ月以内に行わないと延滞税が課せられます。また、遺留分侵害額請求を行うためには1年以内の請求が必要です。
このような期限がある手続を行う場合には、速やかに不在者財産管理人を申立てましょう。
行方不明から7年以上経過している場合は「失踪宣告」の申立てが可能 相続のタイミングで相続人の1人が行方不明のとき、行方不明となってから7年以上経っている場合には、不在者財産管理人ではなく、失踪宣告の申立てが可能です。 行方不明とは、居所が分からず生死不明の状況を指します。 失踪宣告とは…行方がわからず一定の要件を満たした者を法律上、死亡したものとみなす制度。 失踪宣告が認められると行方不明者は死亡扱いとなるため、その人抜きで相続手続を進めることができます。 |
不在者財産管理人が担う役割は民法で定められている以下の3つです。
・不在者の財産を管理する ・不在者の財産目録を作成する ・家庭裁判所の許可を得て遺産分割協議を成立させる |
不在者財産管理人は何でも自由に行えるわけではなく、家庭裁判所の許可がないとできないこともあります。
その場合は、申立て手続が必要となるので注意が必要です。
不在者財産管理人の役割について詳しく見ていきましょう。
不在者財産管理人の主な役割は不在者の財産を管理することです。この役割は、不在者の所在が判明し財産を引き渡すまで続きます。
不在者財産管理人の権限は民法に定められています。不在者財産管理人は権限の定めのない代理人に該当します。以下が民法の条文です。
第103条(権限の定めのない代理人の権限) 権限の定めのない代理人は、次に揚げる行為のみをする権限を有する。 一 保存行為 二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為 |
このように不在者財産管理人に認められている権限は、保存行為と管理行為(利用・改良)の2つです。
保存行為 | 管理行為 |
財産の価値を保存し、現状を維持する行為 | 財産の保存、利用及び改良を目的とする行為 |
例えば、財産に賃貸不動産が含まれている場合、賃料の徴収や債務の返済を行います。不動産の修繕が必要な場合も保存行為として対応します。
一方、「遺産分割協議を成立させる」「不動産を売却する」などの処分行為は保存行為や管理行為に該当しないため認められていません。家庭裁判所の許可を得て遺産分割協議を成立させるで詳しく解説しますが、家庭裁判所の許可を得ることで遺産分割協議を成立させるなどの処分行為が可能となります。
不在者財産管理人は選任後ただちに不在者の財産調査を行い、財産目録を作成し家庭裁判所に提出します。
不在者財産管理人の役割については、民法27条で以下のとおり定められています。
第27条(管理人の職務) 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。 2 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は警察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。 3 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。 |
財産管理期間中は年に1回、財産の管理状況について家庭裁判所への報告が求められます。
不在者財産管理人の権限は、保存行為と管理行為の2つです。そのため、不在者の財産を勝手に処分することはできず、自身の判断で遺産分割協議を成立させることもできません。
しかし、家庭裁判所の許可があれば遺産分割協議を成立させることが可能となります。
第28条(管理人の権限) 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。 |
ただし、家庭裁判所の許可は簡単に得られるわけではないため注意が必要です。
許可の判断基準は、不在者が不当な不利益を受けず、処分行為が必要であることです。
遺産分割協議の成立を申し立てる場合は、不在者のために最低限、法定相続分の確保が求められます。遺産分割協議の内容が不在者に不利だと判断された場合、遺産分割協議(案)の変更を要請されます。
そのため、不在者財産管理人が遺産分割協議を成立させるためには、不在者が正当に遺産を受け取れる遺産分割協議(案)を準備することが必要不可欠です。
遺産分割協議を成立させる申立ては以下のとおり行います。
【権限外行為許可の申立て方法】
申立てできる人 | 不在者財産管理人 |
申立先 | 不在者の最後の住所を管轄する家庭裁判所 裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所 |
費用 | 収入印紙800円分 郵便切手84円 ※審判書に添付する契約書や図面等の分量が多い場合には94円又は140円の納付が必要。 |
必要書類 | ・申立書 ・遺産分割協議書(案) ※その他、管轄家庭裁判所にて別途書類が必要とされる場合があります。 |
申立て方法について詳しく知りたい場合は、裁判所のホームページ内の「不在者の財産管理人の権限外行為許可」の欄をご覧ください。
実際に不在者財産管理人の選任が必要なケースを具体的に紹介します。
不在者財産管理人の選任が必要なケース |
・相続人の中に行方不明者がいて遺産分割協議が行えない場合 ・行方不明の相続人に相続放棄をさせたい場合 ・行方不明者との共同名義の不動産を売却したい場合 |
行方不明者が所有する財産は「本人かその代理人でないと対応ができない」のが基本です。
そのため、行方不明者が相続人であった場合や財産の名義変更を行いたい場合、必ず不在者財産管理人の選任が必要となります。
具体的に不在者財産管理人が必要となるケースを把握し、ご自身の状況と照らし合わせて選任の要否を判断してください。
必要な場合、急を要するケースもあるので注意しましょう。
ここまでお伝えしてきたとおり、相続人の中に行方不明者がいる場合は遺産分割協議を進めることはできません。
なぜなら、不在者にとって不当な遺産分割がなされたり、勝手に遺留分を放棄されるなど、不在者の不利益となる行為が行われる可能性があるからです。
そのため、遺産分割協議は相続人全員がそろった状態で行うことが必要となります。
そこで、不在者財産管理人を選任することで、不在者に代わって遺産分割協議を進めることができ、遺産相続をスムーズに行うことができます。
行方不明の相続人に相続放棄をさせたい場合は、不在者財産管理人を選任し家庭裁判所へ申立てを行う必要があります。
しかし、単に「遺産を渡したくないから」など、不在者の不利益になる事情では許可はおりません。被相続人の遺産の多くが負債である場合など、不在者の利益になる場合に相続放棄が認められます。
相続放棄ができるのは、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内です。
相続人が行方不明の場合にも、当該行方不明者は自身のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内であれば相続放棄ができます。不在者が知らないうちに負債を負うということはありません。
例えば、相続人から1年後に突然連絡があり所在が判明、相続人はその際に被相続人の死亡を知ったという場合、そこから3ヶ月以内に申述すれば相続放棄が認められます。その後、次の相続順位の人へ相続権が移ります。
しかし、そうすると相続人が確定しない状態が長期間続くことになります。そこでこのような場合には行方不明の相続人の相続放棄を検討する必要があります。
なお、相続順位について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
実家の名義が亡くなった父と行方不明の兄になっている。被相続人の相続財産の調査を進める中でこのようなケースもあります。
その場合、実家を売却したいと考えていても勝手に売却することはできません。
このケースでも不在者財産管理人を選任することで不動産売却を進めることが可能です。
不在者財産管理人との話し合いのもと、共有名義の不動産全体の売却はもちろんですが、共有持分を買い取って共有名義を解消することも可能です。
もっとも、前述のとおり、家庭裁判所の許可を得るためには不在者の財産が不利益とならないことが必要です。
不在者財産管理人は、不在者の配偶者や親族などの利害関係者の申立てによって家庭裁判所にて選任されます。そのため、自分たちで不在者財産管理人を自由に選ぶことはできません。
ここでは、不在者財産管理人にはどのような人がどのように選任されるのか、3つの要点で詳しく解説します。
・不在者財産管理人を申立てる要件 ・不在者財産管理人になる人 ・不在者管理人が選任されるまでの流れ |
不在者財産管理人の申立てをするには2つの要件を満たす必要があります。
①不在者であること
②財産管理人を置いていないこと
そもそも、この2つの要件を満たしていないと申立ては許可されませんのでしっかり確認しましょう。
当然ながら、対象者が「不在者」でなければ不在者財産管理人の選任申立ては認められません。
裁判所のHPでは以下のように定義されています。
不在者とは…従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者) |
このように、容易に戻る見込みのない者となっているため、行方不明になって半年程度では選任申立ては認められづらく、少なくとも1年以上の行方不明期間が必要です。
不在者の確認方法は? |
家庭裁判所は、申立て後すぐに不在者に該当するかの確認を行います。 確認方法は、住民票の写しや戸籍の附票の写しにより住所地の確認とともに、現地調査や親族への問合せを行い、不在者の従前の生活状況、不在となった経緯等について調べます。 申立てを行う際には、不在を証明する資料として「あて所に尋ね当たらず」などの理由で返送された不在者宛郵便物等の提出が必要です。 |
不在者が任意財産管理人を置いている場合、不在者財産管理人の選任申立てはできません。
任意財産管理人とは |
財産管理委任契約の受任者のこと。 財産管理委任契約とは、事故や病気、加齢による判断能力の低下などによって財産の管理ができなくなる可場合に備え、親族や友人などの信頼できる人に財産の管理を委任する契約。 |
不在者が任意財産管理人を置いている場合は、不在者の財産管理はもちろん、遺産分割協議にも任意財産管理人が参加します。そのため、不在者財産管理人を選任する必要がありません。
不在者財産管理人には特別な資格は不要です。しかし、不在者の財産を適切に管理すべく、第三者や弁護士・司法書士などの専門家が就任することが多いです。
不在者の財産を管理することが不在者財産管理人の役割です。不在者の不利益とないよう、適格性が要求されるので、不在者財産管理人の選任は家庭裁判所に委ねられています。
自分たちで不在者財産管理人の候補者を推薦することは可能ですが、家庭裁判所が当該候補者を選任するとは限りません。
不在者財産管理人が選任されるまでの流れは以下のとおりです。
不在者財産管理人の選任申立てを家庭裁判所へ行ってから、約1~4ヶ月かけて不在者の確認が行われます。その後、選任をするかどうかの審判が行われ、不在者財産管理人が選任されます。
選任までの期間は約3ヶ月〜半年と長い期間が必要です。
そのため、遺産分割協議を急いで行いたい場合は速やかに申立てを行うようにしましょう。
不在者財産管理人を選任するために必要となる費用は以下の3つです。
費用詳細 | 費用相場 | 支払う人 |
申立て手続きに必要となる費用 | 収入印紙800円分 連絡用の郵便切手 | 申立人 |
不在者財産管理人が専門家となった場合の報酬 | 1万円~5万円/月 | 不在者 |
予納金が必要な場合の費用 | 20万円~100万円 | 申立人 |
不在者財産管理人を選任するための費用は、申立人が費用負担をするものと、不在者の財産で負担するものとに分かれます。
申立て手続きを進める前に必要な費用を確認し、もれなく準備しましょう。
申立て手続きに必要となる費用は下記のとおりです。
・収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手(切手の金額は各裁判所に要確認)
また、申立てに必要な書類である戸籍謄本や住民票などの交付には手数料が必要です。戸籍謄本は1通450円、戸籍附票と住民票は1通300円です。
不在者財産管理人が弁護士や司法書士などの専門家となった場合は、報酬が必要です。
報酬の相場は、1万円〜5万円/月です。
不在者財産管理人の報酬は、家庭裁判所が管理にかかる手間や難易度によって決定します。報酬の中には財産を管理するためにかかる手数料や経費なども含まれます。
この費用は、不在者の財産から支払われます。そのため、申立人が支払うことは基本的にはありません。
しかし、不在者の財産が少ない場合や負債しかない場合には不在者の財産から支払うことはできないため申立人が予納金を支払う必要があります。
不在者の財産が少ない場合や負債しかない場合は、不在者の財産から不在者財産管理人の報酬等を支払うことができません。そのため、家庭裁判所は申立人に対し予納金の支払いを求めます。
予納金の金額については法律で定められていません。そのため、裁判所が以下の流れで決定します。
予納金の決定方法 |
①財産管理に必要な金額を算出(報酬+事務手数料) ②不在者の預貯金等の財産を確認 ③足りない分を予納金として算定 |
予納金の相場は、20万円〜100万円です。
この予納金は、不在者の財産管理が終了した際、残っていれば返還されます。しかし、予納金が残っていない場合は返還されないので注意しましょう。
予納金が確定するのは、不在者財産管理人の選任申立てを行った後です。申立てをする際に予納金が発生する可能性があり、100万円ほど準備する必要があることを考えておくと良いでしょう。
しかし、遺産が20万円程度なのに予納金が100万円必要となったらどうでしょうか。それなら、不在者財産管理人の選任はしたくないと思いますよね。
既に申し立て済みであっても、不在者財産管理人の選任申立てを取り下げることも可能です。
ただし、行方不明者がおり、その管理人もいない状況では遺産分割協議を進めることができないので、遺産はそのままとなります。これによるリスクが生じますので注意が必要です。
遺産分割協議をしない場合に起こるリスク |
・相続税の申告に間に合わなくなる ・相続人の死亡や認知症などで手続きが複雑化する ・相続財産の責任を相続人全員が負うこととなる |
上記のリスクを考慮したうえで、不在者財産管理人を選任すべきかどうかを判断するようにしましょう。
相続税の申告に間に合わなくなる
相続税の申告は、相続開始の翌日または相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。相続税の申告・納付は、相続人それぞれが相続した分に対して行います。
この期限を過ぎると延滞税が課せられます。
しかし、遺産分割協議が終わっていなければ誰がどの相続分に対して納税すべきかが決まりません。この場合、法律で決められた相続分に合わせて期限内に申告・納税し、遺産分割が完了した段階で改めて修正申告を行う必要があり、2度手間となります。
ただし、相続税の申告・納税が必要となるのは、遺産総額が相続税の基礎控除である3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)を超える場合のみです。
例えば、遺産総額が4,000万円で相続人が3人の場合、相続税の基礎控除は3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円となるため相続税の申告・納付は不要です。
遺産総額が基礎控除を超える場合は早期に遺産分割協議を完了させるために速やかに不在者財産管理人の選任申立てを行いましょう。
遺産分割協議を先延ばしにすることで、相続人の誰かが死亡してさらなる相続が発生したり、相続人が認知症等を発症すれば遺産分割協議に参加できなくなる可能性があります。
これによって、新たに相続人の調査が必要であったり認知症の人には成年後見人を選任する必要が生じます。成年後見人をつける場合は、家庭裁判所での手続きや報酬も必要です。
このように、不在者財産管理人を選任せず遺産分割協議を先延ばしにすることで、相続手続がさらに複雑化する可能性があります。
遺産に不動産がある場合、その不動産に関する責任は相続人全員にあります。そのため、固定資産税などは相続人全員が支払う義務を負います。
「誰も使わない家だから」「不要な土地だから」といって放置をしておくと、万が一不動産が倒壊したり火事になったりして第三者に損害を与えた場合、相続人全員が責任を追うこととなります。
そのため、遺産に不動産がある場合は不在者財産管理人の選任し、早期に遺産分割協議を進めることを検討しましょう。
「遺産分割協議を急いで行いたい」「相続手続を素早く終わらせたい」このような理由で不在者財産管理人の選任申し立てを急ぎたいという人も少なくないでしょう。
その場合は、弁護士への依頼がおすすめです。
不在者財産管理人の申立てにはさまざまな書類の提出が必要となります。特に、不在の事実を証明する資料や不在者の財産に関する資料を揃えるのには時間と手間がかかり、不備があればますます労力がかかります。
このように、自分で申立てをしようすると慣れない手続となるため、申立て書類の収集に時間がかかります。申立てを急ぎたい場合や忙しくて書類収集の時間が取れない場合は、申立てに慣れている弁護士への依頼が有効です。
弁護士に依頼することで、わずらわしい申立て書類の作成・提出はもちろん、提出後の裁判所とのやりとりも任せられます。
その他にも、遺産相続手続きは複雑なことも多く発生します。その場合、弁護士に依頼をしていれば速やかに相談・対応を依頼できるので遺産相続手続きをスムーズに行うことができます。
不在者財産管理人の選任申立てを弁護士に依頼すべき理由 |
・申立てに必要な書類作成・提出、裁判所とのやりとりを任せられる ・権限外行為許可(遺産分割協議)の申立てを依頼できる ・遺産分割協議(案)が正当か相談ができる ・遺産分割について相続人同士で揉めている場合に相談ができる ・相続手続が分からない場合に相談ができる |
また、そもそも不在者財産管理人の選任申立てをすべきか否か悩んでいる場合も弁護士に相談しましょう。
当事務所(弁護士法人サリュ)では、長年にわたり相続事件を解決してきた実績があります。それぞれの状況に合わせて相続手続をどうするべきかの的確なアドバイスを致します。
まずは、無料で相談を受け付けておりますのでお気軽にお問合せ下さい。
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今回の記事では、行方不明の相続人がいる場合の遺産分割協議で必要となる不在者財産管理人について詳しく解説をしてきました。
結論として、行方不明の相続人がいる状況では遺産分割協議を成立させることができません。遺産分割協議を成立させるためには、不在者財産管理人の選任が必須となります。
不在者財産管理人は、自分たちで自由に選ぶことはできず、家庭裁判所に申立てをし選任してもらう必要があります。申立てから選任されるまでは半年ほどの時間がかかります。
そのため、遺産分割協議を急いで行いたい場合や相続税の申告・納付が必要な場合は速やかに申立てを行うようにしましょう。
また、申立ては不在者と利害関係がある配偶者や親族が行う必要があります。申立て方法は以下のとおりです。
【不在者財産管理人の申立て方法】
申立てできる人 | 配偶者、共同相続人、債権者、検察官など |
申立先 | 不在者の最後の住所を管轄する家庭裁判所 裁判所を探す場合はこちら→各地の裁判所 |
費用 | 収入印紙800円分 連絡用の郵便切手(金額は各裁判所に要確認) |
必要書類 | ・申立書 ・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書) ・不在者の戸籍の附票 ・財産管理人候補者の住民票または戸籍の附票(推薦の場合) ・不在を証明する資料 ・不在者の財産に関する資料 ・申立人と不在者の利害関係を証明する資料 |
選任までの期間 | 数ヶ月~半年 |
不在者財産管理人になるのは、申立人や他の相続人と利害関係のない第三者や弁護士・司法書士などの専門家です。
弁護士・司法書士などの専門家が選任された場合は不在者の財産から報酬が支払われます。万が一、不在者の財産で報酬が支払えない場合は申立人が20~100万円ほどの予納金を支払わなくてはなりません。
予納金が高額な場合、申立てを取り下げることは可能ですがリスクもあります。リスクも考慮したうえで不在者財産管理人の選任を申し立てるかどうかの判断をしましょう。
また、不在者財産管理人の選任申立ての手続は手間と時間がかかります。急いで申立てをしたい場合や仕事が忙しくて申立て書類を作成・収集する時間がないという場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。
弁護士であれば、不在者財産管理人の選任申立てだけではなく、その他相続に関する相談や手続など速やかに対応することが可能です。