弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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同志社大学法科大学院客員教授
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「他の相続人が遺産分割協議書を偽造して勝手に相続を進めている!」
「認知症の母に代わって遺産分割協議書に押印をした相続人がいる。これは偽造?」
偽造された遺産分割協議書は無効です。遺産分割協議書は相続人全員の合意が無ければ認められません。
そのため、偽造された遺産分割協議書を使って行った相続手続きも、もちろん無効となります。
ただし、相続人の誰かが偽造であることを告発しなければ、偽造された遺産分割協議書のまま相続は進められてしまいます。
そこで、遺産分割協議書の偽造が発覚した場合は、以下の流れで対処をしていくことを検討していきましょう。
まずは、偽造した相続人に遺産分割協議のやり直しを申し入れる必要があります。
偽造した相続人が話し合いに応じて、相続人全員が納得いく遺産分割協議ができれば問題はありませんが、そう簡単ではないでしょう。
トラブルになりそうな場合は、遺産分割調停・審判や遺産分割協議書が無効である事を裁判所に確認してもらうための訴訟を提起することを検討しなくてはなりません。
そうなれば、個人では対応することは難しいため、いち早く弁護士に相談をすることがおすすめです。
そこで今回この記事では、遺産分割協議書を偽造されたらどうなるのか、偽造にあたる具体的な行為を詳しく解説した上で、その場合の対処法について分かりやすく紹介します。
また、遺産分割協議書を偽造した人に科せられるペナルティについても解説しますので、最後まで記事を読み進めてください。
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冒頭でもお伝えしたとおり、遺産分割協議書が偽造された場合、遺産分割は無効となります。
大前提として、遺産分割協議書は相続人全員の同意が必要です。
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で話し合われた内容をまとめた書面です。遺産分割協議には、相続人全員の参加が必要で、話し合いによって「どの相続人が、どの遺産を、どの程度相続するのか」を決めていきます。
遺産分割協議で相続人全員の同意が得られたら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・実印を押印する必要があります。また、相続人全員分の印鑑証明書も添付し、相続人全員が同じものを1通ずつ所持することで、相続人全員の同意を得た遺産分割協議書となります。
そのため、一部の相続人が、他の相続人に無断で署名・押印を行った遺産分割協議書では、相続手続きを進めることはできません。
しかし、偽造された遺産分割協議書であることを、相続人の誰かが声を上げなければ、相続財産の預貯金が引き出されたり、不動産の名義変更をされたりしてしまい、大きな不利益を被る可能性が非常に高いです。
万が一、他の相続人が無断で相続手続きを進めていた場合は、もちろん無効となります。
無断で相続手続きを進めている相続人がいる場合は、仕切り直して遺産分割協議をやり直すことができます。相続人の中で、遺産の使い込みをしていた場合は取り戻すことも可能です。
また、遺産分割協議書が偽造されている場合は、遺産分割協議自体が成立していないと考えられるため、遺産分割協議を改めて正式に行わなければなりません。
相続人間の関係が悪化している場合は、相続人同士での話し合いができない場合も多いため、家庭裁判所で遺産分割調停の申立てを検討する必要も出てきます。
遺産分割協議書は、悪意がなくても勝手に署名・押印することで偽造行為となります。
具体的に偽造にあたる行為は以下のとおりです。
【遺産分割協議書の偽造にあたる行為】
・相続人の同意なく無断で署名・押印する ・自分の意思で判断ができない相続人に代わって署名・押印をする |
どのような行為が偽造にあたるのか、しっかり確認をしていきましょう。
遺産分割協議書の偽造でもっとも多い行為が、相続人の同意なく無断で署名・押印をする行為です。
1章でお伝えしたとおり、遺産分割協議書は遺産分割協議で全員が参加の上、同意を得た相続の内容が記されており、それに同意をした証拠として相続人全員の署名と実印の押印、印鑑証明書の提出が必要となります。
実印による押印と印鑑証明書の提出が必要となるため、偽造は難しいと思われる方も多いですが、一緒に住んでいる家族であれば、実印を持ち出すことは容易いでしょう。
印鑑証明書についても印鑑登録証を持ち出せば、取得ができてしまいます。
このように、自分が望んだ相続内容ではない遺産分割協議書を偽造されてしまう可能性があるのです。
また、認知症で自身の意思で判断ができない相続人の署名・押印をすることも、偽造となります。
相続人の中に重度の知的障害を持つ人や認知症の人がいる場合に、相続人に代わって署名・押印をしてしまうケースもあります。
たとえ、悪意が無かったとしても本人の意思を確認できない状況で本人に代わって署名・押印をしてしまうと、遺産分割協議書の偽造行為です。
損害賠償請求や刑事罰などのペナルティを受けるリスクがあるので十分に注意が必要です。
重度の知的障害を持つ人や認知症の人は、注意力や記憶力がない状態となるため、「意思能力がない」とみなされ、遺産分割の合意などの法律行為を行うことはできません。
そのため、このような相続人がいる場合には、成年後見人という代理人を定めて、遺産分割を代理してもらうことで遺産分割協議を成立させる必要があります。
認知症の相続人がいる場合の相続の進め方については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
遺産分割協議書を偽造した人は民事・刑事の両方で責任を問われることとなります。
「民事事件と刑事事件という言葉を良く耳にするけど、具体的にどのような違いがあるか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
遺産分割協議書の偽造トラブルについては、刑事の側面と民事の側面の両方を合わせ持っています。
具体的な違いについて、分かりやすく下記にまとめました。
【民事事件と刑事事件の違い】
民事事件 | 刑事事件 | |
裁判を起こす人 | 権利等を主張する人 ※弁護士は原告の代理人 | 検察官 ※犯罪の被害者には裁判を起こせない |
当事者 | 私人vs私人 | 被疑者・被告人vs国(検察官) |
訴訟の提起 | 誰でも訴えることができる | 検察官による「起訴」のみ |
裁判の対象 | 権利・義務の有無など | 有罪か無罪か |
請求する内容 | ・金銭の支払い ・物(不動産含む)の引き渡し ・謝罪広告 ・行為の差し止め | 被告人の処分 ・懲役、罰金、科料 |
法律 | ・民法 ・民事訴訟法 | ・刑法 ・刑事訴訟法 |
民事事件と刑事事件の違いは、裁判で争う当事者の違いや、争いごとの対象によって区別できます。
民事事件では、私人(個人あるいは法人を問わず)同士の争いとなり、私人間の紛争を解決する手続きを裁判所に求めるものです。誰でも訴訟を起こすことができ、権利や義務の有無が争いの争点となります。
一方、刑事事件では、人が起こした犯罪について検察官(国家)が処罰を裁判所に求めるもので、有罪か無罪かを争います。
刑事事件はあくまでも「犯罪の疑われる人vs検察官(国家)」の関係であり、「犯罪に対しどのような刑罰を科すか」が問題です。
つまり、「加害者vs被害者」の争いではないため、被害者への賠償などの責任追及をしたい場合は、刑事上の問題ではなく、民事事件として訴えを起こす必要があります。
遺産分割協議書を偽造され、勝手に相続手続きを進められた場合の民事・刑事それぞれの責任追及については、次の章から詳しく解説します。
前章でお伝えしたとおり、遺産分割協議書を偽造され、勝手に相続手続きを進められた場合は、民事事件として訴えを起こし責任追及をすることができます。
追求できる責任は以下のとおりです。
【追求できる民事責任】
・相続財産を原状に回復させる請求 ・損害賠償請求 |
偽造された遺産分割協議書を使って、既に預金を引き出していたり、不動産の名義変更や売却をしていたりする場合は、民事責任の追及を検討していきましょう。
ひとつずつ詳しく解説します。
遺産分割協議書を偽造し、勝手に相続手続きを進めている相続人がいる場合は、相続財産を原状回復させるよう請求することができます。
原状回復とは、相続財産を元にあった状態に戻すことです。
相続手続きを勝手に進めて、不動産の名義変更をしていた場合は、名義を被相続人のものに戻したり、預金を引き出していた場合は、預金を元の口座に戻したりすることを指します。
しかし、原状回復をすることは簡単なことではありません。
例えば、不動産を名義変更していただけであれば名義を戻すだけなので難しくないでしょう。一方、不動産をすでに売却してしまっている場合や預金を使い込んでいる場合は、原状回復が難しかったり、すぐに預金を元に戻したりできません。
その場合には、勝手に相続を進めた相続人に対して、損害賠償請求をすることとなります。
勝手に相続手続きを進めた相続人が、不動産の名義変更を行い売却してしまった場合は、原状回復することは難しいでしょう。
その場合は、勝手に相続を進めた相続人に対して被った損害について、損害賠償請求をすることができます。
例えば、相続人である兄が勝手に、唯一の相続財産である不動産の名義変更を行い、勝手に売却して4,000万円を取得した場合で解説していきましょう。
相続人が兄弟2人の場合、法定相続分は1/2ずつです。相続財産は4,000万円の不動産のみであれば、2,000万円ずつを相続することが正当です。
この場合であれば、相続するべき2,000万円の損害を被ったとして、損害賠償請求をすることが可能です。
ただし、損害賠償請求は訴訟となり、個人で対応することは難しくなるため、弁護士へ相談して手続きを進めるようにしましょう。
また、その際に掛かった訴訟費用や弁護士費用なども、損害賠償請求として請求することができる場合もあります。
遺産分割協議書の偽造は、犯罪行為です。
そのため、遺産分割協議書を偽造した人には、刑事罰として下記のペナルティを科せられる可能性があります。
【遺産分割協議書を偽造した場合の刑事責任】
・私物書偽造罪(刑法159条1項) ・公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項) ・詐欺罪(刑法246条1項) |
2章でお伝えしたとおり、たとえ悪意が無かったとしても遺産分割協議書の偽造は犯罪です。上記のペナルティの対象となります。
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
有印私文書偽造罪とは、他人の印章もしくは署名を使用し、事実の証明に関する文書・図画を偽造した者を罪に問うための法律です。
遺産分割協議書は相続人同士の「契約書」です。契約書は法的に「私文書」にあたり、遺産分割協議書を偽造した場合は、私文書偽造罪にあたる可能性があります。
有印私文書偽造罪が成立した場合は、3ヶ月以上5年以下の懲役が科せられます。
刑法では以下のように記されています。
(私文書偽造等)
第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
公正証書原本不実記載罪とは、公務員に対して虚偽の申立てをして登記簿などの原本に間違った内容を記載させた者の罪を問うための法律です。
偽造した遺産分割協議書を使って、法務局で不動産の名義変更を行った場合は、公正証書原本不実記載罪に該当する可能性があります。
公正証書原本不実記載罪に該当した場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
刑法では以下のように記されています。
(公正証書原本不実記載等) 第百五十七条 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
詐欺罪とは、人を欺いて財物や財産上不法の利益を得る行為などに成立する犯罪です。
偽造した遺産分割協議書を銀行口座の名義変更時に使用し、お金を引き出したような場合に、詐欺罪が成立する可能性があります。
詐欺罪に該当した場合は、10年以下の懲役が科せられます。
刑法では以下のように記されています。
(詐欺) 第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
ここまで遺産分割協議書が偽造された場合について詳しく解説をしてきました。
実際に遺産分割協議書が偽造されたことに気づいた段階は、すでに相続人の誰かが無断に相続を進めていて何かしらの不利益を被っている場合が多いです。
勝手に相続手続きを進めてしまっている相続人に対して、「相続財産を取り返したい」「正当な相続分を受け取りたい」そう思っているなら、以下のステップで対処を進めて行きましょう。
ひとつずつ順番に確認して、対処を進めていきましょう。
弁護士に相談すると費用が高くかかってしまい躊躇する人も多いですが、弁護士事務所の中には、無料相談を実施しているところがあります。
無料相談を活用して、遺産分割協議書を偽造に気づいたら、自分で何とかしようとする前に、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
遺産分割協議書を偽造する人が相続人の中にいる場合は、相続人同士の話し合いで話がまとまることは難しいです。
「適切な相続分を返して欲しい」とお願いしたところで、「もう使ってしまった」「偽造などしていない」などと言われてしまえば、当事者同士の話し合いでは平行線が続くだけです。場合によっては、大きなトラブルに発展する可能性もあります。
実際に以下のようなトラブルに発展した事例があります。
【遺産分割協議書を偽造されたトラブル事例①】 (60代男性) 父親が亡くなり、長男と二男が相続人となったが、長男が勝手に遺産分割協議書を作成し、二男の署名押印を偽造して預金を引き出していた。二男は、遺産分割の話を長男がしないので、不審に思い銀行に尋ねたところ預金が払い戻しされていることが分かった。 長男に直接、話し合いをしようと連絡しても音信不通、自宅へ行っても居留守を使われ取り合ってもらえず、1年もの時間が経過しても何も進展なし。 最終的に解決を求め弁護士へ相談。 |
【遺産分割協議書を偽造されたトラブル事例②】 (50代女性) 父が亡くなり、長女と後妻の2人で相続となり、遺産分割協議はまとまらないが、仕事が忙しく話し合いを放置。父の死亡から数年たち、遺産相続がどうなったか気になり調べてみると、後妻が遺産分割協議書を勝手に作り、署名押印を偽造し不動産の名義変更を行っていたことが発覚。 後妻に、遺産の1/2を返還するよう求めても「不動産はもう他の人に売ったから無理」「偽造はしていない」の一点張りで全く応じてもらえない。 |
このように、遺産分割協議書を勝手に偽造した人を相手に話をつけようとしても、当人同士では解決の糸口は掴めず、時間と労力が掛かってしまうだけでしょう。
弁護士なら「どのように対抗措置をとるべきか」的確な判断やアドバイスをしてくれますし、弁護士に相談をすることで、自分自身もどう動いていけば良いのかを判断することができます。
実際に弁護士に依頼をすることで、相手との交渉はもちろん裁判になった場合の代理人を務めてくれます。
弁護士に依頼すべき理由は、7章で詳しくお伝えします。
弁護士が間に入るだけで、相手は非を認めて交渉に応じる可能性もあるのです。
遺産分割協議書の偽造をした相続人が交渉に応じ、他の相続人も同意すれば遺産分割協議のやり直しを行うことができます。
偽造された遺産分割協議書は無効となるため、遺産分割協議からやり直し、改めて相続人全員が同意する遺産分割協議書の作成が必要です。
遺産分割協議の話し合いが進まない場合でも、弁護士に依頼をしていればあなたに代わって遺産分割協議に参加し、不利益にならないよう最善の方法で遺産分割協議をまとめることができる場合があります。
遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
遺産分割調停とは、相続人全員が参加して家庭裁判所で遺産分割の方法について話し合うための手続きです。
遺産分割調停では、調停委員が各相続人の主張を公平に聞き取ったうえで、遺産分割トラブルに関する和解をめざして調整を行います。
ここでは、調停委員に対して、遺産分割協議書が無効であることを伝えて、遺産分割を適切に行うように促してもうらことが大切です。
遺産分割調停の流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
→遺産分割調停の流れを「調停前/当日/調停後」の3つに分けて図解
遺産分割調停が不成立となった場合は、家庭裁判所に遺産分割協議書が無効であることを争う訴訟を提起します。
遺産分割協議書の無効を争う場合は、以下の2つの手続きを進めることとなります。
①証書真否確認請求訴訟・・・遺産分割協議書が正しく作成されたかを争う訴訟 ②遺産分割協議不存在確認訴訟・・・遺産分割協議が成立していなかったことを争う訴訟 |
遺産分割協議書の無効を争うには、遺産分割協議書が偽造された事実を証明しなくてはなりません。
裁判所への手続きだけでなく、事実を証明し主張をするには、法律に関する専門的な知識が必要です。どのように争っていくかも含め、弁護士と相談をして進めていくようにしましょう。
遺産分割協議書の無効を争うだけでなく、相続人のひとりに有利な遺産分割を行ったことによる「不当な利得の返還」や「被った損害」の請求もできる可能性があります。
弁護士に間に入ってもらい相手方と交渉をしても解決しない場合は、裁判所へ損害賠償請求訴訟・返還請求訴訟を提起します。
どのように訴訟を進めていくのかは、弁護士と相談しながら決めていきましょう。
ここまで遺産分割協議書を偽造された場合について、詳しく解説をしてきましたが、遺産分割協議書を偽造されたと気づいた場合は、いち早く弁護士に相談をすべきです。
遺産分割協議書を偽造し、勝手に相続を進めようとしている相続人がいる場合は、相続人だけの話し合いで相続財産を元に戻したり、正当な遺産分割をやり直したりすることは難しいでしょう。
また、話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停や訴訟を視野にいれて進めて行く必要があるため、法律の知識がなければ難しくなります。
そのため、遺産分割協議書の偽造が発覚した場合は、自分だけで動こうとするのではなく、いち早く弁護士に相談し、どのように対抗措置を取っていくか相談をしてアドバイスをもらいながら進めて行くべきなのです。
弁護士があなたの代理人となることで、相手方も冷静な話し合いができ、交渉もスムーズに進む可能性もあります。
その他、いち早く弁護士に依頼すべき理由は以下のとおりです。
【遺産分割協議書の偽造をいち早く弁護士に相談すべき理由】
・相手方との交渉や調停や訴訟の代理人となってもらえる
・代理で交渉を進めてくれるのでストレスが軽減する
・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
・有利な結果を獲得しやすい
・面倒な法的手続きを全て任せることができる
遺産分割協議書の偽造は犯罪行為ですので、自分で解決しようとすることは避けて、弁護士に相談をするようにしてください。
この記事では、遺産分割協議書の偽造について詳しく解説をしてきました。最後にまとめましょう。
偽造された遺産分割協議書は無効です。遺産分割協議書は相続人全員の合意が無ければ認められません。
そのため、偽造された遺産分割協議書を使って行った相続手続きも、もちろん無効となります。
遺産分割協議書は、悪意がなくても勝手に署名・押印することで偽造行為となりえます。
具体的に偽造にあたる行為は以下のとおりです。
【遺産分割協議書の偽造にあたる行為】
・相続人の同意なく無断で署名・押印する
・自分の意思で判断ができない相続人に代わって署名・押印をする
遺産分割協議書を偽造され、勝手に相続手続きを進められた場合は、以下の民事上の責任を追及することができます。
【追求できる民事責任】
・相続財産を原状に回復させる請求 ・損害賠償請求 |
遺産分割協議書を偽造した人には、刑事罰として下記のペナルティを科せられる可能性があります。
【遺産分割協議書を偽造した場合の刑事責任】
・私物書偽造罪(刑法159条1項) ・公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項) ・詐欺罪(刑法246条1項) |
勝手に相続手続きを進めてしまっている相続人に対して、「相続財産を取り返したい」「正当な相続分を受け取りたい」そう思っているなら、以下のステップで対処を進めて行きましょう。
遺産分割協議書を偽造されたと気づいた場合は、いち早く弁護士に相談をすべきです。
弁護士があなたの代理人となることで、相手方も冷静な話し合いができ、交渉もスムーズに進む可能性もあります。
この記事が遺産分割協議書の偽造について悩んでいる方のお役に立てることを願っています。