弁護士 西村 学
弁護士法人サリュ代表弁護士
大阪弁護士会所属
関西学院大学法学部卒業
同志社大学法科大学院客員教授
弁護士法人サリュは、全国に事務所を設置している法律事務所です。業界でいち早く無料法律相談を開始し、弁護士を身近な存在として感じていただくために様々なサービスを展開してきました。サリュは、遺産相続トラブルの交渉業務、調停・訴訟業務などの民事・家事分野に注力しています。遺産相続トラブルにお困りでしたら、当事務所の無料相談をご利用ください。
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「離婚した親の法定相続人だと言われた。離婚した親の子にも相続権はあるの?」
「法定相続人は、離婚した親に相続が開始した場合でも遺産を相続しなければいけないの?」
何年も前に離婚して疎遠となっていた親のことで、突然連絡が来ると困惑しますよね。
人が亡くなると、その人が所有している財産を誰かが引き継がなくてはなりません。民法では、被相続人(亡くなった人)の財産を相続できる人を「法定相続人」として決められています。
法定相続人になれるのは、原則として配偶者と子どもです。離婚して何年も疎遠となっている親でも、戸籍上では親子関係となり、子どもは法定相続人として遺産を相続する権利があります。
ただし、離婚した元配偶者は法定相続人にはなりません。
法定相続人になると、被相続人が有する財産を相続する権利があります。しかし、財産はプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も相続することになるので注意が必要です。
そこでこの記事では、離婚した親の法定相続人について、以下のことを詳しく解説します。
本記事の内容 |
・離婚した親の法定相続人となった場合の財産の取り分 ・離婚した親の相続の連絡が来たときにすべきこと ・離婚した親の相続で注意すること |
この記事を読めば、離婚した親が亡くなり法定相続人となったときに、まず何をしたらよいのかが分かります。
離婚した親の法定相続人になって困惑しているという方は、ぜひこの記事を最後までお読みください。
冒頭でお伝えしたとおり、親が死亡した場合、子どもはどんな状況でも法定相続人となります。
民法では、次のように定められています。
(子及びその代襲者等の相続権) 第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。 2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。 3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。 出典:e-GOV 法令検索 民法:第八百八十七条 |
法定相続人とは、被相続人(亡くなった人)の財産を相続する人のことです。法定相続人になれるのは、配偶者と血族に限られており、最優先で相続人となるのが「配偶者と子ども」です。
親が離婚をした場合、親同士は他人となるので元配偶者は相続人ではなくなります。しかし、子どもは親が離婚しても戸籍上の実の親子関係があることは変わりません。そのため、子どもは親の相続人であり続けます。
例えば、離婚した親と一緒に暮らしていなくても、新しい親と普通養子縁組をしていても、実の親の相続人であることは変わりません。
また、離婚した親が再婚して、再婚相手との間に別の子どもがいる場合でも変わりません。この場合の相続人は、再婚相手とその間の子ども、離婚した親の子どもが相続人となります。
このように、離婚した親の子どもはどんな状況であっても法定相続人となり、財産を相続する権利があります。
離婚した親の法定相続人となった場合、受け取れる遺産がどれくらいあるのかが気になるところです。
受け取れる財産は、遺言があれば遺言が優先されますが、遺言がない場合は法律で定められた分け方で分割します。
ここでは、法定相続人としてどれくらいの相続が受けられるのか、詳しく解説します。
・法律で定められた相続の分け方 ・離婚した親の法定相続人として受け取れる相続分 ・負債(借金)の財産も相続することになることに注意 |
実際に受け取れる相続の割合がどれくらいなのか、しっかり確認していきましょう。
相続の分け方は、「法定相続分」として法律で定められています。
法定相続分とは、被相続人の財産を相続する場合、各相続人の取り分として民法で定められた割合の事です。
(法定相続分) 第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。 二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。 三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。 出典:e-GOV 法令検索 民法:第九百条 |
民法で示されているとおり、子どもと配偶者が相続人である場合、相続財産のうち配偶者に2分の1、子どもに2分の1の割合となります。
離婚した親の子どもの法定相続分は、「亡くなった時点で配偶者がいるのか」「子どもが何人いるのか」で変わります。
離婚した親が亡くなった時点で配偶者がいて、子どもが自分を含め2人だった場合、配偶者が2分の1、子ども2人で2分の1を分け合います。つまり、子どもの相続分は相続財産の4分の1となります。
子どもが3人であれば、6分の1ずつになりますね。
また、配偶者がおらず子どもが1人だった場合は、相続財産を全て子ども1人で相続することとなります。
【負債(借金)の財産も相続することになることに注意】 財産は、家や土地、預貯金などのプラスのものだけではなく、借金やローンなどの負債も含まれます。 亡くなった親が借金をしていたり、家のローンが残っている場合、全て財産として相続することとなります。借金やローンを引き継いだ場合には、相続人が返済をしていかなければなりません。 そのため、法定相続人となり財産を受け取る場合には注意が必要です。 |
離婚した親の相続の連絡があった場合、まずは「相続するか」「相続しないのか」を判断しましょう。
法定相続人だからといって、必ず相続しなければならないという訳ではありません。相続したくない場合は、「相続放棄」をすることもできます。
しかし、相続放棄をすると遺産を一切受け取ることができなくなり、基本的には撤回できませんので慎重に判断しなくてはなりません。
ここでは、相続するのかしないのか、正しく判断をするために相続放棄について詳しく解説します。
・相続放棄とは ・相続放棄した場合のメリット・デメリット ・相続放棄したほうが良いケース |
ひとつずつみていきましょう。
相続放棄とは、被相続人の財産に対する相続権の一切を放棄する事です。
相続放棄の対象は、被相続人の全ての財産となり、預貯金や土地などのプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も対象です。
相続放棄をするとプラスの財産もマイナスの財産も一切受け取ることはできなくなります。そのため、プラスの財産は受け取って、マイナスの財産は放棄するという都合の良いことはできませんので要注意です。
相続放棄をする場合、他の相続人に「放棄します」と口頭で伝えても法律上、相続放棄したことにはなりません。
相続放棄をしたい場合は、必ず家庭裁判所への申述が必要となります。
相続放棄については、こちらの記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
相続放棄をした場合、メリットもあればデメリットもあります。
【相続放棄した場合のメリット】 ・借金や負債を相続せずに済む ・相続争いに巻き込まれないで済む |
【相続放棄した場合のデメリット】 ・プラスの財産も相続できない ・相続放棄は撤回できない |
メリットとデメリットを把握した上で、相続するか相続放棄するか判断しましょう。
ひとつずつ解説します。
相続放棄をすれば、相続財産に借金や負債があった場合に相続をしないで済みます。
亡くなった親が借金や住宅ローンなどの負債を遺した場合、原則としてこれらの財産を相続人全員で引き継がなくてはなりません。
このような負債の財産がある場合は、速やかに相続放棄をするべきです。
相続放棄をすれば、相続争いが起きた場合に巻き込まれなくて済みます。
相続をする場合、他の相続人と遺産をどう分割するのか話し合いをしなくてはなりません。
遺産の分け方がすぐに決まれば問題ありませんが、納得できないと主張する人が一人でもいると相続争いに発展していきます。
離婚した親に再婚相手や子どもがいる場合は、遺産分割方法で相続争いに発展しやすい特徴があります。
このような相続争いに巻き込まれる心配があるのであれば、速やかに相続放棄をしましょう。
相続放棄をすると、借金などのマイナスの財産だけではなく、プラスの財産も相続することができなくなります。
マイナスの財産よりもプラスの財産がある場合は、プラスの財産のみ相続できる可能性があります。しかし、相続放棄をしてしまうと一切相続ができなくなるため、損をすることになります。
相続放棄の手続きは、一度受理されると撤回は認められません。
相続手続きが完了した後、高額な資産が見つかることが稀にあります。そんな場合でも、相続放棄をしていると受け取る権利はありません。
そのため、相続放棄をするかどうかは慎重に判断しなければなりません。
次のような場合は、相続放棄したほうが良いでしょう。
・離婚した親と関わりたくない場合 ・離婚した親に明らかに負債が多いと判断できる場合 |
離婚した親と疎遠になっていて、一切関りを持ちたくない場合は早急に相続放棄をすべきです。
例えば、離婚が原因で親子関係や親族関係が悪化している場合は、相続問題に関わることで更なるトラブルが起こる可能性があります。
ギャンブルなどの金銭的なことが理由で離婚した場合や、離婚後に養育費や慰謝料の支払いが滞っていた場合などは、負債を抱えている可能性があります。
このように、明らかに負債が多いと判断できる場合も同じく、相続放棄の手続きをしましょう。
また、初めから相続するつもりが無いからといって手続きをしないで放置をしていると、相続放棄ができなくなるので要注意です。
相続放棄には、期間制限があります。相続放棄の期間制限は、原則として「相続開始を知ってから3ヶ月以内」です。
(相続の承認又は放棄をすべき期間) 第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。 出典:e-GOV 法令検索 民法:第九百十五条 |
相続放棄をする場合は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述しなければなりません。
(相続の放棄の方式) 第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。 出典:e-GOV 法令検索 民法:第九三十八条 |
3ヶ月以内に相続放棄が行われないと、自動的に被相続人の相続財産を法定相続人が相続することになります。そのため、相続放棄をする場合は速やかに手続きを進めましょう。
しかし、離婚した親と疎遠になっている場合、亡くなったことを知らなかったり、自分が相続人であることを理解していなかったりすることも多いです。
その場合、いつから3ヶ月以内になるのかというと、離婚した親が死亡したことを連絡された日等、自らが相続人であることを知った日から3か月以内が期限となります。
万が一、相続放棄の期限が過ぎてしまった場合でも、諦めずに弁護士に相談しましょう。遅れた事情によっては相続放棄の申述が認められるケースがあります。
離婚した親に再婚相手や子どもなど、他に相続人がいる場合は関わり方に注意が必要です。
一切相続するつもりがないのであれば、相続放棄をすれば関わりは少なくて済みます。しかし、相続をする場合はそうはいきません。
相続をする場合、誰がどの遺産を引き継ぐのか、相続人全員で話し合いをして決めます。その内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名捺印が必要です。そのため、話し合いや手続きなどで他の相続人と何度か連絡を取り合わなくてはなりません。
他の相続人と連絡を取り合う時は、できるだけ礼儀正しく接することが大切です。横柄な態度を取ったり、連絡をなかなか返さなかったりするようなことがあれば、トラブルの元になります。
再婚相手が連絡を拒否し不当に財産分割を進めようとしたり、不動産などの財産を不適切に評価し不公平な遺産分割しようとするケースもあります。
トラブルが起きれば、不当な結果を押し付けられるだけではなく、精神的な負担も大きくなり、良いことは何もありません。
関わりを最小限に抑えたいのであれば、早く話し合いを行うことも大切です。遺産分割方法をなるべく早く決めて、相続手続きを完了させるようにしましょう。
離婚した親の相続をどうしたらよいか悩んだ場合は、弁護士に相談することがおすすめです。
この記事を読んでいる人の中には、相続するか相続放棄するか、どうのように判断したら良いか分からないという人も多いでしょう。
それもそのはず、離婚した親と疎遠だった場合、生前どのような生活を送っていたのか知らないことがほとんどです。そうなると、財産がどれくらいあるのか、他に相続人に誰がいるのか検討もつきません。
このような状況で、相続するかどうかを決めるのは困難です。
そこで弁護士に相談をすれば、被相続人の財産や相続人の調査を行うことができます。財産や相続人の状況がわかれば、相続するかどうかの判断をすることができるようになります。
また、相続はどんなに仲の良い家族でも、遺産の分割方法で揉めてトラブルになることが多い問題です。離婚した親の相続となれば、他の相続人は知らない人ばかりで、トラブルが起きやすい状況といえます。
そんな時、弁護士に相談をしていればあなたの代理人として、他の相続人の間に入って話し合いを進めてくれます。
その他にも、離婚した親の相続で悩んだときに、弁護士に相談したほうが良い理由は以下のとおりです。
弁護士に相談することがおすすめな理由 |
・自分では気付けない不当な遺産相続に気付くことができる ・不当な遺産分割を強いられた場合、法的主張ができる ・財産調査や相続人調査をし、相続すべきかどうかの相談ができる ・他の相続人と関わりたくない場合は、代理人として代わりに話し合いを進めてくれる ・他の相続人とのトラブルを未然に防ぐことができる ・相続する場合の法的な手続きを任せられる ・相続放棄をする場合の法的な手続きを任せられる ・相続放棄の期限を過ぎた場合、家庭裁判所への申述を依頼できる |
このように自分では気付けないことに気付き、的確に対応してくれるだけでなく、難しい法的手続きも任せることができるので安心です。
この記事では、離婚した親の法定相続人について詳しく解説してきました。
離婚した親が死亡した場合でも子どもは法定相続人として、相続を受け取る権利があります。
法定相続人とは、被相続人(亡くなった人)の財産を相続する人のことです。法定相続人になれるのは、配偶者と子どもです。
受け取れる相続の割合(法定相続分)は、次のとおりです。
法定相続人 | 配偶者 | 子ども |
法定相続分 | 1/2 | 1/2 |
子どもが数人いる場合は、2分の1を均等に分割します。
相続をする財産は、預貯金や不動産のプラスの財産だけではなく、借金やローンなどのマイナスの財産も引継ぎます。
財産の相続をしたくない場合は、相続を知った3ヶ月以内に相続放棄の手続きをしましょう。
ただし、相続放棄をするとプラスの財産も受け取ることはできず、一度放棄すると撤回できませんので慎重な判断が必要です。
相続をする場合は、財産の分割方法を他の相続人と話し合わなくてはなりません。横柄な態度はトラブルの元になります。礼儀正しく接するように心がけましょう。