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法律コラム

介護老人施設
2022.06.24

介護施設・事業所における防災対策

1 地域の実情に応じた非常災害対策計画の策定

1-1 介護保険施設等の立地条件の確認

現在、ご自身が管理・運営する施設の立地状況を確認している方は3割程度だそうです。
そもそも、なぜ立地の確認をするかというと、災害が多い日本において、ご自身が管理・運営する施設にどのようなリスクがあるのかを知るためです。
立地の確認はどのような方法でやればいいのかわからないという方もいらっしゃると思います。
立地の確認は、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」で行いましょう。洪水、津波、土砂災害、道路防災情報といったリスクを一度に確認出来ます。

1-2 災害に関する情報入手方法の確認

情報の入手方法は複数用意することが望ましいです。
総務省のLアラート(災害情報共有システム)や、NHK(テ レビ及びラジオ)、気象庁の提供する情報、雨量及び河川については国土交通省の提供する情報、地方自治体の情報を確認できるようにしておきましょう。

1-3 災害時の連絡先及び通信手段の確認

連絡先
ア)職員間の緊急連絡網を定めておく。
イ)職員と職員の家族の連絡方法を定めておく。
ウ)入所施設の場合には、施設利用者が施設外にいる場合も含めて、利用者やその家族と安否確認方法について定めておく。
エ)通所施設の場合、利用者が施設にいる場合も含めて、利用者やその家族と安否確認方法について定めておく。
オ)一時引き取りの可能性、方法について確認しておく。
カ)関係機関との緊急連絡体制
・行政機関、ライフライン
・設備等のメンテナンス会社
・消防署、警察署
・医療機関、ボランティア団体 等
※加入電話や携帯電話は、設備に被害がなくても錯綜により発信規制が実施され、通じにくくなります。しかし、グレーや緑色の公衆電話は、発信規制外であるため利用できる場合があります。
また、携帯電話は通じない場合でも、メールの送受信は比較的通じやすい場合があります。
それ以外にも、災害発生時にNTTが開設する災害伝言ダイヤル171(毎月1日、15日などには訓練利用が可能。)や、携帯電話会社各社が提供する災害用伝言板サービス等の活用も有効です。

1-4 避難を開始する時期、判断基準の確認

①で確認したハザードマップから、対象とする災害を確認します。
対象とする災害が水害及び高潮の場合、ハザードマップ等 をもとに、立ち退き避難が必要な場所なのか、上階への移動等の屋内での安全確保措置で命の危険に脅かされる可能性がない場所なのかをあらかじめ確認・認識しておき、警戒レベル応じて、迷わず避難行動がとれるようにしておく必要があります。
土砂災害、津波災害は、立ち退き避難を原則とします。

1-5 避難場所の確認

施設内における避難の場合、事前に職員と打ち合わせをすれば足りると思います。
施設外における避難の場合、近隣の避難所及びその他利用 する可能性のある避難所(福祉避難所を含む)とその経路を確認するとともに、避難管理者(市町村)と受け入れ体制や必要なサポート等について調整をしておきましょう。
また、避難場所については、職員が認識することはもちろん、職員の家族、施設利用者の家族にも連絡しておきましょう。

1-6 避難経路の確認

施設内における避難の場合、避難ルートが暗闇の中でも誘 導できるか、転倒して通路をふさぐものがないか確認しておきましょう。
施設外における避難の場合、大規模な災害が発生した後は、橋の崩落や建物の倒壊など不測の事態に備え、二重三重の避難経路・避難場所を想定しておきましょう。

1-7 避難方法の確認

避難時は、通常時と通路の状況が異なっている場合があり ます。必ず靴を履き、足を守りましょう。
また、頭部保護のために、座布団等を用い、転倒した場合に備えて手を保護するように軍手等を着用しましょう。
傾いた建物、ブロック等などの倒壊のおそれのあるものには近寄らないようにしましょう。
一度避難したら中に戻るのは危険です。避難の際には、避難時に持ち出すものをきちんと持ち出しましょう。
避難手段として、入所者の移動手段、避難手段としては自動車、車いす、ストレッチャー、徒歩等による方法が考えられます。輸送車両の必要数の確保、グルーピング(入所者の状態ごとに避難するための方法(自動車・徒歩・車いす・ストレッチャー)を分け、色分けし、入所者に該当する色のゼッケン、名札等を付けてもらい、職員が認識できるようにしておくと、避難を効率的に行うことができます。

1-8 災害時の人員体制、指揮系統の確認

ア)役割分担
情報収集・連絡担当、救護班、安全対策班、物資班
イ)災害警戒・災害対策本部
統括班、情報伝達班、出火防止班、消火班、避難誘導班、非常時持出班
ウ)職員の招集・参集基準
連絡体制を整えたとしても、災害時に連絡がうまく取れないような場合があります。
そこで、あらかじめ職員の出勤(参集)基準を定めておくなどの対策が必要となります。例えば、災害情報の内容に応じて、招集や参集する職員を指定しておくことなどの方法です。参集基準を定めるにあたっては、役職、居住場所、交通手段等を考慮して決定しておくことが、その後の災害警戒・災害対策本部体制をスムーズに立ち上げる重要なポイントになります。職員の参集所要時間を把握しましょう。

1-9 関係機関との連携体制の確認

災害発生時には、様々な支援が必要となるため、市町村や消防機関、近隣の病院、診療所、社会福祉施設等と連携をとり、いざという時に協力が得られる体制を構築しておくことが必要です。
特に、住居系及び入所系の事業所・施設において、職員だけで速やかに避難誘導することが非常に困難が伴うことを理解してもらうことが重要です。
協力を得る方法として、地域住民(自主防災組織等)・ボランティア団体との応援協力の関係構築が考えられます。
日頃からボランティアとの交流を図り「開かれた施設づくり」を推進するとともに、多数の入所者の避難等を迅速に行えるようにしておくことが必要となります。
また、災害時に、同種施設などと連携できれば、施設で必要となる物資の供給や介護などの技術を有する職員の派遣、施設運営に必要となる機材・設備の提供を受けることができ、一時的に入所者の受入等を依頼することができるなど、被災施設にとって力強い味方となります。

1-10 防災訓練

防災訓練で重要になるのは、①から⑨を実際に実施して見るということです。
訓練の際は、ボランティアや消防団に協力を要請しましょう。
特に重要となるのは、数値化をすることです。
数値化とは、例えば入所者が施設を出るまでにかかった時間、自動車で避難した場合に避難場所までかかった時間、徒歩の場合に避難場所までかかった時間等を計測することです。
小規模社会福祉施設の場合には、全国消防長会の平成21年10月27日付事務連絡「小規模社会福祉施設における避難誘導体制の確保について」の別表「避難目標時間の設定」を参考にしてみましょう。

2 施設等のハード面の確認

地震発生により、施設内の設備及び備品の落下や転倒、破壊又は窓ガラス等の飛散により施設利用者及び職員が負傷したり、通路がふさがれたりするケースは少なくありません。
そこで、机、ロッカー、タンス等の固定。机、ロッカー、タンス等の上にある物の固定・除去。厨房機器や大型設備の固定が必要となります。
また、窓ガラスにフィルムなどを貼る対策や天井からの落下物についても注意が必要です。
屋外においては、屋根・壁・門・塀など基礎部分の状態点検や補強、看板等の落下、物置や老木の倒壊可能性を検討する必要があります。
屋内屋外を問わず、避難通路となる道を塞ぐことがないよう配置を考える必要があります。
また、建物それ自体も確認が必要です。特に昭和57年以前に竣工された建物は、昭和56年新耐震設計基準が適用されていないため、耐震性能が低い可能性があります。
施設の耐震診断や耐震補強等の対策を検討しましょう。

3 施設の対策等のソフト面の確認

大規模な災害が発生した場合、公共交通機関の利用が困難となり、必需品が受け取れないことや、ライフラインが停止することも想定されます。
そのような状況でも、施設利用者への適切なケアができるよう、必需品の備蓄が必要です。
大規模な災害が発生し、必需品が届くまでかなり時間がかかる場合があります。
施設内で避難できるようであれば準備をしすぎても困ることはありませんが、持ち出すことを考えると、避難の際にどれだけ持ち出せるかはわからないところがあります。
目安として、3日分は必要であると考えられます。

4 BCPについて

BCPは事業継続計画と呼ばれ、災害や感染症などさまざまなリスクに対して、事前に想定し、対策を講じることでリスクが発生したあとに速やかに事業継続ができるようにすることを目的とし作る計画のことを言います。
BCPは経過措置はありますが、各施設で作成が義務付けられており、必須事項となっております。
BCPは計画・マニュアルであり、これは各施設に応じた作成が必要となります。
当法人では、災害対策に加え、BCP作成に協力できる体制づくりを行っております。