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契約・取引
2025.01.05

契約書チェックの重要性とポイント:トラブルを未然に防ぐ方法

契約書は、ビジネスの現場や日常生活において、我々の権利や義務を明確にするために不可欠な重要文書です。しかし、その内容を十分に理解せずに署名または押印してしまうと、後々予期せぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

例えば、高額な違約金を支払わなければならなくなったり、望まないサービスを継続的に受けなければならなかったりと、あなたのビジネスに大きな影響を及ぼすことも少なくありません。

あなたは契約書の内容をしっかりとチェックしていますか?
細かな条項まで確認し、自分の権利と義務を正確に理解しているでしょうか?

この記事では、契約書チェックの重要性と具体的なポイントについて、専門家の視点から詳しく解説します。これを読むことで、契約に伴うリスクを最小限に抑え、安心して契約を結ぶことができるでしょう。

この記事の監修者
弁護士 山田 洋斗

弁護士法人サリュ千葉事務所所長弁護士
千葉県弁護士会所属


目次

  1. 契約書チェックの必要性
  2. 契約書で見落としがちなポイント
  3. 自分で契約書をチェックする方法
  4. 専門家に依頼するメリット
  5. 契約書チェックにおける注意点
  6. よくある契約トラブル事例
  7. 契約書チェックサービスの選び方
  8. まとめ

1. 契約書チェックの必要性

契約書の役割とは?

契約書は、当事者間の合意内容を文書化したもので、双方の権利や義務を明確に定める法的効力を持つ重要な文書です。ビジネスシーンでは、取引先との商談やサービスの提供、資産の売買など、さまざまな場面で契約書が交わされます。

契約書をチェックしないリスクとは

契約書を十分にチェックせずに署名または押印すると、以下のようなリスクが生じます。

  • 不利な条件に同意してしまう
    自分に不利な条項や過度な責任を負う内容が含まれていても気づかないまま同意してしまう可能性があります。
  • 法的なトラブルに発展する
    契約違反や解釈の違いにより、訴訟や仲裁などの法的手続きに発展するリスクが高まります。
    よくある「言った」「言わない」のトラブルは契約書の解釈から生じることが多いです。
  • ビジネス上の信頼を損なう
    債務不履行やトラブルが発生すると、取引先や顧客からの信頼を失い、今後のビジネスに影響を及ぼすことがあります。

これらのリスクを回避するためには、契約書の内容を正確に理解し、必要な修正や交渉を行うことが不可欠です。
次の章からは、契約書で見落としがちなポイントを解説していきます。


2. 契約書で見落としがちなポイント

契約書は専門的な用語や複雑な条項が多く、見落としがちなポイントが存在します。
以下に、特に注意すべき項目を詳しく解説します。

(1)曖昧な表現

契約書には、往々にして曖昧な表現が使われがちです。
契約書内の曖昧な表現は、後々の解釈の違いを生み、紛争の原因となります。
例えば「適切な範囲で対応する」という表現は、何が「適切」なのか、主観的判断を前提としており、双方で認識が異なる可能性があります。契約書では、具体的な基準や数値で明確に定義することが重要です。

(2)責任範囲の不明確さ

どのような契約も、その契約からトラブルが生じる可能性はあります。そして、万が一トラブルが発生した場合の責任範囲が明確でないと、予期せぬ損害を被る可能性があります。
特に、損害賠償責任や違約金の条項は詳細に定め、上限額や免責事項を明記することでリスクを制御します。
また、このように責任の範囲を明確にすることで、契約当事者双方にとって、損害賠償責任の予測可能性を担保することが可能になります。

(3)期限や条件の設定

契約書では、納期や支払い条件について明記することが多いですが、これが適切に設定されていないと、トラブルに発展する可能性があります。
例えば、「契約締結後速やかに」という表現よりも、「契約締結後14日以内に」と具体的な日付や期間を明記するようにしましょう。

(4)解除条件や変更手続き

契約を解除するための条件や、契約内容を変更する際の手続きが明確でないと、予期しない継続義務やペナルティが発生することがあります。どのような場合に契約を終了できるのか、変更の場合の手順や通知方法などを詳しく取り決めましょう。

(5)秘密保持条項

取引に関連する情報の取り扱いについても注意が必要です。
秘密保持条項が過度に広範囲である場合、業務に支障をきたす恐れがあります。また、例えば自社が製造ラインの一部を下請けに出す場合、取引先との間でどの範囲で下請け先企業と情報を共有すべきか、何が秘密情報に該当するのか、その範囲や期間を具体的に定める必要性があります。


3. 自分で契約書をチェックする方法

契約書のチェックは以下の順序を踏むことで、自分でやることもできます。
ただし、契約書を自分でチェックする際には、まず、関連する資料や情報を集めましょう。
特に重要な情報は、同業者から聞いたトラブルの事例です。業種、業界ごとに生じやすいトラブルの内容は異なりますので、そのようなトラブルの情報を集めて、契約書の内容からそのトラブルを防止できるのか、という視点を持ちながら以下のステップを踏んでいくといいでしょう。

ステップ1:全体を通読する

契約書を最初から最後まで通読し、全体の流れや構成を把握します。
この段階では細部にこだわらず、大まかな内容を理解することが目的です。

ステップ2:重要事項を確認する

金額、期間、責任範囲、提供されるサービスや商品の内容など、自分に直接関係する重要事項を重点的にチェックします。これらの項目に誤りや不明瞭な点がないか確認します。
このとき、前述したように、生じうるトラブルのイメージを持ちながら読み進めると、さまざまなことに気づくことができます。

ステップ3:専門用語や法的用語の理解

契約書には専門用語や法律用語が多用されます。意味がわからない用語があれば、辞書やインターネットで調べるか、専門家に確認します。曖昧な理解のまま進めることは避けましょう。
例えば、「甲は乙に対して●●の支払いを請求できる」という文言と、「乙は甲に対して、●●の支払い義務を負う」という記載には明確な違いがあります。
前者は、単に相手に支払いを求めることができると規定するに過ぎず、実際に支払い義務が生じることまで読み取ることはできません。後者は明確に支払い義務を規定したものです。
文言の意味内容は、正確に理解したうえで、契約書をチェックしましょう。

ステップ4:不明点や疑問点の洗い出し

契約書を読み進めながら、不明点や疑問点を書き出します。小さな疑問でも後々大きな問題に繋がることがありますので、全て明確にしておきましょう。

ステップ5:修正点や交渉事項の整理

不明点や疑問点を整理し、必要に応じて修正や追記を提案します。
そのうえで、契約の相手方と交渉し、双方が合意できる形に契約書を修正します。

契約書チェックのポイント一覧

チェック項目内容
全体の把握契約書全体の流れと構成を理解する
重要事項の確認金額、期間、責任範囲などの主要項目を確認
用語の理解専門用語や法的用語の意味を正確に理解する
不明点の洗い出し疑問点や不明瞭な箇所をリストアップする
修正・交渉事項の整理修正提案や交渉ポイントを明確にする

4. 契約書チェックを弁護士に依頼するメリット

契約書の内容が複雑であったり、高額な取引に関わる場合は、弁護士へ契約書チェックの依頼を検討しましょう。以下では、契約書チェックを弁護士に依頼するメリットを解説します。

(1)専門的な知識による安心感

法律の専門家は契約書の作成やチェックに精通しており、自分では気づかないリスクや問題点を指摘してもらえます。また、最新の法改正や判例にも精通しているため、法的な観点から適切なアドバイスを受けることができます。

(2)交渉力の向上

全てのケースに当てはまるわけではないですが、ケースによっては、弁護士が介入して契約交渉をすることも有益です。
専門家が間に入ることで、相手方との交渉がスムーズに進みます。弁護士は、プロの知識と経験を活かして、より有利な条件を引き出せる可能性があります。また、専門家の存在自体が相手方に対するプレッシャーとなり、公平かつ真摯な対応を促す効果も期待できます。
ただし、交渉に弁護士を介入させることは、ビジネスを成功させるという点では、デメリットとなる場合もあります。弁護士の介入は契約の相手方にとってプレッシャーを与えることになりますので、取引の成立を優先させるのであれば、弁護士の介入は慎重に判断しましょう。

(3)時間と労力の節約

弁護士に契約書チェックを依頼することで、自分自身で調査や検討に費やす時間と労力を節約できます。その分、本業の業務や他の重要なタスクに注力することができます。

(4)リスクの低減

弁護士の契約書チェックにより、契約に伴う法的リスクを大幅に低減できます。結果として、将来的な紛争や損害賠償のリスクを回避し、安心して契約を結ぶことができます。


5. 契約書チェックにおける注意点

契約書チェックを行う際には、以下の点に配慮しながら行いましょう。

時間の確保

契約書の内容を十分に理解するためには、時間をかけて慎重にチェックする必要があります。期限が迫っている場合でも、急いで署名すると見落としが生じる可能性が高まります。可能な限り余裕を持って検討しましょう。

相手方とのコミュニケーション

疑問点や修正箇所は遠慮なく相手に伝えましょう。
また、契約締結過程における相手方とのやりとりの内容(メッセージや電話、書類)は可能な限り保存しましょう。
コミュニケーションを円滑に行うことで、双方が納得できる形で契約を結ぶことができます。
疑問を放置したまま進めることは避けるべきですし、後々、「言った」「言わない」の問題を防ぐことができます。

最新の法律・ガイドライン等への対応

法改正に伴い、契約内容が適切か確認することも重要です。
また、業種・業界によっては、ガイドラインが策定されており、契約書の内容もそのガイドラインに沿ったものにする必要がある場合があります。
必ず、最新の法律やガイドライン等を確認しましょう。


6. よくある契約書トラブル事例

契約書のチェックを怠ったことで発生するトラブルは少なくありません。以下に代表的な事例を紹介します。これらの事例を知っておくことで、契約書トラブルを事前に防ぐことができます。

(1)納期遅延による損害

納期に関する条項が曖昧であったため、相手方の納品遅延に対して損害賠償を請求できなかったケースです。納期遅延による損害を防ぐためには、納期を一義的に定めること、遅延時のペナルティや損害賠償請求の可能性を契約書に明記する必要があります。

(2)品質不良品の受け入れ

品質基準が明確でなかったため、不良品の納品を拒否できず、追加費用が発生したケースです。品質基準や検査方法、受入拒否の条件を詳細に取り決めておくことで、トラブルを回避できます。

(3)契約解除条件の不備

契約を解除したいと思っても、主張したい解除事由が契約書に定められておらず、解除できない場合があります。
不利な条件下で契約を継続せざるを得なかったケースは往々にしてあります。例えば、相手方の重大な契約違反があっても解除できない状況に陥る可能性があります。解除条件や違約金の設定は慎重に行いましょう。

(4)知的財産権の侵害

契約書で知的財産権の取り扱いが明確にされておらず、開発した成果物の権利が相手方に帰属してしまったケースです。著作権や特許権などの知的財産権の帰属先や使用条件を明確に定めることが重要です。

(5)秘密情報の漏洩

秘密保持条項が適切でなかったため、重要な営業情報や技術情報が第三者に漏洩してしまったケースです。秘密情報の定義や取り扱い方法、違反時の措置を詳細に取り決めることで、リスクを軽減できます。


7. 契約書チェックサービスの選び方

ここまで読み進めた方は、契約書チェックがいかに重要であるか、ご理解いただけたかと思います。また、それと同時に、契約書チェックにかける労力や時間は一定程度必要であることもお分かりいただけたことでしょう。

この章では、契約書チェックの時間的な余裕がない忙しい経営者のために、契約書チェックを専門家に依頼する際のサービス選びのポイントを紹介します。

実績と専門性

依頼する専門家や法律事務所の過去の実績や専門分野を確認しましょう。自分の業種や取引内容に詳しい専門家であれば、より適切なアドバイスが期待できます。

料金体系の明確さ

料金が明瞭で、追加費用が発生しないか確認します。初回相談料、契約書チェック料、修正料など、料金体系が複雑な場合は詳細を確認して納得した上で依頼しましょう。

コミュニケーションの取りやすさ

質問や相談をしやすい専門家かどうかを確認しましょう。連絡手段や対応スピード、レスポンスの質なども重要なポイントです。些細な点かもしれませんが、長期の信頼関係を築く上では重要な要素です。

サービスのスピードと柔軟性

納期や緊急時の対応など、サービスのスピードと柔軟性も考慮しましょう。ビジネスのタイミングに合わせて迅速に対応してもらえるか確認します。

追加サービスの有無

契約書チェック以外にも、例えば契約書の作成やリーガルコンサルティングなど、追加サービスが提供されているか確認します。将来的なニーズを見据えて総合的なサポートを受けられると安心です。


8. まとめ

契約書のチェックは、トラブルを未然に防ぎ、安心してビジネスや取引を進めるために欠かせないプロセスです。契約書の内容を正確に理解し、必要な修正や交渉を行うことで、自分の権利と利益を守ることができます。

自分でできる範囲のチェックを行い、疑問点や不安がある場合は専門家の力を借りることも検討しましょう。契約に伴うリスクを最小限に抑えることで、健全なビジネス関係や安心できる生活を築くことができます。

この記事を参考に、次回の契約時には積極的に契約書の内容を確認し、安心して契約を結んでください。