生きた解決事例 弁護士&リーガルスタッフ対談

 

強く、熱く、そして迅速に。
弁護士とスタッフの信頼関係が最高の成果をもたらした。

30年家業を支えて、暴力も受け、財産分与が300万円といわれた悔しさ

 愛媛県の五十代の女性からの離婚事件の相談でした。
元々大阪出身で、愛媛県内でスーパーを経営している家に嫁いだ。三十年以上も夫の実家の家業を支えながら、子供を四人も育てあげた方だったんです。
にもかかわらず、足蹴にされて追い出された。地元の大阪に帰ってきて、離婚調停をしたけれど、調停は不成立。それでサリュの大阪事務所に相談にいらっしゃったので、受任して、藤本と一緒にやることになった。

藤本 僕はサリュに入ってまだ四ヶ月目だったので、強く記憶に残っている案件です。

 「お前エエとこおった、じゃあ一緒にやろか」ということになったんだよな。
依頼者の方は、相談にいらっしゃる数年前から、夫から暴力や暴言などを受けていた。義理の父親も一緒になって「家の口座から勝手にお金を引き出した」などの身に覚えのない言いがかりまで受けていた。
依頼者の方からは家に戻りたいとか、子どもの親権が欲しいとか、そういった要望はなかった。お子さんもいい年だったしね。ただ、「悔しい」と。「これだけ人生を捧げてきたのに」と仰っていた。そうしたら、もう言われんでもわかるよな。これは、俺らが彼女のためにお金を取ったらな、アカンなと。

藤本 離婚調停では、夫が「三百万円しか払わない」と言っていたんですよね。

向こうが裁判を起こす前にとかなりのタイトスケジュールで訴訟を提起した

 そう。とりあえず、財産分与や慰謝料で一千万円ぐらいは取ってあげないとなと思ったよ。ポイントだったのは、むこう(愛媛)で一度裁判を起こされると、管轄が愛媛になってしまう。だから、これはすぐ訴訟を提起しないといけないと思った。

藤本 訴訟提起までは、かなりタイトなスケジュールでした。依頼を受けた日が金曜日で、そのまま依頼者の方に二~三時間ほど訴状起案のための聞き取りにお時間を頂いて、土日で訴状を構成。月曜に先生と打ち合わせをして、戸籍を取り寄せて、依頼者の方に内容を確認していただいて……夢中でやりました。

 訴訟提起まで十日かからなかったよな。

藤本 谷先生から「あちら(愛媛)で訴訟を提起されたら、こちらの依頼者にとって不利益以外の何物でもない」と言われたので、必死でやりました。
もし、愛媛で訴訟を起こされていたら、移動時間だけで片道五時間以上かかってしまう。交通費なども馬鹿になりませんし、依頼者の方の負担が非常に大きくなってしまいます。無事、大阪でやれることになってホッとしました。
それで、第一回の期日後、相手の預金口座などに調査をかけたら、財産分与の対象になる預金が合計一億円ほど見つかったんですよね。

 主なお金が入っている口座に、確か七千万円ほど残高があったと思う。最初、相手が自由にお金を動かせないように、その口座を仮差し押さえしようかと思った。
ただ、向こうも商売をしているので、迷った。夫婦間のことなので、他人同士のお金の貸し借りとも違う。
ところが、裁判のなかで相手が「このお金はスーパーの改装につかう金だから……」などと言ってきた。「だからお前(依頼者)に渡せるような金じゃない」と。
それを聞いて、「あ、これは出しよるな」と思った。それで、土曜に街を散歩しながら考えているときに「やはりこれは仮差し押さえしないと」と思った。それで、すぐに藤本に電話をしたんだったな。

藤本 僕はちょうどコンタクトレンズを買っているところでした(笑)。谷先生から「わかってるな、これから仮差し押さえの準備をするぞ。
ところで、お前はこれから何をする予定だったんだ」と電話で言われたので、お昼ご飯を食べて、街をブラブラする予定だったんですが、「ちょうどこれから事務所に行くところです」と答えたのを覚えています(笑)。
仮差し押さえの手続きは五日間ぐらいでやりました。土曜日に電話があって、翌週の水曜か木曜ぐらいには仮差し押さえの申し立てをしていましたね。

強制執行の妨害に対して、相手方弁護士に刑事告訴と懲戒請求をすると伝えた

 すると、相手の地元の銀行から「預金残高ゼロ円」という回答が返ってきた。その前に調査したとき、七千万円ほど残高があるのは確認している。これには堪忍袋の緒が切れた。すぐに、相手方弁護士に対して、強制執行妨害で刑事告訴と懲戒請求をすると伝えた。

藤本 愛媛弁護士会に連絡して、相手方の弁護士に対して内容証明郵便を送付したんですよね。すると、一週間後にその銀行の副支店長から「先日の回答は誤りで、やはり残高がありました」と連絡がきた。考えられないような話ですよね。

 怒りの内容証明だったな。それで、約四千七百万円の仮差し押さえを行った。尋問のあと、先方から二千五百万円の支払いを提示されたけれど、拒否。結局、一審で約三千六百万円の財産分与は認められたが、相手方が控訴してきたので、こちらも控訴して徹底的に争った。

普通の法律事務所だったら、まずこの事件は受けたがらない

藤本 高裁までいきましたが、四千万円で和解に持ち込みました。依頼者の方が十分に納得されていたので、奔走したかいがあったと思いました。いま思えばですが、普通の法律事務所だったら、まずこの事件は受けたがらないでしょうね。
当初、依頼者の方はそんなにお金を持っているわけではありませんでした。愛媛で裁判を起こされる可能性もありますし、相手の夫がどれぐらい財産を持っているかもわからない。

 僕は目の前で相談を聞いて、それなりに力になれると思ったら大体の件は受けるよ。報酬の額が多かろうと少なかろうとね。ただ、仮に受けたとしても、このスピードでできる事務所はまずない。
僕の仕事をサポートしてくれる藤本が、ちょっとでも僕の指示に嫌な顔をしていたら、ここまでうまくはいかなかったと思う。僕がお願いしたどんな仕事も熱意をもって、それでいて迅速にこなしてくれる。だから僕も最高に頭を使えるんだよ。そういう信頼感があるから、こういう結果が出せたんだと思う。

弁護士だけでは成し遂げられなかった
スタッフあっての成果

藤本 事件が終了して、依頼者の方が最後にお礼を言いに来てくださったときのことを覚えています。谷先生が「私だけではなくて、こいつが一生懸命やったんですよ。だから、こういう結果になったんです」と言ってくださった。

 本当のことだからそう伝えただけで、社交辞令じゃないからね。弁護士が孤独に事件を抱えてしまうような事務所だったら、こんな結果は出せなかったと思うよ。

 

亡くなった息子さんの無念を晴らす
画期的な判決!

小杉 原付自転車による事故で亡くなった男性(Aさん)のお父様が依頼者でした。原付自転車で新聞配達をされていたAさんが交差点で右折しようとしたところ、直進してきたバイクと衝突。ほぼ即死だったそうです。普通事故にあうと、相手方の保険会社から、電話で連絡がきますよね。ところが、半年経ってもなにもない。
ようやく連絡がきたと思ったら、その保険会社の担当者から、このような場合は直進が優先なので、過失割合が8対2で、Aさんのほうが悪いと言われてしまった。あくまでAさんが無謀な運転をした結果、事故が起き、亡くなってしまったということだというのです。

上野 お父様はご自身で調べて、自賠責保険で3000万円を受け取られたのですが、どうしても事故について違和感が拭えなかった。それで、色々な法律事務所に相談に行かれていた。ただ、どの事務所も「もう取れるものはないですよ」の一点張り。
事故全体の損害が7000~8000万円だとすると、過失割合の2割分しかもらえないわけですから、8000万円の2割だと1600万円ほど。すでに自賠責で3000万円受け取っています。
「直進が優先なので、右折車の過失が大きい」と言い張る相手方の保険会社と戦ってくれる事務所がなかった。それで、サリュの横浜事務所に相談にいらっしゃったのです。

まじめな息子さんの無念を晴らしたい

小杉 お父さんの話を伺っていると、お金というよりも、やはり息子さんの無念を晴らしたいという気持ちが強いようでしたよね。お父様が「ウチの息子がそんな無謀な運転をするはずがない」と仰っていたのが印象的でした。

上野 そのとき、お父様がAさんの小さい頃のエピソードを色々と話してくださった。とても真面目で、正義感の強い人間だったと。お話を聞いていて、Aさんが無謀な運転をして、事故を起こしたというストーリーではないのではないかと思い、受任することになりました。

現場検証と、
ご両親との対話で見えてきたもの

小杉 まず事故にあった交差点の現場調査に行きました。赤信号で車が停まるたびに、車道に出て写真を撮ったり、距離を確認したり。かなり見通しがいい交差点でしたし、とても普通の速度で走っている直進車を無視して、Aさんが強引に右折しようとしたとは考えにくい。

上野 ものすごいスピードで走っていた直進車が、Aさんに衝突したのではないかという思いが強くなりましたよね。他にも、直進車と右折車による事故の判例や文献の調査も徹底的に行いました。

小杉 それと、ご両親の話を伺っていたら、Aさんには交際されていたBさんという女性がいたことがわかったのです。これは重要な点なんですよね。というのも、賠償金というのは、主に「葬儀費用」「慰謝料」「逸失利益」の3つが含まれます。一人暮らしの男性と、「一家の支柱」といって奥さんやお子さんがいる男性とでは、慰謝料の額も、逸失利益を計算する際の生活費控除率も大きく変わってくる。

上野 最初はBさんの連絡先もわかりませんでしたので、住民票を取り寄せて、なんとか彼女の居る場所を探した。手紙を出してご協力を仰ぐことにしましたが、事故から2年は経っているとはいえ、Bさんにとって決して思い出したくないことだと思います。「協力したくない」と思われてしまったら終わりです。とにかく細心の注意を払って手紙を書きました。手紙を読んで頂けて、Bさんが事務所に来てくださったときは嬉しかったです。

小杉 あれは大きかったですよね。2人は7年間交際されていて、うち4年間は同棲されていたことがわかった。これは夫婦に近い関係と言えるので「一家の支柱」に近い額をもらわなくちゃいけない。Bさんは身体が弱く、Aさんの収入で2人は生活していたようでした。つまり、彼女を扶養していた側面があるので、生活費控除率も下がります。
とくに死亡事故だと、亡くなった方の背景などをちゃんと裁判所に伝えて、評価してもらわなければいけません。やはりご両親に聞いていてもわからない部分というのはあります。判決に直接影響する部分以外でも、Bさんの協力は非常に大きかったですね。

過失割合を新たな証拠でひっくり返し、画期的な判決を勝ち取った

上野 裁判での一番大きな争点は、過失割合でした。こちらは向こうのバイクは100~115㎞は出ていただろうと主張しましたが、相手は60~80㎞ほどしか出ていなかったと反論。向こうには相手のバイクが停止したとされる地点をもとにした計算式などの根拠と、証言者もいたのです。衝突した男性と一緒に彼の友人も並走していて、その友人が「自分は時速60㎞ほどで走っていた」と証言した。つまり、加害者も60㎞ほどで走っていたはずだと。

小杉 ここが一番悩んだところでしたね。このまま認定されてしまったら、ウチは負けてしまう。私たちは警察の記録から100~115㎞だと主張したのですが、何かの根拠を提出していたわけではなかった。それで、神奈川県警の科学捜査研究所(科捜研)に根拠となるデータを出してほしいと、弁護士会を通じて協力要請をした。ただ、基本的に警察は民事不介入です。可能性は薄い。

上野 裁判が始まり、証拠をやりとりして、弁論が始まっても、まだ科捜研からデータは届かなかったのですよね。弁論が終われば、あとは判決を待つだけです。ところが、弁論が終わったところでようやく出てきた。

小杉 科捜研が解析の結果を作成してくれるなんていうことは滅多にないですから、嬉しかったんですが、急いで弁論再開の申し立てをしました。

上野 この科捜研の回答書が決め手になりました。過失割合が、当初8:2でAさんの方が悪いとされていたものが、4:6になり加害者の方が悪いとされたのです。賠償額も3000万円ほどの判決がなされて、自賠責の3000万円とあわせて、6000万円となりました。この判決は、画期的な判決として自保ジャーナルという裁判例紹介雑誌にも掲載されました。

小杉 裁判が終わって、2人でAさんの仏前までご挨拶に行きました。ご両親が喜んでくださって、嬉しかったですね。お母様は最初に相談に来ていただいたときは、もうボロボロの状態で、泣きながら話をされていたのを覚えています。それが、裁判が終わって、最後に挨拶に伺ったときも泣いていらっしゃった。それが、悲しんでいる涙ではなく、結果に喜んで泣いてくださっている涙だったので本当に嬉しかった。

上野 亡くなったAさんにいいご報告ができたので、最後の挨拶に行ったあとの帰り道は、とてもすがすがしかったですよね。お父様が「死人に口なし」ということをよく仰ってましたが、それを代弁できましたから。それが代理人の役目ですからね。

小杉 ご両親が「サリュにお願いしてよかった」と言ってくださった。やっているときはもう必死でしたが、ひとつひとつ積み重ねていって、本当によかったなと思いましたね。