生きた解決事例 弁護士&リーガルスタッフ対談

亡くなった息子さんの無念を晴らす
画期的な判決!

小杉 原付自転車による事故で亡くなった男性(Aさん)のお父様が依頼者でした。原付自転車で新聞配達をされていたAさんが交差点で右折しようとしたところ、直進してきたバイクと衝突。ほぼ即死だったそうです。普通事故にあうと、相手方の保険会社から、電話で連絡がきますよね。ところが、半年経ってもなにもない。
ようやく連絡がきたと思ったら、その保険会社の担当者から、このような場合は直進が優先なので、過失割合が8対2で、Aさんのほうが悪いと言われてしまった。あくまでAさんが無謀な運転をした結果、事故が起き、亡くなってしまったということだというのです。

上野 お父様はご自身で調べて、自賠責保険で3000万円を受け取られたのですが、どうしても事故について違和感が拭えなかった。それで、色々な法律事務所に相談に行かれていた。ただ、どの事務所も「もう取れるものはないですよ」の一点張り。
事故全体の損害が7000~8000万円だとすると、過失割合の2割分しかもらえないわけですから、8000万円の2割だと1600万円ほど。すでに自賠責で3000万円受け取っています。
「直進が優先なので、右折車の過失が大きい」と言い張る相手方の保険会社と戦ってくれる事務所がなかった。それで、サリュの横浜事務所に相談にいらっしゃったのです。

まじめな息子さんの無念を晴らしたい

小杉 お父さんの話を伺っていると、お金というよりも、やはり息子さんの無念を晴らしたいという気持ちが強いようでしたよね。お父様が「ウチの息子がそんな無謀な運転をするはずがない」と仰っていたのが印象的でした。

上野 そのとき、お父様がAさんの小さい頃のエピソードを色々と話してくださった。とても真面目で、正義感の強い人間だったと。お話を聞いていて、Aさんが無謀な運転をして、事故を起こしたというストーリーではないのではないかと思い、受任することになりました。

現場検証と、
ご両親との対話で見えてきたもの

小杉 まず事故にあった交差点の現場調査に行きました。赤信号で車が停まるたびに、車道に出て写真を撮ったり、距離を確認したり。かなり見通しがいい交差点でしたし、とても普通の速度で走っている直進車を無視して、Aさんが強引に右折しようとしたとは考えにくい。

上野 ものすごいスピードで走っていた直進車が、Aさんに衝突したのではないかという思いが強くなりましたよね。他にも、直進車と右折車による事故の判例や文献の調査も徹底的に行いました。

小杉 それと、ご両親の話を伺っていたら、Aさんには交際されていたBさんという女性がいたことがわかったのです。これは重要な点なんですよね。というのも、賠償金というのは、主に「葬儀費用」「慰謝料」「逸失利益」の3つが含まれます。一人暮らしの男性と、「一家の支柱」といって奥さんやお子さんがいる男性とでは、慰謝料の額も、逸失利益を計算する際の生活費控除率も大きく変わってくる。

上野 最初はBさんの連絡先もわかりませんでしたので、住民票を取り寄せて、なんとか彼女の居る場所を探した。手紙を出してご協力を仰ぐことにしましたが、事故から2年は経っているとはいえ、Bさんにとって決して思い出したくないことだと思います。「協力したくない」と思われてしまったら終わりです。とにかく細心の注意を払って手紙を書きました。手紙を読んで頂けて、Bさんが事務所に来てくださったときは嬉しかったです。

小杉 あれは大きかったですよね。2人は7年間交際されていて、うち4年間は同棲されていたことがわかった。これは夫婦に近い関係と言えるので「一家の支柱」に近い額をもらわなくちゃいけない。Bさんは身体が弱く、Aさんの収入で2人は生活していたようでした。つまり、彼女を扶養していた側面があるので、生活費控除率も下がります。
とくに死亡事故だと、亡くなった方の背景などをちゃんと裁判所に伝えて、評価してもらわなければいけません。やはりご両親に聞いていてもわからない部分というのはあります。判決に直接影響する部分以外でも、Bさんの協力は非常に大きかったですね。

過失割合を新たな証拠でひっくり返し、画期的な判決を勝ち取った

上野 裁判での一番大きな争点は、過失割合でした。こちらは向こうのバイクは100~115㎞は出ていただろうと主張しましたが、相手は60~80㎞ほどしか出ていなかったと反論。向こうには相手のバイクが停止したとされる地点をもとにした計算式などの根拠と、証言者もいたのです。衝突した男性と一緒に彼の友人も並走していて、その友人が「自分は時速60㎞ほどで走っていた」と証言した。つまり、加害者も60㎞ほどで走っていたはずだと。

小杉 ここが一番悩んだところでしたね。このまま認定されてしまったら、ウチは負けてしまう。私たちは警察の記録から100~115㎞だと主張したのですが、何かの根拠を提出していたわけではなかった。それで、神奈川県警の科学捜査研究所(科捜研)に根拠となるデータを出してほしいと、弁護士会を通じて協力要請をした。ただ、基本的に警察は民事不介入です。可能性は薄い。

上野 裁判が始まり、証拠をやりとりして、弁論が始まっても、まだ科捜研からデータは届かなかったのですよね。弁論が終われば、あとは判決を待つだけです。ところが、弁論が終わったところでようやく出てきた。

小杉 科捜研が解析の結果を作成してくれるなんていうことは滅多にないですから、嬉しかったんですが、急いで弁論再開の申し立てをしました。

上野 この科捜研の回答書が決め手になりました。過失割合が、当初8:2でAさんの方が悪いとされていたものが、4:6になり加害者の方が悪いとされたのです。賠償額も3000万円ほどの判決がなされて、自賠責の3000万円とあわせて、6000万円となりました。この判決は、画期的な判決として自保ジャーナルという裁判例紹介雑誌にも掲載されました。

小杉 裁判が終わって、2人でAさんの仏前までご挨拶に行きました。ご両親が喜んでくださって、嬉しかったですね。お母様は最初に相談に来ていただいたときは、もうボロボロの状態で、泣きながら話をされていたのを覚えています。それが、裁判が終わって、最後に挨拶に伺ったときも泣いていらっしゃった。それが、悲しんでいる涙ではなく、結果に喜んで泣いてくださっている涙だったので本当に嬉しかった。

上野 亡くなったAさんにいいご報告ができたので、最後の挨拶に行ったあとの帰り道は、とてもすがすがしかったですよね。お父様が「死人に口なし」ということをよく仰ってましたが、それを代弁できましたから。それが代理人の役目ですからね。 

小杉 ご両親が「サリュにお願いしてよかった」と言ってくださった。やっているときはもう必死でしたが、ひとつひとつ積み重ねていって、本当によかったなと思いましたね。