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過去に紹介した判例

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 意思無能力者に代わる相続税申告納付と事務管理について
  最高裁H18.7.14判決
 ・重複して設定された動産譲渡担保につき、後順位の担保権者による
  私的実行の可否等 最高裁H18.7.20判決
 ・入浴中の死亡事故が死亡保険金給付要件の「外来の事故」といえるか
  大阪高裁H17.12.1判決
 ・交通事故等の場合と異なり慰謝料額が高額となる場合
  東京地裁H18.7.26判決
  事故の偶発性についての主張立証責任 大阪高裁H18.9.14判決
 ・「相続させる」遺言と代襲相続 東京高裁H18.6.29判決
 ・融資と建物建築が一体となった計画の勧誘について、建築会社及び
  金融機関の説明義務違反があるとされた事例 最高裁H18.6.12判決

 ・車両保険金請求における偶然性の立証責任
  (1)最高裁H18.6.1判決 (2)最高裁H18.6.6判決
 ・建物賃借人である株式会社の全株式が譲渡された場合と賃借権の
  無断譲渡 東京地裁H18.5.15判決
 ・急性心筋梗塞と労災について 大阪高裁H18.4.28判決
 ・団体定期保険について 最高裁H18.4.11判決
 ・性同一性障害について 東京地裁H18.3.29判決
 ・再生手続内での競売中止命令の是非 福岡高裁H18.2.13判決
 ・保険金支払い拒絶について 函館地裁H18.1.26判決
 ・パチンコ攻略情報売買契約の消費者契約法による取消
  東京地裁H17.11.8判決

 ・誤振込について 東京地裁H17.9.26判決
 ・騒音を原因とするマンションの明渡しと競売 東京地裁H17.9.13判決
 ・自殺と生命保険について 大分地裁H17.9.8判決
 ・寄付行為と意思能力について 熊本地裁H17.8.29判決
 ・共有物分割請求権の行使と権利の濫用 大阪高裁H17.6.9判決
 ・商品先物取引と消費者契約法による取消について
  名古屋地裁H17.1.26判決

    
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意思無能力者に代わる相続税申告納付と事務管理について 最高裁H18.7.14判決
[事案]  主位的請求につき意思無能力者との間の委任契約を否定し、
 予備的請求につき事務管理が本人の利益にかなうものではないとして
 費用償還請求を棄却した原審に対し、事務管理が本人に利益がない
 とはいえないとして、予備的請求につき原審を破棄、差し戻した。
[判旨]  意思無能力者であった相続人配偶者に代わり相続税申告期限内に
 申告・納付した者がその後死亡した相続人配偶者の相続人に対し、
 主位的に委任契約に基づき、予備的に事務管理に基づき費用
 償還請求をなした。

 本件では、親族が亡くなり、相続人の一人が認知症等で判断能力が失われて
 いる場合に、その相続人に代わって相続税の申告、納付をした人が、後に
 死亡した相続人の相続人に各相続税分を請求できるかどうかが問題に
 なりました。
 判断能力が失われているのですから、自ら申告、納付手続きをすることも、
 誰かに手続きを委任することもできません。
 しかし、あらかじめ申告、納付することが本人の利益になればその費用を
 請求することができます。
 申告期限が来てしまえば税務署に税額を決定されてしまうことも考えられる
 ので、あらかじめ申告、納付することに利益がある可能性があるにも
 かかわらず、その点について原審が判断していないため、もう一度原審で
 審理し直すことになりました。

重複して設定された動産譲渡担保につき、後順位の担保権者による私的実行
の可否等 最高裁H18.7.20判決
[事案]  いけす内の養殖魚を対象とする集合動産譲渡担保の目的物につき、
 譲渡担保設定者による処分の効力が争われた。
[判旨]  (1)上告人・被上告人間の契約は集合譲渡担保契約と解するのが
 相当であり、被上告人の同契約が真正売買契約であることを前提と
 する引渡し請求は理由がない。
 (2)仮に、被上告人の請求が譲渡担保の実行に基づく引渡請求の
 趣旨を含むものであるとしても、集合譲渡担保契約の後順位担保
 設定者は私的実行をすることができない。

 動産を対象とする譲渡担保は、不動産を担保にする場合と違って登記が
 ないため、契約当事者以外の者にはすでに担保が設定されているかどうかが
 わかりません。
 そのためこの事例のように何重にも担保になっている場合があり、後から
 担保を設定した債権者が担保権を実行することができるかが争われました。
 結果は担保権を実行できないというものであり、債権者としては、動産を
 対象に譲渡担保契約をする場合には、他に先順位の担保が設定されて
 いないかをよく確認する必要があるでしょう。

入浴中の死亡事故が死亡保険金給付要件の「外来の事故」といえるか
大阪高裁H17.12.1判決
[事案]  一人暮らしの高齢者が、自宅の浴室で死亡。
 高齢者の遺族らが、傷害保険の死亡保険金を保険会社に請求した。
 一審は高齢者の死亡を不慮の外因死としてこれを認容したが、
 保険会社は死因が疾患等の病死である可能性もあり、溺死ではない
 などと主張し控訴した。
[判旨]  高齢者の死因を溺死であると判断。
 また、溺死はその間接原因がその身体の内部に原因する疾患等
 であることが明らかであるとはいえないから、外来の事故に該当する
 として遺族の請求を認容した。

 保険金請求事件で、保険金支払の免責事由の有無を請求者側と保険会社側
 とのどちらが証明するか争われる事件が多数あります。
 この判決では、保険会社側に立証責任があるとしましたが、最近各種の保険
 で同様の判断が出ており、請求者側の立証の負担を軽くする傾向にあります。

交通事故等の場合と異なり慰謝料額が高額となる場合 東京地裁H18.7.26判決
[事案]  胎児の帝王切開術後に、医師の過失により母親が死亡し、母親の夫、
 子、実母が医師と使用者である町に対し損害賠償を請求した。
[判旨]  医師の損害賠償責任を肯定し、医療事件の慰謝料の算定について
 交通事故等よりも慰謝料が高額になる場合もあるとして、
 合計2700万円の慰謝料を認めた。

 通常、死亡や傷害の事故による損害を算定する場合、交通事故の
 損害算定基準が参考にされます。
 この判決では、事前に何の契約関係もない交通事故と違い、医療事故の
 場合は患者と医師の間に契約関係が存在し、患者は医師を信頼して身を委ね、
 身体に対する侵襲を甘んじて受け入れているのであり、医師の注意義務違反
 によって患者の生命身体が損なわれたとき、患者には損害の客観的態様に
 基づく精神的苦痛に加え、医師に対する信頼を裏切られたことによる精神的
 苦痛が生じるものと考えられるとして高額の慰謝料を認めました。

事故の偶発性についての主張立証責任 大阪高裁H18.9.14判決
[事案]  Xの経営する居酒屋に火災が発生し、Xが、Y保険会社に対して
 居酒屋店舗の建物を保険目的とする店舗総合保険契約に基づき、
 Z保険会社に対して店舗内の什器備品等及び休業による損害を
 保険目的とするテナント総合保険に基づき、それぞれ保険金を
 請求した。
 これに対し、Y及びZは本件火災がXによる放火であって
 「偶然な事故」にはあたらず、保険金の支払義務はないと主張。
 保険金支払の条件である事故の偶発性の主張立証責任が
 保険契約者にあるか否かが争われた。
[判旨]  保険契約者に事故の偶発性の主張立証責任はないとして、
 破棄、差戻し。

 損害保険では、保険契約者が故意または重大な過失によって事故が
 発生した場合は保険金が支払われないと定められています。
 この訴訟では、保険金を支払わないために保険会社が「故意、重過失」を
 証明しなければならないのか、それとも保険金支払のために保険契約者が
 「故意、重過失でないこと」つまり「偶発性」を証明しなければならないのかが
 争われました。
 火災保険、自動車保険については既に同様の最高裁の判断が出ています
 ので、この判決はそれを踏襲するものといえます。
 故意、重過失を疑われて保険金が支払われずにお困りの場合には、
 弁護士にご相談されるとよいでしょう。

「相続させる」遺言と代襲相続 東京高裁H18.6.29判決
[事案]  「相続させる」という趣旨の遺言により指定された相続人が遺言者より
 先に死亡した場合、代襲相続人が遺産を承継するか。
[判旨]  「相続させる」という趣旨の遺言は相続分ないし遺産分割方法の指定で
 あるから、指定された相続人が遺言者より先に死亡した場合に遺言の
 効力を失うことを定めた民法994条1項は適用されず、遺産分割方法
 の指定による相続分を代襲相続人が承継する。

 遺言書で遺産を「相続させる」と指定された人が、遺言書を書いた人よりも
 先に亡くなった場合、その分を誰が相続するのかが問題になります。
 一方、通常の相続では、相続人が先に亡くなった場合にはその子が
 代襲相続人として相続権を有します。
 このような事例では、これまでは代襲相続しないというのが登記実務、
 判例でしたが、この判決では代襲相続を認めました。
 トラブルを事前に回避するためには、遺言書で指定した人が先に亡くなった
 場合には、遺言書を書き直す等の手当てをしておいた方が良いでしょう。

融資と建物建築が一体となった計画の勧誘について、建築会社及び
金融機関の説明義務違反があるとされた事例 最高裁H18.6.12判決
[事案]  建築会社及び都市銀行の担当者が、土地所有者に対し、所有地上に
 建物を建築した上で融資を行い、その返済資金は所有地の一部を
 売却することで調達する計画を提案した。
 その提案に従い土地所有者は建物を建築したが、
 (1)土地の一部売却後の敷地部分のみでは建物の容積率が制限を
   超える違法なものであること、
 (2)売却する一部土地の買主が新たに建物を建築する場合には、
   敷地を二重に使用することとなって建築確認を直ちに受けることが
   できない可能性があること(二重使用:既にA建築物の建築確認に
   当たって容積率等の算定の基礎とされた土地の一部について、
   後にB建築物の敷地として確認申請がされること。)
  の問題があった。
 そのため土地所有者は、計画通り土地を売却することができず、
 返済資金の調達が困難となった。
 土地所有者は、建築会社及び都市銀行に対し、説明義務違反による
 不法行為又は債務不履行に基づき損害賠償を請求したが、高裁では
 説明義務違反が認められず、上告した。
[判旨]  建築会社の担当者に信義則上の説明義務違反があり、都市銀行の
 担当者に信義則上の説明義務違反を認める特段の事情があったか
 否か不明であるとして、原審を破棄差戻。

 この事例のように、ローンを組んで住宅やアパートを建築したものの
 返済資金のあてがはずれては、せっかく建てた建物だけでなく土地まで
 失うことになりかねません。
 建築会社や金融機関は専門知識を持っていますし、多くの事例を扱っている
 わけですから、顧客にリスクについても十分に説明する責任があります。
 ですから、この判決のように業者側の説明義務違反が認められれば、
 損害賠償が認められる場合もあります。ただ、多額のローンを組むときには、
 返済計画は建築会社や金融機関の説明を鵜呑みにするのではなく、
 借主自身もよく検討する必要があるといえるでしょう。

車両保険金請求における偶然性の立証責任
(1)最高裁H18.6.1判決 (2)最高裁H18.6.6判決
[事案]  車両保険金請求事件[(1)水没事故、(2)車体の傷]において原審が
 保険金請求者側の事故が偶発的な事故によるとの立証が無いとして
 請求を棄却したのに対し、保険金請求者が、事故が偶発的なものでは
 ないとの立証責任は保険者側にあるとして上告した。
[判旨]  事故が偶発的なものではないことの立証責任は保険者側にあると
 判断し、原審を破棄、差し戻した。

 損害保険では、保険事故を保険契約者等が意図的に起こしたり、重大な
 不注意で起こしてしまった場合には、保険会社は保険金を払わなくて
 良いことになっています。
 これまで、保険事故が偶然に発生したことを証明する責任が保険金請求者側
 にあるのか、保険会社側にあるのかが争われてきました。
 この偶然性について、傷害保険については平成14年の最高裁判決で
 保険金請求者側に、火災保険については平成16年の最高裁判決で
 保険会社側に立証責任があるとされていました。
 今回の判決で、車両保険にも偶然性の立証責任は保険会社側にあると
 されたのです。
 偶然であることの証明は非常に難しく、その証明ができないと保険金が
 もらえないとすれば保険契約者にとって非常に不利益なことです。
 今後は車両保険金の請求がしやすくなることでしょう。

建物賃借人である株式会社の全株式が譲渡された場合と賃借権の無断譲渡
東京地裁H18.5.15判決
[事案]  建物を賃借して中華料理店を営んでいた株式会社の全株式を
 第三者が買い受け、会社の商号、本店所在地が変更したことから、
 賃貸人が、建物の無断譲渡又は契約上の解除原因である
 「脱法的無断賃借権の譲渡」にあたるとして、契約の解除、
 建物の明渡等を求めた。
[判旨]  全株式の譲渡があっても、法人格は変わらず、建物の使用形態等の
 変更もないこと等から、賃借権の譲渡にあたらず、「脱法的な
 無断賃借権の譲渡」にもあたらないとして、請求を棄却

 M&Aで買収された会社が経営していた店舗を、買収した会社がそのまま
 継続しようとしても、建物の賃貸借契約を解除されてしまっては
 続けられません。
 このような計画をされている場合に参考になる判例です。

急性心筋梗塞と労災について 大阪高裁H18.4.28判決
[事案]  業務中に急性心筋梗塞で死亡した梱包作業員の妻が、夫の死亡は
 業務上の死亡であるとして労災保険法に基づく遺族補償給付等の
 支給を請求したが、労働基準監督署は業務起因性が認められない
 として不給処分をした。
 そのため妻は、上処分は違法であるとしてその取消を求めて
 提訴したが、一審は業務起因性が認められないとして請求を
 棄却したため控訴した。
[判旨]  狭心症の基礎疾患を有する作業員の業務中の急性心筋梗塞による
 死亡について、業務起因性があることを認めた。

 この判決は、持病による死亡であっても、労働条件、環境等を総合的に
 考慮して業務に起因する死亡であるとして労災の適用を認めました。
 労働基準監督署で労災が認められなくても、裁判で認められることもあります。
 労働基準監督署の判断に納得できない場合、弁護士に相談してみては
 いかがでしょう。

団体定期保険について 最高裁H18.4.11判決
[事案]  団体定期保険の保険金を会社が受領し、その一部を社内規定に
 基づき死亡従業員の遺族に支払ったが、社内規程を超えて相当額を
 遺族に支払うべきか否かが争われた
[判旨]  会社が受領した保険金につき、社内規定に基づく給付額を超えて
 死亡従業員の遺族に支払うとの合意が会社と保険会社の間に
 存したとはいえない

 高等裁判所では、会社が契約者となって従業員を被保険者とする生命保険の
 保険金について、受取人が会社に指定されていても、社会的に相当な
 金額までの保険金は遺族に支払われるべきだと判断していましたが、
 この最高裁の判決ではそれを覆し、遺族に支払われるのは社内規定に
 基づく金額にとどまると判断しました。
 会社が従業員の命を元手に稼いでいるのではないかとの批判もあり、
 このような保険契約は問題視される場合もあります。
 保険金が会社に支払われているにもかかわらず遺族に知らされない
 場合もあるようです。
 会社勤めのご家族が亡くなった場合には、社内規程を確認したほうが
 良いかもしれません。

性同一性障害について 東京地裁H18.3.29判決
[事案]  MTF(※)であり、外形的にも女性の身体を有する者が、
 留置されるに当り、男性警察官らによって、傷病調査等のために
 着衣を脱がされたり、他の男性留置人が在房する留置室に
 留置されるなどし、身体的、精神的損害を被ったと主張して、
 国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金等の支払を求めた。
 注1:※MTFとは“MaleToFemale”の略。
 身体的には男性であるが自己の性別について女性であると
 確信している者。
 注2:原告は、躁鬱病と診断されている。
[判旨]  MTFであり、外見上も女性としての身体を有する者に対する
 身体検査においては、
 (1)特段の事情のない限り、女子職員が行うか、医師若しくは
   成年の女子を立ち合わせなければならならない。
 また、
 (2)原則として、男子と区分して留置するべきである。

 近年性同一性障害について理解が広がり、一定の要件のもとに
 戸籍上の性を変更することも認められるようになりました。
 この判決では、戸籍上の性(男性)は変更していない性同一性障害の
 人物について、留置場での身体検査等に際して、戸籍上の性を基準と
 するのではなく、内心上、外形上の性(女性)に基づいて、女子職員が
 対応するべきであるとしました。

再生手続内での競売中止命令の是非 福岡高裁H18.2.13判決
[事案]  再生債務者所有の不動産と第三者名義の不動産が一体として
 使用されていて共同担保に供されており、全不動産につき競売手続が
 開始していたところ、再生手続において競売中止命令が発令され、
 債権者がその取消を求めた。
[判旨]  一部について競売中止命令を取り消したとしても、その一部不動産のみ
 の競売を実施することは困難であるし、再生手続を攪乱することにも
 なるから、全不動産について競売中止命令を発令するのは相当でなく、
 競売中止命令の全部を取消す。

 再生手続では、再生債務者の再建のため必要が認められると、再生債務者
 所有不動産についてすでに開始している競売手続を中止することができます。
 この事案では、第三者名義の不動産が含まれていても競売全体について
 中止命令が可能か否かが争われましたが、結局対象となった不動産が
 再生債務者所有であることを登記上形式的に判断して、第三者名義の不動産
 が含まれているから全体として競売を中止すべきでないとの結論になりました。

保険金支払い拒絶について 函館地裁H18.1.26判決
[事案]  保険会社が、保険料不払があった後の入院給付金の請求には応じた
 にもかかわらず、死亡保険金の請求には保険料不払による保険契約
 失効を理由に支払を拒絶したため、保険金受取人が保険金の支払を
 求め提訴した。
[判旨]  小額の入院給付金の審査では調査を尽くさず、多額の死亡保険金の
 審査では2回の保険料不払を理由に保険契約が失効したとして
 死亡保険金の支払を拒絶することは信義則に反し許されない。

 この判決は、契約の獲得、維持には熱心なのに保険金の支払には消極的な
 保険会社の姿勢を批判し、保険金の支払を命じました。
 保険金を請求したときの保険会社の対応に疑問を持っている方は多いと
 思います。
 疑問をお持ちの方は、保険会社の対応が正当なものかどうか、弁護士に
 相談してみてはいかがでしょうか。

パチンコ攻略情報売買契約の消費者契約法による取消 東京地裁H17.11.8判決
[事案]  パチンコ攻略情報の売買契約について、買主が、売主の勧誘は
 「断定的判断の提供」にあたるとして契約の取消しを主張し、
 売買代金の返還を請求した。
 一審は請求を棄却したため、買主が控訴した。
[判旨]  パチンコの出球は偶然性が高く不確実であるのに、「100パーセント
 絶対に勝てるし、稼げる」等と言って情報の売買を勧誘したとして、
 売買契約締結に際し「断定的判断の提供」による誤信があったと
 認めた。

 消費者契約法は、事業者と消費者の間の契約に関して、事業者に
 「断定的判断の提供」等の一定の行為があれば、「追認することができるとき」
 から6ヶ月の間、消費者が契約を取り消せると定めています。
 「追認することができるとき」は場合によって異なりますので、思い当たる方は
 弁護士に相談してみてください。

誤振込について 東京地裁H17.9.26判決
[事案]  X(法人)が甲会社に対する決済のためにA銀行のインターネット振込を
 利用したが、誤って乙会社のY銀行口座に振込をしてしまったところ、
 Y銀行が乙会社に対する貸付債権と乙会社のY銀行の預金を
 相殺したため、XはY銀行に対して不当利得返還請求をした。
[判旨]  本件相殺(Y銀行による債権回収)は振込依頼人Xに対する関係に
 おいては法律上の原因がなく不当利得にあたるとしてXの請求を
 認容した。

 ある会社が取引先の振込先口座を間違えて振り込み手続きをしてしまった
 ところ、別の会社にお金が振り込まれてしまいました。
 すると、その振込先口座のある銀行が、振込金をその会社に対する貸付と
 相殺してしまい、誤振込をした会社は振り込んだお金を取り戻せなくなって
 しまいました。
 そこで裁判をした結果、この判決では銀行に相殺したお金を誤振込した
 会社に返すよう命じました。
 銀行は誤振込みであることを知っていたのに、相殺によって債権を
 回収しようとしたことには問題があると判断されました。

騒音を原因とするマンションの明渡しと競売 東京地裁H17.9.13判決
[事案]  マンションの所有者(区分所有)が、そのマンションを子に使用させて
 いたところ、大声等の騒音を出したことが共同の利益に反するとして、
 管理者による使用貸借の解除、専有部分の引渡し、区分所有権等の
 競売請求がなされた。
[判旨]  居住者による騒音・振動・叫び声等を発生させる行為や点検拒否
 行為が、マンションの他の居住者の共同の利益に反し、その障害は
 著しいから、使用貸借契約の解除と本件建物部分の引渡しを認める
 のが相当である。
 居住者と所有者の一体性、所有者の問題解決意思及び能力の
 欠如から、所有者がこのまま本件マンションを所有し続けることは、
 必然的に区分所有者の共同の利益に反することになり、その障害は
 著しいから、競売請求をも認めるのが相当である。

 マンションのような区分所有建物で、近隣に迷惑になるような行為を
 繰り返した場合、この判決のように強制的に競売にかけられてしまうことも
 あります。
 この事例は息子にマンションを使わせていたケースですが、マンションを
 他人に貸している場合でも、隣近所に迷惑をかけていないか十分に気を配る
 必要がありますのでご注意下さい。

自殺と生命保険について 大分地裁H17.9.8判決
[事案]  1)生命保険契約の被保険者(うつ病に罹患)が、契約締結後約1年で
 自殺したことから、保険金受取人が、保険会社に対して保険金の
 支払いを請求した。
 2)保険会社は、被保険者が契約締結後2年以内に自殺したことが、
 保険約款の支払免責事由に当たるとして、保険金の支払いを
 拒絶した。
[判旨]  被保険者の自殺は、自由な意思決定能力が著しく減弱した状態で
 なされたものであり、保険約款にいう「自殺」には該当しないとして、
 保険金受取人の保険金支払請求を認めた。

 通常、生命保険契約には、契約締結後2年以内に自殺した場合保険金は
 支払われないという定めがあります。
 しかしこの判決では、自殺による死亡であっても、保険金を受け取るために
 自殺したとはいえないなどの理由により、保険金が支払われない「自殺」では
 ないとして、保険会社に生命保険金の支払を命じました。
 自殺であれば生命保険金は下りないと思い込んでいる方もいるかも
 しれませんが、場合によりますので、ぜひ弁護士に相談してみてください。

寄付行為と意思能力について 熊本地裁H17.8.29判決
[事案]  被相続人Aの相続人(妻・原告X)が、Aが生前にした寄付行為は
 意思無能力によって無効であり、自己がAの不当利得返還請求権を
 相続したとして、日本赤十字社(被告Y)に対して寄付金1億4千万円と
 遅延損害金の支払を求めた。
[判旨]  Aには、寄付当時、動機において間接的に妄想の影響を受けていた
 ものとみられるが、意思能力がなかった状態にあったとまでは認定する
 ことができず、Xの不当利得返還請求権は認められない。
 ※意思能力:自己の行為の法的な結果を認識・判断することが
 できる能力

 故人が生前に行った高額の寄付行為について、遺族が、故人が判断能力が
 ない状態で行ったものだとして無効を主張し、寄付金を取り戻そうとしましたが、
 認められませんでした。
 故人の財産については、生前の処分についても死後トラブルが起こりがちです。
 死後親族が納得できる形で財産を処分するためには、自分の意思を書面で
 残す等の対策が必要でしょう。

共有物分割請求権の行使と権利の濫用 大阪高裁H17.6.9判決
[事案]  別居中の夫が妻に対し、夫婦が共有する自宅不動産を競売に
 付した上で、代金分割の方法による共有物分割を求め、一審は
 夫の請求を認容したため、妻が控訴した。
 妻と同居の子はそれぞれ病気に罹患しており、自宅を失うと不利益が
 大きい一方、夫も病気に罹患していて共有物の分割金で早期に
 債務を整理したいとの意向を持っていたが、他にも相当額の財産を
 有していた。
[判旨]  各共有者の分割の自由を貫徹させることが当該共有関係の目的、
 性質等に照らして著しく不合理であるときには、分割請求権の行使は
 権利の濫用に当たるとして、請求を棄却。

 この判決のように、法律に則った権利の行使であっても、著しく当事者間の
 公平を害するとき等には認められない場合もあります。

商品先物取引と消費者契約法による取消について 名古屋地裁H17.1.26判決
[事案]  商品先物取引の受託会社から委託者に対する帳尻差損金請求と
 委託者から受託会社に対する不当利得返還請求の事件において、
 消費者契約法4条1項による取消しが認められるかが争われた。
[判旨]  商品先物取引においては消費者契約法4条5項「善意の第三者
 (商品取引所)に対抗できない」に該当せず、同条1項による取消しを
 認めることができる。
 受託会社の一部の担当者の行為につき「断定的判断の提供」が
 認められ、これによる取引は取消され、不当利得返還請求を認容。
 他の担当者の行為には同条1項所定の事実は認められず、
 これによる取引について帳尻差損金請求を認容。

 この判決は、個人が商品先物取引で損害を被った事案で、取引の一部取消を
 認め、業者に預かったお金を一部返すよう命じました。
 「絶対儲かる」などの言葉にのせられて、よくわからないままにハイリスクな
 取引をして大損するというのはよくあるケースです。
 まずは甘い言葉に引っかからないように注意することが肝心ですが、
 商品先物取引などの金融取引で思わぬ損害を被ってしまった場合には、
 損害金を取り戻せる場合もありますので、弁護士に相談してみてください。


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